酉島伝法のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
毎回全編読み終えてから感想を書いているが
最後の解説を読み終えるころには
最初のほうに何が書かれていたか既に忘れている
覚えているふりをして思い出して感想を書く先行馬と
読み終えたばかりで印象強い追い込み馬はどちらが有利か
もともとの感想ていどを思えばどちらでもわりとどうでも良い
今回はSF度合いでなくタグ付けのような分類形式で測る
沖方丁 『メトセラとプラスチックと太陽の臓器』
★*4 分類:未来予想随筆
SFマガジン2011年7月号の東日本大震災に対する特集での
「10万年後のSF」は印象深かった
小川一水、長谷敏司お二方も並び書かれていたが個性の違いが
短い同じ主題にも文章でなく切り口にはっきり現れることよ
この作品は震災前に書かれたもののようだが
上の「10万年後の」と同じおもむきの随筆なあじわい
大人が子供のために
事件人口両面で「日本のおわりはじまった」な2011年だが
世界が終わるわけでもないわけで
小川一水 『アリスマ王の愛した魔物』
★*4 分類:計算機のある寓話
変換したら「アリス魔王の愛した魔物」になった
さもありなん
この作者らしい物語発想の豊かさを感じる作品
魔物と王の接続がそれほど効果的に決まっていなかったかも
やや語り説明が長かったかも
上田早夕里 『完全なる脳髄』
★*3 分類:サイボーグフランケンシュタイン
この作者の印象は最初に読んだ『魚舟獣舟』以降右肩下がり
構成も読みづらいだけだしことばも上滑りに感じる
津原泰水 『五色の舟』
★*5 分類:やや奇形趣味幻想小説
上手い
文章も上手いのだろうけれど
その上手な様をわかっていないで褒めようもないので
話の並べ方や見せ方や登場人物の個性や配置や台詞が上手い
ここをこう並べ替えたらなどという素人判断を寄せ付けない
白井弓子『成人式』
★*4 分類:教養小説+マンガ+少女
題名どおり「大人になる通過儀礼」という教養小説と冒険小説の接続
『樹魔』とかあのあたりのSF風なファンタジーで
わかったふうなことを言うなら
人間の女性においては「出産」という
大人とするに「適当」に過ぎるものがあるゆえに
こういうふうに大人となる時点が必要なのだろうか
少女小説でないけれど(女の一代記みたいな)大人ではない女性的主題のもの
アニメの『おもひでぽろぽろ』や『ワンダーワンダフル』や本作みたいなを読むと
そんなように思う
「教養小説」は男が大人になる話と思う女性にとっては少し違うものなのかと
どうだかわかるものでもないが
月村了衛 『機龍警察 火宅』
★*3 分類:ミステリ
この外伝でなく本編の方はSF風味あるらしいが
これ自体は警察ものミステリとしか読みようがない
ミステリとしては短いからとはいえ都合よすぎ
瀬名秀明『光の栞』
★*3 分類:なんでもない風景賛美なおもむき
こういうふいんき勝負の作品をどう分類したらよいか悩むところ
最初の「メトセラとプラスチックと~」も同じようなものなのだが
活版印刷からなる書物というものは素晴らしい
というびぶりおまにあなところに共感できないと楽しみがたい
世界の大多数のひとにとって
本が必要なもの欲しいもの面白いものかというとそうでもない
人間文化文明にとって必要不可欠なのは確かでも
テレビとか車とか電話のほうがすばらしいと思うのでなかろうか
本は勿論冷蔵庫も洗濯機がなくとも生きていけるが
携帯か最低限テレビがないと生きていけない日本人は多そうだ
ガラパゴスについては名前どおりわざとそうしている目の付け所が鋭いひとな感
まねした電器はお隣の国でなく日本の合言葉
円城塔 『エデン逆行』
★*- 分類:数理SF
前回は普通に読めて驚いたが今回は安定の読めなさ
それでもいつもよりはわかったふうな風味な気もしないでもない
バラード『時間都市』みたいな情景か
やはり数理素材は頭のいいひとに逐次解説してほしい
伴名練 『ゼロ年代の臨界点』
★*4 分類:SF+評論+パロディ
ネタバレ危険な一発ネタの評論作品
SFマニアでもなんでもないので
埋め込まれているだろう細かいネタはさっぱりわからないが
それでも楽しくしっかり読める
谷甲州 『メデューサ複合体』
★*3 分類:冒険SF+薀蓄
土木建築SF
ただこの話だけだと
SFなのかというと舞台が宇宙だからなだけで
地上で土木建築薀蓄職業ものとしても成り立つとは思う
がそれをいったらあれもこれもSFでないか
『クレギオン』のように大ネタふるうとSFという感じがますます感
職業ものとしてはそこそこだがSFと結びつけて効果的かというとどうか
ハインラインなら同じ題材でもっとエンタメ的に面白く書く気がする
山本弘 『アリスへの決別』
★*3 分類:SF+俗
再読
前回書いたとおり「俗」な見方で次に来る(下にある)作品と比べ
「浅い」のだが
「浅い」から作品として悪いわけではない
狭い範囲への訴えだからより趣旨が明瞭だし
おおくのわれわれに合わせた程度として適当である
もっともそうなれば「ロリコンドン引き」で終わる気もしないではない
長谷敏司 『allo,toi,toi』
★*5 分類:SF+変態
ファン心理に拠る贔屓目フィルターの曇りを取るのが困難
こういう中に並べるとちゃんとSFの文章にみえるし
いつもの完全に完璧に全壁に変態さんにみえるし
アニマがメイゼルのようにみえてやばい
そういうわけでSFとして他と比較するのは無理
好きと嫌いと興味の関係とかいちいち壷に入り過ぎ面白すぎてまずい
長谷せんせはやっぱりこっち側だぜときもいことを思う
眉村卓 『じきに、こけるよ』
★*5 分類:小説
どこがSFなのかわからないが趣深い心境小説
私小説という分類が国語教育の補助資料集みたいな本に載っているが
この作品がそれだとしてその分類の無意味さを思う
また「老い」とか「孤独」とかもただようが
それを周囲と社会と接続しないところが作品の味で
やはり私小説とはなんだかわからない
酉島伝法 『皆勤の徒』
★*4 分類:絵本+ファンタジー
ないぞうどろへどろな軽妙ぐろぐろ描写のファンタジー
そういう描写がわりとすべてで小説としてはよくわからない
絵+雰囲気描写文という「絵本」の形式が適当では
長谷せんせ作品は好みに合いすぎていて他を比較並べるのが難しいが
沖方、小川、津原の3方はもはや実力に疑いなく高品質安定
円城作品はいつもどおり何が書いてあるかわからないがすごそうさ安定
初めて読んだひとでは
伴名練『ゼロ年代の臨界点』は一発ネタ風なので今後次第
眉村卓『じきに、こけるよ』もあたりはずれが大きそう
という印象で新規開拓まではいかない感か -
Posted by ブクログ
鴨が偏愛するコミック・アーティスト、弐瓶勉氏の代表作「BLAME!」を元ネタに、現代日本を代表するSF作家が腕を振るった二次創作アンソロジー。
「BLAME!」を読んだことのある方ならお分かりの通り、あの作品は世界設定が全てです。その世界の中で、どれだけ物語を展開できるかが腕の見せ所なわけで、プロのSF作家としても面白いお題だったんじゃないかと思いますねー。収録された5作品は、どれも全く異なるテイストの作品でありながら、ちゃんと「BLAME!」の世界の中で展開しており、なおかつ幅広いイメージを読者の眼前に提示します。「BLAME!」の世界観の揺るぎなさ(換言すると、細かいところは各自の想像に委ねても問題ないぐらい必要最小限で柔軟な初期設定)がよくわかる、「BLAME!」ファンにはたまらない作品集ですね。
一方で、「BLAME!」を読んだことが無い人にとってどうか、という視点では、結構ハードル高そうな気が。あの世界観を肌感覚で理解していないと、よくわからないまま終わってしまう可能性も高いと思います。
鴨的には、やはり酉島伝法・飛浩隆の両氏が圧巻。とんでもなく美しい舞台設定で魅せる酉島作品、圧倒的なタイムスケールで「悲恋もの」を描いてしまう飛作品。キャラクターが魅力的な九岡作品、ハードSFとして「こう来たか!」と唸らせる小川作品。いずれもさすがの読み応えです。
ただなぁ、野崎まど作品が・・・orz 癖のある作家だということは事前知識で知ってはいましたけど、鴨はこれダメですわ(^_^;これが収録されていなかったら☆5つだったかなー。 -
Posted by ブクログ
さっぱり意味が分からなかった。
分からないなりにも読み続ければどこかでブレイクスルーが訪れるはずだ、そう期待してページを捲るも、その瞬間は訪れず。しかしそれでもページを捲ってしまうというこの不思議。
主人公(がそもそも誰なのかさえよく分からない)に感情移入して物語に没入してしまう、というよりも、
この世界は何なのか? 何が起きているのか? 何が描かれているのか? という、いわば「知的好奇心」によってページを捲っていたように思う。
分かんなさすぎて面白い、というか。
それだけ世界観が緻密で、盤石で、何よりも魅力的だったということだろう。
円城塔氏が激賞なのだそうだけれど、氏の近著『エピローグ』を読んだときに思ったのと同じで、
「次の文明を担う知性体がこれを読んだとして、どう思うのだろう?」と感じた。
ただの「おとぎ話だった」で終わるのか。それとも「予言の書であった」、とされるのか。 -
Posted by ブクログ
「結晶銀河 年刊日本SF傑作選」大森望、日下三蔵/編
SFアンソロジー。色々。
2010年刊。第四集。
アツいですね、単純に冊子の厚さも厚いけど、非常に充実した読み応えたっぷりの2010年刊です。
本編に加え、大森さんと日下さんの解説、付録類の充実も特筆です。
全13編。
「メトセラとプラスチックと太陽の臓器」冲方丁…新たな臓器を獲得したことで、超長命社会が実現しようとしている世界の前夜譚。エッセイの形式が読みやすい、冲方丁の印象変わりました。
「完全なる脳髄」上田早夕里…サイボーグスペクタクル?もっと大きなストーリーから切り取った一章という感じ。正統派な娯楽小説、もっと読みたいなあ。
「光の栞」瀬名秀明…書物と身体性の関係を、生体製本と云う衝撃的な題材で描く。でも、とても詩的。穏やかな詩歌。…正直、読んでて美しいなとは感じるんだけど、結局何が言いたいのか分からなかったなあ。
「ゼロ年代の臨界点」伴名
練…架空の日本SF史。あ、設定がSFなのではなくて、架空の「女流SF作家」のエピソードをそれっぽく紹介すると云う、、本作自体はSFではないですが、たまにはこんなのもアリですね!
「allo, toi, toi」長谷敏司…小児性犯罪者の脳内思考をスキャニングする、サイバネティクSF。素晴らしく完成度高い。脱帽。ペドフィリアの薄氷の危険さを、巧い設定でタイムリーに問う。脱帽。
「皆勤の徒」酉島伝法…第2回創元SF短編賞受賞作。物凄い緻密さ、圧迫感です。結局、異星の話?異世界の話?
全体通しての感想は、正直、“非現実的な娯楽性”と、“難解な科学哲学”の共存が受け容れられていない風潮も感じつつ。
たぶんSFオタクは昔からジャンル間闘争というか、『こんなものはSFとは認めない!』という土壌があって、その中でこれだけ手広くカバーしたアンソロジーを編める選者のお二方に敬意。
僕自身としては、明確に科学技術・理系空想の描写がありながら、叙情的な、ストーリー性の高いSFが好きなので、本集の中では「五色の舟」が好みでしたね。
でも、安直に、物語としてすんなり浸透してこないから、という理由で、難解な作品群を批評してしまうのが悔しいんですよ。
だから、円城塔、瀬名秀明などの作品を、脳みそ使って感じたいし、難解だからってだけで有り難がるようにもなりたくないなあ、と。
楽しいは正義。けど幅広く受け容れていないと、判断の可能性も狭まってしまう。そんなことをいつにも増して感じされられた一冊でした。(4) -
Posted by ブクログ
最近のSFアンソロジーは当たり続きだ。これも。メモとしてお気に入りの題名列挙。
冲方丁「メトセラとプラスチックと太陽の臓器」自分の寿命は普通(80歳かそこら)のままなのに、我が子(とその世代)は300歳まで生きられるようになったら・・・? 妊娠中の妻とその夫の日常の呟き。子どもからしたら、人生の2/3、200年以上は親がいないんだな。これは忘れちゃうよな。そう思ったら親は悲しくなるわな。
小川一水「アリスマ王の愛した魔物」森羅万象を計算しつくす算廠と、それを手にした王子様(ただしブサメン)のお伽話。
上田早夕里「完全なる脳髄」フランケンシュタインハードボイルド
津原泰水「五色の舟」未来を予言するという半牛半人の"くだん"。これを迎えに行こうとする見世物一座。重なり合う並行世界。なんという贅沢な三本立て、幻想ホラーファンは必読。美しくせつない余韻を堪能
長谷敏司「allo, toi, toi」"お気に入り"とか"面白かった"などの言葉は全く当てはまらない。はっきり言えば不快感-または恐怖感-にのたうちまわるけれど、扱っているテーマから目が離せない。そんな作品。幼女への性的虐待・殺人を犯して刑務所入りした幼児性愛男へ、脳内の「好き嫌い」を整理するデータベース管理ソフトをインストール。感覚器から来た動物的好き嫌いと、文化と社会の上に築いた社会的な好き嫌いを整理することの意味とは。
伴名練「ゼロ年代の臨界点」ゼロ年代ってそっちかい! -
Posted by ブクログ
はじめの方の数編が大変面白かった。
冲方丁「メトセラとプラスチックと太陽の臓器」
小川一水「アリスマ王の愛した魔物」
二編とも「物語ること」とSFの相性の良さをよく示している。楽しい。
上田早夕里「完全なる脳髄」
私は、世評の高い「華竜の宮」をどうにも面白いと思えなかったのだが(よくできているとは思った)、同じ設定の本作はとても良かった。こういう人造人間モノは大好き。
津原泰水「五色の舟」
先日「11(イレブン)」の巻頭作として読んだときにはそんなにいいと思わなかったのに、今回は素晴らしい!と唸ってしまった。SFのラインで読んだからかな。(以前「バレエ・メカニック」を読んだときも、SFが炸裂した第3章を読んで初めて、幻想的な第1章の美しさがしみじみ味わえたのだった。)色彩豊かな(毒々しさや暗闇も含めて)イメージが圧倒的で、しかもガチガチのSFだ。確かに傑作。
円城塔「エデン逆行」
おもしろーい。何が書いてあるかわからんけど。円城作品には時々!!!となる。大方は???なんだけれど。これは何回も笑ってしまった。くどいけどわかったわけではないのよ。 -
Posted by ブクログ
酉島伝法氏の小説を初めて読んだ。こういうのもSFというのかな? 日本的な何かと空想的な世界観を混ぜ合わせた感じ。著者の作った造語がたくさん出てくるので、それも現実とはちょっとずれた世界観というか空気感を作っているが、造語だけにイメージが全くわかない。それは味なのかもしれないが、せっかくの商店街や町並にという舞台が思い描けず、本の字をそういうものかなと思いながら追っていくだけのページもあった。それさえなんとかなれば、こういった奇妙な世界はとても好きなので、楽しく読めた。あと、柳井は最初やべー奴だと思ったら、だんだん頼もしくなって宮原弟氏と良いコンビになっていたのが良かった。でも、イメージできないのでAIで無常商店街や蓋互山、野辺浜がどんなものか画像化できないかなー。印象に残った言葉「なぶら天秤」