あらすじ
地球温暖化や資源の枯渇、小惑星や彗星の衝突、太陽の膨張……。地球がいずれ壊滅的なダメージを受けることは避けられず、人類は生き延びるために宇宙に移住する必要がある。
世界的に高名な理論物理学者で、未来学者としても定評のある著者が、宇宙移住への道を3つのステップで解説する。まずは月や火星に入植し、次に太陽系外の星々への進出を果たし、それと当時に人体の改造や能力の強化を行うというプランだ。
NASAやイーロン・マスク、ジェフ・ベゾスらの挑戦や、AIやスターシップなど最新テクノロジーの進展を追いながら、驚くべき人類の未来を見通す。最高にエキサイティングな科学読み物。
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Posted by ブクログ
人類が地球を飛び出し、宇宙への進出について、月、火星などの地球近傍の天体、木星などの太陽系辺縁惑星、近隣恒星系、銀河系と次第にスケールを拡大し、それぞれのステップで必要となる技術的な要素を現在の科学技術から外挿して俯瞰する1冊。
宇宙への移動手段としてのロケット技術だけではなく、恒常的な入植に必要となる進出先での資源確保、生活拠点の建設、さらには月、火星などのテラフォーミング(地球環境への改変)などに必要とされる技術要素が述べられています。地球か羅全ての物資を届けるのは非常にコストがかかるため、いかに現地調達するかがキーになります。現地で自分自身を複製できる”自己複製化”できるロボットというアイデアは実現すると非常に強力なツールになりそうです。
太陽系外の恒星系への進出の段階では、目的地への到達に少なくとも数十年~数百年が必要とされます。宇宙船の中で生涯を終えるようなスケールで、人間の生活・社会をどう維持するか、人工冬眠で時間を稼ぐ、さらには遺伝子改変などによって人間の寿命を延ばす、等々の議論まが登場します。
そしてAI、脳科学の発展と関連して人間の意識をコンピューターに移植することが出来れば、我々人間は地球にいながら、意識を移植されたロボットを派遣することで、宇宙船での生命維持や人間の生活の維持を考慮することなく、あたかも自分が”そこ”にいるかのような事が実現できるのではないか、という議論まで登場します。
他の恒星系にまで人類の活動範囲が広がった場合、お互いの意思疎通に片道で数年以上必要とされる状況ですから、そうなると一つの文明として発展してゆけるのか、等々の考察は大変興味深い印象でした。
本書が出版されたのは2019年です。コロナ禍、ウクライナ侵攻などが起こる前の時点で執筆された本という事で、2020年代に実現しているであろうとされる事象は、現状ではまだ実現されていない事も多く、当然トランプ政権によるNASAの予算削減などの影響も考慮されていません。でもその程度の誤差は置いておくとして、人類が今後数百年間の間に到達できそうな世界を、きちんと技術的・科学的な裏付けを基に述べられていて、内容の古さは全く気になりませんでした。
”宇宙に住む”という大きな目標の実現のため、本書に登場するのは航空宇宙、ロボット、AI、生化学、社会学など広い分野に及び、それらに対する著者の分かりやすい解説で興味深く読み通せました。
Posted by ブクログ
「なめらかな世界と、その敵」に収録されている「ひかりより速く、ゆるやかに」を思い出した。
軽く宇宙への憧れ的な感じで手に取って読んでみたけど、最新の物理学理論と数学理論をふんだんに語っていて、頭を使った! って感じである。
自分が知っているよりも、学生時代に学んだよりも、世界は進み発展している。しかも、本書に出て来た「デザイナーベイビー」は中国で報告されたし、本書からさらに世界は進んでいるのだ…。
最先端宇宙学の片鱗に触れることができて面白かった。
そろそろ相対性理論と量子論とひも理論を学ぶべきか…笑
Posted by ブクログ
プロローグ
はじめに 多惑星種族へ向けて
第Ⅰ部 地球を離れる
第1章 打ち上げを前にして
第2章 宇宙旅行の新たな黄金時代
第3章 宇宙で採掘する
第4章 絶対に火星へ!
第5章 火星 ー エデンの惑星
第6章 巨大ガス惑星、彗星、さらにその先
第Ⅱ部 星々への旅
第7章 宇宙のロボット
第8章 スターシップを作る
第9章 ケプラーっと惑星の世界
第Ⅲ部 宇宙の生命
第10部 不死
第11部 トランスヒューマニズムとテクノロジー
第12部 地球外生命探査
第13部 先進文明
第14部 宇宙を出る
謝辞
訳者あとがき
原注
推薦図書
索引
Posted by ブクログ
ひも理論の創始者のひとりであるミチオ・カク氏。理論物理学者である彼の幅広く豊かでクリエイティブな知識に驚かされる、ただただワクワク感が止まらない一冊。「SFのような」どころか、現実はSFを超越した時代に入っているようさえ感じる。
「地球を離れる」「星々への旅」「宇宙の生命」と三部に分け、ロケット工学・惑星のテラフォーミング・恒星などの天文学・スターシップの実現・人体拡張や知的外生命体などなど、幅広い論点を検証する。このステップを着実に踏めば地球外への移住が出来そうな気がしてくる(数世紀先であろうが)。
特に「火星」といった特定の惑星ではなく「宇宙」に住むという邦題が言い得て妙。第Ⅲ部のカク氏の専門分野である超ひも理論を用いてユニバースな光体の超生命体になることで宇宙に広がる人類を語っている。単なる想像ではなく10次元の世界から捉えたマルチバースの概念からの演繹で、なんとも凄い世界観。キューブリック監督の「2001年宇宙の旅」のスターチャイルドのような存在になるということか。そう考えると1968年にカク氏の語る世界を独自に発想し映像化するキューブリック氏も驚くべし。
本書で面白いのが、様々な可能性を論じながらも、カク氏はほぼ「不可能」と言わないところ。必ず理論的裏付けや方法論を検討したうえで「数十年後」「数世紀先」「Ⅲ文明では」という、いずれは叶うという余韻を残している。このマインドが彼の著作を漏れなく面白くしている秘訣だと思う。
Posted by ブクログ
あちこちにぶっ飛んだカク先生のトーク
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芸術家にとって、美とは自分の作品に封じ込めたい、形なき性質かもしれない。しかし、理論物理学者にとって、美とは対称性だ。
一般に、数学者は創意に富む新しい体系を生み出し、のちにそれを物理学者が理論に組み込む。
Posted by ブクログ
火星に移住するとかワープを駆使して地球に似た星に移住する、なんてSFは巷にあふれかえっている。
宇宙に行くだけでも大変なのに違う星に住むなんて!
とは思うけれど、宇宙に住むためには今現在の科学で何が課題でそれに対してどのような解決策があるのか多角的に論じている。
例えば、地球に似た星に向けて(宇宙戦艦ヤマト的な?)宇宙船で出発するとすると、ワームホールみたいな仮想的なトンネルは置いておいて、宇宙船での生活はどのようになるのだろうか。食べ物はどうやって調達するのか。どうやって水や酸素を製造するのか。宇宙船の燃料は何か。などなど。これらの問題に対して現在のありえる解決策を理由とともに解説している。
本書を読むとかなり課題が多く、宇宙旅行は今世紀末、移住はあと1000年くらい先だろうか。
Posted by ブクログ
面白い。
ミチオカク氏得意の未来に関する推察の本それも壮大に宇宙の終わりのさらに先まで人類がどうなるかを書いている。
ただ著者が理論物理学者なので単なる空想物語ではなくある程度最新の理論と証拠に基づいている。
Posted by ブクログ
タイトル通りなんですが、人類がいかにして地球を出て、他の惑星に到達し、そこでどのように生き残るのか、という話をわかりやすくまとめた本。ロケット工学、テラフォーミング、人体改造、天文学、AI、量子論、超ひも理論といった20世紀の技術工学から最先端の理論物理学まで、かなり広域な科学と技術の話を数式やややこしいデータをいっさい使わずにだれにでもわかるように1冊につめこんでいます。
ぼくの好きなマンガの1つに「銃夢 Last Order」(さいきんハリウッドでヒットした「アリータ:バトルエンジェル」の原作)がありまして。その作品世界は1999年に地球に巨大隕石が衝突し、いったん人類が滅亡しかけます。生き残ったわずかな人類の中から強力なリーダーシップで文明を再興し、ひたすら宇宙進出を目指すアーサーという独裁者が登場します。彼は治安や福祉といった社会の安定を犠牲にしてでも宇宙エレベータの建設を最優先し、反対派も強硬に弾圧したことで命を狙われます。「なぜそこまでして宇宙を目指すのか? まずは地球を発展させてからでいいのでは?」という問いかけに対してアーサーが「宇宙に行くのは夢や憧れじゃない、人類のサバイバルにとって必要なんだ!」って熱弁を振るう超カッコいいシーンがあり、「人類、宇宙に住む」でもそういう話がされています。ぼくも宇宙進出は民主主義よりも大事だと思います。われわれは宇宙に行かなきゃいけないんです。
なんか仕事に役立つ知識が得られるかと言われるとわかんないけど、時間のある時でもお読みいただければ、このつぎに夜空を見上げた時にいままでとちがった見方ができるんではないかと。そういうのってステキやん……。
Posted by ブクログ
地球が壊滅的な打撃を受けて住むことができなくなった人類がどこへ向かうのか、人類の未来図を描いた本。近未来の月や火星への移住から太陽系外への進出、最後は人体の改造や強化による恒星間移動までの未来を予測する。
現代物理、宇宙開発の最新知識を動員して考察されていて興味深く読めた。
ただ著者の描く未来が数十年から万単位(更に先も)を想定しており、読み進めるほどに現実感が無くなり、SFの世界を紹介されているようで、話は面白いけれどそういう想像の世界は物理学者でなくても書けそうな気がした。
この本の後半部分がいま一つ興味が持てなかったのは、果たして数万年先も人類は存続するのだろうか?という自分自身の素朴な疑問があったからかもしれない。