酉島伝法のレビュー一覧
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酉島伝法の本がまたもや創元日本SF叢書から出た。皆勤、宿借りに続く3冊目となる。「金星の蟲」を読み終わった時に、もう酉島伝法の本は読みません!と宣言したものの、創元日本SF叢書から出るならば少しは改心したのかなと思ったが・・・全然改心していなかった、はぁ~~。とは言うものの、少し違和感がある。酉島伝法ってSFマガジンの最後に毎月毎月キモチワルいイラストを描く。だから新作の装画もキモチワルいと予想したが、この本の表紙は親しみやすい装画だった。作品の扉絵も同じ。作者は漫画家でイラストレーターの「カシワイ」さんだった。これで、この本へのハードルが一気に下がった。俄然読む気になったが、作品の内容は従来と同じだった・・・カシワイじゃなくてカナシイ。
さて、作品だが、いつも通り序盤は至って普通。だけど、いつ造語が来るのかと待ち構えていたら、来ました「ビー語」。英語(エー語)に対応する造語なのだが、一旦現れると堰を切ったように造語が押し寄せてきて、一気に読書速度が1/10以下に低下する。でもこれは既に織り込み済み。造語の意味を理解することをやめる、感覚的理解に切り替えて読み飛ばす。つっかかっていたら前に進めない。このスキルにより読書速度をアップできたが、余りの多さに心が折れそうだ、脳が確実に麻痺していくのが判る。
ジャンルとしては異世界もの。最近、アニメで流行っている異世界ではなく、強いて言えば宮澤伊織の「裏世界ピクニック」シリーズに近い。知らない間に(最近では行き方が判ってきた)異世界に入り込み、トラブルを解決して元の世界に戻る。そう考えると、本作品は正統派異世界SFとカテゴライズできる。
1作目の「無常商店街」をキッチリと時間をかけて読み込み、そのパターンをきちんと理解することで、2作目、3作目の作品の読書速度は著しく速くなり、理解度も高まる。特に中編の書き下ろし3作目「野辺浜の送り火」はエンディングに向けての大きな盛り上がり・高揚感を気持ち良く感じ取ることが出来た。
最後に、編集者を交えた酉島伝法とカシワイさんとの対談集がおまけで付いていた。造語の作り方が披露されていた。また、本作品を作るにあたってきちんと取材をしているとのこと。写真のイメージが作品の幅を広げる役割を担っている様だ。
これで、無常商店街シリーズの接し方を完全にマスターしたので、次作で長編が来ても大丈夫。でも、これで完結するかもしれないし、舞台を少し変えてまた会えるかもしれない。いずれにせよ、受け入れ態勢はもう万全なので、あとはワクワクしながら待つだけ。 -
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ネタバレ■金星の蟲(『夏色の想像力』草原SF文庫、2014年初出)
初作品から異様言語!
途中から移行して、世界の見え方が変わる、ここはちょっと新鮮。
■環刑錮(SFマガジン2014年4月号初出)
解説で比較的わかりやすいと書かれているが、そうか??
■痕の祀り(SFマガジン2015年6月号初出)
顕現。って、「SSSS.グリッドマン」とかを連想。「ゴジラS.P」とか。円城塔が関わるし。
あと、「怪獣を解剖する」という内容ズバリな漫画や、「怪獣8号」。
ま、もともと「ウルトラマン」だし。
■橡(現代詩手帖2015年5月号初出)
詩か……ますますわからんな。引用されている詩は好きそうなのに。
■ブロッコリー神殿(『別冊文藝春秋』電子版7号初出)
地の文が植物って、これは結構面白く。そこそこわかりやすく。
■堕天の塔(『BLAME! THE ANTHOLOGY』早川書房、2017年初出)
ずっとずっと落ちて落ちていく。
ミルハウザー「アリスは、落ちながら」も興味あり。
■彗星狩り(小説すばる2017年6月号初出)
ちょっと可愛い話。
■クリプトプラズム(単行本で書き下ろし)
・・・・・
■幻視百景(SFマガジン連載中。文庫で追加収録。抄録)
絵と文。
テラフォーミングッ
◇解説/大森望 -
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早川書房さん公式Xの紹介を見て予約購入したものの、しばらく積んでしまっていた一冊(全然珍しくもない!)。ようやく崩すことに。
初・酉島伝法ということで、どんな作風かも全く知らずに読み始めたのだが・・・これはなかなかにクセが強い。難解・独特な世界観、それを補強するために多用される造語や難読漢字・・・もう読み進めるのだけでも一苦労よ。(ハードSF等の難解テキスト・設定に耐性がないとギブアップ請け合いかと。)
一番目に収録されている表題作「金星の蟲」。一見普通の日常。しかし、「金星サナダムシ」という謎の単語が登場してから、徐々に明らかになっていく吐き気を催すような異常な世界。それを"常識"として生活する人々・・・いやぁ大好物!
と、読み出しは良かったのだが、それ以降は刺さらず、ただただ読みにくい文章をひたすら読み進めるだけになってしまった。(何度寝落ちした事か・・・。)
著者の代表作『皆勤の徒』は読んでみたいなーとは思うが・・・まあしばらくは良いかな。 -
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ネタバレ集英社文庫で酉島伝法作品出すのね・・・という感想はさておき、うーん、これはレビューが難しいなぁ。
鴨は氏のデビュー作「皆勤の徒」が大好きで、何度も読んで、その度に感動しています。あの独特な造語の本流、軽く流し読みするだけでは全く理解できない分厚く不可解な世界観、作品全体に漂う切切とした哀感、そして不穏な空気・・・唯一無二の作風だと、鴨は思っています。
他方、本作「るん(笑)」は、科学とスピリチュアリズムが逆転した日本(おそらく現代とほぼ変わらないでしょう)を舞台に、38度を「平熱」としたりホメオパシーで病気を治そうとしたり、猫が人を誑かす害獣と見做されて殺された死骸の山が存在していたりと、価値観が逆転することにより発生する恐怖をじわじわと描いています。ただ、その筆致はあくまでも淡々としており、登場人物の一部が「この状況はおかしい」と薄々感じていることも淡々と描き出し、特にこれといった事件が起こることもなく何も解決せず、この連作集は幕を閉じます。
怖いです。とても怖い作品です。でも、酉島作品としては、ちょっとイマイチかなぁ・・・というのが、鴨の偽らざる感想です。
グレッグ・ベア「凍月」を読んだ時と似たような感想になってしまうのですが、グレッグ・ベア同様、酉島伝法も針の振り切れた理解不可能な世界を丸ごと描き出すことを得意とする作風です。
そうした作風の作家が、実社会と地続きの価値観を引きずりながらSFなりファンタジーなりを書こうとすると、どうしても「・・・で、結局何を書きたかったの?」との違和感が拭いきれなくなってしまうんですよね・・・。
本作「るん(笑)」も、スピリチュアル系を盲信することの恐ろしさを表現した怖さはビシバシ感じますし、氏の他の作品「四海文書註解抄」(ハヤカワSF文庫「異常論文」(樋口恭介編)に収録)にも、カルト宗教的な”何か”に関する恐怖が描き出されていて、同様の怖さを感じさせます。
でも、これは本当に鴨の好みの問題なんですけど、酉島作品はやはりどこか遥か遠いところの、異質だけれど温かみのある、あの独特の世界観にどっぷりハマって”旅をする”読書体験が忘れ難いんですよねー。「るん(笑)」はあまりにも実社会に近すぎて、あまり入り込めなかったなー、というのが正直なところです。
SFというより、よりリアルなホラーとして読んだ方が正しい作品かもしれませんね。 -
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高山羽根子、酉島伝法、倉田タカシの三人の作家が、架空の国を旅しながら(どうやってかはともかく)手紙を送り合うという設定の「旅書簡集」。そして巻末エッセイ(あとがきのようなもの)は宮内悠介。お、東京創元社のSFアンソロジーシリーズ『GENESIS』で見かけるような作家たちだぞ、と思って手に取った。
読んでみると、GENESISを読むときに似た幻想浮遊感に見舞われる。そして、時折り「わかる」地平に降り立つのだが、そこもどこかしらなにかしらずれている。私が「わかる」と思っていることなんて世界の中のほんの一部なのだなあなどと思っていると、突然、人生哲学とか人間の本質みたいなことを考えさせるようなフレーズが、あったりなかったりして驚かされる。そしてそれよりなにより、この三人の三つの旅が、意外な形でつながりを見せてきたりこなかったりする様に目が離せなくなり、個々の旅の世界を楽しみながらも、いったいこの大きな物語の終着点はどこなのか、それを見届けたいという思いが否応なく高まっていった。
と同時に、現実問題、こんな付かず離れずが絶妙な合作本はいったいどうやったら作れるのだろう?この三人の関係性は?出版社が仕掛けて三人集めて「よろしくお願いします」でできるものなのかな?といった制作の裏側への興味もわいてくる。それへの答えは、ひとつは奥付け手前の「本書は〜を元に〜」といった説明文にもちろんあるのだが、そういった事実関係の説明とは異なる“階層”での述懐が宮内さんの巻末エッセイにあり、これがまた良かった。私が映画監督だったら、この巻末エッセイを含めた本書全体を映画化したい。
以下、自分用断片備忘メモ。
・ほふりの村。祝祭感。(倉)
・着水した飛行機。ハリウッド映画味もほんのりありつつ、おかしさと、得体の知れなさと。(倉)
・島々の話。UVクリーム騒動の顛末に笑い、“満潮娘”とのひとときに癒される。(高)
・川が分かつ街。こちらとあちらに分かれていて、いろいろと暗喩的。美術館がある。(倉)
・雨とカーフューの街。「行政手続きが電子化されてAIが全般的に判断を行うようになったときに入り込んだバグが・・・」というようなSFらしい話が。(倉)
・変な通貨の国。“踊り”が通貨。(高)
・鳥の村。よそ者である自分の魂がそれに完全に乗り移るまで、案山子になり続けるという地元の儀式に参加。(酉)←酉島さんの旅は、敢えてここまで個々に挙げなかったが基本過酷なので、この程度のことはきっと大丈夫だろうと思うのだが、絵葉書に描かれた巨大案山子(その一部として生きている酉島さん自身を含む)の絵は胸に迫るものがある。 -
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SF作家3名がそれぞれの旅行先で見聞きしたことを報告しあうという設定で書かれた、書簡体のリレー小説。世界のどこかにあるかもしれない不思議な土地をめぐる空想旅行記。
東アジアを思わせる日常的な風景が徐々におかしな方向へズレていく高山さん、旅行先の土地にとって旅人は常に"異分子"であることをホラー的に演出する酉島さん、一番純粋に観念的な幻想の国を組み立てる倉田さん、三者三様の作風の違いが楽しい。そんな三人の旅を、カニ頭の謎の人物と郵便局員シュヴァルが繋いでいく。
酉島さんはどれも不条理小説のようでゾクッとする面白さがあったけど、特に"外国人がイメージするニッポン"をイジり倒した「ッポンの国」は、独自の言語センスも光りまくる独壇場。倉田さんの「雨とカーフューの国」も旧社会主義国みたいな嫌さがあるが、一番好きなのはショーン・タンの絵本にでてきそうな「飛行機の街」。高山さんの連作が一番エッセイとフィクションのはざまを行き来する旅行記らしさがあると思う。
てっきりコロナ禍を受けて生まれた遊びかと思っていたら、三人が売れっ子になる前の2014年からだしていた同人誌だというのもSF的なオチ。