二階堂黎人の作品一覧
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Posted by ブクログ
二階堂蘭子シリーズの長編ミステリー。
作中でも度々言及されてはいるが、二階堂蘭子シリーズは江戸川乱歩や横溝正史の雰囲気を踏襲していて、少しノスタルジックな日本の古き良き怪奇推理小説の面白さを発揮している。シリーズの今作までの作品は、怪奇的な要素はありつつ本格ミステリーとしての面白さもあったが、最後まで読むとどちらかの側面での言及が強くなってしまい、少しバランスの悪さ、小説としての読みにくい部分があった。まとめて欲しい部分や、過剰気味に思えてしまう挿話ストーリーがくどい印象を与えてしまう事があった(それでも純粋に面白い訳だが)
今作では「アロー館」と呼ばれていた洋館を舞台に、アロー館に住んでいた謎の外国人夫婦と彼らの失踪後に館を手に入れ暮らす様になった志摩沼家の一族の物語であり、女当主が死の間際、遺言を作り直す事が引き金になり、世にも悍ましい連続殺人が起きる。冒頭はミステリーのお約束であり、癖のある一族達と遺言を巡るトラブル、莫大な財産を巡る争い等王道中の王道であるが、その舞台に「館に出る幽霊」「徘徊する甲冑」等を盛り込み、更には物語が進行するにつれて「中世の魔女」の恐怖を盛り込み一挙に異質なミステリーへ変貌する。
また、帯にも記載されている様に今回、蘭子に過去最大の危機が訪れる訳だが、その場面はある意味ミステリー小説のタブーを破る様な仕掛けが発生し、僕自身も読みながら唖然としてしまった。この場面から更にもう一段、今作こミステリーとしての熱が上がった印象があり、終幕に向けて怒涛の如く進んでいく。
そして何よりフーダニットの面白さも存分にあり、作中何度か唸ってしまう場面がある。勿論読みながら犯人の予測や結末の推理をする訳だが、見事に驚かされてしまったし、最後の最後まで楽しむ事ができた。僕みたいな古いミステリー読みは、登場人物を全て疑えと心の声が聞こえる訳だが、今作はページを跨いでも足りない程の登場人物がおり、しかもそれぞれにきちんと役割が与えられていてほとんど無駄のない陣容で読者を迎え討つ。大変に骨太な作品だった。
人狼城を先に読んでいるが、負けづ劣らずの傑作。ある意味で蘭子シリーズの代表作と言えるほど僕は衝撃的な作品であった。冒頭に述べた様にバランスが良いし無駄もない。一部の動機については年代を感じるがそれでも驚く程洗練された作品だった。
Posted by ブクログ
人狼城の恐怖 第四部 完結編
第三部にて蘭子達は謎のグループに捕えられて「青の狼城」に連れ去られる。待ち構えていた人物から、狼城で何の事件も起きていない、人狼城を気の済むまで調査する様にと自信ありげに告げられ調査に乗り出す。そして、事実どんな痕跡も発見されない。
冒頭からどうやってこの問題を解決するのか疑問だったが、黎人が述べる実は四つ子の城説よりももっと衝撃的で確実な城の秘密が明かされる。
僕は第一部の際に実は白は一つなのではないかと考えたのだが、全く違ったトリックになる。偽装は幾つかあるが、城自体のトリックも面白いし、更に明かされる衝撃的結末には驚きがある。
作品のクライマックスはどちらかといえば怪奇小説的な部分もあるが、江戸川乱歩を読んでいた自分からすればとても楽しめたし見事の一言。やはり人智を超えた「怪物」が相手だと盛り上がるし面白い。もう少しスリリングでも良かったが充分に楽しむ事ができた。一方でとある登場人物について、(以下ネタバレになってしまう)
そこで死ぬ必要があるかという部分で命を落としてしまうわけだが、グレゴール刑事が生きていた方が物語としては面白いし、あの様な退場の方法はとても残念に思う。
犯人達は悪い奴ばかりだが、とある女性についてはどういったキャラクター設定になっていたのだろうと気になった。僕は彼女が真犯人であると予測して見事に外れたが、ある意味で彼女が今後、蘭子シリーズにどのように絡んでくるのか(登場しないかもしれないが)心待ちにしたい。
敵役の配役は見事だと思う反面、実は第五部未来編の様な追加エピソードがあって欲しい程、犯人グループの謎は深いままである。
遂に読み終えてしまったなあ。第四部まで通して読み応えがあり、中弛みなども無い為大満足の作品だった。最後、少しオカルト的な要素を盛り込みつつ、また、蘭子が失踪してしまう衝撃はあるが、リアルタイムで読んでいない僕たちは彼女の帰還を感動的に感じる事は少ないだろう。彼女の帰還後にはとある衝撃があるのだが、おそらく敵である伯爵との関係が築かれるとは思えないので、もう一方のドラマがあったのだろうと想定する。
いままで分作で、シリーズとして長く続く作品はいくつもあるが、これだけ重厚で謎めいていて疾走感のある一括りのミステリーはほとんどないだろう。これまでの蘭子シリーズは一部長ったらしく思ってしまう部分もあったが今作では全く感じなかった。
蘭子シリーズでまだ読んでいない作品もあるが、意外に数が少ないので、今年度中には新しい探偵を探さなければと少し寂しい気持ちだ。