酉島伝法のレビュー一覧
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ネタバレあまりにも毒々しい表紙と謎の「(笑)」で思わず手に取ってしまった。
スピリチュアルと科学の逆転というあまりにも斬新なテーマに心惹かれる。
作者の造語センスが光りすぎていて本当に怖い。「疒なんてとっちゃいましょう」だなんて何を食べてたら思いつくんだ。
ちょうど昨年頃に大きく話題・ネットミームになった「マコモ湯」もこれだったのかと。わからんでもないがうーん…
造語まみれでわけがわからなくなり2,3回読み返す羽目にはなったけれどもきらいなわけではないかなとは思った。何処か別の世界を読んでいるような感覚。「ウ''ィエ''」を制作したバーバパパさんと近しい何かを感じた。
作者の想像力とそれをここまで実感の湧く文章に落とし込む文章力に脱帽してもしきれない。
それでは皆様ご一緒に…「るん(笑)」 -
Posted by ブクログ
奇妙な世界。文字通りならおぞましい世界。
だけれど、途中からとても魅力的で、なぜか居心地の良さすら感じる。
とても(語弊があるけど)素敵な、ずっと旅していたい世界だ。
まったく異質な生態や文化が、そこに住む者たちの視点で次々描かれる。我々…卑徒(ひと)に向けた説明はない。
あれはなんだこれはなんだ。
けれど読み進めると、我々卑徒にもなんとなくこんなものかな?がわかってくる。
事細かに詳細を説明しなくても、その文化がわかってくる。
最初は面食らう異世界だけれど、主人公たちとめぐるうちに「身についてくる」。
そう、語座跨ぎって本来はタブーだよね…。
そうして、異質な世界、異様な生態で生きる者たちのことも、知り合いか親戚、職場の苦手な人や友人のような気持ちになる。
実に不思議。
主人公、その相棒?、彼らのお目付け役の夫婦…彼らも異様で異常な生命体だが、どこまでも親しみをもって読める。
あの3人組(4人?)は本当に好きだ。
ラストは久々に泣きそうになった。
うーん、この展開は弱いなぁ。
以下、より卑徒な感想。
「おぞましい世界観なのに、まったく後味が悪くなく、むしろ登場人物を中心に愛おしく、素敵な物語」。
この話に近い印象なのは、アニメ『JUNKHEAD』。
異様な地下世界で、人死も出るのだが、出てくる登場人物はクセがありながらも、割合普通な人が多く、時に優しさや、卑徒臭さも感じられて、愛おしくなる。それに近いかも。
結局は世界観以上にそこの住人次第なんだろう。
お昼のドロドロドラマより、人間関係がこじれるイベントのある青春小説より、こちらの世界のほうがストレス無しで読める。
そして、日本に住む卑徒としては
「漢字ってすげえ、日本語ってすげぇ」。
これに尽きる。 -
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ネタバレそこに広がるのは、虚空。黒々と深淵たる、虚空。
カニとサソリを足して2で割ったようないかつい姿のズァングク蘇倶・マガンダラと、アリが直立したような姿のラホイ蘇倶・マナーゾの、異世界弥次喜多珍道中。
・・・と思いきや、最後の最後にとんでもなくスケールの大きいハードSFの芯がぶっ刺さり、文字通り世界がひっくり返る、壮大無比な作品です。
作品の舞台となる惑星・御惑惺様<みほしさま>には、かつて卑徒<ひと>を滅ぼしたといわれる甲殻類めいた生き物たちが、様々な蘇倶<ぞく>に分かれ、ある時は闘い、ある時は協力し、ある時は捕食し捕食されながらも、独自の社会を形成し、巨大な甲殻類の御侃彌様<おかんみさま>を核とした倶仁<くに>を築いています。
この生き物たちが、もぅとんでもなく魅力的!兄貴肌のマガンダラ、おっちょこちょいに見えて意外と気が利く子分肌のマナーゾ、マガンダラを敵視しつつも親しみを感じているズンバルカ、泰然自若とした頑固肌の砲載様・・・姿かたちは人間から全くかけ離れているのに、マガンダラと一緒にこの世界を旅することで、いつのまにか彼ら彼女らに親しみを覚え、その生き様に慈しみを感じるようになっていきます。特に、ガゼイエラとラジュリンワの両姐さんの、小股の切れ上がった女っぷりの良さといったら(甲殻類ですけど)!心底惚れ惚れしますわ。
登場人物たちのみならず、衣食住や土地の様子などの世界観を、酉島節全開の造語を駆使しながら分厚く緻密に織り上げてゆく様は、まさに酉島作品ならではの面白さです。やっぱり長編向きの作風なんだなー。
そんな楽しくユーモラスな世界の中に一石を投ずる、卑徒<ひと>の姿をした「仲裁者」の登場。
どうやら卑徒<ひと>は姿を変えて生き残っており、ある策略を長期に渡って秘密裏に進めていることが、物語の中盤で明らかにされます。
そして最後に明かされる、驚愕の真実。
御惑惺様は、もともとこの宇宙にあったのではなく、別の並行宇宙に存在していたこと。
その「別の宇宙」は、この宇宙よりも年老いてエントロピーが増大し、「熱的死」を迎えつつあること。
マガンダラたち各種蘇倶<ぞく>は、「別の宇宙」の諸惑星から御惑惺様の意思によって寄せ集められた者たちの末裔であること。
御惑惺様が生き物たちを集めたのは、自らの表面(!)に存在するワームホールを通って若い並行宇宙に移動し、「熱的死」を避けるためであること。
しかし、その結果、この宇宙全体の質量総量が増大してしまい、時空のバランスが崩れてしまったため、御惑惺様は卑徒<ひと>=地球人類によって破壊される運命にあること。
破壊を免れるには、再びワームホールを通って元の宇宙に帰還するしかないこと。
卑徒<ひと>=地球人類によって体内に卑徒虫を宿した者たちは、この宇宙に残ることが許され、御惑惺様を離れます。
しかし、マガンダラは御惑惺様に留まり、それまで宇視<うみ>の底の穴だと認識していたワームホールを潜り抜け、元の宇宙に到達します。
遠くない未来に熱的死を迎える宇宙は極限まで広がっており、目に見える範囲に恒星はほとんど瞬いていません。
そんな漆黒の深淵を、永遠の虚空を、仰ぎ見るマガンダラ。共に元の宇宙にやってきた、今は亡きマナーゾの妻と子供たちを守り抜くことを心に決め、この物語は幕を閉じます。
御惑惺様がマガンダラたちを載せて自らの表面にあるワームホールを潜り抜ける描写は、圧巻の一言です。古典落語「頭山」の世界ヽ( ´—`)ノこれぞSF、といえる驚愕の世界が広がります。
しかし、この物語の本質は、ラストシーンでマガンダラが虚空を仰ぎ見て感じる壮絶なまでの寂寥感にあると、鴨は思いました。それもこれも、ここに至るまでの登場人物たちの楽しくて豊かなやり取り、いつの間にか引き込まれてしまう異世界の描写が徹底しているからこそだと思います。
読者の「酉島伝法リテラシー」が試される作品ではありますが、前作長編「皆勤の徒」よりも遥かにエンターテインメント性が増して読みやすいです。ぜひチャレンジしてみてください! -
Posted by ブクログ
世界は球面で、その中を這い回る太陽と暮らすかなり過酷な世界の話。このファンタジー世界の真実を暴く的な話じゃなくてファンタジー世界の(読者から見たら変な)価値観の中でめちゃくちゃがんばる。そこがなんか身につまされたというか宇宙人から見たら自分もこうなんだろうなと思って共感できた。(でも真実を暴くパートも読みたかった!なんでジラァンゼが空の夢を見たんだ)
めちゃくちゃがんばる中で仲間ができたり仕事がうまくいったり挫折したり家族ができたり世代交代したりの大河感も楽しめた。
灌水役をやる前に親と喧嘩しちゃうジラァンゼとヌフレツン、君たち似たもの親子だよ……
ラストで「地面掘るのが禁忌になってるのってそういうことか〜」と分かったのは良かった。
欲を言えば終盤のヌフレツンパーティの掘り下げもっと欲しかった〜 陽採り手の奴らすごい良いキャラしてる。 -
Posted by ブクログ
ネタバレすごく読み応えがあった。理解するためにたくさんメモを取った。奥深く作り込まれた世界は一度読んだだけでは把握しきれない感があり、解説を読んで驚くことがいくつかあった。
やはり最初の『皆勤の徒』に抜群に惹かれた。ここから始まる未知の世界にじわじわと馴染んでいくのが楽しい。想像力を働かせる読書の楽しみを最大限得られた。
今現在の人間とはかけ離れた者たちが登場するが、行動原理が意外にも理解できるところがポイントで、仕事があり暮らしがありここにもひとつの社会があると気づく。それがなければ本当に放り出されたような気持ちになったかもしれない。
たくさん登場する造語も、つかわれている漢字や読みでなんとなく意味が分かるようになっているところがすごい。
設定やストーリーの面白さだけではなく、読ませる文章の巧みさがあると思う。デビュー作というのがまた驚きだ。 -
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ネタバレ面白い。同音異義語(?)がワラワラ出てきて言葉遊びが楽しい。
描写が妙に生物的でグロテスクなので、耐性が無い人には辛いかもしれない。
表題作が一番訳がわからない(といっても世界観がとてつもなくユニークで引き込まれる)話で、徐々にこの世界の仕組みが分かっていく構造になっている。解説を読まないと完全な理解はできないだろうが。
解説には同じような世界観として『地球の長い午後』や『新世界より』など私にはイマイチな印象だった書籍が出てくるが、それらと共通するのは「空想の生態系が出てくる」という点だけだと思う。方向性も描写の仕方も異なる。
…と思ったら、解説を読み進めていくとちゃんとそう書いてあった(列挙された作品とは格が違うことも)。
本書の内容は海外に出てもウケると思うが、言葉遊びの面白さは他国語に翻訳するときにとても悩まされそう。
あまりカタカナ語を使わず、本来なら外来語で呼称するものを敢えて独自の漢語(= 表意文字)で記載することでイメージと共に異世界感が強烈に表現されている。SFで軌道エレベーターや脳インプラント、脳内のインターフェイスがワクワクする単語であるように、海外ではこの漢語的な語呂が魅力的に見えるかもしれないなと思う。あえて漢語を残してルビを振っても面白がられるかもしれないが、漢字の意味が分からないと面白さが伝わらないか。書籍への印刷や2バイト文字は画面への表示も大変で、労多くして・・かな。 -
Posted by ブクログ
ネタバレほんタメで紹介されていたので、読んでみた(もちろんあかりん帯のものを購入)。
最初は「なんだこれ?」という感想だったが、五通目の手紙を読んでこの小説の面白さに気づいた。まさかあの蟹頭がこの物語の主要メンバーに入るとは……。でも、ある物があるところでは人気者になっていて、あるところでは忌むべき存在とされていて、さらにあるところでは言ってはいけない言葉として扱われているなんて、結構あることなのかもしれない。
「旅をして地図上のまったく同じ地点に立っても、見える景色はまったくちがったもので、それぞれの眺めは厳密なところ、まったく同じ景色として共有することは不可能なんです。(…)ただ逆を言えば、私が見た景色は当然間違いではないし、だれに何も文句を言われることはない、とも考えられるんですよね。これは不安なことでもあり、また同時に心強いことでもあります。」(262〜263ページ)
景色を見た時に「すごーい」「感動した」という感想が出がちだけど、その感情になる背景は一人一人違うんだな、と。だからこそ表面的な感想だけじゃなく、景色を通して自分の深いところに問いかけをして出てきた言葉に耳を傾けたい(自分探しの旅ってこういうこと?)。
多分この小説を読んで思い描いた風景だって一人一人違うんだろうな。
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Posted by ブクログ
異形の未来世界を描く連作短編集。とにかく漢字の造語に圧倒される。見た目、発音、文字自身の持つ意味が混然となって新たに作り上げられた「言葉」として頭に入ってくらくらする。絵にしてしまえば(本には作者自身の手による挿絵があるが)ペクシンスキーやギーガー、弐瓶勉らの描く世界の延長線上にあるものなだろうと貧困なイマジネーションの限界の中で感じてしまうのだが、それをオリジナルの言語で語られることで非イマジナルというか超イマジナルというか、具体的ではあるけれど像を結ばない世界が頭の中で出来上がっていく。読んだというより体験したという方が近い感覚(昔に読んだ筒井の「虚航船団」を思い出した)
頭の中で音読しないと文字が読めないので、造語の読みを覚えられず読むのに大変苦労したがその価値はあった。
収録作の中では表題作である「皆勤の徒」が一番良い。解説などでは「蟹工船」と評されていたけど、自分の中では初期の「ダメおやじ」が頭に浮かんだ。この世界感でサラリーマンの悲哀を描くという発送が絶対に頭おかしい。文句のない大傑作。