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Posted by ブクログ
ミステリーというよりも冒険小説。まさにその通りだと思う。主人公が犯罪者と戦う理由が、理不尽に妻を殺された従兄の精神を守るためというのも象徴的である。あるいは、冒険小説というよりもマンハントの物語と言いたくなるけど、敵の反撃に傷つきながらも決してあきらめない主人公の意志の力は、やはり冒険小説と呼ぶべきだろう。
主人公と行動を共にする友人夫妻が興味深い。心の中に野獣を飼っているとでもいいたくなるような男が、結婚することで何かを得、何かを失おうとしている姿は印象的だ。逆に結婚によって得たものを守ろうとしながら、それが男を縛っていることに気がついている女も複雑な色合いを見せている。独身者である主人公との対比を含めて、この3人の人間模様は事件捜査以上に読ませどころであり、何度もため息をついてしまった。
それ以外にも、オーストラリアという土地の観光案内的な要素もあるし、主人公の仕事である油絵についてのうんちくもあり、なかなか盛りだくさんで贅沢な小説だと思う。今回読み直すまではあまり強い印象を持っていなかったのだが、正直驚いてしまった。改めて「ハズレのないシリーズ」だと思った。
ひとつだけ不満があるとすれば、主人公自身がこの事件を通じて変わっていった印象がないことだ。例えば「利腕」のように、こみ上げてくるような感動がほしかったなあと思うのは、ないものねだりだろうか。
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