橘明美のレビュー一覧

  • 文明交錯

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    歴史改変小説。
    冒頭で予期せず『ヴィンランド・サガ』のネタバレを喰らったが、楽しく読めた。今作の白眉は「太陽神の九十五か条の提題」かと思うが、特にキリスト教世界を糾弾したいといかではなく、淡々と異なる文明からみた「違和感」を指摘している温度感なのが印象に残った。
    歴史は変わっても各国が宗教観や領地を巡って争うのは変わらないし、史実とは異なる運命を辿ったアタワルパの死因が、かなり人間的な欲求によるもので、その良くない普遍性も淡々と描いてるのも印象的だった。

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    2026年09月13日
  • 奴隷のしつけ方

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    興味深い内容だった。最後の解説にハッとさせられる部分があった。
    また、奴隷のマネジメント論ではあったが、これって行き過ぎではあるものの人間の本質や人間社会という点では、ビジネス観点のマネジメントにも一部通ずるところはあるよな…と思ったりした。
    個人的には古代ローマや初期のキリスト教(抑圧された民のための宗教であること)に関する解像度が低かかったので、知識としてインプットできて良かった。
    奴隷貿易以前にこれほどまでに大規模な奴隷制社会があったことを知らなかったので驚きだった。

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    2026年09月12日
  • 奴隷のしつけ方

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    ネタバレ

    ローマの奴隷に対する扱いが寛容なり残虐なり違いはあるもののの、奴隷と自由人には大きな隔たりがあり、奴隷は単なる資産扱いしかされない。暴力を振るわれても法律上問題ない。子供を産んでも売られる時もある。真実を話さないから拷問してもよいとされる。高潔な行いをした奴隷は解放されることもあるが、逆に言えば奴隷は道徳的価値をもたないと思われているからこそ民衆は面白がり褒美に解放しろと囃し立てるわけだ。解放奴隷のトルマリキオは著者に語る。「あなたもよくご存じでしょうが、ローマ人はみんな自己顕示のために奴隷を買うんですーわたしら解放奴隷だけじゃありません。誰もができるだけ多くの奴隷を買おうとしますが、それは金儲けのためなんかじゃない。自分がどれほど金持ちで大物かを示すためです」。キリスト教徒も同じく、ローマと人と変わらず奴隷の扱いは同じようなものだったそうだ。イエスは奴隷について述べなかったから、その奴隷文化は異教徒でも特に変わることはなかった。奴隷は自由人に従順で、よく働き、奴隷という立場を弁えて生きる方が扱いやすい。そして、そうした人間に仕立て上げる方法をあたかも著者は善いことかのように語っている。奴隷と自由人の関係はそれが当然で、それが常識だった。五賢帝のような安定したローマの時代でもこの身分制度はあり、その社会の常識の中で、他人の人間性を奪うこと、つまり奴隷制度は正当なものとして受け入れられていた。奴隷制度は必要不可欠でもないのに、奴隷が必要な社会を維持し続けたのは興味深い。

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    2026年08月29日
  • 文明交錯

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    鉄、銃、馬、病原菌。これらがすでにインカの人々の手に渡っていたら? 史実とは逆に、インカ帝国がスペインを征服するという設定の歴史改変小説。

    「アタワルパがスペインへ行って征服する」という筋書きを決め、あとは自由に想像する手もあったはず。しかし本作は、膨大な資料をもとに実在の人物をチェスの駒のように配置し、歴史を綿密にシミュレーションして、4年をかけて書かれたそうだ。ここまで作り込んだからこそ、まるで本当にあった歴史を追体験するかのような物語になったのだと思う。特に、宗教観の対立をめぐる人々の心の動きが興味深かった。

    キリスト教会の前に貼られた、
    『太陽神の九十五か条の提題』は、ルターの『九十五か条の論題』をインカ側から反転させたもの。

    「太陽神は嫉妬せず、民を選ばず、少数を救ってその他を闇に葬るようなことをせず、地上の全ての人間を恵の光で照らす」

    選民思想はなく、すべての人が平等に救われ、死によってすべての義務から解放される。当時、贖宥を得るために財産を削っていた市井の人々には、ルターとはまた違う衝撃を与えたのではないか。そんなことを想像してしまう。

    そのルターが、未知の宗教を何でも自分の知っているキリスト教の枠組みに当てはめようとする姿も印象的だった。自分の知っている世界を基準にしか未知のものを理解できないという姿は、文明と文明が出会ったときに起こる「異文化理解」の難しさそのものにも見えた。

    インカの人々、メキシコの人々、ヨーロッパの人々。
    この世界は、この先も戦争を繰り返したのだろうか。2026年現在には落ち着いているのだろうか。
    それぞれの宗教観や文化が混ざり合ってできた、もうひとつのヨーロッパに行ってみたいと思った。


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    2026年08月20日
  • その女アレックス

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    ネタバレ

    章が進むごとに物語の様相がガラリと変わり、え、これ本当にどういうこと??という感じでぐいぐい引き込まれる作品でした。

    アレックスの描かれ方が印象的。むごい仕打ちを受ける「哀れな誘拐被害者」から一転、憎しみすら見せず淡々と人を殺めていく「感情のない殺人ロボット」のような冷酷な顔を見せます。そのギャップと底知れぬ異質さがこの物語の魅力。

    アレックスが命を賭して仕掛けた罠と、真相に気づきながらも「真実」ではなく「正義」を選び、悪に鉄槌を下すカミーユの決断が良かった。

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    2026年08月12日
  • 邪悪なる大蛇

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    いったい何人殺すつもりなんだ、このおばさん!?
    度肝を抜かれながら読み進み、ラストはとんでもない人が、このおばさんに制裁を下す!
    スピード感あり、読みやすい本でした。それにしても、プロの殺し屋が認知症になったら…という設定。すごいことを考えるなぁ…。

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    2026年08月11日
  • 傷だらけのカミーユ

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    やはりこのシリーズらしさ全開の、容赦ない暴力シーンやカミーユの救いのなさが読みどころ。自分としては、カミーユ•ヴェルーヴェン警部シリーズで1番面白いのは「悲しみのイレーヌ」だと思っているので、星4です。どうかカミーユよ救われてくれ〜。

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    2026年08月05日
  • 悲しみのイレーヌ

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    情景描写がすっと入ってきて警部と一緒に事件を解決している感覚になれた。事件というより、これはプラグマティストに振り回されたただの作品。小説好きの警部はこの結末を望んでいたのではないのか。「悲しみ」はイレーヌに向けられたものではなく、読者が警部へ向けた悔恨と悲観だ。

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    2026年07月27日
  • 悲しみのイレーヌ

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    ネタバレ

    タイトルが悲しみだから、イレーヌが悲しむ何かが起こるのだろうと思って覚悟はしていたけれど、最後が…!!!

    読後、なかなか立ち直れませんでした。

    この主人公はこの後の人生どうやって過ごしていくんだろう。辛いはず。なのにまだ2冊続きがあるらしい。自暴自棄にならず、活躍するのだろうか。少しの希望を持って続きを読もう。

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    2026年07月12日
  • その女アレックス

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    ネタバレ

    大どんでん返しで楽しめました!最初閉じ込められてて、犯人が死んでからのこの子どうやって脱出すんねん、と思ってたらなるほど!そういう方法ね!と思いつかなかったですね。連続して殺人していく様も、無差別かなと思いきやちゃんと目的があってその人殺してたのねと。結末は然るべき人に制裁が与えられて良かった。アレックスは可哀想な子だったんですね。。
    気になる展開すぎてほぼ3日で読み終えました。

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    2026年06月22日
  • 傷だらけのカミーユ

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    「どん底に落ちることになっても、誰かのためになにかを犠牲にできるっていうのは、そういう誰かがいるっていうのは、悪くないと思う」

    カミーユの恋人が強盗に襲われ、瀕死の重症。カミーユは彼女との関係を隠し強盗の正体をひとり追う。
    カミーユ警部シリーズの完結編。

    一、二作目みたいなショッキングな描写は少ないが、一、二作目よりカミーユがやりたい放題でジャンやルイの気持ちを考えると胃が痛かった。

    そして、個人的には最終章(三日目)に入るまでなんとなく乗り切れなくて読むのしんど~~~でした……が!三日目で様々なことがわかってきて全部繋がってきもち~~~!!!でした!!
    救いがないしやはり誰にも共感できない話であったけれど……。

    さて、残すところはスピンオフだけかな?

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    2026年06月19日
  • わが母なるロージー

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    大好きなカミーユ警部シリーズのスピンオフ的な
    私にとってのハリーポッター的な位置にいるわ、このシリーズ

    今回もめっちゃ面白かった
    カミーユのユーモアが好き
    あと訳も読みやすくて好き!橘明美さん

    連続爆弾犯的な、最初ちょっと爆弾(映画のみ視聴)っぽいなと思いつつ、メッセージの持っていき方が爆弾よりだいぶ好みだった
    日本の社会派ミステリーとかも好きだけど、こういうキャラがすごくシビアに立ってる感じの海外ミステリー好きだな。日本だとキャラ売りってなるとどうしてもコミカルになるイメージ((知らんけど

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    2026年06月19日
  • その女アレックス

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    女性の誘拐事件がおこる。過去のある(イレーヌ)事件で第一線からは遠ざかっていたが捜査することになったカミーユ。

    前作とおなじく、物語が進むにつれて謎が明かされていくタイプなので物語を愉しむ人向け。推理目当てで読むと後出し感を感じざるおえないかも。

    善悪、真偽、道徳や倫理……この本を読んでいる時は何もかもわからなくなった。
    読み終わったが、この物語をまだ理解しきれていない。
    真実ではなく正義。どこまでも警察"小説"だ。

    お気に入りキャラはルイ。スーパーエレガント冷戦沈着ジェントル!
    だけど今作のMVPはアルマンだよ……!!!!!


    地獄でアレックスはc'est toi qui t'es fait baiser!つって唾吐いててくれ。

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    2026年06月17日
  • その女アレックス

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    ネタバレ

    3部作の2作目と知り、先に1作目を読んでから読みました。1作目の悲しみのイレーヌが辛すぎて何度も離脱しそうになったので、今回も残酷な描写が多そうで不安だったのですが、読後感は1作目よりも断然良かったです。
    真実より正義!!
    でも兄も同じように殺して欲しかった。元凶は兄なのだから。アレックスにはスイスに逃げて新しい人生を送って欲しかった。
    ミステリーとしては面白いかもしれないけど、アレックスの人生を思うと壮絶さに言葉が出ない。
    アルマンの株が上がった。

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    2026年06月04日
  • 邪悪なる大蛇

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    ミステリーって謳ってたけど、これホラーでしょ?
    凄腕の殺し屋が認知症になって無関係の人まで殺しちゃうとか。しかも、認知機能が衰えてるのを絶対に認めようとはしない姿勢とか。
    怖すぎて震えるんですけど。
    うちのばぁちゃん凄腕の殺し屋じゃなくてよかったよぉ。

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    2026年05月24日
  • 悲しみのイレーヌ

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    ネタバレ

    後半に行くまでなかなか進まなかったが、後半から怒涛の展開だった。少しかったるい気持ちになっていた表現なども意味がわかり、口をあけながら終えた。タイトル的にもそうなる気がしていたが。さて、二作目を読む。村上さんおすすめありがとう

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    2026年05月12日
  • その女アレックス

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    知人から勧められて手にした一冊。
    感想を書くにも、「スリリングで先の読めない展開だった。」以外のことを書くと全てネタバレになりそうになるくらい、後半に怒涛の展開が待っていた。
    外国人の名前が苦手で海外小説は読まず嫌いだったが、この作品はそれほど登場人物も多くないのでさほど気にならずに読めた。

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    2026年05月10日
  • 傷だらけのカミーユ

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    カミーユの親友の葬儀から物語は始まった。
    三部作完結編に相応しく、カミーユ・ヴェルーヴェン警部が三日間という時間の中、怒涛の展開で犯人を追い詰める。

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    2026年04月29日
  • その女アレックス

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    『その女、アレックス』というタイトル通り、アレックスが主人公かと思うのだけど、アレックスに対する気持ちが各章で変わっていった。中盤でかなり意外な展開になる。監禁された様子は読むのが苦しくなるくらい残酷すぎてきつかった。最初から最後までかなり残虐な描写が多い。アレックスが何を考えていたのか、どんな傷を負っていたのか、全く本人の口から語られることはないけれど、想像することは難しくない。

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    2026年04月27日
  • 悲しみのイレーヌ

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    ネタバレ

    『その女アレックス』が気になっていたところ、先に本作を読んだ方が良いと聞いて。やや装飾多めの文体で好みだな〜と思いながら読んでいたらそう来たか。タイトルと第二部が始まる位置から気付きたかった。それしても結末に救いがないよ〜。読者が第一部で追ってきたカミーユという人間の、どこまでが虚像でどこまでが本人なんだろう。

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    2026年04月23日