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Posted by ブクログ
名作揃いのフランシス作品の中で、ベストとは思わないけれどもかなり気に入っている作品であった。今回本当に久しぶりに読み直してみて、頭の中にあったイメージよりもずっとずっと「異色作」であったことに驚いた。
事件としては、そう珍しいものではない。主人公は清廉潔白とは言い難い新聞記者である。彼の友人が自殺し、その背景を主人公が探るうち深入りしてしまい、敵の執拗な攻撃に遭う、というプロットは、フランシスの場合むしろよくある話だ。敵の脅迫に屈しない主人公の闘志も、いかにもフランシスらしい。
例外的なことのひとつは、主人公の「家庭環境」である。前シリーズの中でももっとも印象的と言っていい。そして、そのことが主人公の心理に与える大きな影響は、読んでいてハラハラしてくるほどだ。一人称の物語の場合、どうしても主人公の視点で物語を見ていくのだけど、それを少し批判的に読んでいくと、ますます苦みが感じられる。
そういうことを背景にした、主人公の振る舞い(ネタバレにならずに書くのはきわめて難しい)は、まさにシリーズ中では異色中の異色で、全作品を読んだ後で改めて読み直すと、本当にびっくりする。それが心理的な意味でも彼を追い詰めるわけであるし、彼が戦う相手が自分自身であるという点で、中期の作品の(毛色の変わった)先駆けなのかもしれない。
ただし、最後の数行はいただけない結末で(すごくわかるけど)、一年後くらいにやってくる次の悲劇をどうしても想像してしまう。男って、悲しいね。
どうも読み直してみると思うのだけど、僕にとってこの作品が魅力的だったのは、強い男のどうしようもない弱さのため、そしてラストに近いところにあるゲイルという女性の言葉のためだろう。全体としてはそれほどの傑作ではないかもしれないが、僕にとっては妙に気になる作品である。
Posted by ブクログ
「競馬シリーズ」7作目で1968年発表作。70年代に入って以降は今ひとつ冴えがなくなったと酷評されていたフランシスだが、本作は秀作「血統」の後だけに生彩を放つ。
主人公は競馬担当の敏腕記者。障害レースで不当に賭け金を吊り上げる犯罪者一味の不正を暴く為に奮闘。シリーズのファンならお馴染みだが、本作の主人公もハンデを抱えている。これが重い。妻は重篤の病人で、身体がほぼ麻痺していた。悪党らは、この弱点を最大限利用し、悪事に荷担させようと諮る。主人公は満たされない性への欲求が不倫へと走るが、同時に愛する妻を裏切っているという罪悪感に苦しむ。正義をとるか、保身をとるか。この葛藤が本作の読みどころとなる。己の弱さを知り、それをどう克服するか。フランシスの筆致は簡潔だが、その繊細な心の揺れを巧みに描き出している。
Posted by ブクログ
ディック・フランシスの競馬シリーズの最大の魅力は競馬関連の漢字二文字の邦題にある(おい!)
『重賞』や『大穴』のように直接的な競馬用語のときもあれば『興奮』や本作『罰金』のような競馬を連想させるようなものもありと様々だ
もうこんなことされたら全作集めたくなるよね!
もちろん原題が漢字二文字のはずがないので(おそらくイギリスには漢字文化はないと思われる)これはもう早川書房の商売がうまいということだ!馬だけに
『罰金』取られてもおかしないオチ
そして本作も『罰金』とられてもおかしくない結末でした
もう大昔の男尊女卑の考え方がどスレートに出てる男にとってだけのハッピーエンド
昔はそれを表現しちゃうことが当たり前でむしろ称賛されてたと思うと悪寒が凄いんだけど
その当たり前を知るということはそれはそれで意味があるのかなと思ったりもしました
あ、でもディック・フランシスは不朽の傑作のほうが圧倒的に多いのでやっぱりたくさんの人に読んでほしいなぁ
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