ディック・フランシスのレビュー一覧
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仕事場の方にすすめていただいて読みました。
競馬の話と聞き少し身構えましたが、読んでみたら意外とハマるものですね。
会計士として働く傍らアマチュア騎士の活動を続ける主人公は、夢だった多舞台のレースに出場し奇跡の大勝利をおさめた直後、何者かに誘拐されてしまう。
何とか逃げ出したものの、自分に迫る影におびえながら生活せざるを得なくなった主人公は、現状を打開する為に事件解決のために尽力する。
競馬界の闇に、正義を貫く会計士が挑む。
イギリスの作品らしい、独特の皮肉めいた文調が特徴的です。
わたしは小気味よく読むことができましたが、人によってはくどいと感じるかもしれません。
競馬に関する内容ではあ -
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外交官の休暇中の冒険ということで、少し盛り上がりに欠けるような気がした。外交官という職業にあるやや皮肉な職業上の能力や、前任地が日本であったことから、日本人やその文化に関する言及があったりで、興味深い面もたくさんある。が、仕込みが多いわりには全体としてそれらが妙に細かくて、迫力がないのである。
医療関係の話というのは珍しいし、また被害者の巻き込まれる災禍は、想像すると頭が痛くなるようなものだと思う。そういう被害者を救う主人公という図式は、今までにもなんどかあったと思う。その被害者が実の兄だったり、親戚だったりあれこれだけど、ここまで「他人の不幸に首を突っ込む」的な流れだと、僕はちょっと素 -
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フランシスの作品としては、どちらかというと地味である。スタンダードな犯人捜しミステリなんだけど、その方法が、容疑者たちの心理分析、特に現在の人格がどのように形成されていったかを検証することとなっている。地味ではあるけれど、人間ドラマとして深みがある。
大金持ちの父親がいて、何人もの母、たくさんの兄弟たちがいる。父親と心を通わせることができる唯一の息子である主人公は、義母の一人を殺し、父親の命をねらう犯人を、まさに家族の中から捜さなければならない。財産目当てに父親に媚びを売っているとの蔑み、憎しみ、妬みの渦の中で。
ミステリとしては地味、小説としては深みがある。
エリート階級の多いフランシ -
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読み終わって驚いたのは、実にシンプルでオーソドックスな犯罪捜査の物語であることだ。事件が起き、犯罪の専門家が呼ばれ、粘り強い捜査の結果的、真相と犯人を探り出す。まさに王道で、どちらかといえば、探偵ものというより、警察小説のような雰囲気がある。フランシスのファンとしてはそのあたりに物足りなさが残るのか、シリーズの中では評価が高くない作品だけど、なかなかどうして、すっきりしていて悪くない。
ただし「よい」と言えるかと言えばやっぱり言いづらく、いろいろな要素が軽く流れていってしまっている感は否めない。北欧が舞台ということで寒さが大きな要素になるんだけど、たとえばモスクアの話には迫力でかなわない。何 -
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「競馬シリーズ」と一言で言っても、全作品にまたがる共通点は、競馬がテーマであることと主人公の性格くらいだろうか。あるいは、水準以上の作品揃いであることも共通点のひとつといってもいい。でも、共通点がそのくらいであるといいたいくらい、多様な物語が展開されている。
この作品は、なんとコンゲームである。敵の方は遠慮なく暴力を振るう連中であるが、主人公は頭脳の働きで勝負し、まるで詐欺師のような策略で見事に敵にいっぱいくわすのである。そのあたりの動きはなかなか痛快だし、愉快である。
主人公の職業がおもちゃ屋さんであるというのもいい。大金持ちだから描き方によっては嫌みになってしまう可能性もあったのだろう -
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共産主義国家ソ連が地図から消えてずいぶん経つ。冷戦を背景にしたスパイ小説を今読むと、なんとなく現実のことのような気がしなくて不思議だ。むしろ、ファンタジーのような気さえしてくる。
フランシスの小説のいくつかには情報小説的な一面もあって、共産主義国家というものを一般人の視点からレポートしてくれていて、新鮮な驚きがたくさんある。どちらかといえば憂鬱なものが多いのだけど。
そういう憂鬱な、息が詰まるような重苦しい世界の中で、馬を愛する気持ちがいわば心と心をつなげるパスポートになるという設定が美しい。ふたつの異なる世界が出会い敵視があり、その中に小さな共通語を発見し交流が始まる。普遍性を持つ物語な -
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ネタバレ嚇かしでなく本気だと気が付いた時は既に手遅れだった。
相手は慣れない手つきで上着のポケットから拳銃を引き出すと、おっかなびっくり両手を使って引き金を引いた。彼・・・元チャンピオンジョッキーで今はラドナー探偵社の 競馬課の調査員シッド・ハレーは、夜の夜中、探偵社に忍び込んで餌をかじりに来たのがチンピラのアンドリュースだとわかったからこそ、洗面所の暗がりからのこのこ出て行ったのだ。
が、明かりを消そうとスイッチの方に向きかけた瞬間、アンドリュースは撃ってきた。
弾がシッドの体を斜めに貫通した。血がゆっくりとオフィスの床の上に流れた。助けを求める事も出来ず、十二時間余、シッドはじっと耐え奇跡的に一命 -
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ミステリーというよりも冒険小説。まさにその通りだと思う。主人公が犯罪者と戦う理由が、理不尽に妻を殺された従兄の精神を守るためというのも象徴的である。あるいは、冒険小説というよりもマンハントの物語と言いたくなるけど、敵の反撃に傷つきながらも決してあきらめない主人公の意志の力は、やはり冒険小説と呼ぶべきだろう。
主人公と行動を共にする友人夫妻が興味深い。心の中に野獣を飼っているとでもいいたくなるような男が、結婚することで何かを得、何かを失おうとしている姿は印象的だ。逆に結婚によって得たものを守ろうとしながら、それが男を縛っていることに気がついている女も複雑な色合いを見せている。独身者である主人公 -
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ミステリーではあるのだけど、どちらかというと普通小説的な要素が強い作品であると言われている。実際に読んでみると、確かにフランシスの作品の中では異色であると言っていい。
事件らしい事件が起きるまでが長い。じっくりと主人公やその周辺の人間模様を描いてから、事件というより主人公の職業上のトラブルという形で事件が起きる。結果的にそのトラブルが犯罪によるものだったからミステリーになったけれど、そうでなければ企業の内幕を描く長編小説である。
主人公は銀行員である。かなりのエリート。なにせ巨大銀行の創業者の甥である。能力もあるし、仕事を楽しんでいる。人間関係も良好で、作品中で出世もする。まさに「 -
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「大穴」「利腕」に続き、シッド・ハレーが何と3度目の登場。今作ではデジタル携帯電話やコンピュータ通信なども扱い、時代の流れを感じさせる。
もっとも、作品内では「利腕」の1年後ということになっており、老いさらばえた主人公に幻滅する恐れはない。
ハードボイルド・ミステリに区分されるディック・フランシス作品だが、主人公が戦うのは、犯罪組織や汚職警官やプロの殺し屋ばかりではない。
シッド・ハレーは己のコンプレックスと戦い、恐怖心と戦い、辛うじて打ち勝ってきた。そして今回びの敵は、「わかってくれない世間」と「親友の理解できぬ凶行」である。
対して彼が用いる最大の武器は、機知に富んだ策略や力強い味方の支 -
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競馬シリーズ第19作。競馬写真家のジョージが交通事故で世を去った。騎手にとって屈辱的なシーンばかりを撮り続けた彼の死を悼む者は、少ない…そのジョージの家に2日連続で正体不明の男たちが押し入り、室内を物色していく。果して彼らの目的は?ひょんな事からジョージの隠し持っていた一見失敗作に見える大量のフィルムを手にした騎手のノアは、自らの趣味である写真の知識を駆使し、そこに隠された秘密の解明を試みる。試行錯誤のはてに複雑なパズルを突破したノアの眼前に浮かび上がったのは、競馬界を揺るがす衝撃の画像だった!白熱の傑作サスペンス。 競馬についてと同様に、写真の専門用語はちんぷんかんぷんでしたが、それでも楽し
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例によって再読。
フランシスの小説としてきわめて異色なのは、主人公が17歳の少年であるということだけではない。政治を取り扱った作品も初めてだし、ある意味で主人公が二人いる物語も珍しい。
17歳の少年が主人公といっても、視点となるのは後の「私」なので、それほど主人公が子供っぽいわけではない。むしろ皮肉のひとつも言いたくなるほど、大人びている。
それでもなお、ある意味で真の主人公とでも言うべき父との関係は、例えば「骨折」などで描かれたものの単なる逆というのではない素直さを持っていると思う。成長物語としてもすてきだし、本当の主人公の姿を浮き彫りにする手段としてだけだってなかなか効果的だ。 -
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以前読んだ時には、スペンサーシリーズの「初秋」に匹敵する、「育成もの」の傑作だと思っていたのだが、今読むとちょっと物足りなさが感じられた。
主人公は、会社の建て直しを専門としている30代男性。たたき上げではあるが、金持ちである。彼が、事故で入院している父親の厩舎にいるところを拉致され、ある少年を騎手として雇うことを強要されるところから物語が始まる。少年の父親は、まあ暴力団のボスという雰囲気で、子どもを甘やかしその夢を叶えてやろうとするのである。無名の新人をトップクラスの馬に乗せるわけにはいかず、主人公の綱渡りが始まるわけだけど、それが少年の成長と重なり合うところがおもしろい。少年自身が作