感情タグBEST3
Posted by ブクログ
キット・フィールディングを主人公とする連作の一冊目。
双子の妹に振りかかった苦難を固い意志で取り除いていくキット。
まだ若く、競馬騎手としても頂点にさしかかる頃で、エネルギッシュで存在感のある主人公のため、爽快感が強い作品。
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競馬シリーズ24作目。
普段、解説は軽く読み流していて
誰が書いているのかなんて気にしたことがないのだが、
大河ドラマのロケのために乗馬訓練をしたとあっては、
誰なのかと読み返した。
俳優児玉清。
アタック25の司会者でもあり、ミステリー好き、いや本好きとして有名な方だ。
川中島決戦の本番で落馬し、
馬や乗馬、騎手を描くディック・フランシスの偉大さがわかったということだった。
今回の主人公キットは障害競馬の騎手。
「ロミオとジュリエット」のジュリエットの双子の兄だ。
その妹夫婦が新聞に中傷記事が載ったせいで、
厩舎の経営が経済的危機に陥る。
盗聴器とか、ビデオ撮影とか、スタンガンとか新しいものがいろいろ出て来た。
馬を引き上げに来た馬主との対決や新聞社との争い、
もちろんレースそのものといろいろ見せ場はあったが、
個人的ヤマ場は、キットがナイフで脅されていた時に、
馬主の王女のロールスロイスが通りかかり、
開けられた後部ドアに転がりこんだところ。
キットのことがお気に入りとはいえ、
躊躇なくただの騎手のキットの危機を救う王女がかっこよすぎる。
王女の姪と買い物に出かけて、
お互いへの贈り物を別々に買って、
好みが同じだとわかった場面がかわいらしかった。
Posted by ブクログ
互いに何世紀もにわたって対立し、時には殺し合ったふたつの家が背景にある。まるで「ロミオとジュリエット」そのままに、両家の男女が憎しみを超えて愛し合うようになり、やがて結婚する。主人公は、「ロミオ」でも「ジュリエット」でもなく、ジュリエットの兄で騎手である。
かなり成功した騎手だ。名誉も名声も手に入れている。なんといっても王女の持ち馬に乗っているのだ。このあたりは、自身も「女王陛下の騎手」であった作者の経験が生かされているのだろう。なにせ、主人公であるキットは、あのシッド・ハレーをのぞけば唯一、2作に登場した人物なのだから。お気に入りのはずである。
成功した騎手であるということは、失うものもたくさんある。そういえば、先日再読した「度胸」も、いわば人為的な風評被害に騎手たちが襲われる話であった。今作も、当面の相手がマスコミであり、無責任な記事により危機に突き落とされるという点は似ている。ただし、被害を受けるのは主人公の妹夫婦だ。
だから、この物語は、妹夫婦の危機を救うために、悪意に満ちたマスコミと戦う物語なのである。まさに、白馬の騎士として主人公は戦う。ただし、最初に書いた家の対立と、マスコミの悪意の理由が物語を複雑にし、一種独特の陰影をこの物語に与えている。途中から、主人公にとって誰が敵なのかを見失いそうになるのである。
長い時間積みかなさった負の感情や、何人かいる悪役たちの憎らしさを和らげてくれるのは、王女との温かい交流と、ヒロインとの恋愛である。思想の馬主のように描かれている王女の素敵さは、この作品にとても優しい色合いを与えてくれる。でも個人的なことで言えば、それ以上に好きなのはヒロインとの恋愛物語の側面である。
ヒロインは、さっそうとしたキャリア・ウーマンとして登場する。ふたりがプレゼントを交換するシーンが、僕は大好きだ。そして、最後の1行も。心が通じ合うということに対して、すっきりとわかりやすく、でも感動的に描き出していると思う。やや、強引な設定があるにしてもね。
そういうわけで、実にお気に入りの1冊。今回、初めて文庫本で読んだのだけど、(当たり前だが)単行本にはない解説エッセイがあって、それもまた楽しめたのであった。