ディック・フランシスのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
かなりファンの間では評価は高いのだけど、個人的にはもうひとつ気に入らなかった作品である。
強い自殺願望(鬱?)を持つ秘密調査員が、上司の個人的な依頼を受けて、休暇を使って名馬盗難事件を捜査する話である。もちろん、事件は解決するし、その過程で主人公は生きる意欲を取り戻す。暗い話だなあという印象を受けるかもしれないが、確かに暗い感じがする。でも、最後はハッピーエンドなんだなと安心されると、安心するなよ、と言いたい。
わりあいいろんな意味でセレブを主人公にすることが多い作者の作品の中で、この「自殺願望」は異色である。自身も成功者である作者がどういう気分でこういう設定をし、書き進んだのかはよ -
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数あるフランシスの作品の中でも、もっとも設定に凝った作品ではないかと思う。
カナダを横断する鉄道の中で進行する、「オリエント急行殺人事件」を思わせるような、ある意味クラシックな舞台であること。
犯人は誰か、を操作するのではなく、犯人がなにをやろうとしているのかを探り、それを未然に防ぐことが探偵役の目的であること。
探偵役は自らの正体を隠していて、さらに列車の中ではイベントとして推理劇が行われていくという、トリッキーな仕掛けがあること。
その他にも、「ハムレット」を擬した逆トリックなど、目を見張る仕掛けに事欠かない。
正直、最初に読んだときにはその仕掛けに幻惑され、凝ってい -
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再読シリーズである。
今ひとつ印象が強くないのは、フランシスにはまったばかりで1日1冊ペースで既刊本を読んでいた頃に読んだからだろう。飛行機の話、というくらいの印象しかなかった。
再読して、思いがけないほど派手な話であることにびっくりした。最初の爆破事件、中盤の山場である迷子の飛行機を探すエピソード、そしてラストの見せ場。すごい。
傷心から心の閉ざしてしまった主人公が再生する物語、というのは、まあ、王道パターンだ。そしてこの小説は、絵に描いたようにそのパターンをなぞっている。ただし、その傷心の原因がわりあい(客観的には)それほど大きなことに見えないので(僕だけだろうか)、なんだか -
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競馬シリーズ…読みたいときは一気に読みたくなります。今回の主人公は、予期しない出来事からかつての故郷に一時的に帰ることになった外交官という設定。
いろいろな場面で機転が利き、頭をめぐらす主人公に、ちょっと出来すぎやしませんかー?とも思いますが、まあいいか(笑)。ともかく競馬シリーズは主人公のいい男っぷりを読みたいのです。
アメリカで知り合った引退した歌手夫婦の人生を楽しんでいる描写、短い時間で知り合ったケン・マクルアとの会話、ケンの母親と婚約者の親(先の歌手夫妻)のやや気まずくも滑稽な食事の場面といい、この本はかなり楽しかった。本当にいろいろな人間達を描いてくれて。
絶版ながら、原文のカセット -
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シッド・ハレー4度目の登場。読まないでいられません。
今回注目したのはチャールズ・ロランド卿。
この人は主人公シッドが最初に結婚した妻のお父さんで、退役した海軍将校で、ずっと主人公を友情で支えてくれている人です。
のはずなんですが。
なんですかね……あの人はあんなに……
……
ホモっぽかったでしたかねえ…。
シッドの恋人のマリーナと小さなフラットでシッドの留守を預かる場面は、まるで主人公がマリーナ(本命)と提督(二号)を二股かけた悪い男なのに、両者がそれを許している?……みたいに映ります…。何かの読みすぎ?
「大穴」でクサっているシッドを侮辱することで、逆に奮い立たせてくれてた鋼鉄の人も、 -
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再読中。
若手外交官のピーター・ダーウィンが主人公。
フランシスの競馬ミステリ・シリーズの30作目。
ピーターが日本での勤務を終え、次の赴任地の本国へ戻る途中、知り合ったクラブ歌手のヴィッキイ夫妻の窮地を助けたことから、娘の結婚式へ向かう夫妻を送っていくことになります。
行き先は偶然にもピーターが12歳までを過ごした土地。
娘の婚約者ケンは大きな動物病院の優秀な医師なのに、手術を施した馬が次々に死亡して信頼を失い、病院は火事で半焼という大変な危機に見舞われます。
友情から、調査に乗り出すピーター。
事件の鍵は彼自身の幼い頃の記憶の中に…!?
病院が舞台で緊迫したシーンの多い、事件性の高い