ブックライブの書店員おすすめレビュー

書店員すず木のレビュー一覧

書店員すず木

年間読むマンガは2000冊以上!2005年より電子書籍サイトの仕事に携わる、この道10年以上のプロ書店員。
「面白いマンガを多くの人に読んで欲しい」をモットーに、オススメのマンガをご紹介します。
新作マンガを紹介する「月刊書店員すず木」特集を毎月更新中!
ブックライブ公式Xにマンガコンシェルジュとして降臨することも。

すべて のおすすめレビュー

  • アラサー女性の不思議 麻衣(フシギ マイ)は、中学生の頃に告白されて初めて付き合った男性から1週間で「何か違った」と別れを切り出されたことがトラウマとなり、他人からの好意を信じられなくなっていました。
    そんな彼女が心機一転、新天地で偶然入ったカフェ「アサガオ」でアルバイトをすることに。
    カフェの先輩スタッフである年下男子の上下 亮(カミシモ リョウ)君が妙に不思議さんのことを気にしているようで…!?

    カフェを舞台に巻き起こる甘くてほろ苦いカラメルラブコメディ!!

    無自覚イケメン、もしくはレディファーストがスマートにできるイケメンはお好きですか?
    そんなモテ男性がヒロインにだけ優しい!としたらどうしますか?
    この物語の上下君は正にそういった男性です。
    しかも人との距離感がバグっているというおまけ付き!彼の距離感にドキドキしない訳がありません。
    恋愛に対しトラウマがあるため、まさか自分が好かれているなんて!と自分を卑下しがちな不思議さんですらドキドキさせてしまうのです。
    更に「好き」を自覚した時の上下君の赤面した表情に注目です!!
    カッコイイのに可愛い!!最強じゃないですか。

    しかしこの物語はイケメンがカッコイイ!だけではないのです。
    主人公の不思議さんも魅力的。
    上下君に翻弄されがちな不思議さんですが、普段はクールで仕事ができる女性です。
    だからこそ不意に見せる笑顔は破壊力抜群!!
    自問自答が顏に出てしまい百面相状態になってしまうところも可愛らしいのです。
    しっかりしてそうでどこか抜けている…という、完璧ではないからこその魅力に加え、上下君との会話も等身大の女性として親近感がわきます。

    描くのは、「この世界に入りたい!」の声が続出した運命的日常コメディ『類はトモを呼ぶ』や、『雪と墨』で複雑な伏線で時間を超えた究極の愛を描いたMarita先生。
    過去作でも悶えさせてくれましたが、今作も期待を裏切りません!!

    終始、上下君の不思議さんへの好きが暴走する姿と、それに戸惑いながらも受け入れようと変化していく不思議さんの姿に悶えっぱなしです。

    トキメキたかったらコレを読むべし!!
    そう言い切れる作品です。

    2023年10月23日
  • 報酬次第でどんな標的も必ず始末する伝説の殺し屋・大狼 十三(おおがみ じゅうぞう)39歳。
    ある事件で謎の蜂に刺されてしまい、気が付くと12~3歳の頃の姿になってしまったのです。
    元の姿に戻るため、大狼の元妻で暗殺組織の天才科学者である鰐淵 瑛里(わにぶち えり)に分析をしてもらいます。
    ですがすぐには戻る方法が見つからないとのことで、組織のボスから新たな指令としてその姿を生かし私立中学に通うように命じられるのです。

    子供が苦手なため最初は年下の中学生達とのやりとりに戸惑いますが、子供の頃に組織に拾われそれ以来ずっと殺し屋として生きてきた十三にとって中学校は未体験の場所で…。
    正体を隠し中学生を演じながら元の姿に戻る方法を模索していきます…!!

    ジャンプ作品で“殺し屋”がテーマとなると、がぜん期待が高まりますが、今作はその期待を超えた面白さ!
    注目ポイントは予想を裏切る展開です!

    子供に戻ってしまった十三ですが、子供になってもくたびれたおじさん感が漂っているという、見た目と中身のギャップが凄いです!
    伝説の殺し屋のハズが、中学校では自己紹介デビューがしくじり陰キャ認定されているというところも意外性があります。
    さらに、ずっと殺し屋として生きてきたため小学校までしか行っていなかった十三が中学校で勉強の面白さに目覚めるという、え?中学校で殺し屋として無双するのではなくてガリ勉に目覚めるの!?という予想外の展開。
    最初はあんなに戸惑っていたのに、意外と中学生活をエンジョイしている姿に思わず笑ってしまいます。

    ですが、それだけに留まらず「流石伝説の殺し屋!」という見せ場もモチロンあります。
    アクションシーンはとにかくカッコイイ!!
    今までは依頼された標的を殺すだけだった十三が、学校のクラスメイトを守るために戦う姿にしびれます!!

    最初はボスの娘が通う予定の中学校の内部調査のハズだったのですが、十三が元の姿に戻るためのキーになりそうな事件も起き…。
    今後ラブコメ展開が…という予感もしはじめ、面白さがさらに加速しそうです。

    今作は『黒子のバスケ』や『ROBOT×LASERBEAM』の藤巻忠俊先生の最新作!!
    今の内からチェックしてください!!

    2023年10月23日
  • 人と接するのが苦手で、他人との間を壁で隔ててしまう氷川 小雪(ひかわ こゆき)。
    中学時代のトラウマのせいで高校では誰ともつるまずに1人でいることを貫き、無表情さと目つきの悪さから周りからはクールなちょっと怖い人と思われています。
    彼女の唯一の友達は幼馴染でクラスでは女神のようなアイドル的存在の安曇 美姫(あずみ みき)。
    それ以外の人間に対しては壁を作って関わらないようにしてきましたが、グイグイ距離を詰めてくる雨宮 湊(あまみや ミナト)や、のんびり優しい雰囲気の日野 陽太(ひの ヨータ)と次第に仲を深めてゆきますが…。

    メインで登場する4人は、タイプは異なりますがそれぞれ心に複雑な思いを抱えています。

    周りの人のちょっとした行動や発言に対する不快感が積み重なって心の奥底に溜まっていくことありませんか?
    小雪はその積み重ねに耐えられなくなり人との間に壁を作ってしまっています。

    ミナトは誰とでも仲良くなれ1人でいる人に積極的に関わるタイプですが、ある日美姫から「可哀そうだからと話しかけるのは傲慢だ」と指摘されハッとします。

    美姫も本来の自分とクラスメイトが抱いている自分とのギャップに悩んでいます。
    更に大切な友達の小雪が辛い時に力になってあげられなかったという思いも…。

    一番人当りの良いヨータも、親の再婚により家庭に自分の居場所のなさを感じています。

    高校生の青春ストーリーかと思いきや、それぞれの心の機微が丁寧に描かれており、どの登場人物にも「わかる…」と思うシーンがあります。
    あの時のあの感情はこういいうことだったのか!!と気づきを得る方も多いのではないでしょうか。
    どの年齢の方が読んでも共感すること間違いなしです!

    元々タテヨミマンガとして描かれた作品ですが、単行本版として再構成されております。
    描くのは『正反対な君と僕』の阿賀沢紅茶先生。
    “今らしさ”と“普遍的”を描くバランスが秀逸です。

    恋愛部分も展開が気になるところ。
    気付きと共感の物語をお楽しみください。

    2023年09月14日
  • 中学3年の春、佐藤 一(さとう はじめ)がは桜の木の下に埋められている柴田 元(しばた はじめ)を見つけたことで物語ははじまります。
    柴田の家で連日一緒に映画鑑賞し仲を深めていくふたり。
    そんな中、文化祭の展示品としてクラス委員長の渡 美知花(わたり みちか)と3人で映画を撮ることに。
    しかし上映するための視聴覚室はサッカー部によって奪われ使用許可が下りなかったのです。
    絶望する佐藤は「次の映画は大量に増えた柴田が復讐のために学校の奴らをぶっ殺す話だ!!」と息巻きますが…。

    最初は不条理系のショートストーリーかな?と思って読み始めました。
    しかし、まさかの連載作品。
    せっかく面白いのにいいところで終わってしまった!!と思うことは多いですが「え、続くの!?」と思うことは中々ありません。
    しかも読み進める内にえも言えぬ恐怖が増していくのです!
    度肝を抜かれました。

    物語の途中からどうも柴田という存在が「何かおかしい」と気づくことでしょう。
    誰も柴田を知らないのです。
    佐藤以外に見えていない存在…つまりは存在しないのでは!?と思うようになります。
    ですが映画上映ができなくなった事件後、佐藤の前から姿を消した柴田が5年ぶりに姿を現します。
    今度は他の人にも見える存在となって…。

    最初のうすら寒い概念的な恐怖から、柴田の増殖という物理的恐怖へのスイッチは見事です。
    同じ顔がたくさんいるというのは、思っている以上に恐怖を感じます。
    ページいっぱいにいる柴田の特徴のないうつろな顏!!
    そこかしこにシバタシバタシバタシバタシバタ…!!!
    柴田の妙なコミカルさがよりシュールで本能的な怖さを感じさせます。

    柴田とは一体何なのか!?
    どうすれば柴田から逃げ切れるのか!?
    そもそも柴田を殺すことはできるのか!?

    読み終わったらあなたも柴田になっているかもしれません。
    ご注意ください。

    2023年09月13日
  • 家名にも美貌にも恵まれるも、余命わずかと言われている伯爵令嬢・桐ヶ谷 紗都子(きりがや さとこ)。
    家の重荷となっている自分のことを愛してくれている父親のためにも、家の利益になる結婚をしなければと思っていました。
    そんなある日、出かけた町で見知らぬ男たちに攫われ殺し屋に命を狙われてしまいます!!
    紗都子はその場を生き延びるために殺し屋・後藤進平(ごとう しんぺい)に自分との結婚を提案します。
    自分のことを恐れない紗都子に興味を持った進平は、彼女を連れ脱走を図りますが…。
    紗都子は無事逃げおおせるのか?進平と本当に結婚するのか!?
    ドキドキの契約結婚ラブサスペンスです!

    『プロミス・シンデレラ』の橘オレコ先生最新作は、明治を舞台にした命がけの契約結婚!!
    物語展開のテンポのよさや、シリアスとコミカルのバランスが絶妙です。

    そしてなによりもキャラクターが魅力的!!!
    主人公の紗都子は体が弱い上に伯爵令嬢という立場のため今までは安全な環境で守られてきました。
    それなのに突然命を狙われ、自分の身は自分で守らなければならないという過酷な状況に陥ったにも関わらず、諦めることなく心が折れることもなく悲観せずに必死に考え実行する芯の強さがあります。
    努力ができて努力することを誇りにできる人に惹かれがちな私、紗都子の強さに魅了されました。

    殺し屋の進平には、登場シーンで心を鷲摑みにされました。
    闇が広がる目!虚ろな笑顔!性癖にぶっ刺さりました。最高です。
    更に内面もかなり歪んでいて、容赦なく人を斬り殺すのにどこか精神的な幼さを感じるアンバランスさ。たまりません
    紗都子の愛情を確かめるようなことを言ったり、紗都子が怒るとすぐ機嫌をとろうとするところなど、まるで幼子のよう。
    人として何かが欠落している感じがとても良いです。

    ラブストーリーとしてのきゅんきゅん感はもちろんのこと、紗都子の命を狙うのは誰なのか?というミステリーとしてもスリリングですし、殺し屋との契約結婚が今後どうなるのか?二人は逃げきれるのか?というサスペンス要素も見逃せない、様々な切り口で楽しめる作品です!!

    WEB広告も話題になっており、一度は目にしたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか?
    読んで損はない作品です!是非いまのうちから読み始めてください。

    2023年07月14日
  • 殺人鬼の物語はお好きですか?

    この物語の主人公 霧島司(きりしま つかさ)は無罪仕事人と呼ばれるほどの敏腕弁護士。
    世間が注目する残虐極まりない“自白なき物証なき事件”の犯人である青木雅人(あおき まさと)の弁護を行い、見事無罪を勝ち取ります。
    霧島弁護士は世間や被害者遺族によるバッシングに対しても「自分の仕事は青木さんの無罪を証明すること。自分の仕事をしただけ」とまるで人の心がないかのような発言をするのですが…。
    彼には裏の顔があったのです。
    実は遺族から依頼された、法で裁ききれない悪人に対し私刑裁判を行う殺人鬼!
    無罪にした青木も、無期懲役が確定したら死刑にできないという理由で無罪にしていたのです…!!

    登場する罪人たちはどれも、どうしてこんな奴がのうのうと生きているのか!!と思ってしまう中々の悪人ぶり。
    法の裁きとは一体…裁判とは誰のための制度なのか!?と思ってしまいます。
    やはり悪人には法で裁きを下すのではなく、目には目をの理論で立ち向かうしかないのでしょうか。

    霧島は彼自身も被害者遺族ということが明かされていますが、そんな彼が何故弁護士という職になってまでも私刑殺人を行うようになってしまったのか…!?
    法という正義を見てきたからこそ、そこに限界を感じてしまったのか…気になるところです。

    霧島に憧れる新人弁護士 益田航太(ますだ こうた)も気になる存在。
    彼は弁護士としての霧島を尊敬しており、思いが高じて霧島法律事務所で働くことに。
    正義感溢れる益田ですが、彼もまた被害者遺族。
    もしかすると私刑殺人を行う前の霧島的存在として益田がいるのかもしれません。
    霧島の裏の顔を知らない彼が真実を知ったらどうするのか!?
    益田の今後にも注目です!

    原作を担当しているのは『半グレ―六本木 摩天楼のレクイエム―』(秋田書店)・『ハスリンボーイ』(小学館)・『ごくちゅう!』(講談社)でマンガ原作を務め、『地元最高!』(彩図社)の担当編集者でもある草下シンヤ先生。
    裏社会のことはこの人に聞け!というくらい、色々な情報を発信されていらっしゃる方ですが、今作では今までの裏社会作品とはまた違った世界観を打ち出されている気がします。

    マンガを担当するのは『黒羽白書』(秋田書店)・『東京傭兵株式会社』(講談社)の内田康平先生。
    報復シーンなど残虐な場面をただグロく描くのではなくドラマティックかつ読みやすく描かれています。

    今作は、無差別殺人ではなくどちらかと言えばシリアルキラーがお好きな方におすすめです。
    また復讐代行といったテーマがお好きな方には是非読んでいただきたい作品です!

    2023年07月14日
  • デザイナーを目指し美大に通う赤西ひばりは、真面目さ故に「普通」であることをコンプレックスに感じていました。
    ある日バイト先のラーメン屋で出会ったのは、同じ美大の油絵科に通うバンドマン・蒼生楽空(そうせい がく)。
    ひばりのパソコンを壊してしまったお詫びにと、ガクの家で課題をすることに。
    ガクの自由すぎる発想に反発しつつも意見を取り入れた課題は、今までにない評価を得ることに!
    自由で強引ではあるものの、まっすぐな言葉を投げかけてくるガクにひばりは思い切った一歩を踏み出す決心をします。

    『リビングの松永さん』で年の差シェアハウスラブを描いた岩下慶子先生。
    ひとつ屋根の下にいながら‟近くて遠い心の距離“という絶妙なきゅん加減や男子のキラキラ具合に魅了された方も多いのではないでしょうか。
    今作は美大に通う同級生同士のラブとなっていますが、キラキラ具合に拍車がかかっています。

    岩下先生の描く男子は、ここまで理想的なキャラいる!?とばかりに魅力が詰まっています。
    今作に登場ずるガクも、とにかく格好良い!!
    強引にひばりを振り回しつつも、彼が発する言葉はストレート!!
    臆面もなくひばりを褒めたり、彼女に向ける視線も真っすぐ!
    「そりゃあひばりも好きになるでしょうよ!!」と言わずにはいられません。

    特に、ライブ後にひばりの感想を聞くため強引に視線を合わせ「俺をみて言って」と言うシーンから、ひばりが照れつつも言葉を発しようとするのを待つガクの表情にノックダウンされました。
    ガク格好良すぎるだろう…!!

    ガクだけではなくひばりの表情にも注目していただきたいのですが、最初はとまどいつつもガクの影響を受け変化していく彼女の微妙な心の機微が表情として描かれていて、心をぐっと掴まれます。

    美麗な絵に魅力的なキャラクター。
    画面からあふれ出すキラキラときゅんきゅんに、悶絶すること間違いなしです!

    2023年06月23日
  • 出版社勤務のアラフォー編集者である亀山は、駅で見かける可愛い子が気になって仕方がありません。
    というのも彼女が身に着けているものがどれも亀山世代のkawaiiポイントをついてくるからです。
    髪の毛からは全人類が好きな香りと言っても過言ではないミルボンの香りがし、全身ウエスタンボーイのコーデで固め、セボンスターを集めている…。
    ストレス社会と戦いながら生きている亀山にとって、彼女は癒しの存在となっています。
    ですが、彼女は実は…!?

    おじさんが女子高生を愛でる(観察する)と聞くと危ない印象を受けてしまいますが、そういった危なさは微塵も感じません。
    亀山はジロジロと見るのではなく、あくまで“視線の中に彼女がいるだけ”な状態で詳細な分析を行っているので、むしろその姿勢に紳士感を感じてしまいます。
    逆に、その紳士感を出しながら真顔で詳細な分析をしていくアンバランスさが笑いを誘うのです。

    何故そんなにkawaiiアイテムに詳しいのだ亀山!!
    ウェスタンボーイなんて忘れていたよ亀山!!
    ミルボンは良い香りだよね、亀山!!
    読むうちに駅で見かける女子高生に夢中な亀山に夢中になっている自分がいます。

    しかもこの物語の面白さは亀山だけではなく、亀山を夢中にさせる女子高生もひと癖(?)あるのです。
    1エピソードごと、ラストの女子高生側の会話で思わず笑ってしまうので、是非ご自身の目で確認してください!

    アラフォー世代には懐かしさを感じて楽しめますし、若い世代はkawaiiもの好きなおじさんと可愛い女子高生エピソードのエモさを楽しめるので、全年齢が楽しめる作品となっています。
    何も難しいことは考えず、kawaiiコメディを楽しんでください!!

    2023年06月23日
  • 子供向けおもちゃの企画開発会社でグラフィックデザイナーとして働く柴田かさね(しばたかさね)。
    偶然同僚の榎田昴(えのきだすばる)のお尻を触ってしまってから彼のことが気になって仕方ありません。
    榎田にお尻を触ってしまったことを謝るかさねですが、榎田の様子はどこか変で…。
    実は彼には人に秘密にしていたことが…!!
    真摯に謝ってくるかさねの姿に覚悟を決め、実は自分が趣味で女装をしている“女装男子”であり、あの日は布面積が少ない下着をつけていたためそれがバレたのでは…と焦ったためと告白するのです。

    身長180cm以上ある女装姿の榎田を見ても一切引くことがないかさね。
    首筋が綺麗と褒めたり、彼のありのままをそのまま受け止める彼女の姿は、“多様性”迷子に陥りかけている現代の理想像かもしれません。
    恐らくかさねの中には榎田の女装を馬鹿にする人がいるなんて考えは存在しなかったのでしょう。
    だからこそ女装姿の榎田と二人で街を歩いた時に知らない人から浴びせられる興味本位の視線や隠し撮りしようとする人を見た時のショックは計り知れなかったと思います。
    ですがかさねがそうだったからこそ、榎田は救われたのだと思います。
    自分のことを大切にし尊重してくれる存在ほど救いはないのではないでしょうか。

    ありのままの自分を受け入れる。
    ありのままの自分を貫く。
    ありのままの相手を受け入れる。
    それって簡単そうに見えて、とても難しいことだと思います。
    この物語の主人公ふたりは一見どこにでもいそうなキャラクターです。
    だからこそ、かさねと榎田のお互いがお互いを大切にしようとしている姿は読んでいるこちらも応援したくなりますし、お互いが理解しようと少しずつ歩み寄る姿は理想のカップルのようにも思えます。
    二人に幸せになって欲しいと願いながら読み進めたくなる作品です。

    2023年06月23日
  • 天才漫画家・花神 臥龍(はながみ がりょう)。彼を病的に羨む新人漫画家・深山 忍(みやま しのぶ)。
    不慮の事故により二人の身体が入れ替わってしまいます。
    どうにか二人で戻る方法を探そうと提案する花神(肉体は深山)に対し、せっかくモブから脱し人気漫画家になれたのだから戻る気はないと吐き捨てた深山(肉体は花神)。
    そんな深山に、花神は漫画で勝負をし自分が勝ったら戻る方法を一緒に探せと挑みます。
    そうして人気漫画家の実力とカメレオン漫画家のバトルの火ぶたが切られたのです。

    この物語を語るのに必要な要素は「3つの勢い」です!!

    まずは、登場キャラクターの放つ勢いが凄いのです。
    人格者で漫画に対して熱い気持ちを持ち圧倒的才能を持つ花神と、性格がねじ曲がっていて人の絵柄のくせをマネるのが得意なため「カメレオン」と異名を持つ深山は対極のキャラクター。
    花神はただただ真っすぐに挑んでいくヒーロー像なのに対し、これぞヒールとばかりに嫌な奴として描かれる深山。
    分かりやすいからこそキャラクターの勢いがダイレクトに伝わってきます。

    次にストーリーの勢いの凄さ。
    最初は人格者ゆえに深山のことを認めていた花神。
    しかし体が入れ替わった後、「適当でも連載できる」という深山の作品に対するいい加減な姿勢に怒りを覚え、VS深山のバトル展開が始まるのですが、このストーリーのテンポの良さ!!
    キャラクターの勢いがそのままストーリーの流れとなっているので、違和感なく物語に入り込めるのです。
    更に、それまでは花神の絵柄をマネるだけだった深山が覚醒し、台詞や物語の作風すら花神に化ける進化を遂げる展開はムネアツです!!

    そんな深山の進化を掲載誌の誌面で感じとった花神は、自身も更なる進化が必要であると思い…。
    そう、バトルマンガの修行のターンへと突入していくのです。

    そして、絵の勢いの凄さ。
    どのキャラクターも表情が生き生きと描かれており、読んでいる内にキャラクターを身近に感じます。
    漫画家の物語ということもあるのでしょうが、コマ割りもかなりこだわっていらっしゃいます。
    勢いを殺さず、次へ次へと読み進めてしまう構成になっているのは流石です。
    次から次へとテンポよく展開されるストーリーの勢いと絵の勢いがマッチして、ぐいぐい物語の中に引きこまれていくのです。

    花神と深山は「龍」と「龍に化けたカメレオン」として対比されていますが、果たしてカメレオンは龍になることができるのか!?
    偽物は本物に勝つことができるのか!?
    花神はこれまでの自分に打ち勝つことができるのか!?
    漫画家バトルがどうなるのか…注目です!!!

    2023年06月23日
  • デブだのブスだのと言われ慣れてしまった…。
    だからこそ期待をしてはいけない!そう思っていたのに…。
    自分に自信がなくても恋のチャンスはやってくる!?

    周りが次々と大学デビューをしていく中、ひとり取り残されてしまった三和 穂乃香。
    寂しさを感じつつも、古墳研究会に通う日々。
    そこには、先輩の可児江さんに、飯田くんというイケメン…もとい、仲間が!!

    ひたすら古墳を愛する故か、穂乃香の事を「前方後円墳に似てる」と言って愛でてくる。
    これはもしかしてモテている…のか!?

    いやいや、まさか。そんなことあらへんやろ。

    おたけやま古墳のマスコットキャラクター「おたけやん」に穂乃香が似ていると言った後に、「おたけやん」のことを
    「かわいいなぁと思って」
    だと!?

    これはもうフラグが立ったでしょ?
    ……勘違いしてはいけない!!
    今一度自己確認を。
    そう、私は冴えないぽちゃ子。

    そう平静さを保とうとする穂乃香ですが、現状を疑うのは、恋におちかけの人なら誰しも経験した事がある感覚なのではないでしょうか。

    これは「そういうこと」ではない。
    そう自分に言い聞かせる穂乃香。
    必死に自己確認を徹底し、勘違い回避をしようとするも、サークル仲間の男子二人との距離がどんどん縮まってゆくのです…!!

    まさかのハーレム!!
    でも調子に乗るのは厳禁!!
    え、更に思わせぶりな発言するの!?
    ここまで来たら、これはアプローチなんじゃないの!?
    え?違うん!?

    読んでるこちらのドキドキが止まりません。

    しかし、全体的にふわっとした空気感が漂い、ゆるっとした関西弁が、心地よいのです。
    淡い想いが、こころの隅をくすぐります。

    思わせぶりがたまらない、ぶきっちょな恋の成長ストーリー。
    おすすめです。

    2023年05月19日
  • 30年引きこもり続けた娘を心配して父が与えてくれた吸血鬼アニメにドはまりし、脱引きこもりをしたオタクの吸血鬼・ヒナ。好きが高じてオタ活のために日本へ移住!
    偶然出会った隣室の男子・甘夏玖太(あまなつ きゅうた)が推しキャラにそっくり!
    ヒナは思わず声をかけるも冷たい態度で拒絶されてしまいます。
    ですがヒナに付き添って一緒にコラボカフェに行ってくれたり、根は優しそう…!?
    なんだかんだとヒナの面倒をみてくれる玖太ですが、実は吸血鬼に縁が深くて…!?

    『神様はじめました』『名探偵 耕子は憂鬱』の鈴木ジュリエッタ先生の新作である本作。
    どのキャラも生き生きとして、とにかく可愛いです。
    中でもメインのヒナと玖太の愛らしさは格別。
    玖太のヒナを毒舌で冷たくあしらっておきながらも、ふと見せる優しさに心掴まれます!
    なんだかんだとヒナのことを放っておけないツンデレ感が絶妙なバランスで良いのです。
    ヒナも純粋で素直。推しキャラへの熱い思いを語る表情はキラキラ輝いており、尊さを感じます。
    ただヲタク全開すぎて暴走しがちなのと天然なところが心配になりますが、吸血鬼としては最上位ランクの血統、しかも激強というギャップ!!
    ヒナのことを守っているつもりの玖太ですが、実はヒナに守られているという設定にニヤニヤが止まりません。

    エモさあふれるふたりの関係にハマること間違いなし!
    可愛い・尊い・キュンの全てが詰まったこちら、吸血鬼モノが好きな方・ツンデレ男子が好きな方はもちろんのこと、ラブコメ好きな方は必読です!!

    2023年05月17日
  • 目が覚めたら病院にいた主人公は、自分の事も家族のことも一切覚えていませんでした。
    ですがそれは、彼の目覚めを待っていた家族であるはずの5人も同様で…。
    なんと、家族旅行の途中事故にあった影響で、
    父・翔(かける)
    母・美奈子(みなこ)
    祖父・耕三(こうぞう)
    祖母・幸恵(さちえ)
    兄・翼(つばさ)※主人公
    妹・詩織(しおり)
    の一ノ瀬家6人全員が記憶喪失に。

    記憶を取り戻すべく架空の思い出トークをしたり必死に家族ごっこをする内、記憶がなくても家族としてやっていける気になりますが、いざ家に帰ってみるとそこには思いもしない現実が待ち構えていたのです。

    描くのは『タコピーの原罪』で一世を風靡したタイザン5先生。
    今作も最初から不穏だらけの展開です。
    不穏さを描かせたらタイザン5先生の右に出るものはいないのではないでしょうか。

    まず注目していただきたい不穏シーンは、病院を退院し家に戻る際のキラキラした希望にあふれるコマから一転、現実を思い知らされる展開。絵の表現による不穏さが凄いです。
    なんとなく嫌な予感があったにも関わらず、ページをめくった瞬間「あぁ…」という絶望的なため息が出ました。

    次に注目の不穏シーンは、記憶のないまま翼が復学し同級生から温かく迎えられた…と思いきや実はいじめられていたことが発覚するシーン。
    正直、こんなに平和な展開は続かないと思っていました。
    思ってはいましたが、それでもなお予想の上を越えてくるのがタイザン5先生。
    読んでいる側は感情が上がったり下がったり、ジェットコースター状態です。

    そんなハードな状況にも関わらずキラキラと目を輝かせ、常に前向きで明るい翼に底知れぬ闇を感じずにはいられません…。
    ただその明るさのおかげで物語が救われているのも間違いないのです。

    翼ひとりでも衝撃の事実が次々明かされていきますが、他の家族も同様にワケアリな様子。
    この家族は一体どんな問題を内包していたのか…不安が募ります。
    家族が記憶を取り戻したら一体どんな事実が明らかになるのか!?
    家族が記憶を失うキッカケとなった事故も…もしかして…。

    不穏が渦巻く物語、心して読んでください。

    2023年05月17日
  • コロナの影響で仕事を失った吉岡その。奨学金200万の返済を抱えているため、なんとしてでも仕事を見つけなければなりません。
    そんな時に友達から紹介されたのは、女性用風俗の事務スタッフだったのです。
    右も左もわからないまま飛び込んだ女風(女性用風俗の略)の裏方として、彼女の奮闘がはじまります。

    昨今、女性用風俗を描いたマンガに注目が集まっています。
    ですがこの物語は、女性用風俗を利用したルポマンガではなく、女性用風俗で働く女性から見た世界を描いており、今までにありそうでなかったエッセイです。

    主人公であり原案のそのさんは性知識が豊富という訳ではありません。そのため女風の現場は衝撃の連続。
    さらに女風の事務と一言で言っても、仕事の内容は様々。
    予約管理はもちろんのこと、女性客の要望に合わせて男性セラピストのマッチングを考えたり、新人セラピスト研修の被験者になったり…。
    戸惑いながらも必死に頑張る姿に思わず笑ってしまいつつも、応援したくなります!

    「手ックス」や「性感マッサージ」、「夫婦と3P」など、刺激的なキーワードが出てきますが、そこに至る物語が描かれているのでいやらしさはあまり感じません。
    ですが女性用風俗で働く男性ってどんな人たちなのだろう?アブナイ人なのでは!?と思う方もいらっしゃるかもしれません。
    描かれている女風を利用する女性はセックスレスに悩んでいる夫婦であったり、処女を卒業したいアラサー女性だったりと、悩みを抱えている普通の女性達です。
    そんな女性達に寄り添いサービスする男性達の姿には優しさを感じます。
    一般の人よりは女性が大好きな男性が多いそうなので、その分女性に対する優しさがあるのかもしれません。

    全体的にノリが良く、そのさん含め女風で働く方たちが明るくがむしゃらなので、読んでいて元気を貰えます。
    女性用風俗を利用する人と働く人のヒューマンドラマを楽しめるエッセイをご堪能ください!

    2023年03月28日
  • 舞台は少子化の加速に加え虐待やネグレクトなどが大きな社会問題となり、「子供を扶養する」事が免許制となった未来。
    管理局が派遣する「扶養審査官」である子供により扶養資格適正審査が行われ、合格して晴れて「子供」を有することができます。
    逆に言えば扶養適正者として認められなければ「落第者」のレッテルを貼られ、社会的信用を失ってしまうのです。
    この物語はひとりの扶養審査官と、彼が派遣された扶養者失格になることを望む夫と合格を願う妻との物語。

    虐待による子供の死を報じるニュースを見る度に、何故…という思いが胸を占めます。
    また「親ガチャ」や「毒親」という言葉が一般的に認知されるようになったことも、そこに至るまでにどれだけの犠牲があったのか…と思わずにはいられません。
    そういった現状を踏まえた、この物語の“子供は親を選べないということが問題なら親を選別すれば良い“という設定に衝撃を受けました。

    しかしこの物語が凄いのは、子育てに対する社会風刺だけに留まらないところです。
    主人公の扶養審査官である少年・ヒカリが派遣されたワケアリ夫婦が抱える問題やヒカリ自身のエピソードが複雑に絡まり物語の奥行となっており、グッと胸を掴まれるのです。
    そしてこの物語の需要な要素としてSFも欠かせません。
    扶養審査員の子供たちはどうして審査員となったのか…、扶養資格制度はどう変化していくのかも見どころです。

    上下巻で完結するので一気に読み切ることができますが、しっかりとした読み応えがあります。
    審査対象の大喜とちさに対し心無い言葉を投げる人や、扶養審査官が体験するエピソードなど読んでいてイライラするシーンもあるのですが、読了後心に残るのはそんな胸糞悪さではなく、一筋の涙が頬を伝うような…そんな物語です。

    2023年03月28日
  • 祖母はバツ3、母はバツ2、姉はシンママ。女だけの家で育った山田 三葉(やまだ みつば)。
    学年主席の秀才である彼女の夢は幸せな結婚をすること!
    そんな三葉はある日、同級生の金髪男子 窪 龍之介(くぼ りゅうのすけ)の右手にひびが入る怪我を負わせてしまいます。
    お詫びとして窪のパシリをすることになった三葉。
    不良っぽい窪君に最初は怯えていましたが、彼と話すうちに本当の姿を知り…。
    三葉は幸せを掴むことができるのでしょうか…?

    中々に男を見る目がない山田家の女たち。
    男性に対する夢は抱けなさそうな家庭環境ですが、三葉はかなり夢見る乙女。
    「将来は結婚したい」という願望を抱きつつも、実際にどんな男性ならいいのか解らずにいました。
    自分の好きなものを好きと言えない三葉ですが、窪君だけは輝いて見えるように…。
    窪君と仲良くなるために柔道部のマネージャーになったり、窪君の勉強のサポートをしたり…頑張る姿を見ると彼女の恋を応援したくなります!

    一方、その髪色のせいで周りから誤解されがちな、窪君。
    見た目チャラそうながらも柔道男子というギャップがたまりません。
    若干言葉足らず…というか、誤解されても弁解しないため悪評が独り歩きしているところに不憫さを感じるのですが、そんな不器用なところもポイント高いです!

    この物語は三葉と窪君が中心ですが、忘れてはいけないのが中学時代に柔道部で窪君と会っていた現サッカー部に所属する好青年 広瀬 大晴(ひろせ たいせい)。
    広瀬君は、実は三葉のことが好きという…!!
    世間的には窪君よりも広瀬君の方が圧倒的にウケが良さそうなのですが、そんな彼から思われているなんて三葉は全く気付く気配もありません。

    三葉の思いは窪君に届くのか?
    そして広瀬君の思いに三葉は気付くのか!?

    湯木のじん先生が繊細でキラキラしたタッチで描くピュアな恋。
    「恋に恋したっていいじゃない!!」そう思えるラブストーリーです。

    2023年02月15日
  • 妻と子を交通事故で亡くしたショックから立ち直れず、営んでいた喫茶店も閉店しようとしていた伊丹幸一(いたみ こういち)。
    彼がある日出会ったのは、世間から行方をくらましている大衆演劇の天才女形役者・喜多川艶之助(きたがわ えんのすけ)でした。
    家に帰りたくない艶之助は、幸一の店で住み込みで働かせて欲しいと頼みます。
    じゃぁ1日だけと承知した幸一ですが、艶之助の接客は素晴らしく、店は大繁盛。
    父親になり損ねた「やも男」幸一とワケアリな「女形」艶之助の、奇妙な同居生活がスタートします。

    相手が望んでいることを瞬時に察して応える才能がある、艶之助。
    自分の気持ちを素直に言葉に出すことができないからこそ、料理で対話していた幸一。
    年齢も違えば立場も全く異なるふたりですが、共通点は心にぽっかり穴があいているということでしょう。

    艶之助の15歳ながらもしっかりしたところは、幼少の頃から舞台俳優として叩き上げられてきた賜物だとは思いますが、そこに至るまでの気持ちを考えると切なくなります。
    また、一度幸せを失ってしまった経験があるため再び失うのが怖くて幸せを掴むことができない幸一。ちょっと強引でありながらも適度な距離を取る艶之助のおかげで次第に気持ちが変化していきます。
    ふたりの生活を見ているとうまい具合にお互いが補い合っており、その絶妙なバランスは危うくも微笑ましく感じます。
    どうかこの生活が続いてふたりが幸せに過ごせますように…と願わずにはいられません。

    『恋する仏像』(講談社)や『写楽心中 少女の春画は江戸に咲く』(秋田書店)など、色気のある繊細なタッチで心の機微を描いてきた会田薫先生。
    それらは今作でも遺憾なく発揮されておりますが、そこにポップさが加わって、よりテンポよく爽快に読み進められるようになっています。

    バディものが好きな方はもちろん、心の奥から温まりたい方に読んでいただきたい作品です!!

    2023年02月15日
  • 央道 晴光(おうどう はれみつ)は、吹奏楽部でトランペットを吹いていましたが、下手さ故にコンクールメンバーに選ばれることなく中学3年間を終えます。
    心が折れボロボロになった晴光でしたが、吹奏楽の強豪校登坂高校に入り再び吹奏楽部に3年間を注ぎ込む決心をするのです。

    晴光の演奏は色んな人から下手クソと言われています。
    間違ったり音を外したり…それでも彼は一切の迷いを見せません。
    彼の演奏を聴いた剛上 猛(ごうじょう たける)は、晴光に可能性を感じるほどです。
    晴光のとにかく吹奏楽が好き!という思いと、下手な自分を受け入れた上でそこからどうするか?という姿は、我々も学ぶところが多いのではないでしょうか。

    晴光の強い心は読んでいるこちらが勇気を貰えます。
    中でも、才能がないと言われた時に晴光が言った
    「才能がこっち向いてなくても俺は音楽の方、向いてるから」
    というセリフに衝撃を受けました。

    多くの人は、人前での失敗を恥ずかしく思ったり、人から否定されることを恐れたりします。
    そういった思いから、自分には向いていないと諦めたことが1回くらいはあるのではないでしょうか。
    このセリフを言えるようになるまで、晴光はどれだけの葛藤をしたのか…。
    その姿は1巻でサラっとしか描かれていませんが、彼の辛さは想像に難くありません。
    挫折を経験したからこそ彼はこれだけ前向きに強くなれたのでしょう。
    心が折れそうになった時、晴光の前向きな姿を思い出したいものです。

    晴光と共に吹奏楽部に入部したメンバーも曲者ぞろいです。
    登録者数10万人のチャンネル配信者である剛上や、 強豪中学出身の平河(ひらかわ)、全国初出場で金賞をとった春岡(はるおか)など…中々に有能なメンバー。
    彼らと晴光がどう切磋琢磨してゆくのか、青春マンガとしても期待が持てます。

    演奏シーンも圧巻です。
    特に吹奏楽部全体の演奏シーンは迫力が凄く、画面から音圧を感じるほど。
    メロディが聞こえてきそうというよりは、音が質量となってぶつかってくるような感じがします。

    副部長である3年の威達 龍之介(いたち りゅうのすけ)の指導を受け、晴光のトランペットは上達するのか!?
    強豪吹奏楽部で晴光は高校生活の内にコンクールメンバーに選出されるようになれるのでしょうか?
    彼と彼をとりまく吹奏楽部メンバーの成長にワクワクが止まりません。

    2023年02月15日
  • 主人公は飴屋幸子(あめや さちこ)、80歳。
    死を目前にやり残したことを考えたら海外旅行や勉強でもなく、すべて人への執着でした。
    臨終の間際、大事な人間に会うのを避けてきた臆病な自分に気づき、心から「どんな姿でもいいから、もっと生きたい!!」と強く願ったところ、なんと18歳に若返ってしまったのです!!
    ふとしたことで仲良くなった隣のアパートに住む、胡桃仙太郎(くるみ せんたろう)に助けてもらいながらなんとか第2の人生を歩み始めた幸子ですが、仙太郎に命のリミットがあることを知り、お互いがやり残したことをふたりで協力して叶えることを提案します。

    80歳が18歳に若返るとだけ聞くと、若返って色々できて良いことづくめ!と思ってしまいますが、実際にはそんな単純な話ではないようです。
    幸子がバスに乗ろうとするも小銭を出すのにまごついてしまった際、80歳の時は動作が遅くても周りはそれを許してくれていたのに18歳の姿で同じことをしたら「ちっ!早くしろよ」と言われてしまったり、駅で道を聞いた際も、お年寄りには親切丁寧に教えてくれるのに、18歳の姿の幸子には「自分で調べてよ」と言われて終わってしまったり…。
    「突然若返るとこんな問題が発生する」ということを老人視点から描いており、それが妙なリアル感があるのです。
    もしや作者の岩渕竜子先生は本当に若返った方なのでは…!?と思ってしまうほど、読者側に様々な気づきを与えてくれます。

    若返ったことで様々な問題にぶつかる幸子ですが、諦めずに立ち向かう姿は読んでいて勇気を貰えます。
    中でも
    「やればできるんだって思いたい 心まで老化させちゃ駄目なんだ」
    というセリフが胸に突き刺さりました。
    何歳でも新しいことにチャレンジできるとは言いますが、心が老化してしまうとチャレンジしたいとも思わなくなってしまいます。
    この発言に至った幸子のバイタリティは眩しいほど!
    恐らくはそんな幸子と一緒にいることで、体が弱い仙太郎も救われているのだろうと思います。

    心が疲れてしまった方、心の老化を感じる方は、彼女の前向きな姿を見て元気を貰ってください!

    2023年02月15日
  • 主のセクハラが原因で務めていた屋敷を理不尽に追放されたメイドのルシルが再就職先として見つけたのは遠く離れた街の魔法使いの家。
    新しい雇用主であるフィリスは、口数が少なく不愛想ながらもその見た目とは違い悪い人ではなさそうで…。
    フィリスからの要望は「余計なことをしないように」ということだけ。
    そんな彼に対し「野生動物と距離を測っているかのよう」と妙なポジティブシンキングを発動するルシルに思わずくすっとしてしまいます。

    原作は「小説家になろう」の人気小説。
    虐げられ令嬢系作品が好きな方におすすめの作品です。

    魔法使いがいる世界の物語ですが、ルシルが作中で言っていたように魔法は身近なものではなさそう。
    そのため魔法バトルなどの派手さはなく、どちらかと言うと庭で植物を育てたり丁寧な家仕事が描かれる物語です。

    そんな素朴な物語ではありますが、この物語の醍醐味はフィリスとルシルの関係性がゆっくりと変化していく様と、フィリスのイケオジっぷりです!!

    フィリスの私生活は謎に満ちており、住み込みの家政婦として雇ったルシルに対し「余計なことをしない」と伝えるくらい。ルシルはそんな彼に対して不平不満を抱かず、自分を押し付けることなく必要なことを適度な距離をとって行うのです。彼女の有能さは見ていて爽快です。
    また、最初は偏屈感を感じさせるフィリスですが、ルシルとの会話に頷きを返したりメイドであるルシルに飲み物を作ってくれたり、不愛想ながらもふと見せる表情や優しさにハートをわしづかみにされました。


    今まで不遇だったルシルには幸せになって欲しいですが、前の雇い主であるニゼアの追手も気になるところ。
    彼女が幸せになるために、フィリスがどのように動くのか…!?
    先が気になります!

    2022年12月21日