斉藤隆央のレビュー一覧
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「自然界のすべてを見わたして、何より大きな謎をふたつ挙げるとしたら、心と宇宙だ」という宣言から始まる。著者のミチオ・カクは「宇宙」の方の専門家だが、この本は「心」の方に焦点を当てた本。最初の方に、マーヴィン・ミンスキー、スティーブン。ピンカー、マイケル・ザガニカ、V. S. ラマチャンドラン、デイビッド・イーグルマン、デイビッド・チャーマーズ、ジュリオ・トノーニ、ジャコモ・リゾラッティ、ダニエル・デネット、などの名前がどんどん出てくるので、彼らが追求している「意識」や「自由意志」などについて脳神経学をもとに論じていくのかなと期待をしながら読むと、ちょっと違う。
心の動きがMRIで読める(本当にある程度は読めるようになる)や、テレパシーや脳のリバースエンジニアリングなど、どちらかというとレイ・カーツワイルのようなシンギュラリティやフューチャリストの色の方が強い。
確かにナノテクノロジーとMRIなどのセンサーテクノロジー、あとはコンピューティングパワーの累乗的進化によって、これまでとは違う形で心はある意味で要素分解されていく方向では解明されていくのだろうなと思っている。それが、不老不死や、記憶の永遠の保存などにつながるかというと別物のような気がしている。
ニューヨーク・タイムス1位のベストセラーらしいが、こういうのをニューヨーカーはこぞって読むのだろうか。面白くないわけではないが、期待と最初の入りがよかった分、ちょっと期待外れだった。
謝辞に出てくる科学者のリストが圧巻。 -
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300人以上にインタビューした最先端の研究に基づいているので、あくまで予測であるとはいえ、結構説得力がある。技術的な話が長く続くのは退屈でもあったが、7章以降の社会面への影響の考察が興味深かった。文明のランクを、惑星規模、恒星規模、銀河規模でタイプ分けしているのはぶったまげたが、その指標として、エネルギー量、情報量、エントロピーといった候補をあげているのは議論としておもしろかった。
スター・トレックや禁断の惑星などのSF系の映画がたくさん登場する。また、歴史や物理学を学ぶことの意義を改めた。さらには生物学も有用だろう。
今までムーアの法則が成り立っていた理由のひとつは、シリコンウエハーに照射する紫外線の波長をどんどん短くすることができたから。この小型化は、原子のサイズに近づくに従って、限界を迎えるため、2020年頃にムーアの法則は成り立たなくなる。
イスラム文明が凋落を始めたのは、イスラム学者が知識とは宗教の知識だけを意味すると解釈してイスラムの教えや解釈、イスラムの法や慣習の議論に時間を費やし、科学を研究しなくなったため。
19世紀初頭、蒸気エネルギーと産業革命が生んだ富の余剰によってロンドン証券取引所の機関車株がバブルをまねき、1850年の恐慌を引き起こした。実際の鉄道敷設の全盛期は、1880〜1890年代だった。20世紀初頭には自動車株のバブルが起きて、1929年の世界恐慌を引き起こした。アメリカやヨーロッパで電化や道路舗装が進んだのは、1950〜1960年代だった。情報革命の全盛は、これから訪れる。
人工知能は、パターン認識と常識という障害があるため、この2つの能力を必要とする仕事は未来も残る。仲介業者、窓口、経理担当などは仕事を追われるが、芸術・芸能、リーダーシップ、分析、科学などの創造的な資質を必要とする仕事は残るだろう。これまでの商品資本主義は、知能資本主義に取って代わる(レスター・サロー「資本主義の未来」)。 -
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ミチオ・カク 氏自身が著名なサイエンティスト(リーマン予想で有名になった「超ひも理論」)だけあって、事実に基づいた未来予想が面白い。各分野の著名な専門家へのインタビュー・ディスカッションを基に100年を「近未来」「世紀の半ば」「遠い未来」と三区分に分けてまとめあげられている。
「100年後はどうなっているか?」の予想というより「今の技術だとここまでは出来そう」という線形に近い。だからこそワクワクさせられる。
各章、分野の興味はあるだろうが、個人的には「コンピュータの未来」「ナノテクノロジー――無から万物?」「人類の未来――惑星文明」あたりがおすすめ。
政治経済系の未来予想はネガティブ過ぎてゲンナリさせられるものが多いが、こちらはリアリスティックかつポジティブ。未来予測はこうあるべきだろう。 -
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2100年までの未来の予測の本である。次の項目を近未来、世紀の半ば、遠い未来の3つに分けて説明している。予測しているのは理論物理学者である。予測の内容は多くの科学者のインタビューに基づいている為、単なる夢物語りではない。
1.コンピュータの未来
2.人工知能の未来
3.医療の未来
4.ナノテクノロジー
5.エネルギーの未来
6.宇宙旅行の未来
7.富の未来
450ページ以上あり、かなり多くの内容を網羅している。SF映画を引用して説明されている箇所も多く興味を持って読める。ターミネーター2に出てくる形を変えるロボットの実現方法もナノテクノロジーの部分で触れられている。気になるエネルギーは最終的に核融合と太陽、再生可能資源から供給される。
これらの予測に続いて、2100以降については人類の未来の文明をエネルギーの消費量でランク付けして説明している。それには以下の3つがある。
タイプ1.惑星規模の文明で、一つの惑星に降り注ぐ恒星のエネルギーを消費する。
タイプ2.恒星規模の文明で、一つの恒星の全エネルギーを消費する。
タイプ3.銀河系規模の文明で、数十億個の恒星のエネルギーを消費する。
タイプ3はスターウォーズの世界だ。
そして、最後は2100年のある日を描写している。SF映画のようにロボットに囲まれ、情報にはコンタクトレンズを通してアクセスしている。意外なのはその世界の多くの都市が水没していることである。登場人物は水害から都市を守る仕事をしているのだ。
地球温暖化については「5.エネルギーの未来」で解決方法が紹介されているが、技術的な問題ではなく、政治や経済の問題のようだ。筆者はこれを2100まで解決しないと考えているらしい。放射能汚染は技術的な問題でコントロール不能だが、温暖化は政治、経済的にコントロール不能なようだ。放射能汚染が数万年後に及ぼす影響を心配するより温暖化でそこまで人類がもつかを考えた方がよいかもしれない。 -
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すごい情報量、すごい想像力に圧倒され、物理をちゃんと勉強しながら読みました。これを理解するためには素粒子論が必要で、それを理解するには相対性理論が必要で、それを理解するにはニュートン力学が必要で…と、結局体系的に物理と数学の知識を持っていないと理解できないこの本の性質を尊重するために、読み終わるまでに2ヶ月近くかかりました。それでもM理論のところはほとんど理解できませんでした。
こんなに骨太な読書をしたのは久しぶり。知識一辺倒になるわけではなく、最新科学を論拠にしつつ夢を語ってくれる最終章はよく出来たSF小説みたいでした。フィクションじゃないと思わせてくれるところがこの本の醍醐味です。
まあ難しかった、難しかった。疲れたので科学系は一旦休憩します。 -
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ニューヨーク市立大学の理論物理学教授で、ひもの場の理論創始者の一人でもある著者による一冊。 高校時代から230万電子ボルトの量子化速度装置をガレージに作らせて欲しいとお母様に懇願、家のヒューズを全部ぶっ飛ばしながら達成してしまうギーク(失礼)ぶりを発揮。現在に至るw。
前半は究極の命題「機械は意識を持ちえるか」が展開される。アジモや産業機械(商業機械の稼動において日本は世界30%のシェアを誇る!)は残念ながらゴキブリ程度の知能しか持たないが、限界かのように見えるムーアの法則をローレンス・リヴァモア研究所で1,000平方mの敷地を占めて稼動するIBMのマシン”ブルー・ジーン”に適用した場合、どうだろう。
本書によれば、意識とは「環境を感知し、認識する」「自己認識する」「目標とプランを設定して未来に備える」の3つの機能を有することらしい。そんなスカイネットを髣髴させる展開のほか、食糧事情に対するアプローチ、細菌戦がもたらす緊張状態、プログラムできる原子組織”catom”の存在など、正直エアバックに搭載されているナノテクノロジーすら理解出来ていなかった自分には、まだ見ぬ世界が、ここまで自分の将来に登場してこようと、すでに扉を押しているとは夢にも思わなかった。
海外で博士号を取られた方と、Ph.Dって称号は何でなんだろうね、なんて話をしたことがあったが、本書を読んで納得。哲学なき科学はナイフでしかないからだろう。そんなリヴィン・オン・ジ・エッジ感がヒリヒリ得られる一冊。 -
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iPHONE・アンドロイドスマホの爆発的な普及により、世界の企業地図が大きく変動しているいま、テクノロジーの未来をどう見ているのか、興味があり「2100年の未来」を見てみたくなった。著者も日本人のようだし、超紐理論の科学者みたいだし。
コンピューターはノートになり、スマホになり携帯可能になってきた。インターネットを常に閲覧できるようになった。今後はコンタクトレンズにすべての機能が入る。勿論音声対応で入力もハンズフリー。また超小型MRI帽子をかぶり、脳波で機械を操作できるようになる。ロボットはあらゆるところに導入され単純労働から人間は開放される。しかし、画像認識や常識判断は相変わらず苦手で人間を超えることはできない。遺伝子治療は医療を進歩させる。遺伝子操作で老化を止めたり、デザイナーチャイルドを創造したり、新しい生き物を創造することも可能になる。まるで神の領域に達したようだ。ナノテクは分子・原子レベルになり、量子コンピューターが完成する。
自己構築型のマイクロキューブCatomが何にでも形や機能を変えることができる。新商品を買わなくても、現在の機能から新しい機能へプログラムをダウンロードするだけで変形するスマートCatomだ。エネルギーや宇宙探査などは意外と常識的だ。社会体制の未来はハードの商品資本主義からソフトの知能資本主義へ大きく舵を切る。優秀なソフトウエア人材を育成した国が勝利を収める。今世紀に生きる我々は人類史上最もエキサイティングな時代に生きている。惑星文明Ⅰにたどり着けるか、その前に朽ち果てるか、大きな岐路にある。
以下は、メモ。
1.コンピューター
インターネットの普及・無線通信の高速化でユビキタス世界が実現した。この先、コンタクトレンズサイズの通信端末により、目の前の物を見るだけでインターネットの情報を取得することができる。MRIの小型化により帽子のようなものをかぶるだけで脳のどの部分が活動しているのかがリアルタイムで分かるようになり、思っただけで、外部の機械を動かすことができる。正にテレキネシスだ!スマホはテレパシー、ARはテレポーテーション。超能力が科学の力で現実のものになる。
ムーアの法則によりコンピューターは進化してきたが、今世紀半ばでムーアの法則の終焉が来る。トランジスタの小型化が原子サイズになるためだ。コンピューターは全てのものに埋め込まれ表から姿を消す。
2.人工知能
ロボットが人間より賢くなることは今世紀中はないだろう。人間との融合。
3.医療
ゲノム解読が10万円になり遺伝子に合ったゲノム治療が普通に行われる。幹細胞による臓器再生。老化の克服。遺伝子操作でデザイナーチャイルド、マイティーマウス遺伝子(筋肉2倍)など新しい体を作り上げる。
4.ナノテクノロジー
分子サイズの機械。量子コンピューター。ターミネーター2のような変形金属catom。何にでも変形できるレプリケーター。
5.エネルギー
最終的には核融合エネルギー。宇宙太陽光発電。
6.宇宙旅行
宇宙観光。宇宙エレベーター。火星基地。恒星間探査機(太陽帆・核融合ラムジェット・反物質ロケット)
7.富の未来
世界は商品資本主義から知能資本主義へ。人材の教育が必要。
8.人類の未来
惑星文明タイプⅠ:太陽から地球に降り注ぐ光=10の17乗ワットのエネルギー消費。現在の人類はタイプ0.7、もうすぐタイプⅠの瀬戸際。
惑星文明タイプⅡ:太陽の全エネルギー=10の27乗ワットを消費。『スタートレック」の惑星連邦のレベル
惑星文明タイプⅢ:銀河規模の数十億個の恒星エネルギー=10の37乗ワットを消費。「スター・ウオーズ」の帝国。 -
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西暦2100年、科学は限りなく神に接近する。
考えられないほどのスピードで進歩を続ける人間社会だが、だからこそ最後に記されたマハトマ・ガンジーの名言が心に残る一冊である。
その名言とは・・・
「7つの社会的罪 〈Seven Social Sins〉」
1.理念なき政治 〈Politics without Principles〉
2.労働なき富 〈Wealth without Work〉
3.良心なき快楽 〈Pleasure without Conscience〉
4.人格なき学識 〈Knowledge without Character〉
5.道徳なき商売 〈Commerece without Morality〉
6.人間性なき科学 〈Science without Humanity〉
7.献身なき信仰 〈Worship without Sacrifice〉
幾ら科学が進歩しようが、このポイントを押さえておかないと、時代の移行に取り残されるのだろう!
そんなことを知らされた一冊である。