亀山郁夫の作品一覧
「亀山郁夫」の「悪霊」「ショスタコーヴィチ 引き裂かれた栄光」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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「亀山郁夫」の「悪霊」「ショスタコーヴィチ 引き裂かれた栄光」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
東京外国語大学外国語学部ロシア語学科卒。同大学大学院外国語学研究科修士課程修了。『磔のロシア』で大佛次郎賞、『破滅のマヤコフスキー』で木村彰一賞を受賞。その他著書に『「カラマーゾフの兄弟」続編を空想する』、『ドストエフスキー 謎とちから』、『破滅のマヤコフスキー』などがある。ロシア文学者。
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Posted by ブクログ
ミーチャの印象、ひと言で言うと「クソデカ感情マン」でした。愛も怒りも破滅願望も恩義も全部デカい。
重要なキーワードのひとつが「罪」かと思う。無実の罪で囚われるミーチャ。殺人をそそのかした罪の意識に苛まれるイワン。
この「罪」という単語が原文だと何になるのか気になる。「謎解き『罪と罰』」(江川卓さん、新潮選書)によると『罪と罰』の「罪」という単語には作者の拘りがあるらしい。ロシア語で罪を意味する単語はふたつあり、『罪と罰』に採用された単語は人間の決めた法律や社会的規範という掟をこえる行為のことらしい。(もうひとつのほうは神の掟に背く行為を指す)。私のイメージだと『カラマーゾフ』に出る「罪」という単語は、神の掟に背く行為で、良心の呵責と関連のある「グレーフ」なる単語。ちょっと調べるのは時間かかりそうなので、ひとまずぼやくていどで。
個人的に気になる関係性はスメルジャコフとマリア・コンドラーチエヴナさん。3巻にあった2巻のあらすじだと「デート」って言われてたし。4巻でマリアさんがスメルジャコフの世話してるし。
私が何より気になるのはマリアさんの名前。5巻『ドストエフスキーの生涯』によるとマリアはドストエフスキー の母の名前と同じらしい。ありふれた名前だから注目するほどじゃないと思うだろう。でも殺されたフョードルの名前をドストエフスキー自身の名前が同じ点の意味を言及するのなら……わざわざ母親の名前が出てくることも注目したくなるよね。
5巻では、スメルジャコフの犯行は第一の小説で終わる物語だとあったが、案外そうでもないんじゃ。第二の小説でマリアさんは重要人物になるかもしれない。
第二の小説は子どもたちの物語だと言うから、もしかしたらマリアさんの子ども(※さすがにスメルジャコフとの子じゃないと思うけど)がスメルジャコフの分身的存在として登場し、活躍する説もあり得るかも。
5巻の『ドストエフスキーの生涯』だとドストエフスキーの母マリアさんが彼にとって大きな意味のある存在だったことが分かる。母の病死の衝撃により、母と同日に亡くなった国民的大詩人プーシキンの死を翌日まで知らなかったらしいし。母の死のショックでドストエフスキーも病を患った説があるし……。
『カラマーゾフ』の自伝的要素は解題等で繰りかえし言及される。特に父ミハイルの死は『カラマーゾフ』に密接に関わるものだと分かる。となればマリアさんに母と同じ名前をわざわざ付与したのは意図的なんじゃないでしょうか。私はマリアさんが第二の小説のキーパーソン説を推します。
……というのが途中段階の感想だったが。
『ドストエフスキーの生涯』を読みすすめたところ、マリアという名前は母というより最初の妻の名前から取っていると判明。ドストエフスキーの小説にはたびたびマリアという名前が出るそうだ(まだ全部は読めていないので知らなかった)。妻マリアはドストエフスキーの原罪意識のシンボルともあったが。『カラマーゾフ』のマリアさんは案外スメルジャコフの良心や罪の意識の象徴だったりして。
ってか妻マリアさんの連れ子の名前がパーヴェルで、スメルジャコフの名前と同じなの気になる。『カラマーゾフ』のマリアさんはスメルジャコフにとって、母親の代わりみたいな位置づけだったりして?
マリアさんはスメルジャコフが本心を話せる貴重な存在みたいだし。
やっぱり気になるマリアさん!
読む前は「4巻も太いなぁ! 700ページって。悪魔か。長い話苦手な私にこれはキツい……」と思っていたが、普通におもしろくて読んじゃいましたね。
Posted by ブクログ
我が分身ミーチャがたくさん出てくれてよかった! ミーチャの愚かだけど決して馬鹿じゃない性格すげーいい。1巻の「ここに破廉恥がぶら下がってるんだ」はそういう意味かー。ミーチャの「こんなふうにやってたら、三巻の本にだって収まりきりませんよ、おまけに、エピローグまで必要になります!」はメタ発言? 新潮文庫版だと3巻構成だけど、オリジナル版的なのはどういう構成だったんだろ。
まさかグルーシェニカさんがその男を選ぶとは思いませんでした。
そして謎の病が気になる。
読書ガイド、ドストは「急に」「突然」みたいな言葉が多いという指摘。私も小説書くときその手の言葉をすぐ使っちゃうんだけど、誰かにそれを指摘されたら「ドストエフスキーのリスペクトです」と言って煙に巻こうかな。
で、4巻の章タイトルをまた見ちゃった。「破局」? 誰と誰だ。個人的にはアリョーシャとリーズが怪しいのだが。
Posted by ブクログ
イワンの疑問はすごく刺さった。たしかにおぞましい大人だらけの世の中で、すべての他者を許すなんて無理だ。愛せなんて無理だ。
でもその疑問への答えは、2巻ラストのゾシマ長老の語りにて判明。おぞましい人々の罪が許せないなら、その罪を自分の罪として苦しむという方法もある。それだけが正解ではないだろうけど、方法のひとつ。ゾシマ長老の兄が「自分はこの世で最も罪深い人間だ」と言ったのは立派だと思った。
で。3巻。ちらっと見たけど、ミーチャが章タイトルになってるやないか! ミーチャは私の分身のような存在だと思っている。私とは真逆の存在なのに根本が酷似している。しかも犯人になっている……!? どうなる我が分身。ワクワクしちゃう。
Posted by ブクログ
世の中には私好みの本が実はけっこうあるんだ、と思った話。1巻から面白くて一気読みしてしまった!
印象的だったのはラスコーリニコフの夢ね。馬を寄ってたかっていじめる描写が辛すぎた……。
副署長イリヤさんがおかみさんをめちゃくちゃ殴るところも印象深かったな。この章のオチもぞわ〜ってした。ラスコーリニコフ、相当キてるね!
貧乏女と結婚したら後で威張れるって理論もヤバくて印象的だった。マジでそう思ってたとしたらこえーよ。結婚したらあかんで。
ラズミーヒン好きすぎる。陽気で世話焼きな友人とか最高でしょ。
リザヴェータさんの最期は可哀想すぎた。癖であんま抵抗しなかったんか……。
予想外のことで計画が狂ったり好転したりするのはエンタメ感があって面白かった!
ラスコーリニコフはすぐ人にお金をあげちゃうなと思ったけど、そうでもないか? 日本の古典や近代文学、民話で描かれる「優しい人」が助ける対象って動物や虫のイメージがあるから、人間を助ける描写に慣れていないのか……? あとなんだろう、日本だと一宿一飯の恩とか? あまりお金を渡すイメージはないから、描き方の違いってだけなのかな。いやでも、日本でもお金渡す話もあるかな。私は古典や近代文学や民話のことをまだあんまり知らないんだなあと思った。日本のも海外のも。
マルメラードフさんはいいキャラしていた。もっと見たい。
Posted by ブクログ
「大審問官」はさすがに圧倒的。テーマが多岐に渡り、内容の深さも難解さも段違い。
本編の感想ではないが、「大審問官」の理解のために、木下和郎氏のブログ「連絡船」が非常に参考になった。
同ブログは基本的に、この光文社の亀山郁夫訳『カラマーゾフの兄弟』について亀山氏の理解の間違いを指摘する内容のものだ。その部分は、読んでも別に面白くはない。
ただ、「些細なことながら、このようなニュアンスの違いの積み重ねによって読者は、少しずつ、しかし確実に原典から遠ざけられて行く。」その六、と題されたページ(彼の亀山訳批判のエントリの通し番号らしい)の「大審問官」評は秀逸。
途中に亀山氏の解釈への批判が挟まりはするものの、「プロとコントラ」全体の中での「大審問官」の位置付けや、大審問官へのキスの意味、大審問官の論点に関連するキルケゴールの引用などなど、このブログを読むこと自体が素晴らしい読書体験となるほどの充実ぶりだった。
ついでに木下氏の他のブログも拝見したが、文学に対する確固たる信念と深い知見を持っておられる方のようだ。個人的な怨恨だとかで粘着して個人攻撃している人では決してない。これから『カラマーゾフの兄弟』を読む人はぜひご一読を。