ディック・フランシスのレビュー一覧
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今作を最初に読んだのは大学生の頃。この「大穴」と「利腕」に登場する主人公、シッド・ハレーの生き様に痺れたものだった。
20年近くディック・フランシス作品から離れていたが、気づくとシッド・ハレーは2008年までに4作品に登場しているとの事。これはイカンと読み返す。
やはり面白い。何というか、隙の無い面白さだ。
ストーリーや語り口に無駄が無く、登場人物も非常に魅力的だ。
養父・上司・同僚・敵や情報提供者までもが生き生きと描かれている。
そしてこの主人公。類まれな実力と、拭い切れない劣等感を同時に抱える男。彼が戦うのは、社会的な悪党だけではない。己の劣等感や恐怖心とも対決していく。
ディック・フランシスの作品では、ほとんどの主人公が単発出演だ。しかしシッド・ハレーには次のステージが用意された。それが「利腕」である。過去に読み終えた作品なのに、わくわくしてしまう。
いろんなところで言い古された言葉だが、「競馬シリーズと言っても、ことさら競馬の知識は必要ありません」と強く言いたい。もっと多くの人に知ってもらいたい作品なのだ。タイトルも混同しやすいしねw -
Posted by ブクログ
かなりファンの間では評価は高いのだけど、個人的にはもうひとつ気に入らなかった作品である。
強い自殺願望(鬱?)を持つ秘密調査員が、上司の個人的な依頼を受けて、休暇を使って名馬盗難事件を捜査する話である。もちろん、事件は解決するし、その過程で主人公は生きる意欲を取り戻す。暗い話だなあという印象を受けるかもしれないが、確かに暗い感じがする。でも、最後はハッピーエンドなんだなと安心されると、安心するなよ、と言いたい。
わりあいいろんな意味でセレブを主人公にすることが多い作者の作品の中で、この「自殺願望」は異色である。自身も成功者である作者がどういう気分でこういう設定をし、書き進んだのかはよくわからないけど、(こういう言い方はどうかとも思うが)実に迫力があり説得力がある感じがする。
そういうドーンと暗い状態に主人公を置くからこそ、そこから(ある意味)はい上がることがドラマになるのだし、実際、さりげないラスト1センテンスに込められたものが大きくて、僕はこっそり涙ぐんだりしたのである。
ミステリとしては、意外なぐらいすっきりとしたハードボイルド風。ストーリーのすっきりさはむしろマーロウに近いかもしれない。登場人物に味わいがあって、つい読まされてしまう感じも近い。
評価が高い理由が素直に飲み込めた再読であった。 -
Posted by ブクログ
数あるフランシスの作品の中でも、もっとも設定に凝った作品ではないかと思う。
カナダを横断する鉄道の中で進行する、「オリエント急行殺人事件」を思わせるような、ある意味クラシックな舞台であること。
犯人は誰か、を操作するのではなく、犯人がなにをやろうとしているのかを探り、それを未然に防ぐことが探偵役の目的であること。
探偵役は自らの正体を隠していて、さらに列車の中ではイベントとして推理劇が行われていくという、トリッキーな仕掛けがあること。
その他にも、「ハムレット」を擬した逆トリックなど、目を見張る仕掛けに事欠かない。
正直、最初に読んだときにはその仕掛けに幻惑され、凝っている割にはどうもサスペンスに欠ける、なんて思ってやや不満であった。しかし、改めて読み直してみると、作者のこだわりが大きな効果を上げていることがよくわかる。再読の方がずっとおもしろかった。
主人公の恋の話がほほえましい。そして、声だけで登場する女性も、わくわくするほど魅力的だ。
例によって、主人公が大金持ちのスーパーマン、そして29歳の若さと言うところだけが、どうも納得しかねるのである。 -
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再読シリーズである。
今ひとつ印象が強くないのは、フランシスにはまったばかりで1日1冊ペースで既刊本を読んでいた頃に読んだからだろう。飛行機の話、というくらいの印象しかなかった。
再読して、思いがけないほど派手な話であることにびっくりした。最初の爆破事件、中盤の山場である迷子の飛行機を探すエピソード、そしてラストの見せ場。すごい。
傷心から心の閉ざしてしまった主人公が再生する物語、というのは、まあ、王道パターンだ。そしてこの小説は、絵に描いたようにそのパターンをなぞっている。ただし、その傷心の原因がわりあい(客観的には)それほど大きなことに見えないので(僕だけだろうか)、なんだか物足りない(いじわるかな)感じがする。
その割に、主人公のスーパーマンぶりはものすごいので、結局復活劇にもうひとつ共感できなくて、つまり「すごい人はやっぱりすごくて、途中いろいろあっても、最後はいいとこさらってくんだよね」って印象を持ってしまった。(それは僕は小市民でひがみっぽいからだろうか)
劇画的な派手さがすごくあるにもかかわらず、もうひとつ心にしみてこないのはそのあたりのような気がする。
が、純愛小説として読めば、なんだか心を締め付けられるようなところがたくさんある。主人公が、かわいいのだ。
実際に飛行機を操縦していた人にしか書けないのだろうな、と思う中盤のエピソード。主人公の思いにしっかりと共感できるのは、これが恋愛ドラマだからだ。正義のためならこうはいかないはず。
ただし、このエピソードで僕の涙腺が一番やばかったのは、裏方さん達の頑張りに主人公がちょっと触れた部分であるのだが。
それもまた、フランシスならではの味である。 -
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競馬シリーズ…読みたいときは一気に読みたくなります。今回の主人公は、予期しない出来事からかつての故郷に一時的に帰ることになった外交官という設定。
いろいろな場面で機転が利き、頭をめぐらす主人公に、ちょっと出来すぎやしませんかー?とも思いますが、まあいいか(笑)。ともかく競馬シリーズは主人公のいい男っぷりを読みたいのです。
アメリカで知り合った引退した歌手夫婦の人生を楽しんでいる描写、短い時間で知り合ったケン・マクルアとの会話、ケンの母親と婚約者の親(先の歌手夫妻)のやや気まずくも滑稽な食事の場面といい、この本はかなり楽しかった。本当にいろいろな人間達を描いてくれて。
絶版ながら、原文のカセットブックもあるそうです。聴きたいなあ。 -
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シッド・ハレー4度目の登場。読まないでいられません。
今回注目したのはチャールズ・ロランド卿。
この人は主人公シッドが最初に結婚した妻のお父さんで、退役した海軍将校で、ずっと主人公を友情で支えてくれている人です。
のはずなんですが。
なんですかね……あの人はあんなに……
……
ホモっぽかったでしたかねえ…。
シッドの恋人のマリーナと小さなフラットでシッドの留守を預かる場面は、まるで主人公がマリーナ(本命)と提督(二号)を二股かけた悪い男なのに、両者がそれを許している?……みたいに映ります…。何かの読みすぎ?
「大穴」でクサっているシッドを侮辱することで、逆に奮い立たせてくれてた鋼鉄の人も、年のせいで柔らかくなったってことでしょうか。
意図してないと思うのだけど、やっぱりフランシスの視点の移り変わりのせいでしょうか?
訳者さんは、わかってやってんのかなー。
「再起」というタイトルじゃなくてもよかったかな?
という感想で、星ひとつ減らしました。 -
Posted by ブクログ
再読中。
若手外交官のピーター・ダーウィンが主人公。
フランシスの競馬ミステリ・シリーズの30作目。
ピーターが日本での勤務を終え、次の赴任地の本国へ戻る途中、知り合ったクラブ歌手のヴィッキイ夫妻の窮地を助けたことから、娘の結婚式へ向かう夫妻を送っていくことになります。
行き先は偶然にもピーターが12歳までを過ごした土地。
娘の婚約者ケンは大きな動物病院の優秀な医師なのに、手術を施した馬が次々に死亡して信頼を失い、病院は火事で半焼という大変な危機に見舞われます。
友情から、調査に乗り出すピーター。
事件の鍵は彼自身の幼い頃の記憶の中に…!?
病院が舞台で緊迫したシーンの多い、事件性の高いミステリです。
知り合ったばかりの人たちのために尽力するメチャ良い奴〜!
彼が幼い頃を思い出しながら推理していくのが面白い趣向となっていますね。
巻末の赤木かん子氏のあとがきは、女性向けの紹介として一読の価値あり!