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Posted by ブクログ
かなりファンの間では評価は高いのだけど、個人的にはもうひとつ気に入らなかった作品である。
強い自殺願望(鬱?)を持つ秘密調査員が、上司の個人的な依頼を受けて、休暇を使って名馬盗難事件を捜査する話である。もちろん、事件は解決するし、その過程で主人公は生きる意欲を取り戻す。暗い話だなあという印象を受けるかもしれないが、確かに暗い感じがする。でも、最後はハッピーエンドなんだなと安心されると、安心するなよ、と言いたい。
わりあいいろんな意味でセレブを主人公にすることが多い作者の作品の中で、この「自殺願望」は異色である。自身も成功者である作者がどういう気分でこういう設定をし、書き進んだのかはよくわからないけど、(こういう言い方はどうかとも思うが)実に迫力があり説得力がある感じがする。
そういうドーンと暗い状態に主人公を置くからこそ、そこから(ある意味)はい上がることがドラマになるのだし、実際、さりげないラスト1センテンスに込められたものが大きくて、僕はこっそり涙ぐんだりしたのである。
ミステリとしては、意外なぐらいすっきりとしたハードボイルド風。ストーリーのすっきりさはむしろマーロウに近いかもしれない。登場人物に味わいがあって、つい読まされてしまう感じも近い。
評価が高い理由が素直に飲み込めた再読であった。