ディック・フランシスのレビュー一覧
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23
最愛の妻を急病でなくして以来、半ば死んだように生きている主人公が立ち直る話。
親から、疎まれはしなかったものの失望され、見放され、妻といる間だけが生きている実感だったワイン商。
「 妻の急死の前兆に全く気付かなかったことに罪悪感を覚え、抜け出したはずの、過去の見捨てられた子供時代の呪縛に取り付かれ、砂を食むような毎日を送っている。
その彼が、ゆっくりと歩き出して語る最後の独白。
「エマ…エマ…エマ…」と叫びながら家の中を通っていった。声が壁にぶつかって反響している。
彼女を求めて叫んでいるのではなく、彼女に告げたくて叫んでいた…彼女に聞いてもらいたかった…自分がは -
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13―14
主人公の兄がアルコール依存症です。というわけで、個人的にこの話はものすごく感動しました。
立ち直ろうとする兄。信じきれないけど、支え続ける弟。
兄は最後に、弟を助けて命を失います。その直後にかかってきた電話。
「お兄さんとお話がしたいのですが」
「申し訳ありませんが……」私が言った。「兄は……いまいないのです」
「困りました」暖かい同情を含んでいた。「とにかく……こちらはアルコール中毒自主治療協会です。きょうの夕方、お兄さんから、助力をうけたい、というお電話があって、後でこちらから電話して、よくお話を伺う、と約束したのです……」
私たちは、その後もしばらく話を続けたが、私は相手 -
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障害レースで思いがけない大穴が続いていた。番狂わせを演じた馬は、その時の状況から推して明らかに興奮剤を与えられていた。ところがいくら検査をしても興奮剤を投与した証拠が出ない。どんなからくりで不正が行われているのか? 事件の解明を急ぐ障害レースの理事はオーストラリアに飛び、種馬牧場を経営するロークに黒い霧の真相究明を依頼した。元全英チャンピョン・ジョッキーが描く競馬ミステリの白眉!―――――ジャンルはミステリというよりもハードボイルドになるでしょうか。あらすじの通り、主人公が潜入捜査するお話です。案外つまづかずに読めました。潜入捜査のため偽りの自分を演じる主人公なんですが、そこがカッコ良くて、正
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緑色の背表紙のハヤカワ文庫。これがうちにはとてもたくさんあります…
ディック・フランシスの36作目。文庫では2003年発行、原著は97年の作品です。
もう何度読んだのか、わかりません。
フランシスをまだ読んだことのない人はとても幸せだという言葉があります。まったく、その通り〜これから40冊も読める楽しみが残っているのですから!(^^)
フランシスの作品は一作ずつ独立していますが、主人公の男性の一人称で語られるのは共通しています。
職業年齢は様々ですが、意志が強く、思いやりがあり、何らかの専門知識がある所も共通点なのです。30歳前後が一番多いでしょうか。
さて、この作品は主人公のベンが17歳 -
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真冬の寒い日、レース場で起きた惨劇に観客たちは凍りついた。目の前で騎手が落馬し、馬に押しつぶされて死亡したのだ。友の突然の死に、哀しみにくれるガラス職人のローガンだったが、まもなく彼のもとに一本のビデオテープが届く。それは友が命を賭して彼に遺したものだった。が、中身をたしかめる間もなく、押し入った何者かにより、テープが強奪されてしまう。謎を秘めたテープをめぐり、熾烈な争奪戦が今はじまる。
シリーズ第39作。19年ぶりに再読。ストーリー展開がややギクシャクしているように感じた。ジャケット写真のVHSテープ、そのうちに何なのかわからなくなる日が来るかもしれない。 -
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ディック・フランシスの競馬シリーズの最大の魅力は競馬関連の漢字二文字の邦題にある(おい!)
『重賞』や『大穴』のように直接的な競馬用語のときもあれば『興奮』や本作『罰金』のような競馬を連想させるようなものもありと様々だ
もうこんなことされたら全作集めたくなるよね!
もちろん原題が漢字二文字のはずがないので(おそらくイギリスには漢字文化はないと思われる)これはもう早川書房の商売がうまいということだ!馬だけに
『罰金』取られてもおかしないオチ
そして本作も『罰金』とられてもおかしくない結末でした
もう大昔の男尊女卑の考え方がどスレートに出てる男にとってだけのハッピーエンド
昔はそれを表現し -
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物語が始まってしばらくの間は、作品の方向性がよく分からず楽しめなかった。主人公が映画監督というのは面白いし、彼が撮影している映画が昔の事件を題材としていて、その映画化が過去になったはずの事件を再起動させてしまうという趣向は、なかなか良くできていると思う。
ただ、全体としてごちゃごちゃしてしまっているし、過去の事件そのものが後味があまり良くない出来事なので、なんか読んでいてスッキリしないのだ。主人公が過去の事件に首を突っ込んでいくあたりも、なんとなく動機が曖昧で、探求型としても巻き込まれ型としてもピンとこない。そのために、「良い映画=売れる映画を作る」ためにあれこれ動いているだけのようで、 -
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1983年発表の競馬シリーズ第22弾。後にフォーサイスが「ネゴシエイター」でも題材とした誘拐交渉人を主人公とする。
犠牲/被害を最小限に抑えるべく、如何に行動し解決へと導くか。その心理的な駆け引きが最大の読みどころとなるが、本作のミソは交渉人が誘拐対策企業に勤める派遣スタッフの一人に過ぎないという点にある。通常は防衛策を施すサポートに徹し、不幸にも誘拐となった場合には犯人との交渉、奪回まで責任を負う。要人を対象とする誘拐事件は国内外問わず発生する恐れがあるため、ネットワークを駆使できる専門企業の創出は、リアリティを持たせる上でも不可欠だったのだろう。
当然、警察や関係者らとの連携/折衝など、瞬