【8巻までで完結済み】
一言で説明してしまうと学園青春モノ。
なんですが、いわゆる学園青春モノの作品を読む上で自分が少し苦手な要素として「落として上げる」という展開。
要は、嬉しい、楽しい、感動するといったポジティブな感情を誘導するために、その前振りとして「嫌ーな気持ち」にさせられるやり取りがある。
これは、学園モノはどうしても登場人物たちの年齢が低いことに起因して未熟な行動をとってしまい(本当は大人もやらかしがちなのだが)、その程度も受け手の感情表現も作品によって様々であるが、学生時代というのはその未熟な行動を見聞きする瞬間が多いために、その描写もリアルになるし、嫌な気持ちの輪郭がよりハッキリしてしまう。それこそが学園モノの良い点でもあるのだろうし、その後に(来ない場合もあるが)迎える救いの展開でより一層感情が揺さぶられるのだろう。ただ、この気持ちを落とされている間は本当に嫌な気持ちを引きずってしまう。
この「正反対な君と僕」は、その嫌な気持ちが全くないとは言わない。むしろ学校生活の中で自分も体験したように感じる「あの瞬間」の描き方が非常に上手い。「あったよなーその瞬間」、と何度も思わされるのだが、前述した時に陥る嫌な気持ちにさせられる瞬間がほとんど感じられない。みんな学生特有の悩みに振り回されるんだけど、不思議とこちらに焦燥感も嫌悪感も与えてこない、この手の作品に今まで感じたことのない読後感があり、その嫌な気持ちの前振りがほぼ無いのにも関わらずものすごくこちらを幸せな気持ちにさせられる。全ての事が上手く思い通りになる訳でもないのに、多幸感に溢れた気持ちにしてくれるし、登場キャラに「幸せになってくれ」と思わせる親しみを短い刊行数ながら自然と抱かせてくれるキャラ描写も素晴らしい。
本作品の前に描かれたのが、連続でアニメ化されている「氷の城壁」であり、この作品も本当にすごく良いんですが、それでも前述した「嫌な気持ち」にさせられる展開の時に、(私が本作品を読んだ後に氷の城壁を読んだからというのもあるが)相対的にその展開が耐えられなくなっている自分がいることに気付いた(こういう展開で、いくらか心理的な負荷があるんだろうなーという感覚)。そのためおススメの順番としては先に「氷の城壁」を読むことをお勧めするが、その後の作品として、面影の在るキャラも出てくるわけで、描いているのも同様に学園青春モノのはずなのだが、こんなにも作品の読み味を変えられる作者の阿賀沢紅茶先生はいったいナニモノなのだろうか、と思わされるほど、似ているのに、全くの別物の作品になっている。どっちも好きだが、どうしても私はこの「正反対な君と僕」の世界が好きになってしまった、という感覚。
そしてオススメに据えたこの7巻は、作品の中でも最も押している平と東が表紙を飾っており、ただこの表紙を見るだけでも泣けてくるぐらいにこの2人のやり取りも関係性も一番心を乱され、応援したいという気持ちにさせられたから。特に平くん、このキャラはこれまでの学校生活の思い出から、自身の行動を振り返っては自己嫌悪を繰り返す、学校生活のあらゆる場面で大変な思いをしているんだろうなーという性格をしている。自分は学校生活では特に大きな出来事も無く、平穏無事に過ごしていった方だと思うが、平くんのように頭の中では常にグルグル考えていた(今もだが)な―というタイプだったので、一番応援してしまう…幸せになってくれ平!
私もどちらかというとそうなのだが、正直漫画の様に極端なまでに嫌な気持ちにさせられた、という側の人ってけっこう少ないのではないだろうか。もっとグレーに悩みやザワザワした気持ちというのは過ぎて行ったのではないだろうか。そんな、悪く言うと漫画の中のモブキャラの様な生活を送る生徒であっても、心の中では日々の生活で色々考え、心を揺さぶられているんだよ、という当たり前のことが自然と描いてくれていて、「そうなんだよ。。。」と思わせてくれるのもこの作品の大好きな所。みんなこういうことを思ったり考えたりしてるんだよってことを(漫画を読まずとも普通の人は分かるものなのかもしれないが)この作品を通してもっとみんなが想像できると、より快適な学校(に限らず)生活を送れるのではないだろうか。。。それは言い過ぎか。。。
アニメも素晴らしい出来なので、そちらで観てもらっても良いかなーと思う、というかとにかく観て(読んで)欲しい。学生生活に悩む人には特におススメ…ん-こんな風に学校生活送れたらなって思わせてくれるかな。