ディック・フランシスのレビュー一覧
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11−12
大好きです。
主人公は、精神発達障害の子どもを持つ、冒険映画主役の、映画俳優です。だから競馬メインじゃないんだって…。
監督と反発した主人公は、主人公が苦悩するシーンで、最高の演技を見せてやろうとします。
友人のコンラッドが言います。
「仕上がったフィルムは、君の気に入らないはずだ」
間をおいたが、彼が説明しないので、私が聞いた。「なぜ?」
「あの中に、演技とはべつの、演技を超えたものがある」
彼がまた間をおいて、言葉を選んでいた。「わしのようなひねくれた見方をする人間ですら、あの苦悩の質には、胸が裂けるような感銘を受けたよ」
私は黙っていた。彼が私 -
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19
シリーズ中最愛の作品。
母親に捨てられ、父親は不明で、あちこちの家を転々として育ち、成り行きで騎手になった主人公の独白。
「長い年月、自分にとって生存とは、与えられたものを甘んじて受け、なにかの役に立つこと、物静かで好感を与え、問題を起こさないこと、抑圧的、内向的で自制すること、であった……差し出されないものは望まないよう長い間しつけてきたので、今では欲しいものはほとんどない……自分がこのような人間である理由は承知している。自分が流れのままに漂っている理由もわかっている。自分があくまで受動的で、状況を変え、肩を怒らせて歩き回り、自分の運命の支配者になる、といった要求を全く感じな -
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2―5
音楽一家に生まれながら、音楽の才能をもたなかったロバート・フィンが選んだのは、別の道で自分の才能を示すことだった。
そしてもう一人、フィンと同じ立場ながら、失ったものを認められない男がいた。
そして事件はおきる。
ラストのフィンの独白が印象的でした。
「ある意味では、自分は彼を理解することができる、と思った。私自身が不肖の子であるからだ。しかし、父は愛情をもって私を別の世界に住ませてくれた。だから私は音楽家が苦しむのを見る必要を感じない。
…寛容か、と思った。それはまた別のことである。
許すのには長い時間がかかる。」
最高傑作のひとつ。 -
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貴族の血を受け継いでいながら、ひとりスコットランドの山中で孤独な暮らしを続ける青年画家、アリグザンダー・キンロック。ある日、彼は自分の山小屋で待ちかまえていた四人の暴漢に襲われ、あやうく命を落としかける。闇雲に「あれはどこにある?」と脅されたあげく、わけのわからぬままに崖の上から突き落とされたのだ。事件が起きたのは、アリグザンダーが母の屋敷へ行こうとしていた矢先だった。ビールの醸造会社を経営している義理の父が、心臓発作に倒れたとの知らせを受けたのだ。全身の怪我をおして屋敷に赴いた彼は、義理の父の会社が倒産寸前であることを知る。経理部長が莫大な資産を横領して姿を消したらしい。しかも、会社が主催す
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ネタバレ競馬シリーズ42作目。
そう言われてみればブックメーカーが主人公になったことはなかった。
この競馬シリーズ、様々な職業の主人公がいたが、
こんなに競馬に身近で。
必須ともいえるブックメーカーが主人公になっていなかったのは、
あまりに犯罪に関わりありそうな職業だからなのだろうか。
ブックメーカーのネッドの前に突然現れたのは、
幼い頃に自動車事故で死んだと言われていた父親。
驚きながらも、少し話をした矢先に暴漢に襲われ、
父親は刺されて亡くなってしまう。
しかも持っていたのは違う名前の運転免許証だった。
本当に父親なのか。
父親の泊まっていたホテルを探し当てて手に入れた謎の物体、
その荷物を -
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ネタバレ競馬シリーズ41作目。
法廷弁護士であるメイスンは、障害競走のアマチュア騎手でもある。
身重だった妻を亡くして七年、仕事とできるかぎりの乗馬にレースに
明け暮れる毎日。
だが、一緒にレースを走ったトップジョッキーが殺され、
別のジョッキーが犯人として逮捕される。
容疑者からは自分の弁護をしてくれと頼まれるが、
事件前のことを証言しなければならないかもと渋っていた。
そこへ老父の写真と共に、弁護を引き受けて負けろと言う脅迫の手紙が届く。
その後も執拗に裁判に負けろと電話をしてくる脅迫者は誰なのか。
殺人の真犯人なのか、なぜジョッキーを殺したのか。
被害者の家から仔馬が産まれた時の写真がなくな -
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ネタバレ競馬シリーズ40作目。
人気レストランのシェフ、マックスが食あたりに苦しむところから話は始まる。
競馬場の前夜祭で出した食事が原因のようで、
死亡者1名ということでレストランは閉鎖されてしまう。
なんとか翌日に競馬場でのパーティでランチを提供するが、
そこで爆発事件が起き、給仕係の女の子をはじめ多くの人が亡くなる。
食中毒で亡くなったのではないとわかりレストランの閉鎖は解かれるが、
爆発事件との関係を調べていくうちにマックスは殺されかける…。
インゲン豆の生食が毒だとは知らなかった。
その食中毒の被害者で、
訴訟を起こそうとしていたヴィオリストと付き合うようになるとは、どんな展開?
だた、 -
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ネタバレ競馬シリーズ39作目。
冒頭で騎手がレース中の落馬事故で亡くなったが、
全体的な印象としては、今回は競馬要素は薄い。
亡くなった騎手の親友だったガラス職人のローガンは、
騎手からだと言われて受け取ったビデオテープを、
その日のうちに中身を知らないまま盗まれてしまう。
だが目的のテープではなかったのか、
騎手の家族は催眠ガスで眠らされビデオテープを盗られ、
さらにローガンの自宅も荒らされ、工房の前で四人組に襲われる。
ビデオテープの中身は何なのか、どこにあるのか、
そして襲撃者の正体は。
その謎を解くのに手助けとなった二人の少年、
騎手の息子と襲撃メンバーの一人の甥の活躍が印象的だった。
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ネタバレ競馬シリーズ38作目。
気象予報士としての好奇心に勝てず、
同僚と共に台風の眼に飛行機でつっこむことにしたペリイ。
だが、飛行機は不時着したどり着いた島には人はいないが牛はいた。群れで。
そして廃屋には金庫があって読めない書類が入っていた。
放射線防護服に身を包み、銃を持って現れた一団によって救い出されたが、
その正体は飛行機を売ってくれた男とその妻、友人の三人であることを
ペリイはすぐに見抜いた。
なぜか。
なぞの無人島、放射性物質の違法な売買、スパイ、牛の乳を直接飲んで罹患した珍しい病気と、
いろいろ絡んできて、
同僚には良い友人だと思っていたのに裏切られて、
個人的にはいまひとつだっ -
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ネタバレ競馬シリーズ37作目と言ってよいのか、短編集。
競馬×ミステリーを短編にすると、
詐欺や盗みばかりのかなり殺伐とした感じになるらしい。
なんといっても、
いつもの信念と正義感を持ち合わせた紳士的な主人公たちがいないので、
登場人物にはかなり悪人が多い。
とはいえ面白かった。
例えば「悪夢」は、
馬に関する知識を武器にトップセールスマンとして三年働いていた男の話だが、
実は馬泥棒で車の事故で死んだ父親の代わりになる相棒を探していたとか、
見ていた「悪夢」は
実は警察から逃れるために父親をひき殺してしまった事故だとか、
相棒にした財布泥棒のヒッチハイカーが
実は警官で、と面白かった。
「春の -
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ネタバレ競馬シリーズ36作目。
こんな17才はいない、と思っていたら、
佐々木譲氏が解説で同じことを書いていた。
障害騎手を目指いしてた17才の少年ベンは、
父親に騎手生活から引きはがされ、下院議員の選挙活動を手伝うように言われる。
父親と言っても、若くして結婚し、ベンが産まれた際に母親が亡くなると、
母親の姉に養育を任せ、近くで見守ってはいなかった。
それでも、信頼されていることは知っており、
集票のため選挙活動に同道し、運転手役をつとめることにする。
父親は狙撃されかかったり、
車のブレーキオイルタンクに細工されたり、
選挙事務所兼宿泊場所が火事になったりと、
妨害工作に遭いながら、当選する… -
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ネタバレ競馬シリーズ34作目。
シッド。
この競馬シリーズで三度同じ主人公に会うとは思っていなかった。
エリスはシッドの騎手時代の好敵手であり、
現在は、影の中をひっそりとしのび歩き調査を行っているシッドと違って、
テレビ番組の司会者として自分の魅力をふりまいていた。
シッドは白血病の女の子のポニーの足を切り落とした犯人捜しを依頼され、
同様の事件を調べていくうちにエリスを逮捕するに至る。
だが、人気者を陥れたと競馬関係者やマスコミから激しく非難される羽目になり、
エリスの父親には命を狙われる…。
相変わらず、義手であることに容赦のない暴力をふるわれる描写があり、
ひりひりする。
エリスがシッド -
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ネタバレ競馬シリーズ32作目。
絶対的なハッピーエンド好きとしては、
登場人物たちの恋愛や結婚生活がうまく行ってほしいと常に願いながら、
読み進んでいる。
だが、この著者の場合、事件は解決したとしても、
ハッピーエンドになるとは限らない。
それどころか、尻切れトンボな「エンド」になってしまうことすらある。
それがエンターテイメントではなく芸術なのだと言われればその通りなのだが。
そんな消化不良を起こしながらも、
このシリーズを読んでしまうのは作品が面白いからなのだと思う。
という訳で今回の主人公の恋愛は上手く行かないものの、
結婚生活はかろうじて平和的結末になったのが判って良かった。
その主人