名取佐和子のレビュー一覧
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ポップな表紙絵とタイトルの割に、
内容はおもくそハードボイルドだった(^ ^;
少年時代の暗い過去を引きずる弱小運送屋の社長と、
一緒に住み込みで働く「相棒」の若者、それに
主人公の幼なじみである熱血弁護士の女性の三人が、
自らの正義感に従って様々な苦労を背負い込んでいく、
というのが大まかな流れ。
様々な「ひどい目に遭ってる人」が出てきて、
主人公たちはそれぞれの悩みに寄り添い、
救いの手を差し伸べていく。
連作短編集だが、全体で一つの大きなストーリーがある。
現代社会の闇の部分、逆らえない巨悪に翻弄されつつ、
窮鼠は猫に噛みつき、蟻の一穴をこじ開けていく。
アメリカンコミックのヒー -
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ネタバレ江ノ島にある、100年続く食堂の過去と未来が描かれる。
それぞれの時代を生きた、すみゑ、筆、容子、現代の麻布まで。
ねこもりという、江ノ島に暮らす猫の世話をすることが、食堂の女性に課せられた役割だった。「半分亭」という店は、最初茶店だったのが、名物ツブ貝を使った丼「江ノ島丼」を生み出し、宿泊もできるように発展してゆく。
そこへ夜逃げしなければならない事情が生まれるのだが、それも理由があった。
「半分亭は、猫とお客さんに助けられてつづいてきた店」
と代々受け継がれてきた。そこにはある猫が必ず現れている。
最後に気になっていたことがぜんぶ明かされて、気持ちの良い終わり方。続編をあれこれ想像して -
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江の島で代々、島の猫たちのお世話をしている女性たちの100年に渡るお話。
「ねこもりさん」と呼ばれる彼女たちは、先祖代々猫のお世話をしているが、猫たちの方からもきちんと認められていて、ある時は島中の猫たちに見送られ、ある時は島中の猫たちに出迎えられる。そんな先祖代々の女の血筋‥‥「魔女の宅急便」や「コーヒーが冷めないうちに」を思い出しました。中には、ねこもりなんてやってられない!江の島を出たい!というのもいたりして、これは「あまちゃん」を思い出しましたね笑。
大正から平成まで四世代の女性たちの生き様、とても胸を打たれました。個人的には「あまちゃん」タイプの溶子の章では泣かされました。「言ってく -
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ネタバレいろいろな形の「きょうだい」が出てきます。
確かに、年の近い「きょうだい」とは、親子とは違う不思議な距離感がある。
あねとおとうと、あにといもうと、あねといもうと、そして…
この作品に出てくる、素敵なきょうだいたちは、みんな本物のきょうだいだと思います。
そして、そんな「きょうだい」たちの間に神出鬼没のモヒカン君が異彩を放っているわけですが、彼にも彼の物語があり…
窓から海を見ながら、電車に揺られて行きたくなります。
寒いホームで、ベンチに座ってレッグウォーマーに首を埋めながら、一日に何本もない電車を待っていたくなります。
大切ななくし物を待ちながら…
ん?
まず、何を失くしたのか考え -
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名取佐和子さんのハートウォーミングストーリーですね。
自分探しの心温まる物語です。
避暑地の海岸近くに位置する戦前から創業九十年を超えた凧屋旅館を舞台にした、お客さんと若女将の丹家円の交流を描いた短編連作五話。
この凧屋旅館には、数千冊の文庫の書庫があり、文庫旅館としても知られている。円の曾祖父の清の友人の海老澤から譲り受けた歴史のある文庫だ。
ところが円は幼い頃から、本から出てくる香りを強烈に感じる体質で、本を読むことが出来ない。そして、訪れるお客さんからも香りを感じる事が出来る特異体質なのだ。
それぞれの章で、心にうっぷんを抱えた客たちが、円が文庫から選んだ本に寄って、自分回帰を -
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「ほんとうの幸いは、遠い」
高校の図書室で活動する「イーハトー部」は、宮沢賢治を研究する弱小同好会だ。部長だった先輩は、なぜ突然「ほんとうの幸いは、遠い」の言葉を残して消えてしまったのか。
「ほんとうの幸い」とは?
高校生たちは、宮沢賢治が残した「風の又三郎」
「銀河鉄道の夜」「宮沢賢治全集」などなどをひもときながら、先輩の謎を追っていく。
ーそれぞれの事情を抱えながらー
そんなに本を読んでこなかった私の高校時代を思いだし、思わずこれらの本をちゃんと読みたくなってしまった。
そして おくらばせながら 私も「ほんとうの幸い」をじっくり考えてみたい。