中野京子のレビュー一覧
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中野京子さんの、今まで新聞や雑誌に寄稿したエッセーをまとめたもの。
第一章が美術関連。第二章が身辺雑記。第三章が書評など、本について。
第一章で取り上げた画家は、レーピン、ルーベンス、モネ、アルチンボルト、ターナー、ベラスケスなど。
「絵画のタイトルを画家が決めるようになったのは近代になってから」という記述が興味深かった。
ルネサンスなど、昔の時代では、特権階級からの受注が主で、内容もタイトルも決まっていた。
それに対し、近代ではモンドリアンの「ブロードウエイ・ブギウギ」などはタイトルの勝利、と述べる。納得。
このように、時代を経て、画家のあり方も、画風やテーマと共に大きく変わっていった。
宮廷画家や工房を切り盛りしていた頃と違い、19世紀末では、印象派のように、画家が一人で活動するようになった。
これがフリーランスの始まりだったのかな。
西洋音楽も宮廷音楽家から、古典派になるとベートーベンのように独立して仕事する人が増えてきた。
美術も音楽も、バロックから古典になると、大きくその立ち位置も変化していったんだろうな。
今まで、中野さんの本は美術解説本しか読んだことがなかったので、新鮮だった。
大学で語学や西洋文化史をかつて教えていたことがあったようで、授業や生徒たちとのクスッと笑ってしまうようなやり取りや、授業の具体的な内容、仕事で朗読することになり練習に苦労したこと等、また、日々の出来事なども語られており、中野さんの意外な一面も知れて面白かった。
最初の方は教鞭をとりながら翻訳書やオペラの本を出すも、初版止まりで全く売れなかったようだ。
しかし2007年の「怖い絵」第一弾で成功を収めたという。その後、ずっと感心を持っていたスペインのハプスブルク家について書いた一冊が、自分の中でのはじまりの一冊になった。これは絶対読んでみようと思った。
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Posted by ブクログ
「名画の謎」シリーズ。今回は「ギリシャ神話篇」。これでシリーズ読破となりました❗️
ギリシャ神話は、宮廷でも好まれ、時代を超えて多くの画家が描いたテーマ。
今回取り上げられた画家は、レンブラント、ルーベンス、ボッティチェリ、モロー、ベラスケス、カラヴァッジョ、ティツィアーノなど。
相変わらず中野さんの解説は分かりやすく面白い。
小難しい表現もほぼ使わず、巻末の解説で森村泰昌さんも言われているように、「下世話的なゴシップ」かのように、「野次馬的なノリ」で多々ツッコミを入れながら解説してくれるので、現代人の私たちも共感しやすいのだ。
ギリシャ神話に出てくる神々の人物相関図がまた巻頭にカラーで掲載されており、その系譜がすぐに理解出来る。
ゼウス、アポロン、マルス、ヴィーナス、ヘルメス、バッカス、など、聞き覚えのある神たちの数々の逸話が、「物語絵話」として解説されていく。
読めば読むほど、本当に身勝手で自分本位な人たちが多い。突っ込みたくなるほどに。エピソードに事欠かない人たちばかりだ。
ゼウスは動物にも虫にも化けて様々な女性、男性にひに言い寄る好色爺だし、絶世の美女のヴィーナスは奔放でワイルドすぎるし、軍神マルスは人妻(ヴィーナス)に手を出して復讐まで企む嫌われ者だったようだし(美大受験時代、イケメンだなーと思ってよく石膏像をデッサンしてたのに・・・)、ヘルメス(これもまた石膏デッサンをよくしたなぁ)も泥棒と嘘つきの神でもあったようだ。
神同士が色んなところで浮気して、騙しあって、復讐もしっかりする。
神聖なイメージがあったのに、実情はなんだかスキャンダラスな人たちでした。
そして、神の数が少なかったため、兄妹と結婚することも多く、近親相姦も多かったようだ。
ナルシスの言葉の由来になった人物や、オペラなどでよく取り上げられるオルフェウス(ギリシャ神話は、絵画化とオペラ化、どちらも多いのですね)、ピグマリオン効果なる言葉の語源となった物語、など、少しかじったことある程度だったエピソードもたくさん載っており、勉強になった。
また中野さんの突っ込み風のコメントが毎度面白い。
「でも仕方ない。男が勝手なのと同じくらい、女も十分勝手なのです」
「(クピドについて)まさにキューピーちゃん体型で愛らしいが、この子の矢の怖さは誰もが承知だ。おまけに目隠しして、炎の燃えた矢をつがえているのだから、いつも以上に危険極まりない」などなど。
ギリシャ神話の神々は、世界中に名前が知られていたり、今でも普遍的に使われる言い回しや言葉などの語源となったものが多く、それぞれのエピソードを知ると、そうなんだ!と新たな発見につながることが多く、面白い。
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中野京子さんの「名画の謎」シリーズ。
旧約、新約聖書をめぐる神話の数々をモチーフとした絵画をまとめた一冊。
宗教画と聞くと、とっつきにくいイメージを多くの人が持っていると思う。絵画は風景画や、印象派の時代が好きな私も、ちょっと宗教画は敷居が高く感じる。
だけど、この本はそんな人たちにもとても分かりやすく書かれている。
旧約聖書、新約聖書の違いから、そのメイン登場人物や主な役割、など、巻頭で人物相関図もカラーで掲載されており、ビジュアルでまずすぐにその全体像が理解できる作りになっている。
旧約聖書ではアダムとイブ、アブラハム(この人はなかなか食えない人物である)、サムソンとデリラなど。
新約聖書ではイエスキリストとその周辺人物。
バベルの塔、受胎告知、キリストの洗礼、最後の晩餐、ユダの接吻、聖母被昇天、最後の審判、など、聖書の歴史の流れに沿った有名シーンの絵画が20作品掲載されている。
ブリューゲル、レンブラント、ドラクロワ、ルーベンス、ボス、ダヴィンチ、カラヴァッジョ、デューラー…など、1300年代から1800年代まで、描かれた時代自体は前後しながら行き来していく。
宗教画というのは、時代を越えて書き継がれて来た重要なテーマなんだな、ということがよく分かる。
一つ一つの神話のエピソードも、中野さんが端的に分かりやすく、現代風にツッコミを入れてくれながら解説してくれているので、その流れが頭にすんなり入ったし、面白かった。
ルーブルやウフィッツィ美術館で小難しい絵を素通りしてた過去の自分がもどかしい…。この本を読んでから行けばよかったな。
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11月ラストの一冊はこちら。
おなじみ、中野京子さんのアートミステリーブック。
「名画の謎シリーズ」より、第3弾。
中野京子さんの本は、アートガイドのようで、何だか西洋美術史ミステリーのような、ワクワクさせる味わいもあるのが良いよね。
取り上げるアート作品の解説だけでなく、それが描かれた国やヨーロッパの当時の背景など、名画を通して神話や世界史も勉強できるという魅力の詰まった一冊。
スーラの「グランドジャット島の日曜日の午後」、フェルメール「恋文」、エルグレコ「ラオコーン」、ブリューゲルの「死の勝利」など、国、時代を行き来して、17作品を紹介している。
フェルメールの章での、オランダ画家のことに関しての記述が興味深かった。
17世紀のオランダ黄金時代。オランダでは中産階級の人々が狭い部屋に飾るために絵を買い求めた。
そのためにオランダの絵は、フェルメールのように小さい作品が多かったらしい。
まだ、その当時のオランダ画家は兼業が多かったらしく、フェルメールは画商も務めた。
そのためにフェルメールの作品数が非常に少なかったとも言われる。
また、オランダは「耳の人」でなく「眼の人」という表現もなるほど、と思った。
確かにオランダは思いつく作曲家がいない。でも、画家は、ゴッホ、モンドリアン、レンブラント、など沢山思いつく。
逆に、ドイツ人は「耳の人」らしい。
確かにドイツには3大Bのバッハ、ベートーヴェン、ブラームスがいる。
でも、有名画家は少なく、未だデューラーがその座を欲しいままにしているらしい。
巻末の宮部みゆきさんによる解説も面白かった!
確かに教科書では冷遇されている画家も、中野さんの手にかかれば興味が湧いてくるマジックにかかってしまう。
名画の謎シリーズ、読破してみよう。
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成功した画家達は最後に何を描いたのか。
画家達が人生の終わりにさしかかり、どのような心境の変化に至ったか。
絶頂期の作品と比較しながら、その画家の歴史を辿ってそれを紐解く一冊。
取り上げられている画家達は下記。
ルネサンスからはボッティチェリ、ラファエロ、ティツィアーノ、
北方ルネサンスからはブリューゲル、マニエリスムからはエルグレコ、
バロックからはルーベンス、ベラスケス、フェルメール、ヴァンタイク、
ロココからはホガース、ヴィジェ・ルブラン、新古典主義からはダヴィット、
ロマン主義からはゴヤ、ホガース、写実主義からはミレー、そして後期印象派からはゴッホ。
画家それぞれ、貧困や、自らの性格が災いして苦労したり、ゴッホやフェルメールのように夭折してしまったり。ゴヤのように、人格に問題があってもしぶとく生き抜いて最後に新境地に挑戦したり。
また逆にルーベンスのように(中野さんは、ルーベンスのことを他の本でも「天からえこひいきされた人物」と述べている)仕事の才能にも家族にも恵まれ、幸せな人生を最後まで全うするものもいたり。
そしてその人生を経て、終盤でどんな絵を描いたのか。
その道筋が一人一人描かれていて、こういう視点も面白いな、と思った。
今回気になった画家はこちらの人格の良さそうな3人。
まずは、当時では珍しい女性画家のヴィジェ・ルブラン。
女性が芸術の分野で活躍するのには苦労したようだが、自らの美貌を武器に自画像を沢山描いて、その画力をプロモーションした。
晩年も家族に支えられ幸せに過ごしたという。
次に、ルネサンスの三大巨匠として知られるラファエロ。
先輩達の技術を吸収しようとする素直さと、優雅な物腰で、最後まで愛される画家だったという。
ラファエロ。ファンになりそうです。
そして、イギリスのホガース。
知らない画家でした。音楽と絵画が長らく不毛地帯だったイギリスにようやく現れた画家。
人物の個性を描き分ける観察力が武器。愛する妻と愛犬と、幸せに暮らした。
中野さんは本当に色んな切り口から西洋美術を語ってくれる人。
しかも、個人の感情を極力抑えて客観的に述べているところも、読みやすいポイント。
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中野京子さんの「名画の謎」シリーズの1つ。様々な名画の主題別対決。
パリのダンス場の昼と夜、女性画家の絵画による夫の姿、横たわる美女、…など。
文庫なのに、作品部分はカラーで掲載されているところも魅力。
以下、読書メモ。
・ルノワールとピカソが描いたパリのダンス場「ムーランドギャレット」
同じダンスホールだけど、ルノワールは昼の顔、ピカソは夜の顔を描いた。
ピカソが現れた時、既にルノワールの絵の名残は無かった。客層もすっかり変わっていた。
私は、やっぱりルノワールの作品の方が好みかな。
・映画を彩る絵
映画「シャッターアイランド」に登場したウィリアムブレイクの「ネブカドネザル」
「陽の当たる場所」で使われたミレイの「オフィーリア」。
こういう作品の取り上げ方も面白いと思った。
映画もどちらともまだ見たことないので、それぞれの絵画がどういう登場の仕方をするのかにも注目して見てみようと思います。
(ミレーとミレイはたまに混同してしまう)
・仲良し夫婦
ルーベンス「ルーベンスとイザベラ」(2枚目)
ルーベンスは、中野さん曰く、「天にえこひいきされた特別な人間」だったと言う。
容姿にも恵まれ、健康、最良の伴侶、語学力、そして経営能力にも長けていた。
妻のイザベラが病気で亡くなってからも、その4年後、53歳の頃、16歳の女性と結婚し、ヌードを描きまくり、5人の子供を産ませ、またもハッピーになったようだ。
対して、ルーベンスの30年後に誕生したレンブラントの人生は切ないものだった。
妻も子も次々と病死し、妻の死を機に絵画の注文が激減。しかも、財産管理にも失敗する。
しかしその後、その不遇な運命を振り払うように、傑作を生み出していくのだった。
・夫への思い
印象派の女流画家、ベルトモリゾは家族の絵を多く描いた。
その理由は、女性には描く対象が制限されていたから。
美術学校には入学できず、ヌードデッサンも禁じられ、更にベルトはブルジョワのため付き添いなしで外出できなかった。
だが、働く女性は軽蔑された時代だったが、モリゾの両親は鷹揚で、娘のやりたいようにやらせた。
夫のウジェーヌも仕事の邪魔をせず、彼女の理解者として、マネージャーとして奔走した。
しかし、モリゾは54歳でインフルエンザのため急逝。
(ワクチンや治療薬がこのときあれば・・・)
私は、このモリゾという女性にすごく好感を持っている。
女性は圧倒的に不利とされた時代に、好きな絵を続けて、それを仕事にした。絵にも優しさが溢れてるし、印象派の仲間達にも溶け込んでいたんだろうなぁと思う。
その30年後。タマラ・ド・レンピッカが誕生する。
彼女も女流画家。唯一無二の個性を放った数々の肖像画で人々を魅了した。
そして、情熱的で、美しいものが好きだった。
ある日パーティーで見かけた弁護士のポーランド青年に一目惚れして、猛アタックして結婚。
だが、ロシア革命をきっかけに地下運動をしていた夫が逮捕され、パリへ亡命。
たちまち一文無しになり、そこでタマラの絵の才能が開花。
上流階級の人気画家となり、活躍するも、次第に美しい相手(男性、女性問わず)と次々に浮気をするようになり、夫から離婚を切り出される(夫も浮気したらしい。やれやれ)。「ある男の肖像」(3枚目)はその頃の一枚。
・ニューヨークの街
モンドリアンはオランダに生まれ、その後、転々とする。パリ、ロンドン、そしてニューヨークへ。
NYをすっかり気に入ったモンドリアンは、この街に永住しようとも考える程。NYでの生まれて初めての個展は成功。
そしてディズニー映画とナイトクラブでの踊りに夢中になる。
モンドリアンは若いころからずっとダンスが趣味だった。
70歳を越えたモンドリアンが驚くほど若い感性で書いたのが「ブロードウェイブギウギ」(4枚目)。
これまで線を黒のみで描いていた彼が、明るい黄色を使い、赤と青をリズミカルに置いている。
「ナイトホークス」(5枚目)を描いたエドワードホッパーは、ニューヨーク近郊に生まれた画家。
抽象画は肌に合わず、リアルなタッチで都会の孤独や不安を描き続けた。アメリカで根強い人気の画家。
同じ街なのに、画家によって表現はこんなにも違う。しかも、一方は抽象。
中野京子さんの美術本は面白い。
知識は勿論、作品や作者に対するツッコミ的なコメントも秀逸。
「怖い絵」シリーズ始め、全部読破してみたいなと思っています。
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Posted by ブクログ
少し前に中野京子さんの『残酷な王と悲しみの王妃』を読んで、面白かったけど頭の中がこんがらがってしまった。
16世紀、17世紀のヨーロッパは国同士で政略結婚していて、王家と王家が親戚になっている。しかも同じような名前が連なり、ますます混乱する。高校生が世界史を避けたくなるのが、わかるような気がした。
本書はフランス、ブルボン王朝にスポットを当てていたので比較的わかりやすかった。
一つの時代を象徴する一枚の絵から物語を展開させるという掴みどころは良かった。
ルイ14世の時代はルイ14世その人、ルイ15世の時代はポンパドゥール伯爵夫人、そしてルイ16世の時代は当然マリー・アントワネット…と思ったら、意外にベンジャミン・フランクリンでした。
血統を重視しているようで、アントワネットはハプスブルク家のほうに書かれているようです。そうするとハプスブルク家のほうも読まなくちゃ。
ブルボン王朝の流れは概ね把握できたものの、フランス革命後の政局は二転三転する流れは、やはりわかりにくい。もう少し個人にスポットを当てた書物を読んで、しつこく勉強するしかなさそうだ。 -
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勉強になる
何しろ医者たちがこぞって(水中で毒素が体内に侵入すると主張)、誰が年に数回程度しか風呂に入らない。おまけに下着の洗濯の回数も極端に少なかったので、浴びるほど香水をふりかけねば体臭を消せない
先代からの赤字に加えてアメリカ独立戦争援助などで資金繰りに悩んだルイ16世が、特権階級への課税を目論んで頓挫したのは、貴族達が頑強に反対したためだ。それどころか彼らはこれをきっかけに逆襲し、王権を制限すべく三部会の召集を要請、16世に認めさせた。ところがここから案に相違して、貴族は主導権をブルジョワジーに奪われてしまう。
こうして貴族の反抗から出発した小さな雪だるまが、坂を転がるにつれ大ブルジョワジーに飲み込まれ、そこへ法律家や商人、自由業者といった小ブルジョワジーが加勢し、ついには凶作に飢えた庶民や農民までもが一緒くたになって膨れ上がり、雪崩と化して王政を葬り去ったのだ。 -
Posted by ブクログ
展覧会に足を運ぶのは好きだが、1枚の絵に対してこんなに時間をかけて観たのは初めてだ。
どの作品も背景知識を知ってから観ると違った印象を持てて面白かった。
2017年の「怖い絵展」には行ったが数枚しか記憶にないので、先に本を知っていたらよかったとつくづく思う。
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「特に伝えたかったのは、これまで恐怖と全く無縁と思われていた作品が、思いもよらない怖さを忍ばせているという驚きと知的興奮である」。絵の背景にある歴史を理解してこそ浮き彫りになる暗部。絵画の新しい楽しみ方を提案して大ヒットした「怖い絵」シリーズの原点が、満を持しての文庫化。ドガの『エトワール』、ラ・トゥールの『いかさま師』など全22作の魅力。