酉島伝法のレビュー一覧
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奇妙な世界。文字通りならおぞましい世界。
だけれど、途中からとても魅力的で、なぜか居心地の良さすら感じる。
とても(語弊があるけど)素敵な、ずっと旅していたい世界だ。
まったく異質な生態や文化が、そこに住む者たちの視点で次々描かれる。我々…卑徒(ひと)に向けた説明はない。
あれはなんだこれはなんだ。
けれど読み進めると、我々卑徒にもなんとなくこんなものかな?がわかってくる。
事細かに詳細を説明しなくても、その文化がわかってくる。
最初は面食らう異世界だけれど、主人公たちとめぐるうちに「身についてくる」。
そう、語座跨ぎって本来はタブーだよね…。
そうして、異質な世界、異様な生態で生きる者たちの -
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ネタバレそこに広がるのは、虚空。黒々と深淵たる、虚空。
カニとサソリを足して2で割ったようないかつい姿のズァングク蘇倶・マガンダラと、アリが直立したような姿のラホイ蘇倶・マナーゾの、異世界弥次喜多珍道中。
・・・と思いきや、最後の最後にとんでもなくスケールの大きいハードSFの芯がぶっ刺さり、文字通り世界がひっくり返る、壮大無比な作品です。
作品の舞台となる惑星・御惑惺様<みほしさま>には、かつて卑徒<ひと>を滅ぼしたといわれる甲殻類めいた生き物たちが、様々な蘇倶<ぞく>に分かれ、ある時は闘い、ある時は協力し、ある時は捕食し捕食されながらも、独自の社会を形成し、巨大な甲殻類の御侃彌様<おかんみさ -
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世界は球面で、その中を這い回る太陽と暮らすかなり過酷な世界の話。このファンタジー世界の真実を暴く的な話じゃなくてファンタジー世界の(読者から見たら変な)価値観の中でめちゃくちゃがんばる。そこがなんか身につまされたというか宇宙人から見たら自分もこうなんだろうなと思って共感できた。(でも真実を暴くパートも読みたかった!なんでジラァンゼが空の夢を見たんだ)
めちゃくちゃがんばる中で仲間ができたり仕事がうまくいったり挫折したり家族ができたり世代交代したりの大河感も楽しめた。
灌水役をやる前に親と喧嘩しちゃうジラァンゼとヌフレツン、君たち似たもの親子だよ……
ラストで「地面掘るのが禁忌になってるのって -
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ネタバレすごく読み応えがあった。理解するためにたくさんメモを取った。奥深く作り込まれた世界は一度読んだだけでは把握しきれない感があり、解説を読んで驚くことがいくつかあった。
やはり最初の『皆勤の徒』に抜群に惹かれた。ここから始まる未知の世界にじわじわと馴染んでいくのが楽しい。想像力を働かせる読書の楽しみを最大限得られた。
今現在の人間とはかけ離れた者たちが登場するが、行動原理が意外にも理解できるところがポイントで、仕事があり暮らしがありここにもひとつの社会があると気づく。それがなければ本当に放り出されたような気持ちになったかもしれない。
たくさん登場する造語も、つかわれている漢字や読みでなんとなく意味 -
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ネタバレ面白い。同音異義語(?)がワラワラ出てきて言葉遊びが楽しい。
描写が妙に生物的でグロテスクなので、耐性が無い人には辛いかもしれない。
表題作が一番訳がわからない(といっても世界観がとてつもなくユニークで引き込まれる)話で、徐々にこの世界の仕組みが分かっていく構造になっている。解説を読まないと完全な理解はできないだろうが。
解説には同じような世界観として『地球の長い午後』や『新世界より』など私にはイマイチな印象だった書籍が出てくるが、それらと共通するのは「空想の生態系が出てくる」という点だけだと思う。方向性も描写の仕方も異なる。
…と思ったら、解説を読み進めていくとちゃんとそう書いてあった( -
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ネタバレほんタメで紹介されていたので、読んでみた(もちろんあかりん帯のものを購入)。
最初は「なんだこれ?」という感想だったが、五通目の手紙を読んでこの小説の面白さに気づいた。まさかあの蟹頭がこの物語の主要メンバーに入るとは……。でも、ある物があるところでは人気者になっていて、あるところでは忌むべき存在とされていて、さらにあるところでは言ってはいけない言葉として扱われているなんて、結構あることなのかもしれない。
「旅をして地図上のまったく同じ地点に立っても、見える景色はまったくちがったもので、それぞれの眺めは厳密なところ、まったく同じ景色として共有することは不可能なんです。(…)ただ逆を言えば、 -
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異形の未来世界を描く連作短編集。とにかく漢字の造語に圧倒される。見た目、発音、文字自身の持つ意味が混然となって新たに作り上げられた「言葉」として頭に入ってくらくらする。絵にしてしまえば(本には作者自身の手による挿絵があるが)ペクシンスキーやギーガー、弐瓶勉らの描く世界の延長線上にあるものなだろうと貧困なイマジネーションの限界の中で感じてしまうのだが、それをオリジナルの言語で語られることで非イマジナルというか超イマジナルというか、具体的ではあるけれど像を結ばない世界が頭の中で出来上がっていく。読んだというより体験したという方が近い感覚(昔に読んだ筒井の「虚航船団」を思い出した)
頭の中で音読しな