西加奈子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ特に印象に残ったキーワードは下記。
貧困、マッチョイズム、自己責任論、愛着形成。
たった一人の誰かが人生のある時の大きなそして唯一の支えになり得ること。
誰かをケアする(助ける)こと、助けてと声に出すこと。
病んだ母親から虐待を受けて愛着形成、自己肯定感の育み(とは少しニュアンスは違う気がするけど)がうまく出来ず、必要なケアを受ける機会がなかったアキ。
父親の事故をキッカケに人生に対する強い金銭的な制約を受けることになった主人公。
社会が自己責任論に寄りすぎてるというような主張について。
私自身の感覚としては、
この本の登場人物たちを思い浮かべると頷ける気はする一方でSNSなどで見る「自称社会的弱者」に対しては「みんな大変ななかなんとか踏ん張ってるのに甘えてる」「一生懸命やってる人にタダノリしてサボろうとしないでほしい」と思ってしまうことがこの数年多くなってきた気がする。
これは恵まれた立場にいる人間のマッチョイズムの振りかざしなのかな。
前提として社会構造として男性と女性では圧倒的に女性が虐げられ機会を奪われて馬鹿にされ、男性の何倍も何かを証明しないと認めてもらえない社会だと揺るぎなく思っている。ただ、男性のマッチョイズムの強さによる生きづらさもきっと明確な痛みを伴ってあるんだよなと感じる。
主人公もアキも、明快ではないけど最後には孤独ではない予感があってそこが読者としては少しだけ救われる気がした。
読んでいて苦しくなる迫ってくる時間の多い読書体験。
でも、読んでよかった。
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Posted by ブクログ
ネタバレなんだか胸にずっしりときました。
考えさせられるテーマが、自分の中での気付きが山のようにあって。とても良い作品に出会えたなと思いました。またすぐ読み返しそう。
上、中巻でうまいこと世渡りできていた主人公。年齢を重ね老いへ向かう、30代半ば。自分の人生を振り返って、何を得たのだろうかと考え、苦しみ、友人を妬み家族を恨むようになる。心理描写がとてもリアルで、歩だってそこまで悪い人間じゃないのにと、同世代の私は読んでいて苦しくなりました。姉の言葉に耳を傾ける事ができた歩は立派だと思いました。
個人的に、上、中巻で気になってた両親の離婚の謎や、どうしてるかなと思い巡らせてた友人たちのその後が描かれていたのがスッキリして嬉しかったです。現実ではきっと難しいけど、それはきっと小説の醍醐味。
そしてやはり「何を信じるか」について読者への深い問いかけと、それがいかに人間の力になり人生を左右しうるか、強く訴えるものがありました。
「サラバ」の締めくくり、とても素敵でしたね。読み終えてもまだ世界観に浸っていたいな、ナイル川の情景が目に浮かぶようです。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ子供の頃のとても短く儚い思い出を描いたサラバ上編。
国籍の違い、宗教の違い、文化の違いで人間は無意識に他人を下に(自分と違うと一線を引く)見てしまう時がある。
異国の相手だとそれが顕著に出る。
しかし、同じ国籍の相手でも同様のことが起こる。
学歴の違い、職業の違い、家庭環境の違いで同じ文化の相手さえも見下してしまうことがある。
そして、そんな相手を「僕はそんな環境にいるあなたを理解していますよ」と安全な場所から見下ろしてしまう。
全ての人間が抱えている悪の部分がこの本では描かれている。
歩がヤコブに感じた「エジプシャン」でも「イスラム教徒」でも「向こう側の人」でもなく、ただただ「ヤコブ」であるという気持ちが大事なのではないか。
肩書ではなくただその人として接するということ。
歩の母はそれに気付けず歩を「歩」ではなく「(まだ意思決定ができない)子供」としか見れなかったから「歩」の気持ちもなしに強引に日本への帰国を決めてしまったのだろう。
年齢や国籍や信条など関係なくただその人であるということ。
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Posted by ブクログ
西加奈子の小説なのだから、痛いであろうことはわかっていた。
覚悟はしていた。
けれど、想像以上に痛かった。痛すぎた。
親に十分な愛情をかけてもらえなかったり、学校で悪目立ちして居場所がなかったり、働いても働いても生活が破綻していくばかりだったり、俺とアキ、どちらの人生も底なし沼のように静かに沈んでいく。
でも辛かったのは、俺が就職した先が、テレビの制作会社ということだった。
娘が最初に就職したのがテレビの制作会社で、高校生の時から放送局で取材したりビデオの編集をしたり、テレビ局でローカル情報番組の裏方のバイトをしたりして経験豊富だと思っていた娘が、たった半年で会社を辞めた。
そのことがどうしても思い出されて。
少しだけ話してくれた部分だけでも、確かに家に帰って寝る時間もお風呂に入る時間もなくて、会社の床で雑魚寝とかはしていたらしいので、俺の話は決して盛っているわけではないと思う。
俺が追いつめられれば追いつめられるほど、そうなる前に娘はやめてよかったな、とか、こんな大変な職場で働いていたのかと改めて怒りがこみ上げたりとか、どうも平常な気持ちで読めない。
結局最後も夜が明ける直前なわけで、明けてはいない。
俺がどんなに頑張ったところで、世の中は変わらない、どころか、より閉塞感が強くなっているような気がする。
それでも、高校時代と言う、人生のほんのひと時に、俺とアキの時間が交差してよかったと思った。
俺に会って救われたアキと、アキとの出会いに支えられていた俺。
自ら死を選ばないでくれて、本当によかった。
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