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Posted by ブクログ
高校生のころ読んで以来の再読。
主人公シッド・ハレーの名まえをかろうじて覚えている程度。
最近『利腕』を読んで前日譚の本書が気になった。
50年近く前の作品であるだけに現代との違いを強く意識しながら読んだ。
携帯電話のない時代、外へ出てしまったあとの連絡の取り方やオフィスにいても
回線が少なく電話をするのに回線の空きを待たなければいけないインフラ環境。
急ぎのレポートを社内で手渡しするだけのためにいる坊やなど、そのころすでに
生まれていた私から見ても、なにか戦前のストーリーのように思えて見えた。
現代の多くの人が感じている生きづらさの理由が我々の身体の態勢が環境変化のスピードについていけないからじゃないかと妙に納得してしまった。
そして、現代のミステリやアクションものを読みなれている小生としては、シッド・ハレーの反応がまどろっこしく、もっとスピーディに動けないのかと何度も思った。
しかし、考えてみると実際にトラブルにあったり暴力を振るわれたりしたときのリアクションはシッド・ハレーのレベルではないだろう。その意味では身近なヒーローが何度も恐怖におびえながら、それに打ち勝っていくリアルミステリとしての価値がシッド・ハレーのシリーズにはあるのだと思う。現代のアクション小説には失われている生身の人間の恐怖や怒りをリアルに展開した必読の一冊。
Posted by ブクログ
さぁディック・フランシスだ!
大好きな作家さんでハヤカワ文庫版で全巻持ってたんですよね
本当はブックリストを作りたかったんですが
うろ覚えの状態で3冊選ぶのはちょっと難しいので断念しました
そこでひとまず間違いなくベストの一冊のシッド・ハレー登場作『大穴』を読み直しました
やっぱりすごい面白かったです!
自分がディック・フランシスを読み始めたのは高校生の頃なんですがちょうどその頃競馬にどハマリしてまして(ん?)、もちろん小さい頃からミステリーも大好きで
こんな大好きな競馬+ミステリーって自分のために書かれたようなもんじゃん!と思い手に取ったんですが…自分のために書かれた物語でしたw
とっても面白い傑作ばかりなのでぜひとも色んな人に読んでもらいたいんですが
前提としてイギリスにおける競馬の立ち位置というか置かれている状況みたいなんをちゃんと理解してないと面白さ半減かもです
もちろんギャンブルでもあるんですが文化的な側面もあるんですよね
なので両方の理由で大きなお金が動くし、多種多様な人物が関わっているんですよね
お、そう考えると競馬界ってミステリーにびったりの舞台ですね
競馬界を知り尽くしたチャンピオンジョッキーがミステリーを書く
そりゃあ面白いわけだ
Posted by ブクログ
読んだことはなかったが、二文字の競馬ミステリの背文字は本屋さんでもお馴染みだった。本好き仲間が言うことには「へぇぇ、あれを一度も読んでないの? 一冊も?」
作者は2010年に亡くなってしまったけど息子さんが書き継ぐそうで。
もうそんなになるのか訃報は新聞で読んだが。
まぁ元気を出して!!ミステリは競馬だけでないし、最近は自転車も、宇宙船も、あれもこれも何処もかしこも殺人や詐欺や、誘拐で大騒ぎなのに。と言いながらも、元気づけのために読んでみた。
う~~ん、これはやはり初期作品のハードボイルド。でも読んでいって、いつの間にかフランシスさんの手の内に取り込まれた。
歴史と階級の英国、競馬界も礼儀正しい。でも裏には裏があって、賭け屋が群がるギャンブルの世界も見える。
面白かった。主人公シッド・ハレーに初めてお目にかかった。この元騎手は競馬シリーズに珍しく2作品に登場する愛すべき人物らしい。
彼はチャンピオンジョッキーで名の知れた障碍競馬の騎手だったが、落馬して左手が不自由になった。妻とはうまく行かないが義父とはお互いに心を許す仲、どうも義父が裏で糸を引いたらしく、探偵社に入る。やる気もなかったが、漏れ聞くと気に入った競馬場がどうもおかしい。人気が衰えたところに不動産屋が目をつけたようだ。
馬には走りやすい絶好のターフを持つ競馬場だ。彼はやる気が出た。
闇からピストル、裏にはきな臭い陰謀。怒りと競馬愛は彼を生き返らせた。
読後そんな煽り文句が出るくらい、当時の読者は沸いたのだろう。作者フランシスの略歴では華やかな騎手生活を送り、内情に最も詳しい、背景もいい。
競馬も馬も遠くからしか見たことのない世界だったが、騎手や厩舎の調教師、上流社会に住む馬主たちの息遣いが伝わってきた。
時代の波は少しずつこの偉大な、当時で言う「競馬スリラー」にも寄せてきているようにも思える。それでもただ一人主人公として二作目に登場するのシッド・ハラーに敬意を評して、「利腕」も読んでみよう。
Posted by ブクログ
私が初めてディック・フランシスの作品に触れた記念すべき一冊。
冒頭、腹を撃たれている主人公が目を覚ます場面からぐいぐい話に引き込まれ、寝る間も惜しんで最後まで貪り読んだ。
とにかく、主人公シッド・ハレーの内面の描写が秀逸なのである。
ストイックな不屈のヒーローではあるのだが、後ろ向きな感情の生々しい描写によって生身の人間以上の人間臭さを与えられている。
例えば、
競馬レース中の事故で失った左手の機能とチャンピオン騎手人生に対する執着や、人生への絶望・無気力。五体満足でない自分自身に対する恥辱の念。執拗に自分へ危害を加えようとする黒幕への恐怖…など。
周囲の人々との関わりの中で少しずつ魂の苦しみから解放され、深淵から這い上がり敵に立ち向かっていくハレーの姿に胸が熱くなった。
著者ディック・フランシス自身がハレーと同じく元障害競馬のチャンピオン騎手だったのだが、元々ミステリー作家が本業だったのではと思うほどの巧みな筆致とプロットに驚かされる。
後に米英の2大ミステリー賞を獲得することになる才能の片鱗をこの作品でも存分に味わえるので、競馬シリーズと聞いて敬遠している人にもぜひおすすめしたい。
Posted by ブクログ
とうとうディック・フランシスに手をつけてしまいました。絶対おもしろいはずだと判っていながら手を出し損ねていたシリーズ。初期作品でこの完成度。素晴しい。
あまり大きな声では言いにくいが、読み終えての第一の感想は、これって、天下御免のSM小説……?いや、シッドハーレーは確かにヒーローなんだけど、周囲は敵にしろ味方にしろ、全員「S」なんだもの。一番あなどれないのは一番味方のはずの義理の父上。たいがいハードボイルドのヒーローは酷い目にあうものだけど、味方にここまで虐げられるのも珍しいと思う。
あまたのミステリガイドで「滅法おもしろい競馬小説」と紹介しているオジサマ方に、そこんところを解説していただきたいものだ。
Posted by ブクログ
4―2 シッド・ハレー初登場。
元チャンピオンジョッキー。左手を失っている。
義理の父親との交流がいい。
別居中の妻との会話がいい。
知り合った顔にやけどの跡のある女事務員との交流がいい。
「「おわかりになったの」
うなづいた。「家具の置きぐあいでね…きてくれますか…」
「これでもまだお誘いになるの?」
「もちろん。何時にしまうんですか?」
「今夜は、六時頃」
「戻ってきます。下の入り口で待っています」
「いいわ」彼女が言った。「本当にそうおっしゃるのなら、ありがたくお供しますわ。今夜は何も用がありませんから」
そのなんでもない言葉に、長年の希望のない淋しさがむきだしに感じられた。なにも用がない、今晩も、どの晩も。そんなにひどい顔ではなかった。私が予想していたようなひどさではなかった、片目がなく義眼を入れている。ひどい火傷と顔面の骨折の跡があるが、プラスティック整形で損傷が相当程度治してある。それに遠い以前のできごとであった。傷跡は古い。治っていないのは心の傷である。
そう、私自身も経験のあることだ。」
二人は賭けをします。シッドはポケットに隠す癖のある左手を出して行動すること、ザナは顔を隠すのをやめること。
ラストにザナは言います。
「さよなら、ミスタ・ハレー。私を生まれ変わらせてくれて、本当にありがたく思っています。一生忘れませんわ」
推理よりも横軸の人間関係がディック・フランシスの最大の魅力です。
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