書店員すず木のレビュー一覧
書店員すず木
年間読むマンガは2000冊以上!2005年より電子書籍サイトの仕事に携わる、この道10年以上のプロ書店員。
「面白いマンガを多くの人に読んで欲しい」をモットーに、オススメのマンガをご紹介します。
新作マンガを紹介する「月刊書店員すず木」特集を毎月更新中!
ブックライブ公式Xにマンガコンシェルジュとして降臨することも。
すべて のおすすめレビュー
-
中学生の頃から硬式野球をしていた野中宏晃(のなか ひろあき)は、高校でも野球をすることしか考えていませんでした。
そんな彼が入学式で出会ったのが、インテグレーション生(障がいのある生徒が各種特別支援学校ではなく、通常教育の学校で一般の生徒と共に学ぶこと。)として普通学校に進学した、生まれつき耳が聞こえない“ろう者”の相澤真白(あいざわ ましろ)。
耳が聞こえない相澤とはどうせ関わることなんてないだろうと思っていた野中でしたが、なんと相澤は硬式野球をするために入学してきたのです。
相澤と組むのを面倒くさがった野球部のチームメイトは、その役を野中に押し付けます。
最初は嫌々だった野中でしたが、相澤の投げるフォームのしなやかさやボールの筋の良さに考えを改めるのです。
“ろう者”のピッチャーと“聴者”のキャッチャーのバッテリーが誕生したのでした。
この物語は“ろう”であることを様々な観点から描いており、乗り越える苦難としてではなく受け入れる日常として描いているところが印象的でした。
もうひとつ印象的だったのが、手話もひとつの言語であり日本語や英語を習得し会話するのと同じ。言語が違うだけということです。
それを表しているのが、50音のひらがなを指で表す指文字でコミュニケーションが取れることを知り、元来野球のサインを憶えるのが得意だった野中は相澤の投げたボールに対して指文字で「ナイスボール」と返すシーン。
普通学校での些細な躓きに傷ついていた相澤が初めて人とコミュニケーションが取れたと実感した瞬間だったのでしょう、その瞬間の彼の表情は読んでいるこちらも胸が震えます。
自身も子供の頃に周りから煙たがれていた野中は、“ろう”であることで周りから距離を取られがちな相澤にまっすぐ向き合っていきます。
“ろう”であることを特別視するのではなく、ただ普通に“ろう”であることを当たり前として受け入れる野中。
彼の姿勢は、様々な個性や価値観がある現代社会で生きる我々には学ぶべきものが多いのではないでしょうか。
また、そんな野中と一緒に野球をするうちに相澤自身も変化してゆくのです。
今作は巻数のクレジットがなかったので、1巻完結の作品なのでしょうか。
まだまだ彼らのこの先を読みたい!!と思ったのは私だけではないはずです。
“ろう”と野球を通してコミュニケーションを取るということについて考えるキッカケになる作品です。
2022年12月21日 -
離婚して仕事も辞め、茨城の故郷に帰ってきた五來朝子(ごらい あさこ)、40歳。
人生のやり直しを考えるものの、自分の選んだ道が正解だったのか迷う日々。
学生時代一生懸命打ち込んだ吹奏楽部時代のトロンボーンを見つけ、河原でひとり吹き始めたとき、楽器を吹くのが好きだったことを思い出します。
たまたま河原でランニングをしていた千尋から嫌味を言われるものの、毎朝練習に励んでいました。
ピアノで音大に進みベルリンまで留学した腕を持つ千尋でしたが、家が老舗旅館・星辰館を営んでおり、彼もまた音楽という道を捨て実家を継ぐために地元に戻ってきたのでした。
それからも何かと朝子に突っかかる千尋。
実は、千尋が音大を目指したのは朝子の一言のお陰だったのですが、そんなことをすっかり忘れていた朝子にショックを受けたための行動だったのです。
当時の朝子が千尋に伝えた
「2つのことで迷ったら楽しそうなほうを選びなさい。ただし楽しいと楽は違うよ。」
という言葉は、千尋だけでなく読者の胸にも響く言葉だと思います。
朝子が当時のエピソードを思い出したために千尋との距離がぐっと近づきますが、今後二人の関係に変化が訪れるのか気になるところ…!!
色々な事情により、やりたいこと・やりたかったことを手放して生活をしていることもあると思います。
物語の中に登場する朝子の親友で同じ吹奏楽部にいたおーちゃん。彼女は地元で結婚し専業主婦をしています。彼女は義母から「専業主婦だから時間があるでしょ」と言われちょっとしたお願いごとをされるのですが、そういうことの積み重ねで家族によって勝手に予定を埋められ自分の時間を奪われているという描写があります。
時間があるように見えて、楽器を弾く余裕なんてない…。そんなおーちゃんと同じ状況の方も沢山いらっしゃるのではないでしょうか。
登場人物の背景がとてもリアルで、ほんとうにいそうなほど普通な人たちです。
物語もいまのところドラマチックな展開というよりは地味…かもしれません。
ですが、そのゆったり感が読んでいてとても心地よいのです。
ゆったりとした中にドラマチックな部分が秘められており、よりリアルな人生ドラマを見ている気分がします。
昨今、女性の人生やり直しドラマを描いた作品が増えてきている印象があります。
ですがこの物語は、「人生はやり直せる!頑張れ!!」という強いメッセージというよりも、「やりたいことがあったらやってみたらいいよ」と優しく伝えてくれているのです。
それぞれの事情で今がある。
どれが正解でどれが駄目なんてことはないし、逃げても良い。
ただ、なるべく楽しくいられるのが良いよね!というメッセージが詰まった作品です。
2022年12月05日 -
女子高生の青木ルリ、ある朝起きたら頭にツノが生えていた!?
そこで突然母親から明かされたのは、実の父が龍(ドラゴン)であるということ。
自分が人とドラゴンのハーフだと知ったルリは、驚くものの意外とすんなり状況を受け入れて…!?
人とドラゴンのハーフとしての日常がスタートする。
この物語を読んで感じたのは「新しい!」ということ。
女子高生が人とドラゴンのハーフという設定も斬新ですが、この物語の新しさは特殊な状況を本人だけではなく周りも受け入れるという寛容さにあると思います。
もし主人公がルリでなかったならば、ある日突然ツノが生えたら慌てふためくし、ツノを隠して生活しようとするだろうし、突然陥った状況に苦悩し悲観するかもしれません。
まして火を噴いて友達を傷つけてしまったりしたら、自己嫌悪に陥り親を恨んで…といった感じでダークサイドに落ちてしまうかも。
ですがこの物語の主人公ルリは、ツノが生えても「生えてしまったものはしょうがない」とツノを隠すことなくいつも通り学校へ行くし、友達から聞かれたら「父親がドラゴンらしくてさ…」とまるで他人事のようにカミングアウト。火を噴いた後は流石に学校に行くことを躊躇いますが、自分の人生を悲観したりはせず火を吐く練習に勤しんだりと現状を受け入れた上でどうするかを考えるのです。
またルリの周りにいる人たちが彼女のことを気色悪がったり拒絶したりせず、ルリの状況をありのまま受け入れ今まで通りに接しているところも「新しい!」と思ったポイントです。
それは多様性が叫ばれる現代のあるべき姿を表しているのではないでしょうか。
絵柄も可愛く、ルリの豊かな表情が魅力的!!
コマ割りも読みやすく、普段マンガを読まない方でも楽しめるのではないでしょうか。
普通と違う女子高生がゆるっと日常を送る平和な物語。
心が辛くなった時に癒しを求めて読むのもアリかもしれません。
元気をもらえて、前向きになれる気がします!!
今後どういったドラゴンの能力が開花し、どう向き合っていくのか、ルリの成長にも注目です。
2022年12月05日 -
社会問題や重い題材の恋愛マンガではなく、とにかく純粋な10代のラブストーリーを読みたい!!という方にお勧めしたいのが、こちら!!
自分のことを平凡と思っている森 光(もり ひかり)は、親友の美少女でありながら極度の人見知りな髙橋 麻里(たかはし まり)こそが物語の主人公たる存在であると思い、麻里の相手役にはクラスのムードメーカー大谷 慎太郎(おおたに しんたろう)か学年1モテる朝霧(あさぎり)が良いのでは?と妄想していました。
そんなある日、突然大谷と朝霧から話しかけられ、大谷が麻里のことを好きであることを知ります。
大谷が麻里の相手に相応しいと思った光は大谷の恋を応援するのですが、次第に自分の気持ちが大谷に向いていることに気付き…。
この物語はとても丁寧に各キャラクターの心情が描かれています。
それを表しているのが、光の部活のシーンです。
麻里と大谷との仲を取り持とうとする内に大谷の優しさに気付き、次第に彼のことばかりに目がいくようになった光。
そんなある日、所属する吹奏楽部で3年生のポジションを1年である光が奪ってしまったのです。ポジションを戻して欲しいと教師に頼みに行った際、
「あなたは本当はどう思っていて、どうしたいと思っていますか?」
と問われて、部活だけでなく恋においても自分の気持ちに気付くのです。
ずっと主演は麻里、自分は彼女の物語に友情出演するだけのポジションであると思っていた光。
平凡で良いと思いながらも、吹奏楽のホルンは誰よりも練習をし、誰よりも大谷を見ていた光。
彼女が大谷への気持ちを自覚した時から彼女の表情や彼女まなざしの先の風景が変化していきます。
その描写がとてもリアルで心が苦しくなります。
1巻の途中からは大谷視点でも描かれており、4人の中で恋愛関係が巡るのかと思いきや…!?
読み進めるほど10代のキラキラしたピュアな恋模様にぐっと惹きつけられます。
恋をしたからこそ新しい自分に気付き成長する姿は、私には眩しすぎます…!!
4人の片思いが交差する純粋な極上ラブストーリーをご堪能ください。
2022年10月21日 -
別々の高校に通う3人の女子高生。
彼女達はそれぞれの事情を抱えて巨大ショッピングモール パンゲアに集います。
彼女達を乗せ(?)突然地球を飛び立つ巨大ショッピングモール。
これまで全く接点のなかった3人の少女達が、巨大ショッピングモールでの共同生活&宇宙旅行をはじめるのですが…。
まずはこの物語の主人公となる3人の少女をご紹介します。
オープンを控えた巨大ショッピングモール・パンゲアを作った会社の社長令嬢 飛野 火乃子(ひの ひのこ)。
彼女は、父親のツテでショッピングモールのオープンイベントに招待されようとする同級生達に嫌気が差し、オープンに向け忙しい両親にクリスマスの約束を反故にされ、学校でも家庭でもショッピングモールのことばかりな状況に怒りを募らせていました。
そしてついに怒りが頂点に達した火乃子は家にあったショッピングモールのカードキーを手にパンゲアへと向かいます。
奈々鉢 弓(ななはち ゆみ)は多数派を嫌い、我が道をいく少女。
大衆音楽や巨大ショッピングモールの商業主義に反発を感じるものの、パンゲアのちらしにレア物インディーズCDを取り扱うショップの広告を発見し、開店前に並ぶべくショッピングモールへと向かいます。
春畑 未々美(はるはた みみみ)は両親の仲を取り持つために、頑張って貯めたお金でショッピングモール内にできるレストランの高級コースを予約していました。
しかし、そんな未々美の気持ちを知らずお互いを罵る両親の姿に耐えきれなくなった彼女は家を飛び出し、気が付けばショッピングモールに来ていたのでした。
ショッピングモール店内から聞こえた不審な音に様子を伺いに入った未々美は、そこで破壊活動をしている火乃子とそれを見ていた弓に遭遇します。
3人で言い争いをしている最中、突然轟音が!!
音が止んだと安心する彼女達の前には宇宙空間が広がっていたのです!!
どんどん地球から離れていくショッピングモールですが、店内は不思議な事に空気も重力もあり、電気の供給も途絶えていません。
一体どういう原理でそうなっているのかは全くの謎。
ですが彼女達はその状況を受け入れ、快適に過ごしているのです。
この物語にはとにかくワクワクが詰まっています。
子供の頃、ショッピングモールやデパートに住んだら楽しそう!と思ったことはありませんか?
この物語はそんな子供の夢物語が描かれているようなワクワクが詰まっています。
謎だらけで全く解明されていないのですが、「理屈は解らない。でも凄い科学力が働いている!」そんな感覚的な摩訶不思議もワクワクポイントです。
主人公の3人が抱える問題が今後どうなるのかも注目のワクワクポイントではないでしょうか。
この物語の“SF”は「サイエンス・フィクション」としての“SF”だけではなく、藤子・F・不二雄先生が提唱した「すこし・ふしぎ」の“SF”なのです。
果たして3人は地球に無事帰還することができるのか!?
そもそも何故巨大ショッピングモールは宇宙に旅立ったのか!?
彼女達の宇宙旅行を一緒に楽しんでください!!
2022年10月21日 -
長年連れ添った夫を亡くした、はな代。
彼女の夫は悪い人ではないものの、ちょっとズレていたり、はな代のお洒落心に対し「みっともない」と言ってしまう、所謂“古いタイプ”の男性。
はな代は街中で見かけた化粧品店の店員・堂島芳子(どうじま よしこ)と出会い、夫からの呪いを振り切り、美容やお洒落に目覚め“自分の好きなことをする”という新たな人生をゆっくりながらも歩み始めます。
美容やメイクは何歳になってもやってよい!というのが主題のように思えますが、この物語のメインは違います!!
自分の“好き”を見つける物語であり、人生の艶めきは何歳からでも得られることを教えてくれる物語でもあり、麗しいご婦人と可愛いご婦人の淡い想いの物語なのです。
登場人物の関西口調もあり、物語全体的に流れるゆったりした空気感が心地よく、schwinn先生が言葉選びを非常に意識されているのを感じます。
また端々に織り込まれたはな代の亡き夫との会話からは現代で言う“モラハラ夫”を感じますが、決してそれを批判するためではなく、今までは心に引っかかりを感じながらも受け入れてきたはな代の強さがそれを受け流しそれでも自分の好きを貫くしなやかな強さへ変化したことを表すために描かれているのです。
恋愛の多様性、人生の多様性をサラリと描いているところもポイントです。
物語の中に『花物語』という小説が登場します。
今作『はなものがたり』のタイトルも『花物語』をリスペクトして付けられたのでは?と思う、物語の重要なアイテム。
こちらは恐らく大正時代に発表された吉屋信子さんの少女小説かと思われます。
少女や女性の友愛を描いた物語で、今作のはな代はその世界に憧れを抱いています。
『花物語』を読むはな代は乙女全開でとにかく可愛らしいのですが、彼女にとって美しく凛とした芳子は憧れの物語の世界に引き込んでくれるような存在なのかもしれません。
今後、芳子とはな代の関係がどうなっていくのか、彼女達の人生がどう進むのか見守りたいです。2022年09月16日 -
一度夢を持っても、才能がある人を前に己の才能のなさを認識し夢を諦めてしまうことはあると思います。
自分にはその“役割”は求められていないと割り切り、「自分がダイヤの原石ではないと気付かされるくらいなら誰ともぶつからない方が良い。」
この物語はそうやって夢を諦めた主人公ふたりが再び自分のやりたかったことに向かって走り出す物語です。
主人公の宇田川アイア(うだがわ あいあ)は元モデル。メイクアップアーティストになりたいという夢がありながらも、自分にはそれを求められていないと思い夢を諦めていました。
そんな彼が通うのは芸能志望や美容志望が多い高校。
毎年行われる葵祭アーティストコンテストは注目のイベントです。
そこに出演するスタイリストとして半ば押し付けられる形で参加することになった炭崎純(すみさき じゅん)とモデル役の宇田川。
ふたりとも自分の能力に自信が持てないという共通点がありました。
宇田川と話す内、炭崎がモデル役とスタイリスト役を交換しようと提案してきます。
実は炭崎はその身長の高さを活かせないかと小さい頃からウォーキングを習っており、モデルとしての基礎があったのです。
彼女のウォーキングを見て可能性を感じた宇田川は彼女の提案を受け、逆の役割で葵コンに挑むことを決意するのです。
物語の展開がスピーディーで勢いがあり、読み始めたらその波に飲み込まれるかのように一気に読み進めてしまいました。
そして絵が美麗!!
キャラクター達の表情もとても豊かで魅力的。
何者にもなれないと諦めていた主人公が夢を探す物語や、才能がある主人公が華開く物語でもなく、「目標を見つけ才能がないとわかったうえで足掻く」というところが今までにない物語です。
スポーツや演劇などの物語が好きな方には是非読んでいただきたい作品。
宇田川と炭崎がどう輝いていくのか注目です!!2022年09月16日 -
主人公の沢渡依子(さわたり よりこ)は周りからAI人間と言われてしまうほど若干空気が読めない…というか、効率重視の行動をしてしまうアラサー女性。
3年付き合った男性と結婚か!?と思った時に、「お前は結婚に向いていない」と突然振られてしまいます。
ショックを受けた彼女は、就活のごとく“結婚”という目標に向けて緻密な計画を練るのです。
しかし中々思い通りにいかない中参加した御見合いパーティーでチャラめの男性エステティシャン結城慧士(ゆうき けいし)と出会います。
第一印象では相容れないタイプ…と思いつつも、彼の
「データだけじゃわかんなくない?オレはそこに書いていない事のほうが知りたい」
という言葉が気になり、なんとカップル成立に。
しかし結城はサクラとして参加していた結婚願望のない男性だったのです…!!
描くのは『酒と恋には酔って然るべき』(秋田書店)・『このうちとまれ』(リブレ)で一筋縄ではいかない男性とのじれキュンを描いているはるこ先生!!
はるこ先生の描く登場人物は、女性キャラクターが頑張り屋で等身大な所と器用ながらもひと癖あり独特の距離感を保ちたがる男性が魅力的。
今作もなかなかにクセモノで魅力的なキャラクターを描かれています。
結城との初デートで依子が用意したのはアレルギーの有無や好き嫌い、免許の有無を記載するチェックリスト!
更に災害時マップまで記載した周辺状況を用意してしまうほどの計画性の高さ。
普通の男性ならば引いてしまうような行動に対して、結城は引くどころか「すごいね!」と受け入れた上で「焦らずゆっくりお互いを知っていこうよ」と返す余裕まで…!!
更にはチェックリストも「おもしろいから初デートの記念にもらっておくね」と…!!
結城はとにかくそつがない!!
トンデモな行動をしてしまってもそれを受け止めてくれる男性って、ある意味女性の究極の理想のタイプ。
一見チャラい彼ですが、正にかゆい所に手が届く男性と言えるのではないでしょうか。
結婚願望もなくサクラとして参加しただけの結城。恐らく最初は依子に対して興味本位で近づいただけかもしれません。
ですが次第に本気で依子のことが気になってきている様子。
二人の関係は今後どうなってゆくのでしょうか…。
結婚に邁進する依子ですが、本当の幸せは果たして“結婚”が正解なのかも含めて、先が楽しみです!!
2022年08月26日 -
『月見里』でちばてつや賞 ヤング部門 第79回大賞を受賞し、『GOD OF DOG』でもアウトローの世界を描いた木村航先生ですが、新作『チリアクタ』でもアウトローな男を主人公に物語を描いています。
ですがアウトローマンガとは一線を画す今作。なんと主人公の芥 修(あくた おさむ)は元ヤクザでありながら自伝的なマンガ「隻眼の阿修羅」を連載する現役マンガ家!!
物語はそんな芥と、彼の新担当となった新人編集者・三原玲奈(みはら れな)が出会うところからスタートします。
芥は自身の持ちアパートにヤクザの抗争で親を失った身寄りのない子供たちを引き取り、家族として一緒に生活をしています。
かつては自身も不遇な境遇で育ち道を踏み外していましたが親友を失ったことをキッカケに足を洗い、マンガを描き、未来に向けて「愛」を繋ぐことにしたのです。
最初は芥の事情を何も知らず担当編集としてもやる気のなかった三原ですが、彼の家族に対する思いと作品から感じられる本気に次第に編集者として真剣に向き合うようになってゆくのです。
今作はアウトローな人物を描きながらも「愛」がテーマとなっている上にどの登場人物もコミカルさがあり、アウトローマンガにある“ヘヴィーさ”を感じずに読むことができます。
編集者の三原は、美人で根性がありプライドも高いのですが、妙に抜けていたり、記憶を引き出す時に耳に指を突っ込み変顔をするという、憎めないキャラクターです。
芥も、重い過去があり元ヤクザというだけあり時たま背筋が凍るような鋭い表情をしますが、マッチングアプリを真剣にやっていたり、おとぼけなシーンも満載です。
ですがマンガに対する姿勢は真剣そのもの。
自分にできることに真剣に向き合う姿勢は漢気を感じます。
作中で、ヤクザを辞めても現代社会で生きていくには厳しいところが示唆されています。
そんな状況でも茨の道をかき分け人気マンガ家となった芥。
数々の辛い経験をしてきたからこそ今があり、心に愛があるからこそそれらを乗り越えられたのでしょう。
自身が描くマンガのキャラクター同様背中に隻眼の阿修羅を背負った彼が今は家族を背負い、道に迷った人たちを救っていく。新たなアウトローヒーローの誕生です!!
2022年08月26日 -
山奥の自然に囲まれた村で暮らす少年ユル。
ユルには誰よりも大切にしているアサという双子の妹がいましたが、彼女はお努めと称して座敷牢のような場所で限られた人としか会うことが許されない存在でした。
そんな彼らが暮らす村は下界(村の外)から隔離されており、左右様という神が祀られ、移動は馬だったり近代文明とは縁がなさそうな平和な場所でした。
しかし、突然その平和は打ち破られます。
空にヘリコプターが現れ、銃を持った人間や謎の能力を持った少女が襲ってきたのです。
下界との調整役であるデラに助けられたユルは、自分自身の運命を知ってゆくことになるのですが…。
『鋼の錬金術師』『銀の匙 Silver Spoon』の荒川弘先生最新作!ということで、誰しも期待値が高くなるかと思いますが、その期待を裏切らない面白さになっています!!
今回注目していただきたい面白ポイントを3つ挙げさせていただきます。
・衝撃の時代設定
時代物のような舞台設定だと思って読み進めたのですが、敵の襲来によって突然現代の物語であると解った瞬間に、そうくる!?とテンションがアガりました。
冒頭、ユルが空に引かれた雲の線を「竜の屁」と言い、結界が破られる直前にユル達が「姿の見えない竜」について話しているのですが、恐らくは飛行機のことをそう呼んでいたのだと推測できます。
物語の冒頭で、既に彼らが隔離された世界で生きておりそのすぐ隣には現代都市が存在していたことを示唆しているのには、物語の緻密な設定を感じさせます。
・ハードな展開にコミカルなノリ
荒川先生の作品といえば、随所に散りばめられたキャラクターのノリの良さやボケですよね!
1巻の前半からから、村人が襲撃者に次々と殺されていくというかなりハードな展開になるのでになるのでではありますが、ユルやデラさんのやりとりに思わず笑ってしまいます。
ガブちゃんも敵キャラではありますが、コミカルなノリで憎めないキャラクターとなっています。
登場するどのキャラクターも個性的で生き生きとしており魅力的なところは「流石、荒川先生!!」と言うしかありません。
・物語のスピード感
「東の村で夜と昼が等しい日に、日の出を境に男女の双子が生まれた時、世が割れる」
という言い伝えから、「ツガイ」と呼ばれる存在の使役、敵対する一族と支援者など、色々なワクワク要素が出てきており、1巻だけでも次から次へと舞台が移って怒涛の展開となっています。
ですが、これから更に物語が膨らみ面白くなっていくであろうと予感させる展開ではありますが、まだわからないことだらけです。
最初からフルスロットルのトップスピードのため「何が起きているの!?」と思っている内に世界観に引きずり込まれてしまうのです。
「荒川先生、やっぱり凄い…!!」と誰しもが感じる物語、今後の展開に期待が膨らみます!!
2022年07月22日 -
パーソナルジムのトレーナーとして働く27歳女子・御神(みかみ)そよぎ。
昼は“美の女神”と呼ばれるほどの人気トレーナーですが、夜になるとネガティブの波にのまれ反省ノートをつける日々。
そんなある夜、空腹と寝不足でフラついていたそよぎを助けてくれたのが、月読 悠河(つくよみ ゆうが)くんでした。
そよぎを見かねたのか、彼は「うまいものを作りましょうか」とそよぎの家で料理をすることに。
月読くんの作る料理は優しさと幸せが溢れるものでした。
それ以来、たまにそよぎの家に訪れては夜食を作ってくれるようになったのですが、彼がそうするには裏事情がありそうで…。
「毎日がんばって悩んで反省して こんな夜にこれくらいのごほうびあってもいいでしょう」
美味しいご飯を作ってくれて、そんなことを言って微笑んでくれるイケメン…最高じゃないですか?
そんなの好きになってしまうに決まってるじゃないですか!
ですが、そよぎと月読くんの間には恋愛禁止という契約があるのです…!!
好きになってはいけないと思うほど好きになってしまうのが人の常。
そよぎは月読くんのことが気になって仕方ありません。
そりゃそうだよね!!と思いますし、これだけ一生懸命なそよぎには幸せになって欲しい。
ですがそよぎに優しくするのには裏がありそうな月読くんの姿に不穏さを感じハラハラしてしまいます。
描くのは『青春しょんぼりクラブ』『王子が私をあきらめない!』のアサダニッキ先生。
女の子を癒してくれる優しい男子を描くのに定評のあるアサダニッキ先生。
今回の月読くんの甘々男子っぷりもたまりません!!
日々一生懸命に頑張っている方はこの作品を読んで癒されてください!!
2022年07月22日 -
ある日、主人公・宇佐美 九(うさみ きゅう)の家にロボットの少女・いちこがやってきます。
いちこは見た目は人間そっくりですが、心はまだ未完成。そのためホストファミリーと一緒に暮らしながら勉強をするというのです。
同い年くらいな少女な見た目のいちこに戸惑う九。
いちこの“心のプログラム”の完成は彼が高校卒業する頃。それまでいちこと一緒に過ごすことになるのですが…。
物語は九が小学生時点からスタートします。
いちこが現れたことで、九と九に思いを寄せる幼なじみ・愛の関係に変化が起きます。
愛はそれまで九の一番近くにいる存在であったのに、いちこにその場を奪われてしまったことで心が揺れるようになるのです。
中学生編では、それぞれが思春期に向かい自分の気持ちの変化に戸惑う姿が描かれるのですが…。
いちこはロボット。そのため心もプログラムでしかない…と周りは思っています。
もちろん九も最初はそう思っているのですが、いちこの天真爛漫さや優しさに次第に思いが変化していきます。
それを間近で見ている愛は気が気ではありません。
九といちこと愛の三角関係がどうなっていくのか…。
自分に素直になれない感じや、あえて気持ちと反対の行動をとってしまう…など、思春期特有の行動にエモさが溢れています。
描くのは中村ひなた先生。
繊細な線にふんわりとした絵柄で画面から優しさが溢れ出ています。
そして…いちこと愛がとにかく可愛いのです!!
いちこのはにかむ笑顔や愛の複雑な気持ちが表れた表情など…あまりの可愛さにジタバタしてしまいます。
1コマ1コマじっくりと味わいながら読みたくなる今作。
少しずつ育っていく各キャラクターの心を感じてください。2022年07月20日 -
舞台ははるか昔、古の北祇の国の後宮。
主人公はジト目ギザ歯でぼっちの王花鈴(おう かりん)。
彼女の父親は超絶美形で拷問・暗殺は当たり前な残虐非道の極悪文官・王皓(おうこう)だったのです。
後宮の宮女見習いとして入った花鈴ですが、父の悪名が高すぎて、誰もが恐れ近寄ってきません。
そんな状況にもめげず後宮で友達を作ろうと頑張りますが、事態は思わぬ方向に進み…!?
友達が欲しいだけの花鈴。それなのに謀略家の父の印象が強すぎて花鈴も諜報・謀略をしていると誤解をされ、誰も花鈴の話を聞こうとしません。
花鈴が良かれと思ってやることが、逆に怯えられる結果になるのが不憫に感じます。
それでもめげない花鈴の姿は、ちょっと滑稽でありながらも応援したくなります。
この物語はそんな花鈴の頑張りを面白おかしく描くのかと思いきや、それだけでは終わりません。
舞台は陰謀渦巻く後宮…。とある事件が起きるのです。
後宮の人員の顔を一通り記憶していた花鈴は、ふとした違和感に気付き皇帝暗殺の間者に気付きます。
父から暗殺の英才教育を受けてきた彼女は見事間者を退治してしまうのです。
また病弱の少年皇帝・暁星との運命的な出会いによって、花鈴の気持ちが変化します。
「めげない、あきらめない」の強い心で友達はできるのか!?
そして、陰謀渦巻く後宮で皇帝を守り切ることができるのか!?
後宮を舞台にした作品は人気が高く作品も多くありますが、その中でもドキドキハラハラできる注目の作品です!
ミステリー要素を含んだ作品となっていますので、『薬屋のひとりごと』がお好きな方に是非読んでいただきたい作品です。2022年07月20日 -
おじさま好き必見!オノ・ナツメ先生が描く大人の恋の物語。
とある山奥で定年後の田舎暮らしを楽しむ、4人の男。
お人よしの「大将」、プレイボーイの「キザ」、ワイルドな山男の「ドク」、無口な「教授」。
彼らは畑を耕したりりんごを収穫し、ゆったりと自分たちのペースで自給自足の生活を送っています。
正に都会でせわしなく働く人たちが憧れる「スローライフ」。
そんな「男の楽園」に謎めいた美女が訪れます。
男たちはしだいに彼女に惹かれていきますが…。
平均年齢70歳の男女が織りなす、大人の恋と豊かな人生の物語です。
『ACCA13区監察課』で複雑に絡み合う関係性を描き、『リストランテ・パラディーゾ』で魅力的な老紳士を描いたオノ・ナツメ先生。
今作でもそれはそれは魅力的なおじさまたちが登場します。
世俗と距離をとりながらも厭世している訳ではなく、人間らしさがあるチャーミングな男性たち。
おじさま好きにはたまりません!!
彼らの適度な距離感を保った友情も魅力的です。
そんな彼らの手作り石窯で作る自家製パンや自家製野菜のサラダが並ぶ朝食、庭先で食べるBBQなど、魅力的なスローライフ生活が描かれており、自分もお邪魔してみたい!と思ってしまいます。
ですがそんな彼らの中に突然現れる美女。
「お嬢」とあだ名を付けられ彼らと共に生活を始めますが、男性陣に対する彼女の言動は何やら思わせぶりで…。
読み進める内、思わず頭に思い浮かんだのは、グループ内で複数の色恋沙汰を起こす女性メンバー「サークルクラッシャー」。
酸いも甘いも経験してきたハズのおじさま達。
突然現れた年下女性に翻弄されてしまうのでしょうか。
彼女によって、4人の男性陣の関係が変化してしまうのではないかとハラハラしっぱなしです!!
2022年07月20日 -
生きづらさがテーマの物語と思って読むと、予想を裏切られる展開に…!!
主人公は、毎日生きづらさに絶望している諫早依知(いさはや いち)。
ある日彼女の前に同級生を名乗る正木蒔人(まさき まくひと)が学生時代のお礼を言いに現れます。
ですが依知には全く心当たりがなく…。
女性ならではの生きづらさエピソードとして、仕事でインタビューをした男性の映画監督と上映会で再会した際、一緒にいた蒔人が依知と同じことを言っているにも関わらず反応が全く違っていたり、依知に対しては服装のことしか覚えてもらっていなかったというものがあります。
その他にも女性にとって“あたりまえ”となっている“生きづらさ”で依知は少しずつダメージを負っていきます。
マイペースな蒔人に対しイライラをぶつけてしまう依知ですが、彼も生きづらさを抱えている人だったのです。
女性としての生きづらさと戦っている依知や、イレギュラーな事態に弱い蒔人など、多様性が叫ばれる現代にマッチしているキャラクター達に注目いただきたいですが、そんな生きづらさを感じている人たちのライフスタイルマンガと思って読み進めると衝撃の展開が待ち受けています。
ラブストーリー・お仕事マンガ・トレンディな物語・ミステリと、色々な切り口から楽しめる作品です。2022年07月20日 -
『東京喰種トーキョーグール』の石田スイ先生最新作!!才能はギフトか呪いか…。
1998年、「超人」と呼ばれる特殊能力を持った人間の増加により混乱をきわめた 世界国家が「自治県」に分断されてからはや50年がすぎた世界。
高校生の黒原トキオと東アヅマは困っている人を助けるヒーローのような活動をしていました。
ある日、二人は以前退治した不良に報復を受けますが、なんとその不良は謎の注射によって超人となっていたのです。
追いつめられたアヅマとトキオは、拾った謎の注射をお互いに投与します。
薬の効果で超人となったトキオは不良を撃退しますが…アヅマは変化せず人間のままでした。
鳥の超人になってしまったトキオは超人達の戦いに巻き込まれていきますが…
前作『東京喰種トーキョーグール』から3年の期間を経て、石田スイ先生待望の新作です!
物語全体にただようダークさが今後激化する戦いを予感させますが、端々にコミカルさが散りばめられてあり、先へ先へと読み進めたくなります。
またバトルシーンやキャラクターの心情が大きなコマで表現されており、とにかく迫力が凄いところにも注目していただきたいです。
物語の中核となる超人の才能。
才能が開花するのは素晴らしいことで、超人的能力を得ることでプラスになることがあるかもしれません。
ですが、物語の中には才能が開花したことで夢を諦めることになったキャラクターが登場したり、必ずしも喜ばしいことではないと描かれます。
超人の才能は天からのギフトなのか、それとも呪いなのか…。
(今のところ)超人にはなっていないアヅマが今後どう関わってくるのか気になるところですが、今まで自分の人生に無責任に生きてきたトキオが今後どう変化していくのか…注目です!!
2022年07月20日 -
サスペンスマンガ好きにオススメしたいノワールサスペンス、開幕!!
物語は自称エリート刑事・冴木仁(さえき じん)が窃盗の通報を受け訪れた豪邸で、地下室に監禁され餓死した子供たちの遺体13体をみつけることから始まります。
屋敷の中にあるのは贋作の絵に造花など、偽物だけ。
そんな豪邸の持ち主は灰川十三(はいかわ じゅうぞう)という男ですが、現在は行方不明。
警察は灰川が犯人とみて全国指名手配します。
すると、そのニュースを見て灰川の娘と名乗る女性が現れます。
彼女の話では、灰川は育児放棄や虐待を受けている子供たちに生きる術を教え、一緒に生活をしてくれる良き父代わりであったので犯人なはずがないと言うのです。
彼女以外にも灰川が育てていた19人の子供たちの内5人が生きていることがわかり、(収監されている1人を除き)各々に事情聴取するもその子供たち全員「灰川十三は犯人ではありません」と言います。
事件を調べていく内に発覚する様々な事象に、冴木は子供たちを殺したのは本当に灰川なのか解らなくなっていきます。
描くのは『親愛なる僕へ殺意をこめて』の井龍一先生と伊藤翔太先生のコンビ!!
前作に続き、今回も極上のサスペンスとなっております。
マンガでありながら、まるで映画を見ているかのようなシーン展開になっており、物語を俯瞰の視点で見せつつも登場キャラクターの視点を織り交ぜることで、グイグイと物語に惹きこまれます。
屋敷にあった調度品も偽物、住人達も偽物の家族ということで、今のところ全て“偽物”で成り立っている第一容疑者の灰川。一体何が“本物”なのか…。
物語が進むほど謎が謎を呼ぶノワールサスペンスとなっており、今後の展開が気になって仕方ありません。2022年07月20日 -
人を魅了し、メロメロにしてしまう存在、猫!!
そんな猫達が人間の社会に進出してきた世界の物語です。
全8編の物語で構成されているオムニバスの物語ですが、どの物語も不思議な世界観で惹きこまれていきます。
中でも注目したのが3話目の「シャパリュ」という物語です。
人であるマオが猫社長リチャードの会社を取材した際に「猫ならでは」の部分を探してしまうのに対し、リチャードは“人”だから“猫”だからではなくそれぞれに最適でストレスフリーな雇用環境を模索していると伝えるのです。
それは現代の多様性について示唆しているのではないでしょうか。
“猫”と“人”という種族の違いとして描きながらも、猫だから特別なことをするのではなく、それぞれが違うことを認識し、個を尊重することが大切であると教えてくれます。
可愛い猫と人とのほのぼのストーリーかと思いきや、社会問題に鋭く切り込んでいたり、哲学的な要素が盛り込まれていたりと奥深い作品となっています。
是非この奥深さをじっくりと味わってみてください!2022年07月20日 -
「男子のみ」で構成される伝統の歌劇団、吉祥寺少年歌劇。
そこへ入団するために付属の音楽学校へ入学した進藤瑞穂(しんどう みずほ)は男役になることを目指していたのですが、娘役と判定されショックを受けます。
ですがライバルであり仲間でもある同期や先輩達の言葉によって、自分の道を見つけ夢の舞台を目指すのです!!
主人公の瑞穂は男役に憧れ入学したにも関わらず適正面談で娘役と判定されます。
逆に同期のサワは娘役に憧れていましたが、その体格から娘役を諦め男役を目指します。
ふたりはそれぞれ理想と現実の狭間で揺れ動き、どう心に折り合いをつければよいのだろうと苦しむのです。
そんなふたりに対し先生は
「骨や筋肉や肌質や…身長は理想通りには備わらないことの方が多いものです」
と話し、だからこそ自分の素質を美しく磨いていくことが大切であると伝えます。
歌舞伎の家に生まれながら音楽学校へ入学してきた白井寿(しらい ことぶき)。
娘役を嫌がる瑞穂に「そんなことならやめてしまえ」と言ったり、実力も才能もあり何もかもが完璧と思われていましたが、そんな彼もまた立ちはだかる壁の大きさに打ちのめされるのです。
どのキャラクターもそれぞれの物語が丁寧に描かれており、様々な想いを抱きながら舞台に上がることを目指し壁にぶつかり苦しむ姿はとてもリアルで心が震えました。
本当に吉祥寺少年歌劇が存在しているのでは!?とすら思えてきます。
こちら1巻完結となっておりますが、もっと読みたい!!と思わずにはいられません。2022年07月20日 -
毎日淡々とした作業をこなすことを至福の喜びとしている柳(やなぎ)。
ある日、高校時代からあこがれの同級生いちかと再会します。
いちかは今放送中のリアリティーショーに出演している若手女優。
柳はいちかの性格的に向いていないからあの番組に出るのはやめたほうがいいと言いますが、いちかはそんな柳に対し寂しげな笑顔を向け去っていきます。
数日後、いちかが自殺したというニュースが流れ、柳は自分が助けられたのではないかという思いに駆られます。
柳はショックで目の前が真っ暗になり…次に気が付いた時には、死んだはずのいちかの姿に!!
なんと半年前に戻っており、いちかと柳の身体と中身が入れ替わっていたのです。
眩しいくらいに憧れの存在だったいちかと、冴えない人生を歩んでいた柳との人生が交差したのでした。
柳はいちかとしてリアリティーショーに参加し彼女が死なずに済む世界を目指しますが、一方何も知らないいちかは柳の体で予想外の展開に巻き込まれていきます…。
描くのは『ぼくらのへんたい』『愛と呪い』などの、性や毒親といった重いテーマを可愛らしい絵柄で描いてきた、ふみふみこ先生。
今作では今までのふわっとした絵柄とは違うタッチで描かれており、ふみ先生の表現の幅広さに驚かされます。
タイムリープのタイミングから事件のあった半年の間にいちかの身に何があったのかを柳が追体験していくのですが、彼がどのように状況を乗り越えていくのか…。
柳といちかが入れ替わったことで、どのような変化が起きるのか…。
先の展開が全く読めません!!
何故いちかは自殺をしてしまったのか?という謎を中心に社会問題にもなったリアリティーショーの闇を描きつつ、入れ替わった柳といちか二人が送る人生自体も“リアリティーショー”となっている、入れ子構造にも注目していただきたいです。2022年07月20日
