西加奈子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ幸い自分自身は(まだ)癌を患ったことはないけど、友人にそれこそ乳癌が見つかったり、全然違う突発的な病気で同級生が今年亡くなったりするたびに、それが自分だったとしても全くおかしくないという怖さを感じつつも、自分にそんなことが起きるということを少しもリアルに想像できていないことを痛感する。その告知を受けることの絶望感、治療の辛さ、消えない不安、それを知らずに済んだらどんなに良いかと思うけど、今自覚なく何か大きな病気に侵されている可能性もある。健康でいること、日常生活を送れること、家族といられることがどんなに幸せか、当たり前のようでそれを失った時に取り戻すのがいかに難しいか…それはやはり想像できないししたくもないなと思う。
全然違うけど、子宮外妊娠で緊急手術を受けることになった時、ショックを受けているのにどこか他人事というか、自分の身に起きているということをちゃんと理解できないまま麻酔で意識を失ったような気もする。
西さんは今も元気で活躍されているということで何より。会話を和訳する時に全部関西弁なのが新鮮で、そこに登場人物たちの明るさを感じられてすごく良かった。
カナダは行ったことなくて、寒くて天気悪そうなので住んでる人も陰気なんだろうというとんでもない偏見を持っていたけど愛に溢れているみたいで、一度行ってみたいと思いました。 -
Posted by ブクログ
『サラバ!』上巻を読んでまず感じたのは、これは海外を転々としながら育つ少年の成長物語ではなく、「他人の価値観を生きる苦しさ」を描いた物語だということだった。
物語は、イランで生まれた圷歩が、外交官である父の仕事に伴ってエジプト、日本と住む場所を変えながら成長していく姿を描く。異文化の中での暮らしや、個性の強い家族との日常はユーモラスに綴られているが、その奥では歩が常に「周囲に合わせること」で自分の居場所を守ろうとしている姿が浮かび上がる。一方で、姉の貴子は他人の評価を恐れず、自分が信じたものを貫こうとする。正反対ともいえる姉弟の対比が、物語全体に強い緊張感を生み出している。
この作品が描いているのは、異国で育つことの苦労ではない。人は周囲に受け入れられたいと願うあまり、いつの間にか「本当の自分」よりも「求められる自分」を演じるようになってしまうという現実である。歩は決して弱い人間ではない。ただ、人の期待に応えようとする誠実さゆえに、自分の意思よりも空気を優先してしまう。その姿は特別な境遇だからこその話ではなく、多くの人が一度は経験したことのある感情として胸に迫ってくる。
印象的だったのは、姉の貴子という存在だった。彼女は型にはまることを拒み、周囲から奇異の目で見られても、自分の信じるものを手放さない。その生き方は危うさも抱えているが、歩とは対照的だからこそ、「自分らしく生きる」とは何かという問いを読者にも投げかけてくる。読んでいて何度も考えたのは、自分の人生を苦しくするのは環境そのものではなく、「こうあるべき」という他人の物差しを、自分の物差しとして受け入れてしまうことなのではないかということだった。
上巻は、まだ大きな結論を示す物語ではない。むしろ主人公がさまざまな価値観に触れ、迷い、自分という存在を形づくるための長い助走である。それでも、その助走が丁寧に積み重ねられているからこそ、歩がこれからどのような選択をし、何に別れを告げることになるのかを知りたくなる。壮大な物語の始まりでありながら、一人の人間の心の揺らぎをこれほど繊細に描き切っている点に、この作品の大きな魅力を感じた。
『サラバ!』上巻は、少年時代を振り返る物語ではない。自分の人生を生きる前に、人はどれほど多くの他人の価値観を背負ってしまうのかを描いた物語である。読み終えたあとに残るのは、歩がこの先どう成長するのかという期待だけではない。今の自分が選んでいる生き方は、本当に自分自身の意思で選んだものなのかという静かな問いだった。
#2026年27冊目 -
Posted by ブクログ
上中は面白い!だが、下は苦しい
宗教、生活、仕事、家族、友人、恋人(粒度バラバラだが)などに課題を抱える人の希望になる作品なんだろう(自身は特に課題を感じていないので自分のための本にはならないのだが、2026.07.20現在)
(メタ的な話として)物語に何を見出すのか、なぜ物語を読むのかということを考えた。
5割は娯楽(暇つぶし)。3割は本を読む文化人(というのはかっこつけなのだが)でありたい。残りの2割は客観的な自省だろう。
様々なキャラクター、文化、生活が登場する。
共感はしえないが、(つまりはポジショントークの物語のキャラと同じ気持ちになって喜怒哀楽を覚えることはないが)彼ら彼女らのバックグラウンド、それを基にしたキャラクターになりきってその心情を察する。(ことを客観視というとして)客観視を通して現実世界の事象や人の行動の理解、それを踏まえた自分自身の立ち振る舞いのあるべき姿を自省する。サラバ!は特にこの要素が強いなと、備忘。 -
Posted by ブクログ
西加奈子氏の乳がんの闘病を描いたエッセイのような小説のようなもの。
この方の文章は濃度が濃くて一冊読み終わって次の西作品を読むまでにかなり時間をあけてしまう。
次に何を読むかは分からないが、家に積んである何かになるのかな。
癌とか、命に関わる健康業の問題に直面するとき、人は哲学的になる。人生とはなにか、自分とはなにか、なぜ自分が癌になるのかなどなど。
カナダの医療事情がすごい。乳房切除手術で日帰りって。
病気のときに限らず人は他人に迷惑をかけて生きている。迷惑をかけるということそのことが、生きているということであり、迷惑をかける相手こそが、自分にとって必要な人であるのかもしれないと思う
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