斉藤隆央のレビュー一覧
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ネタバレ神の方程式:
「万物の理論」を求めて
超ひも理論の研究者の著者が、科学での革命的な理論を順を追って解説してくれています。
万有引力、電磁気学、相対性理論、量子論そして超ひも理論が数式なしで分かり易く解説されています。
竹蔵としては、相対性理論のところで「重力により空間が曲がっているので、まっすぐ動いているつもりでも曲がってしまう」という説明に膝を打ちました。そういうことだったのね。
量子論あたりから理解が怪しくなっていき、超ひも理論ではイメージがつかめなくなりました。
でもこれらは日常生活から考えると、理論自体がぶっとんでいるのでしょうがないでしょう・・・
超ひも理論は10次元の方程式で、それをまとめたM理論は11次元とのこと???
最後はマルチバースの話になり、神はいるのか?という問いになります。
まあ、それはさておき、物理学の一般教養的なことを知るには最適の本でした。
竹蔵 -
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人類が地球を飛び出し、宇宙への進出について、月、火星などの地球近傍の天体、木星などの太陽系辺縁惑星、近隣恒星系、銀河系と次第にスケールを拡大し、それぞれのステップで必要となる技術的な要素を現在の科学技術から外挿して俯瞰する1冊。
宇宙への移動手段としてのロケット技術だけではなく、恒常的な入植に必要となる進出先での資源確保、生活拠点の建設、さらには月、火星などのテラフォーミング(地球環境への改変)などに必要とされる技術要素が述べられています。地球か羅全ての物資を届けるのは非常にコストがかかるため、いかに現地調達するかがキーになります。現地で自分自身を複製できる”自己複製化”できるロボットというアイデアは実現すると非常に強力なツールになりそうです。
太陽系外の恒星系への進出の段階では、目的地への到達に少なくとも数十年~数百年が必要とされます。宇宙船の中で生涯を終えるようなスケールで、人間の生活・社会をどう維持するか、人工冬眠で時間を稼ぐ、さらには遺伝子改変などによって人間の寿命を延ばす、等々の議論まが登場します。
そしてAI、脳科学の発展と関連して人間の意識をコンピューターに移植することが出来れば、我々人間は地球にいながら、意識を移植されたロボットを派遣することで、宇宙船での生命維持や人間の生活の維持を考慮することなく、あたかも自分が”そこ”にいるかのような事が実現できるのではないか、という議論まで登場します。
他の恒星系にまで人類の活動範囲が広がった場合、お互いの意思疎通に片道で数年以上必要とされる状況ですから、そうなると一つの文明として発展してゆけるのか、等々の考察は大変興味深い印象でした。
本書が出版されたのは2019年です。コロナ禍、ウクライナ侵攻などが起こる前の時点で執筆された本という事で、2020年代に実現しているであろうとされる事象は、現状ではまだ実現されていない事も多く、当然トランプ政権によるNASAの予算削減などの影響も考慮されていません。でもその程度の誤差は置いておくとして、人類が今後数百年間の間に到達できそうな世界を、きちんと技術的・科学的な裏付けを基に述べられていて、内容の古さは全く気になりませんでした。
”宇宙に住む”という大きな目標の実現のため、本書に登場するのは航空宇宙、ロボット、AI、生化学、社会学など広い分野に及び、それらに対する著者の分かりやすい解説で興味深く読み通せました。 -
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私の生物学の基礎知識が乏しく、返り討ちにあったような読後感。だが、生命の誕生についてよくある「原始の海の有機分子が濃縮されたスープに何らかの化学反応が起きて生命が誕生した」といった説を否定し、アルカリ熱水噴出孔において無機鉱物を介したプロトン勾配が有機分子の発生を促したという説は、条件が揃えば生命が発生するのは必然であるかもしれないことを素人にも分かりやすく伝えてくれる。
またミトコンドリアは真核生物の単一の起源であることなども、驚かされる。私もそばの木にもミトコンドリアを持ち、その共通の起源は40億年前にアルカリ熱水噴出孔でもぞもぞ動いていた生物にまで遡れるとは。生命の不思議さについて改めて考えさせられる。
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ネタバレSF好きな人には最高の一冊で、とにかく楽しかった!
・マルチバース
・宇宙は10または11次元
・ワームホール
・ホログラフィック宇宙
・ランドスケープ問題
・人間原理
などなど。SF小説でよく出てくる要素がてんこもり。物理学者たちがどのような理論/方程式から上記を現時点では否定できないあり得る現実として導き出したのかが分かる。
前々からミチオ・カクの名前は知っていたけど、私にとっては初めての一冊。一般人向けに物理学の不思議さを面白く解説してくれている点にとにかく感動した。ぜひ他の本も読みたくなった。
今回の内容を大雑把にまとめると・・
【前半】古典力学と量子力学の歴史を丁寧なのに数式を一切使わず一般人が想像しやすい言葉でその大変さと偉人達の努力についてまとめている。量子力学の不思議な点(例えば不確定性原理、いわゆるシュレーディンガーの猫)について、最近の物理学者がどのような解釈をしているかも簡単な言葉で書かれていて面白い。
【後半】現在の物理学で最大の課題である「重力と量子論を統一できない」問題を唯一数学的に解決可能な「超ひも理論」について。超ひも理論は宇宙の全てを記述可能な「万物の理論」として期待されているが、課題も多くある。優れている点、課題や今後の見通しがとにかくSF的な表現で分かりやすく面白く書かれている。
前半の物理学の歴史が本書の6割くらいを占めていて、「もうおなかいっぱい、はやくひも理論の話にいって…」と退屈になったけど、従来の理論で散々悩んでいた部分をおおよそでも理解することで、「ひも理論すごい!」という感動が得られたので、前半頑張って読み込んだ甲斐があった。
【全体を通した感想】
改めて感じたのは、やはり最先端で研究する物理学者達は「神」を信じているんだなということ。著者も不可知論者だと書いている。
ただし、その神というのは一個人の人間の存在に関わるような小さな存在ではなくて、宇宙全体を設計した存在というイメージ。
歴史上の物理学者たちは「神が作った宇宙は美しい(対称性を有する)はずだ」というのをモチベーションにして、自分の人生をかけてその美しさを方程式で証明してきたというのがすごい。
そして何十年、何百年とかけて歴代の物理学者達が導いてきた理論はやはり美しかった。相対性理論と素粒子物理学:標準模型のたった2つの理論だけで陽子から既知の宇宙を何もかも簡潔に記述できるのは、前もってエレガントな設計をした存在がいるに違いない!
天才的な物理学者が我々の住む宇宙の設計者、マルチバースの存在を感じているのだから、私がSFの世界に思いをはせるのはけして無駄な時間ではないなと思えた。
なので今後もSFや物理学の本を読むためにお金を使ってもいいね!ということでミチオ・カクの最新書を購入することに決めました。 -
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重力と量子論を統一できる可能性のある超ひも理論の、意味や価値、批判や理念、そして哲学との関わりまで、わかりやすく丁寧に、誤魔化されている感じを与えられず、誠実に書かれている。
本当のところを、数式を追って学ぶには、きっと膨大な時間がかかるだろう内容を、この短さにまとめて伝えることのできる筆者の優秀さに驚かされる。
下手な小説より、ずっと刺激的で感動的。
「生の意味は、苦労して理解すべきものだ。ただ与えてもらうのでは、意味をつかむ趣旨そのものにそぐわない。生の意味が難なく手に入るとしたら、本来の意味が失われてしまうだろう。意味をもつものはどれも、苦労と犠牲の結果得られるものであり、勝ち取るに値するものなのだ。」
後半にこの文に出会った時の揺さぶりは、ここまでの内容の質によるのだと思う。
たくさんの人に体験してほしい。 -
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面白い。「生きている」という自明のように思える現象を歴史的な考え方から最新の議論までを含むさまざまな角度から描き出していく。その結果は・・・?
読めば読むほどにこの本を読んでいる自分が生きているとはどういうことなのか不思議になってくる。
一方で生命の素は意外とシンプルな材料と環境と時間があればできるのかもしれないとするとこの宇宙には数え切れないほどの「生きている」何かが発生していておかしくはないのだろうとも思える。(それはこの本の主題とは関係ないが)
幅広い調査とそれを無味乾燥にならず、かつ科学史の人間ドラマにもとどまらない形でこのような読ませる構成でまとめ上げる著者の力がすごい。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ【読みはじめた理由】
「優生思想は危険」という思想が今の社会の道理的に合っている、と思ってなんとなく反対していたが、その根拠をうまく説明できなかったため。
また、社会的に弱い立場にある人は行政や周りの手助けによって守られるべきという道徳的観点は持ち合わせているものの、「産まれてきた子どもが苦労しないように、できるだけ良い遺伝子を持つパートナーとの子どもが欲しい」という漠然とした願望があり、これはある種の優生思想であり、思想の矛盾ではないか?と悩んでいたため。
【読んでみて思ったこと】
優生学というのは正しく使えば人々の苦しみを取り除ける学問だと感じた。ただし、あくまでそれは学問としてであって、優生「思想」を持つことは社会に複雑なヒエラルキーをもたらし、人々の不幸につながるのではないかとも感じた。また、課題であった「できるだけ良い遺伝子を持つパートナーとの子どもが欲しい」という考えも、「子どもには健やかであってほしい」という健全な願いであって、誰かに生まれながらの優劣をつけ蔑むようなことをしなければ問題ないのではないか、という結論に至った。
優生思想とは、「良い血統の科学」とも呼ばれ、人間の血統の遺伝的な質を改良するために「健全な生殖を促し、不健全生殖を防ぐ」思想のことである。これは、国全体の生産性の向上にも繋がると信じられ、優生思想とその学問は社会政策と根深く結びつき、多くの国で取り入れられた。現に日本でも、旧優生保護法という法律が1996年まで施行されており、障がい者に不妊手術を強いることができた。このように、時に強制力を持ってして断種や安楽死を執り行い数え切れない人々を苦しめてきた。その暗い歴史から、現代では優生思想を危険視する風潮がある。
優生思想の中では「生産的で社会的地位のある人間」こそが最も価値が高い存在であるとされ、身体や精神に障がいを抱えている人だけでなく、人種や性別にまでそのヒエラルキーが及んだ。そこには、社会構造の転覆をおびやかす原因が、障がい者や貧困層、不適格者とされていた人々の繁栄にあるとし、ヒエラルキーを守り続けるための考えもあったのではないかと思う。
特に心に残ったことは、優生思想は女性の自由と権利を奪う思想でもあったということだ。歴史の中で、中流階級以上の女性の社会的進出が進むと、優秀な家庭に生まれる健全な子どもが減ることを国家は恐れた。そこで、より多くの子を産み家庭を守る良妻賢母な母親像を求め、みずからを犠牲にして捧げ、家庭に尽くすことが称えられた。特に人口が目減りしていく戦時中はこの流れが顕著だった。逆に、望ましくない生殖を避けるための強制的な断種も同時に行われた。まとめると優生思想の強い社会では、健全な女性には生殖を促し、不健全な女性には生殖をさせなかった。優生思想は、女性の社会的進出を妨げ、その価値を生殖能力に置くことになる。
それでも私が優生思想を部分的に支持する理由は、人権を尊重することができれば素晴らしい学問だと思うからだ。学問としての優生思想は、人々の生活から苦しみを取り除くことに現代の中で大きく役立っている。例えば、出産前に子どもの障がいを調べることで産むか産まないか判断できるし、産むとしても心の準備ができる。遠い将来、選ばれた遺伝子によって産まれてきた子どもたちが、そうでない子どもたちを差別するようなことが社会問題として取り上げられることがあるかもしれないが、資本主義が支配する社会で、消費者たちが望む「より健全な子どもを!」と求める声を止めさせることはほぼ不可能だと思う。それならば、この流れを受け入れた上で、お互いの人権を認め合い、全人類が思いやりと尊重の気持ちを持って接していくにはどうすればいいのか、その考えを広めていくことが最善のような気がした。