黒原敏行の作品一覧
「黒原敏行」の「シャギー・ベイン」「すばらしい新世界」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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小説・文芸
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Posted by ブクログ
おもいっきり作者の罠にはまってしまった。
久しぶりに推理小説のトリックに驚きました、若かりし頃読んだクリスティのアクロイド殺しやオリエント急行殺人事件を読んだ時いらいかもしれません。最近は推理小説をよんでも謎解きにこだわらず、物語を楽しむようにしていたので余計にそう感じていたのかもしれません。
探偵役のロンバートが歌手のメンドーサには下手から、ケティーシャには上手から攻略します。私は彼の成長を楽しく読んでいたのですが、その頃には作者にとって理想的な読者になっていたのです。
幻の女に対する幻想が読んでいくうちにどんどん変化して、最後には予想もしない本性をあらわします。一気読みしてしまう面白さがある上に、こころの中に濃い満足感がのこる小説です。
Posted by ブクログ
アフリカの植民地の奥地へ、雇われ船長として向かったイギリス人男性の回顧録、という形式。19世紀末のイギリスの有名古典小説。全編がロンドンの河口に浮かぶ船の上で、男が友人に語る形で振り返る。船乗りだったコンラッドの実体験が投影され、植民地支配の闇を告発する。
・病気になって死を待つばかりの黒人奴隷が集められた木陰。
・ジャングルの出張所で完璧に整えられたシャツを着る白人経理。
・白人が求める(アフリカで調達する)ものは、大量の象牙。
・象牙や、黒人を使役する対価として渡すものは「真鍮の針金」と「ガラス玉」
・美しく着飾った(はずである)アフリカ女性は、真鍮の針金を加工した装飾具と、ガラス玉の首飾りを身につけている
作中で明示されていないが、以下の関係が暗示されていると考えられる。
・真鍮の針金=金のように綺麗な色だが、西洋文明では取るに足らない量産できる品(真鍮は銅と亜鉛の合金)
・ガラス玉=宝石のように綺麗だが、こちらも西洋文明では量産できる品
一見貴重品に見える取るに足らないものを対価に、奴隷を働かせ、象牙をかき集める。
飢える黒人船員に対して、食料ではなく真鍮の針金を渡し続ける様子におぞましさを感じた。この作品を19世紀末に描いたコンラッドの、実体験に基づく鋭い視線は現代にも響いた。
Posted by ブクログ
かなり面白かった。新世界住みたい。
「幸福か自由か」という点だけでなく、「人間にとって、苦痛を生みうる複雑さそのものに価値があるのか」というところも考えさせられて楽しいですね。
新世界は、苦痛を減らし、欲望や価値観まであらかじめ条件づけ、本人がそれに疑問を持たないように作られている。ここまで露骨じゃないにしても、階級社会も条件づけも現実にあるものだし、それなら外的環境まで一貫して整えて、ソーマまでくれる新世界の方がよほど親切。
下層階級も適切に管理され、管理されていることに疑問もなく、自分の役割を好んでいるなら十分幸せそう。「問いを持たなくていい・意味を探さなくていい・役割を外から与えられる」という状態にはかなり惹かれる。
特に面白かったのは、ジョンの感情がどこまでジョン自身のものなのか、というところ。
ジョンはシェイクスピアの言葉によって自分の感情を理解している。言葉はすでにある感情を説明するだけではなく、その感情を形づくり、増幅する。その言葉を知らなければ、その感情を同じ形では知らなかったのではないか。
これは新世界の条件づけともそれほど遠くない。新世界の住民は睡眠学習によって価値観を与えられ、ジョンはシェイクスピアによって感情や価値観を与えられている。どこまでが本人の意思なのか、そもそも外的なものから影響されない「本人の意思」などあるのか。
文学は言葉を増やし、感情に名前を与え、苦痛や満たされない欲望に意味まで与えてしまう。ジョンなんて可哀想に、題材がシェイクスピアだったもんだから、女性は純潔、さもなくば娼婦の二択になってしまうし、自分の中に芽生えた小さな感情を、巨大な悲劇サイズで解釈してしまう。
思うに、シェイクスピアだけだったのが良くない。ジョンに渡すもの選べるなら、ジェイン・オースティンあたりから初めて、チェーホフを与えて、ドン・キホーテとか投与しつつ、仏教説話とか混ぜとけばどうかな、と思う。
まあとにかく、ストロベリーアイスクリームソーマを飲み、触感映画を観て暮らしたい。それに尽きる。