名取佐和子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
書店の文庫コーナーで購入。令和3年10月の初版発行と書いてあり、増刷されてないのかよ?!とびっくり。こんなに良い本が世に埋もれてるのだとしたら勿体無い。
おそらく「東日本大震災」「住職」「檀家」などのキーワードが重いからだと思うけど、それらに馴染みがなかったり、何もできていない自分に後ろめたい罪悪感があったりした私が一気に読み切れたぐらい、優しくてあたたかくて、生きることを頑張ろう、と思える作品でした。高知弁と岩手弁がミックスされているのも面白かった。
ガチガチの説法小説でもないし、住職(先代と、主人公の2代目の両方)が人間臭いので、説教されてる感じでもないし、自己を投影できるのもまた良し -
Posted by ブクログ
タイトルから、もっとほのぼのした話かと思っていたけれど、命や人や人生に向き合うことの難しさとか、大切さとか、いろいろと考えさせられたり、感じさせられることの多い話だった。
お寺が舞台の話だけに、仏教の教えが折りに触れ出てくる。難しく教えを説いている訳ではなく、仁心という一人の若者の人生のとある期間に寄り添っている話なので、宗教や仏教に造詣が深い人でなくても、胸を打たれるような言葉も多いのではないかと思う。
仁心の心の中には鬱屈したものがあって、それが仁心が僧侶であることに自信をもてない理由でもあるんだけど、それ故に、仁心の言動に理解し難いところもあるのだけれど…。徐々に変わっていき -
Posted by ブクログ
暖かい高知県の大きな寺から、岩手の小さな寺の募集広告を見てやってきたのは、仁心(にしん)。
そこは30代後半ほどのすらっとしたお坊さんがたった一人いる寺だった。
檀家総代の桜葉という高齢の元気で押しが強い男が待っていた。
ここで、知らせたのは恵快という名前の住職が余命1年ということだった。
引き継ぐために募集したようだった。
乳児院から孤児院育ちの仁心(にしん)は、居場所が欲しかったというだけで僧侶になった。それが故に常にコンプレックスがあった。
高知の寺は有名な大きな寺で、僧侶の人数も多い。
人付き合いが苦手な主人公はそこから逃れるように岩手の小さな寺へ、いわば逃げてきたのだった。
だ