書店員すず木のレビュー一覧
書店員すず木
年間読むマンガは2000冊以上!2005年より電子書籍サイトの仕事に携わる、この道10年以上のプロ書店員。
「面白いマンガを多くの人に読んで欲しい」をモットーに、オススメのマンガをご紹介します。
新作マンガを紹介する「月刊書店員すず木」特集を毎月更新中!
ブックライブ公式Xにマンガコンシェルジュとして降臨することも。
少年・青年マンガ のおすすめレビュー
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中学3年生の吉木星太(よしき せいた)と、その腐れ縁である葉月光流(はずき ひかる)は、お互いに切磋琢磨しながら「優紀高校」への合格を目指していました。
しかし、合格を確信していた矢先、学校側から光流へある衝撃的な理由で受験を断念するよう通告されます。
身体的なハンデを理由に「分断」されようとする二人。
当たり前だと思っていた「一緒に通う」という未来を取り戻すため、星太は世の中の不条理に真っ向から立ち向かっていきます。
本作は大ヒット作『ヤンキー君と白杖ガール』の、うおやま先生が描く優しくも鋭い視点が光る青春物語です。
物語の序盤、私は大きな衝撃を受けました。
実は光流には車いすというハンディキャップがあるのですが、物語の導入ではあえてそれが描かれません。
しかし、志望校から「校内にエレベーターがないから通えないだろう」と事前に受験を取りやめるよう告げられた際、初めてその事実が明かされます。この構成がすごい!!
「設備がないなら仕方ない」と、無意識に世の中のルールに納得しかけてしまう読者の心理を突いてきます。
しかし、主人公の星太は違います。
彼は世の中の不条理を「仕方ない」の一言で片付けません。
「自分の隣にいるのは光流でしかない。代わりはいない」と言い切る星太の姿に強さを感じます。
私自身、日々の生活で「しょうがない」と多くのことを諦め、妥協して生きている部分があるため、彼の真っ直ぐな姿勢には深く身につまされる思いがしました。
星太の熱意は、光流の心も変えていきます。それまでは周囲に配慮し、一歩引いていた光流が、「フツウとして扱われたい」と自分の願いを口にするようになる変化には、星太の影響が色濃く反映されています。
また、彼らの前に立ちはだかる生徒会副会長・薫まりの存在も欠かせません。
県議会議員の娘であり、一見すると「悪役」のように描かれる彼女ですが、実は彼女自身も「父に愛されていない」という深い孤独を抱えています。
単なる勧善懲悪ではなく、それぞれの置かれた立場、それぞれの正義がぶつかり合う展開には、ページをめくる手が止まらないワクワク感があります。
本作の素晴らしい点は、「助ける/助けられる」という関係が、非常にフラットで対等に描かれていることです。
本当の友達とは何だろうと考えたとき、それは損得勘定抜きに、何気ない瞬間に相手のために動けることではないでしょうか。この作品には、まさにそんな理想の友情が詰まっています。
星太が光流のことを、あえて「友達」ではなく「腐れ縁」と呼ぶのも、彼らしい照れくささが感じられて、思わず顔がほころんでしまいます。
相手を知ろうとすることの大切さを説くうおやま先生だからこそ描ける、綺麗事だけではない人間ドラマ。目標に向かって泥臭く邁進していく星太と光流の姿を、これからもずっと見守り続けたいと心から思わせてくれる作品です。2026年06月29日 -
巨大集合住宅に夜明けを告げる放送が鳴り響きます。
「健全な国民は、健全な国家規律から!!」
“国家” “規律” “労働”を提唱する厳格な管理社会の中、住人たちに手紙を届ける任務を行う逓信所飛脚行代員1871号の目を通して描かれる異質な日常。
一見静かな日々の中に潜む不穏さと、抑圧された世界で交錯する人間性の欠片を描いたSF作品。
「ディストピア」という言葉をご存知でしょうか。
SFの世界で描かれる反理想郷や、徹底的に統制された管理社会のことを指します。本作は、まさにそんな息の詰まるようなディストピアを舞台にした物語です。
読み始めるとまず、その独特な世界観に圧倒されます。
薄暗く、どこか黴臭さすら漂う陰鬱で荒廃した世界。
大きな団地のような建物の中だけで全てが完結しており、住人たちの姿は人間とは大きくかけ離れています。しかし、不思議なことに彼らの行動や感情からは人間臭さが溢れ出ており、「彼らは元からこの姿だったのだろうか」と思わず勘ぐってしまいます。
そもそも異形である彼らと我々は何が違うのでしょう…。
この世界で、住人たちが生きるかすがいとなっているのが「手紙」です。
手紙が届くか否かが、そのまま生きる活力にも絶望にも繋がっているのです。
さらにユニークなのが、手紙に「賞味期限」があるという設定。
手紙に含まれる感情を「はかり」で計測することでその期限が判明する描写からは、まるで感情が質量を持った世界であるかのような不思議さを感じます。
しかし、その手紙にすら検閲が入る描写があり、彼らの感情さえも規制されている事実にゾクゾクさせられます!
他にも、箱根細工のような箱に入った「密粗計」というアイテムや、「9時」になることで移動を強いられるルールなど、私たちの常識とは異なる「時間」や「空間」の謎が散りばめられており、SF好きにはたまらないものがあります。
居住区もランクによって分かれており、工場など単純労働者であるほど劣悪な環境での生活を強いられているようで、労働棟の生活環境はまさに監獄そのものです。
格子戸で区切られた独房のような部屋、過酷な缶詰工場での労働。
1等国民になって専用の居住区へ移るには「人民券」が必要ですが、労働で得られる額はたかが知れています。そのため食事を我慢したり、人民券を得るために売春に手を染める者も現れます。
「望むものを得るためには、やりたくなくても、やらなければいけないのか。それとも自分を守るために拒絶すべきなのか」――どちらが正解なのか、物語は私たちに冷徹に問いかけてきます。
本作の根底にあるのは、「コミュニケーションとは何か」、そして「人は何を大切に生きるべきか」という切実なテーマです。
分かりやすさや展開の早さがもてはやされる昨今、本作はそのトレンドに真っ向から立ち向かっています。
決して消費されるだけのマンガではなく、読者自らが絵の隅々まで目を凝らし、情報を読み取る必要がある作品です。
混沌とした世界観の中に、表現者としての強い信念が感じられる、じっくりと没頭したい至高の傑作です!!
2026年06月25日 -
聴覚障害を持つ大学生の平里は、手話通訳の学生バイト・嶋に誘われ、お笑いの世界に飛び込みます。二人はお笑いコンビ「ローワライ」を結成し、「聾(ろう)にしかできひん笑い」を武器に漫才の頂点を目指すことに。
言葉の音に頼らず、身体表現や間、視線で笑いを届ける二人。日常の不自由さや葛藤すらも笑いへと昇華し、常識を覆す新たな漫才のかたちで舞台へ挑む、熱き青春エンターテインメント開幕!
「漫才」はマンガで表現するには非常に難しい題材です。会話のテンポや間、言葉の強弱といった要素は、本来「音」として耳から伝わるものだからです。
本作はそんな高いハードルに加え、「聾唖者(ろうあしゃ)の漫才」という、さらに挑戦的なテーマに踏み込んでいます。
その挑戦だけでも驚きですが、何より本作は、それを圧倒的な表現力で見事に成立させている点が本当に凄いです!
特に印象的なのが、彼らの初舞台のシーン。 後半にかけて畳み込むように笑いが連鎖していく流れは、まるで実際の劇場で漫才を観ているかのような臨場感があります。「マンガでここまでお笑いを表現できるのか!」と、素直に鳥肌が立ちました。
また、本作は単なるお笑い成功譚ではありません。
普段、私たちが何気なく過ごしている日常が、聾唖者にとってはいかに不自由なものかという現実も丁寧に描かれています。そして、本来なら悲しみや怒りに繋がるはずの不自由さを、「笑い」という形に昇華している点に、お笑いをマンガで描くという作者の凄みを感じます。
音が聞こえない主人公の平里は、一般的な漫才のリズムをそのまま共有することはできません。しかし、本作はそこを「ハンデ」として消費するのではなく、手話、表情、身体の使い方、そして観客の巻き込み方を含めた「新しい笑いの形式」へと昇華させようとします。 「聾にしかできひん笑い」というコンセプトは、単なるキャッチコピーではなく、物語の強固な核として機能しているのです。
登場するキャラクターも非常に魅力的です。
相方の嶋は、思わず「あほちゃうん!?」とツッコミを入れたくなるほど元気いっぱいにボケ倒す存在。しかしその裏には、平里に「笑い」を伝えたいという強い想いがあり、手話で丁寧に通訳する優しさも持ち合わせています。
一方の平里は、鋭い目つきが印象的な青年です。これまでの人生で抱えてきた怒りや葛藤がその表情から伝わってきますが、だからこそ、彼がふと見せる笑顔がとにかくたまらないのです!「嶋はこの一瞬の笑顔のために頑張っているのでは…」とさえ思えてきます。
誰かに笑いを届けること、伝えることの難しさと尊さ。その両方をこれほど熱量高く、エンタメとして描き切った作品は他にありません。「彼らの漫才をリアルで観てみたい!」と心から思わされる、人と人とが分かり合おうとする力に満ちた傑作です。2026年06月25日 -
真面目で優秀な生徒会長・梟森未明(ミメイ)の唯一の弱点は「面白いことが言えない」こと。彼の心の拠り所は、深夜ラジオ番組“月ミド”へのネタ投稿でした。
ある日、同じクラスの不思議な少女・水尾くらげが、番組で名を馳せる伝説的リスナー「うなぎポテト」だと知ります。
ラジオを通じて結ばれた二人は、ライバルであり相棒として、真夜中の電波に青春を乗せていく――。
今作は、誰もが一度は抱いたことのある「認められたい」「誰かに届いてほしい」という切実な願いが、驚くほど丁寧に詰め込まれた作品です。
その想いは決して大げさに語られることはなく、深夜ラジオへの投稿や、不採用の悔しさといった日常の積み重ねとして描かれます。だからこそ、読者は自然と主人公たちの隣に座っているような感覚で、彼らの気持ちに寄り添うことができます。
また、主人公二人の「友情以上、恋愛未満」という絶妙な距離感もたまりません。
同じ番組を聴き、同じ話題で笑い、同じ悔しさを共有する。そんな「まだ恋と呼ぶには早い」曖昧な時間を大切に描いている点が、とにかくエモい!
YouTubeやSNSが主流の現代において、あえて「深夜ラジオ」という映像のないメディアを軸に据えている点も印象的です。
派手な展開はありませんが、そこには静かで確かな熱があります。読後、心に心地よい温度が残る一冊です。
「うなぎポテト」と「森にふくろう」。作中番組「月ミド」の大喜利コーナーを制すのはどちらなのか?
そして、ミメイはくらげに「面白い」と言わせることができるのか!?
二人の関係の行方を、ぜひご自身で確かめてみてください。2026年04月03日 -
楽信小学校5年×組、30人の児童たち。
教室という名の小さな社会には、友情や憧れだけでなく、嘘、嫉妬、そして無自覚な残酷さが渦巻いています。誰かは光を浴び、誰かは傷つき、誰かは声を殺して日々をやり過ごす。
これは、子どもたちが確かに生き、悩み、残酷な選択を繰り返した記録――。
「青春」という言葉の裏側に潜む、痛みと熱を描き出す衝撃の群像劇。
本作の最大の特徴は、出席番号ごとに視点を切り替えていく構成にあります。
同じ教室で起きている一つの出来事が、立場によって全く違う色を帯びていく。ある子にとっての「何気ない遊び」が、別の子にとっては「一生癒えない傷」になる。その視点の不均衡さが、読み手の心を容赦なく抉ってきます。
描写はどこまでも淡々としていながら、剥き出しの感情が伝わってくる生々しさは圧巻です。
「正義感」や「自己保身」といった複雑な心理が、説明過多な台詞ではなく、視線の交差や一瞬の「間」によって表現されています。読者は、彼らを安易に裁くことはできません。むしろ「あの時、自分ならどう振る舞ったか」という、かつての自分への問いを突きつけられるはずです。
また、教師や保護者といった「大人」の描き方も非常にシビアです。
彼らは決して全知全能の救済者ではなく、時に無力で、時に決定的な見落としをする。その「大人の不完全さ」が、物語を単なるフィクションに留めず、現実の社会と地続きのリアリティを与えています。
決して、爽やかで心地よい成長譚ではありません。
読み進めるには少しの覚悟が必要ですが、読後には「砂をジャリっと噛んだような」えも言えぬ感覚が残ります。
人間ドラマの深淵をのぞきたい方、そして、かつて「教室」という名の戦場にいたすべての大人に捧げたい作品です。2026年04月02日 -
「やっぱ普通じゃつまんねぇんだわ。」
主人公の名前はミナミ。高校3年生。
彼女は、ある日突然“超能力”に目覚めます。
中学・高校でのデビューもパッとせず、味気なかった青春。
そんな彼女の毎日は、サイキックの発動によって少しずつ色づき始めるのです。
少しぎこちなくも周囲を巻き込み、時には能力も使いながら、やり残した青春を取り戻していく。
これは、サイキック発動系ヒロインによる“能力無駄遣い微青春譚”!
「何者かに成りたい」──
人生で一度でも、そう思ったことはありませんか?
この問いに、真正面から向き合う少女がいます。
それが今作の主人公ミナミ。
ミナミは、一見どこにでもいるような女子高生。
ワクワクして挑んだ中学・高校でのデビューもパッとせず、人見知り故に新しい友達もできず静かに過ごす日々。
でも、心の奥ではずっと思っていたのです。
「普通じゃつまんねぇんだわ」
「何者かになりたい」
「特別になりたい」
まさに10代の衝動!!
そんな彼女が、ある日突然サイキック能力を発動させます。
それはまるで、現実逃避の延長線上にある“進化”のようなもの。
ミナミはそれを「逃げ」ではなく「可能性」として受け止めるのです。
ミナミの現実逃避能力の高さは、教師や大人からすれば「現実を見ろ」と言いたくなるような危うさを孕んでいます。
しかし、周囲を見て空気を読み、「いい子」であろうとしてきた同級生たちからすれば、そんな穢れなき思想でいられるミナミのピュアさは、むしろ羨ましく映るのではないでしょうか。
彼女は、社会の枠組みにまだ完全には染まっていない。
だからこそ、夢を語れる。
だからこそ、無茶ができる。
そして、だからこそ、読者の心をくすぐるのです。
物語の中で、ミナミは漠然と「NYに行ってみたい」と語ります。
このセリフは、彼女の“何者かになりたい”という願望の象徴でもあります。
「NYに行きたいか」と言えば、思い出すのは『アメリカ横断ウルトラクイズ』。
当時、高校生は出場不可だったこの番組。
そう考えると、現役高校生であるミナミがNYに行きたいと言うことは、叶わない夢を語っているのでは?と勘ぐってしまいます。
そんな彼女は超能力を手に入れ、進化系高校生となります。
でも、ミナミ自身は何も変わっていない。
立場や環境が変化しても、自分の本質は変わらない。
それは、ある種の強さを必要とする生き方です。
「特別な能力があるからといって、特別な人間になれるわけじゃない」
この作品は、そんな逆説を描いているのではないでしょうか。
物語の中盤、ミナミの衝撃の過去が明かされます。
彼女は小学生の頃、一時行方不明になり、戻ってきた時にはすべての記憶を失っていたのです。
過去がないからこそ、未来に夢を見る。
記憶がないからこそ、今を全力で生きる。
ミナミの行動には、そんな切実さが込められているのです。
今作はやり残した青春を取り戻す物語です。
それは、過去の自分との対話であり、未来の自分への挑戦でもあります。
「特別でありたい」と願っても残念ながら平凡で、超能力があっても状況は変わらず…。そんな現実にぶつかりながら少しずつ前に進む。
そんなミナミの姿はどこか気恥ずかしくて、でもエモい。
そんな感情が、ページをめくるたびに胸に広がっていきます。
ミナミを取り巻くキャラクターたちも魅力的です。
彼女の突飛な行動に振り回されながらも、どこかで応援してしまう仲間たち。
彼らとの掛け合いはテンポが良く、笑いと切なさが絶妙に混ざり合っています。
この作品は、ただのSFでも、ただの青春マンガでもありません。
それは、“自分らしく生きる”ことの尊さを描いた、微青春譚なのです。
今後の展開に期待しかありません!!2025年10月30日 -
バレーボールマンガには名作が多く存在します。
それぞれが競技の魅力と共に、青春、葛藤、成長を描いてきました。
そんな中登場した今作『ディグイット』は、
「才能がすべてなのか?」「努力は天才に勝てるのか?」
この永遠の問いに、真正面から挑む物語です。
主人公・獅子谷岳(ししや がく)の父・慧(けい)はバレーボール元日本代表のエース。
そんな父は「生まれ持った才能こそ至高」と信じる男で、息子にもその道を歩ませようとします。
しかし彼が「本物の天才」と認めたのは、ガクではなく、彼の中学時代のチームメイト・ノボル。
慧はノボルに惚れ込み、「彼を日本一の選手にする」と宣言し、彼の進学先である穂高学園高校の外部コーチに就任します。
父から期待のハシゴを外され自身の才能を否定されたガク。
彼は絶大な存在である父と決別し、自身を活かせる可能性のあるリベロの道を選んだのでした。
父親が圧倒的であればあるほど、子供にとってその存在は重圧であり、呪いになります。
しかもその父が自分ではなく他人に才能を見出したら──。
その子供は、解放を喜ぶのでしょうか?それとも対抗心を抱くのか?はたまた絶望するのか…!?
ガクの本当の思いはどれだったのでしょうか…。
この設定だけで、すでに物語はアツい!!
ガクは、父と同じアタッカーの道を捨て、リベロという守備専門のポジションを選びます。
リベロは、どうやっても自分で点を取ることはできない。
スパイクもブロックもできない。
しかしチームの守りを支える“盾”として、試合の流れを左右する存在です。
この選択には父への反抗心もあったでしょう。ただの反抗心だけではただの小さな存在で終わってしまいますが、そこで収まらないのが、ガクの凄いところ。
誰かに才能を見出されるのではなく、自分で自身の才能を掘り出し、磨いたガク。
その姿は、天才よりもよっぽど凄いのではないでしょうか。
高校でガクが出会うのが、アウトサイドヒッター・百田葵(ももた あおい)。
練習を通じてお互いにその実力を認め、やがて信頼を寄せるようになります。
リベロにはどうしてもアタッカーの存在が必要。
点を取ることができないからこそ、攻撃の要と連携することでチームに貢献できる。
アタッカーであることを辞めたガクが、アタッカーである百田と手を組む──。
この展開が、読者の心を大きく揺さぶります。
「絶対的なリベロ」と「最強のヒッター」が組んだらどうなるのか。
そこに生まれる絆と今後の関係性に、注目せずにはいられません。
ガクは進学した静岡 羽海野高校バレー部で個性豊かな仲間たちと出会います。
彼らとの関係がリベロとしての技術だけでなく、人間としての成長に繋がっていき、物語はより深みを増していくのです。
「才能がないからこそ、可能性を伸ばす」
「目立たないからこそ、支える力がある」
そんなメッセージが、読者の心に深く刻まれます。
さらに、
「目立つ道を選ぶのではなく、自分に合った道を選ぶ勇気があるか?」
「才能がないと感じたとき、諦めるのではなく、別の可能性を探す覚悟があるか?」
この問いは、年代問わず深く刺さるはずです。
バレーボールという競技を舞台に、父と息子、天才と凡才、攻撃と守備──あらゆる対立構造を巧みに織り込みながら、読者の心を激しく揺さぶる、今、最も熱いスポーツマンガと言えるでしょう。2025年10月30日 -
海辺の町で祖父・勝臣(かつおみ)と共に銭湯「柿の湯」を営む高校生・柿内遼馬(かきうち りょうま)は、静かで穏やかな日々を過ごしていました。
ある日、銭湯に少年・柴崎玲臣(しばさき れお)が遼馬の父に会いたいと訪ねてきます。玲臣は、蒸発した母から聞いた話を頼りに、父と思われる人物を探してこの町にやってきたのです。
しかし二人の父はすでに亡くなっており、玲臣は迷惑をかけまいとその場を後にします。そんな彼の姿に心を動かされた遼馬は放っておくことができず、共に暮らすことに。
銭湯を舞台に正反対な兄弟が繰り広げられる青春群像劇!
物語の中心となる銭湯は、古き良き時代の面影を残し、地域の人々に愛され続けている場所。湯気の立ちのぼる空間には、窓から見える海の景色と、どこか懐かしく温かな空気が流れており、なんだかほっとできます。
遼馬も玲臣、クラスメイトも、それぞれに複雑な家庭の事情を抱えながらも腐ることなく、まっすぐに生きようとする姿が印象的です。彼らは未成熟ながらも現実に向き合い、少しずつ自分の居場所を見つけていきます。その姿に心がじんわり温かくなるのです。
そして、遼馬の祖父・勝臣の存在がまた素晴らしい。
彼は、厳しさと優しさを併せ持ち、言葉少なくとも深い愛情で孫たちを見守る理想的な大人として描かれています。こんなふうに年を重ねたい、と思わせてくれるような、静かで力強い魅力があります。
今作は「家族」がテーマになっておりますが、「血縁」よりも「関係性」に重きを置いており、玲臣が本当に遼馬の父の子なのかは、物語の核心ではありません。重要なのは、彼らがどう向き合い、どう受け入れ合うかという部分で、「家族とは何か」という問いに対して、作品は「選び取るもの」としての家族像を表現しているのではないでしょうか。
またセリフのひとつひとつが自然で、コマ割りのテンポも絶妙。特に、遼馬と玲臣が銭湯の掃除をするシーンは、言葉がなくとも胸に迫るものがあり、二人の関係の変化を静かに、しかし確かに感じさせてくれます。
人と人との関係性が心地よく、押しつけがましさのない距離感が、読者に安心感を与えてくれる。静かながらも力強い、心に残る物語をご堪能ください。2025年10月30日 -
物語の主人公は、貧しい山岳地域から王都へと下りてきた青年・ラジャン。
彼は、“御瞳(みどう)”と呼ばれる占いで国を導く少女・アムリタを、王都での襲撃から救ったことをきっかけに、王宮の陰謀と悪政に巻き込まれていきます。
アムリタは、未来を視る力を持つ少女。
王宮の腐敗に苦しむ民を前に、何もできずにいた彼女は、ラジャンの中に「王の器」を見出します。
しかし同時に、彼の命が残りわずかであることも視てしまうのです。
「余命1年の青年」と「先見の能力を持つ少女」。
ふたりは、王宮の悪政に立ち向かうため、命を懸けた戦いに身を投じていきます。
これは、運命に抗う者たちの物語。
そして、国を救うために選ばれた“バディ”の物語です。
主人公のラジャンは、自分の命が短いことを知りながらも、誰かのためにそれを使おうとします。
毒蛇に噛まれた幼い王子を自身も噛まれながらも救うという、向こう見ずな部分はありますが、身を挺してでも弱き者を守ろうとするその覚悟が、行動が胸を打ちます。
一方腐りゆく国を良くしたいと思いつつも自身は国のシンボルであって決定権はないというジレンマを抱えているアムリタ。
彼女は不老にして不滅の体と未来を視る力を持ちながらも、今を生きることに迷いを抱えています。
ふたりの姿は読者である我々に「自分だったらどうするか?」という問いを投げかけてきます。
アムリタが過ごす国はかつて栄えていたものの、官僚たちが権力を握り我が物顔をするようになっていました。民がいくら嘆き救いを求めても全く意に介さない王宮…。
本作は命の限界を知る青年と、彼に王の器を見出した少女が、“国”という大きなものに立ち向かう物語です。
しかし、読んでいると気づくのです。
この物語が描いているのは、国ではなく「人」なのだと。
誰かを守りたい、誰かに託したい、誰かと生きたい―。
そんな想いが、ページの隅々にまで込められています。
「命をどう使うか」
その問いに、静かに、でも確かに答えてくれる物語です。
2025年08月13日 -
秋山恒星(あきやま こうせい)、小学6年生。
野球、サッカー、勉強――どんな分野でも他を圧倒する「神童」として名を馳せた彼は、次なる挑戦として囲碁の世界に足を踏み入れます。
しかし、彼を待ち受けていたのは、彼の才能すらも凌駕する“5人の天才”たちでした。
圧倒的な敗北。
初めて味わう挫折。
自分には才能がないと思い、囲碁から遠ざかってしまうのですが、高校生になった恒星は、偶然の再会をきっかけに再び碁盤に向き合うことに。
かつての自分を超えるために、あの5人にリベンジするために…彼の執念の物語がはじまります。
囲碁のルールはご存知ですか?
正直、私は知りませんでした。ですが、ルールが解らずともぐいぐい物語に引き込まれますし、恒星の思いが胸に刺さります。
かつて神童と呼ばれた少年が圧倒的な才能に打ちのめされ、自身が何者でもなかったと思い知り、そこからの再起をはかる物語かと思いきや、この物語は若干異なります。
囲碁教室で働く岡野環(おかの たまき)の言葉を借りるのであれば
「日本トップクラスの野球の才能を持つ少年が入った近所の野球教室に大谷翔平が5人いたら、その少年は自分に野球の才能がないって思うんじゃないかな」
恒星自身も決して凡人ではなかったというところに注目していただきたい。
そうなんです、恒星にも決して囲碁の才能がない訳ではなく、才能があった。
しかし、周りにそれ以上の存在がいた…!!ということ。
天才が天才であることを知らしめるためにリベンジをはかる物語なのです!!
スーパーサイヤ人しか出てこない物語じゃないか!! 思わずツッコミを入れたくもなります。
傲慢で自信家だった少年が、敗北を経て謙虚さと覚悟を身につけていく姿は、まさに“主人公の王道”。
彼の目に再び火が灯る瞬間は、鳥肌ものです。
さらに、囲碁の静けさと対局中の心理戦の激しさを、人物の表情や大胆な構図で描いており、試合中のシーンは圧巻です。
かつて彼を打ち砕いた5人の少年少女たちがどういった囲碁スタイルと背景を持っているのか、次は誰と闘うのか!? 気になります!!
恒星はあの頃の無敵感をもう一度取り戻すことができるのか!?
まさに囲碁マンガの新境地! 静かなる熱狂をご堪能ください。2025年06月30日 -
主人公・花田和巳(はなだ かずみ)、36歳。
脱サラして、現在の職業はフリーの作詞家。
8年前、婚約していた女性に裏切られたことをきっかけに、恋愛感情そのものを封印してしまいました。
そんな彼が、ある日ふらりと立ち寄った引っ越し先近くのスーパーマーケットで出会ったのが、レジ打ちの女子高生・志乃崎純(しのざき じゅん)。
黒髪を束ね無駄のない動きでレジを打つ彼女は、どこか大人びていて、でもどこか無垢。
実は彼女もまた、「恋愛感情を抱いたことがほとんどない」という、恋に対してどこか距離を置いた存在でした。
「恋を諦めた大人」と「恋を知らない少女」。
年齢も立場も違うふたりが、レジカウンター越しに少しずつ心を通わせていく――年の差ラブストーリー!!
主人公の和巳と純の年の差はおそらく18歳。そんなふたりが恋に落ちる瞬間をじっくりと丁寧に描いた作品です。
年の差ラブストーリーの名作は多数ありますが、この物語はそれらに引けを取らない面白さ。
物語を読み解くポイント3つご紹介します!
まず1つ目に、タイトルにもなっている「レジスタ」に注目。
和巳と純の関係はレジカウンター越しに展開されます。
この“物理的な距離”が、ふたりの心の距離を象徴していると言えます!!
レジという日常の中で、ほんの数秒のやりとりに込められる視線、言葉、様々な思い…!!
この距離を踏み越えることができるのか!?そして、どう超えていくのか…非常に注目です。
2つ目のポイントは、恋愛がテーマながらガツガツしすぎていないところ。
「ときめき」や「甘さ」はありつつも、恋愛を諦めた男性と恋愛を知らない女子というふたりが‟誰かを想う“ということに対しどう向き合っていくのかをじっくり描いており、その様がとてもリアル。
恋愛をしなければいけないという押し付け感はないのに「恋愛って良い…」と思わされる展開に脱帽です。
そして3つ目は、おじさんである和巳、最後の恋であること。
「もう恋なんてしない」と思っていた人が、「もう一度だけ、誰かを好きになってもいいのかもしれない」と思う。その心境の変化に理由なんてないし、恋に落ちるのは一瞬。それを見事に描いています。
それでいて勢いで恋を発展させるのではなく、その先の一歩を踏み出せないところも、大人の恋のリアルではないでしょうか。作詞家という職業柄なのか和巳自身、己の心情を言葉に落とし込んでいくのですが、的確かつ詩的なところもポイント高いです。
若者の恋愛とは違う、静かに少しずつ気持ちを積み上げていく様は、正に大人の恋愛。これぞ恋愛“再起”ストーリーです。
「恋って、こんなふうに始まるのかもしれない」
「誰かを想うって、こんなにも優しいことだったんだ」
そんな気持ちが、じんわりと胸に広がります。
「もう一度だけ、誰かを好きになってもいいですか?」
そんな問いにそっと背中を押してくれる作品です。2025年05月29日 -
地球を救った宇宙人が日本に住み始めた未来。
主人公のノマモトは、宇宙が経営する工場で虐げられながら働く17歳の女性。
ある日、家族を宇宙人に殺されたという北見と出会い二人は仲良くなりますが、彼が宇宙人の死体をノマモトの家に持ち込んだことで、思わぬ事態に…。
それをキッカケにノマモトは宇宙人退治を考え始め、北見と共に行動を起こします。
さらに二人は宇宙人を殺す手配師イグラスカルとその部下・背骨と出会い、宇宙人退治の計画を進めることに!?
本作を読んで真っ先に思い浮かんだ言葉は「明るい狂気」でした。
地球を救ってくれたとして世間のみんなが大好きな宇宙人は果たして本当に「いい存在」なのでしょうか?
ノマモトと北見の目線で見る宇宙人は傍若無人。奴らのせいで「無敵の人」となってしまったため、二人にとって宇宙人は消えてほしい存在でしかありません。
世界が宇宙人に対する1/10でも彼らに優しい世界であったらこんなことにはならなかったのかもしれません。
世間とのズレが己の惨めさや宇宙人への嫌悪をより加速させていきます。
そんな彼らの鬱積がとんでもない方向に発露したのは、北見が思わず宇宙人を殺してしまった時ではなく、その死体をノマモトが食べて処理するという方法を執った瞬間です。
「なんだ、殺しても何とかなるじゃないか」
この気付きが「明るい狂気」でなくてなんでしょう!?
宇宙人を殺すという共通目標を持ったふたりですが、その目的は微妙に異なります。
ノマモトは今まで飢えてきた分、ずっと美味い物(宇宙人)で腹を満たしたい。
一方北見は、自分たちが住む街から宇宙人を追い出すことを目的とします。
この違いが今後どう展開に影響するのか気になるところです。
また序盤で北見が言っていた、
本当に地球に隕石が迫ってそれを宇宙人が対処してくれたのか?もしかして平和的な侵略をするための自作自演なんじゃないか?
というセリフも気になります!!
無敵の人である二人とカニバリズムのような(?)展開。
非常にハードで暗くなりがちな物語を描いているのですが、絵柄のキャッチーさとキャラクターのコミカルさによって読み口は非常に軽くなっています。
タイトルの『ドラマクイン』ですが、恐らくは「ドラマクイーン」が元ネタと思われます。
ドラマクイーンとは英語のスラングの一種で、自分がドラマのヒロインであるかのように、大袈裟で同情を誘うような、感情的な振る舞いをする人間を批判的に表す言葉のようです。
果たして誰のことを指しているのか!?はたまたこの物語全体のテーマなのでしょうか…!?
「いいヤツってなんか信用ならないよね」
そういう感情を抱いたことがある方には是非読んでいただきたい作品です。
2025年04月24日 -
物語の舞台は、俗世から離れた辺境の地に建つ特別な莿天城(しゃくてんじょう)。この城の主である、七色の魔法使いのひとり世無(ゼム)は、記憶を失った謎の少年を拾います。
少年は獣人の萊魑(ライチ)やそのほか城に住む仲間たちと過ごすことで次第にこの世界のことや魔法を学んでいきます。
物語の途中、この少年の正体は界変によって国と大切な者を失った「飛国(ひこく)」の王子であることが明らかになりますが、依然として記憶はあやふやなまま。
果たして王子は記憶を取り戻すことができるのか?彼の記憶に隠された秘密とは!?
『結界師』や『BIRDMEN』などのヒット作で知られ、ファンタジー好きの期待を裏切らない物語と魅力的なキャラクター描写で多くのファンを魅了してきた田辺イエロウ先生の最新作。今回も壮大な物語となる予感がします!!
この物語、そこかしこに散りばめられた伏線があり、とにかくワクワクが止まらないのが凄い!
最初のカラーページから培養液装置のようなものに入れられた主人公と魔法使いというシーンが描かれ、少年マンガとしては期待しかない展開。
さらに滅んだ国の王族がひとり生き残るという設定もアツいですよね。
その王子の目がもの凄い能力を秘めている描写とともに、「魔法使い殺し」という存在も示唆されます。
これでもか!とワクワク要素が詰め込まれているのです!!
さらにタイトル名にも入っている「界変」という事象も興味深いです。界変とは、世界の秩序やバランスが崩れる現象であり、それによって多くの人々が苦しむことになります。王子が国や家族を失ったのもこの界変によるもののようですし、ゼム達も界変を警戒しています。
この界変と王子の目の関係性も気になるところ。
まだまだ謎だらけですが、壮大な物語がスタートしたことは確実です!
絶大な力を持つ魔法使いのゼムの弟子として王子がどう成長していくのか、失われた記憶に隠された真実とは…!?
彼らのこの先を見守ってあげてください!2025年03月21日 -
脱サラして古本屋「十月堂」を開業した若き店主。
彼は本好きの客との会話を楽しみつつも、売れない本を処分する日々に不安を感じています。
そんな中、亡くなった老人の蔵書買い取り依頼を受け大量の本を査定することになるのですが、故人の部屋から人となりを感じ取った店主は、自身の本への愛と古本を取り巻く人生の重みを再認識するのです。
各話では様々なキャラクターが登場し、店主の目を通して本と人との関わりがオムニバス形式で描かれます。
この作品の魅力は、何と言っても登場人物たちの個性豊かなキャラクターと、それぞれの本にまつわるエピソードです。
例えば、本の中の耽美な世界に憧れる思春期の少女の揺れる想いや、本に囲まれる生活に憧れる人など、本好きなら共感できる物語が満載。
また、店主の成長や葛藤も丁寧に描かれており、彼の人間味あふれる姿に心を打たれます。
本作は本好きの人々にとって共感できる内容が詰まっており、読み終わる頃には「本探しに出かけたい」と思わせる魅力があります。
そして古本屋の独特な雰囲気や、本の香り、手触りなど、五感に訴える描写が豊富で、「十月堂」を身近に感じられます!
単なる古本屋の日常を描くだけでなく、本を通じて人々の心の交流や成長を描いた作品です。
本好きの方はもちろん、そうでない方にもぜひ手に取っていただきたい一冊です。
読み終わる頃には「本探しに出かけたい」と思わせる魅力があります!
巻末にカバー下も収録されているのですが、是非そこもチェックしてください!!
本好きの方はグっとくるハズ!!2025年02月20日 -
語の舞台は、特殊な化石燃料「メテオリア石炭」によって爆発的な産業革命が起き蒸気機関が発展した世界。
親の借金返済のために劣悪な環境の「死の炭鉱」で働きながらも勉学に励む主人公の少年カナタは、いつかそこから出る日を夢見ていたのでした。
そんなある日「死の炭鉱の怨霊(ゴースト)」が出ると噂の新たな鉱脈の開拓作業中、突然の崩落事故に巻き込まれます。
しかしそれを招いたのは「ゴースト」ではなく謎の巨大な化物(メテオリアン)だったのです!
師匠であるゴードンを助けるべく最適な方法を考えるカナタ。しかしふたりで生き残るには今一歩足りない…と思った瞬間、救世主が現れます。
カナタを救ったのはメテオリア研究開発機構、通称「MRDO(マード)」の特機研部隊長アラヤ・クロフォード。
彼との出会いでカナタの運命が大きく動き出します…。
この物語の中で何度も出てくる言葉があります。
それは、
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生き残る者とは最も「強い」者でも、最も「賢い」者でもない。
最も変化に「適応」できた者である。
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というフレーズ。
進化論を発見した自然科学者ダーウィンの言葉をベースにしているものと思われますが、この言葉がこの物語の核となり、カナタという人間を表していると言えます。
それがよくわかる代表的なエピソードをいくつかご紹介します!
まずはカナタが死の炭鉱に来た時のこと。
有害な光や炭塵があたり一面漂っている「死の炭鉱」に何も持たない状態で送られてきた幼き日のカナタ。
そんな彼を見かねて助けてやったゴードンに世話になりっぱなしではあるものの、ただ働くだけではなく、本を読み勉強をして知識を得る努力を始めます。
お金がないから…ゴードンに迷惑がかかるから…と遠慮をするのではなく、「これ以上迷惑をかけないためにできること」を考えて行動しているのです。
正に変化を受け入れられるカナタを描いた、象徴的なエピソードと言えるでしょう。
次に、カナタの運命が大きく変化することになった開拓現場での事件。
作業中にメテオリアンに襲われたカナタ。ゴードンが襲われ、絶望的な状況で彼が取った行動は「逃げる」でも「立ちすくむ」でもなく、「立ち向かう」だったのです。
危機的な状況下でどうすれば良いかを考え、本で読んだ知識を思い出し実行した勇気と行動力は一見無謀のように思えますが、あの場では最適な行動だったのです。
さらに「MRDO」の適正試験でも彼の適応力は発揮されます。
他の試験参加者に圧倒的な能力差を見せつけられ自分の無力さを痛感しながらも、問題の本質が何かを考え、見極めて行動したカナタ。
どんな状況でも失われない適応力には目を見張るものがあります。
彼が今後どう変化・成長していくのか楽しみです!!
スチームパンクな世界×化物との能力バトルという展開が胸アツな今作、バトルマンガ好きはもちろんのこと、レトロフューチャー好きにも注目していただきたい作品です!!2025年01月30日 -
酒乱の母親に売られた少年アキオ。
売られた先の犯罪都市デトロイトでは子供は「大人から奪われる生き物」でしかありませんでした。
生き残るために、名前を捨て「蛇」という名の殺し屋になることを選んだアキオ。
奪われたものを奪い返すために、自分が大人になるために大人を殺す日々を送るのですが、やがて心に限界が訪れます。
仕事を辞めたいとボスである「師(モレ)」に相談するも、聞き入れてもらえませんでした。
そんなある日、アキオは盲目の女性リンと出会います。
子供から奪う存在であるはずの大人なのに、食べ物を与えてくれ優しく接してくれる彼女にアキオは衝撃を受けます。
アキオは彼女の目が見えるようになる手術代を稼ぐため、危険な仕事を受けるのですが…。
独特な世界観にぐっと引き込まれました。
墨を効果的に用いることでデトロイトという街自体の暗さと物語の不穏な空気を効果的に表現しています。そして、まるで映画のようなカメラワークも特徴的。
絵の上手さ・表現力・コマ割り、すべてが素晴らしいです。
もちろん画力だけでなく、物語も秀逸。
絶望的な世界であがき続けるアキオの姿には胸が詰まります。
「大人になる」これだけのことがこんなにも難しいのかと。
搾取される側がそこから脱するには、仕組み自体を壊さなければならない…。これは現代で安穏と生きる我々へのアンチテーゼなのかもしれません。
タイトルである『SMOTHER ME』を直訳するのならば「私を窒息させて」「私を包み込んで」という意味ですが、この言葉が今後の展開にどう関わってくるのか、注目です。2025年01月30日 -
奄美群島で発見された小さな人型の生き物「蝶人(ハヴィラッチュ)」は、さまざまな開発活動の影響で絶滅危惧種となっていました。
絶滅を防ぐために人間によって保護され、管理される蝶人たち。
物語の主人公である蝶人の青年・忍野はそんな環境で生き、人間により決められた交配相手のマイという少女に想いを寄せていますが、二人の関係はなかなか進展しません。
そこで忍野は思い切った行動に出ますが、そこでマイの本当の気持ちを知ることに…。
ある日、蝶人たちが暮らす教室にカラスが襲来し、蝶人たちは次々と捕食されてゆきます。
そんな危機的状況から助けてくれたのは人間からの解放を訴える蝶人・沖たち。
人間に管理されていれば安心した世界で暮らせる…しかし、それは果たして本当に幸せなことなのか…!?
忍野の選ぶ答えとは…!?
人間によって保護されているという建前ですが、飼育されていると言える状況の蝶人たち。
生まれた時からつがいが決められ、繁殖を求められる環境で、当人たちの感情はおいてけぼりです。
ですが、絶滅させる訳にいかない…という管理する側の人間の使命感も理解できます。
実際の生き物としてはありえる話ですが、擬人化されることで読者側はなんとも言えないジャリっとした感情を抱くことでしょう。
そんな中、人間から与えられた環境なら安穏と生きられるかもしれない…という思いがありつつも、管理者である人間の「先生」からの強制的な繁殖指導に対し、「マイが笑っていないならだめだろ!」と忍野が貫く熱い想いが胸にぐっときます。
しかし、自由を選んだとしても、脆弱な蝶人たちは果たして保護管理下外で生きることができるのか!?
忍野の純愛はどうなるのか…!?
蝶人解放を訴える沖の思惑とは…!?
タイトル、絵柄からは全く想像がつかない物語がそこにありました。2024年12月11日 -
火の龍に襲われた国を救うためその身に龍を封じた英雄伝説が残る地で、龍に憧れる少女シャンリィ。
森の動物とともに野山を駆け、人と違う理に生きる不思議で美しい生物とのトラブルを解決して回っていました。
しかし初めて悪意に触れた瞬間、彼女の中の力が目覚めたのです…。
「お前の中には龍がいる」
養父であり不吉の象徴・黒犬でもある彼の言葉でシャンリィの平和な日常は崩れ、自身の力で傷つけてしまった親友を救うために、シャンリィの旅が始まります!!
4頭の龍を巡る英雄伝説に挑む、少女の運命を巡る壮大な本格ファンタジーです!!
火・地・風・水のエレメントを司る龍の存在、そしてその龍の力を得た少女!
この設定だけでもワクワクしませんか?
重厚なファンタジーである今作、その中でもおすすめポイントを3つご紹介します。
1つ目は登場人物が全員魅力的であること!
個人的に主人公感が強いキャラクターはそんなにハマらないのですが、シャンリィは主人公感がありながらも溌剌として天然っぽさが少ないので、非常に好感が持てました。
優しい心を持ちながらも運命に立ち向かう強さと純粋さは、人間だけでなく人と相容れぬ存在から愛されるのも納得です。
2つ目は絵の描き込みと素晴らしい世界観の表現力。
本格ファンタジー然とした、繊細でありつつも力強い描き込みに目を奪われます。
とくに炎自体が命を持っているかの様な、竜の力の圧倒的な描写力。
モノクロの画面でありながら色や光が見えるようです。
衣装や家屋などにも細かな装飾がされており、作者のこだわりが感じられます。
ポイント3つ目は、否応なくワクワクさせられる巧みな伏線の張り方。
龍の力は英雄の子孫である王家の一族に受け継がれるハズ。その力を持ちながら森に捨てられていたシャンリィ。彼女の本当の生い立ちとは!?
一方王宮にもシャンリィと似た瞳をもつ若き王の存在も…!?
また、龍の伝説にも違うパターンが存在することが示され…。
様々な伏線が散りばめられ、今後の展開が気になります!!
色々な土地へ行き、様々な“龍”と巡り合うだろうシャンリィの旅を末永く見守りたいです。
本格ファンタジー好き必読の物語、ご堪能あれ!!2024年11月28日 -
金髪にピアスだらけ、そして子供よりも子供っぽい小児外科医の星乃 櫻子(ほしの さくらこ)。
彼女は空間認識能力が極めて高く、そのため手術する際に自分のイメージ通りに自身の体を動かすことができます。
卓越した正確さと速さで進む彼女の手術は、さながら魔法のよう。
そんな破天荒医師 星乃が誤飲や交通事故、先天性疾患や包茎といった子供たちにふりかかる様々な病気や外傷に立ち向かう!!
数々の命の尊さや儚さが描かれる医療マンガ。一度読みだすと止まらなくなりますよね。
リアルに描かれる物語ほど、現実の無常さに読んでいてツラくなることがあります。
それが小児科という非力な子供たちを襲う病や事故などであれば余計です。
今作はそんな難しい題材を描きつつも、主人公である星乃先生の子供よりも子供らしいという天真爛漫さのおかげで物語全体が明るく前向きに描かれています。
さらに子供をとりまく大人の事情など目を覆いたくなることがありますが、この物語も例外ではなく、大人の事情に振り回される子供たちが出てきます。
ですが、星乃先生が親に対して正面から立ち向かい「怒る」という行動によって緩和されています。
正直そこまでしなくても…と思う部分はありますが、それくらい取り返しがつかない事だってあるという星乃先生の強いメッセージなのでしょう。
どんなに強い口調で話しても、治療後に親や子供から感謝を伝えられると照れてぶっきらぼうになりつつその裏で泣いてしまう彼女の姿に、人としての温かさを感じます。
また星乃先生の特殊能力にも注目です!
手術をするのに空間認識能力が必要であることは目から鱗でした。
確かに患者ごとに違う身体の状況を、内視鏡などを使って緻密に手術する上で重要な能力ですよね…!!
それを端的に表すためにクレーンゲームが得意という描写を用いており、なるほど!!と膝を叩いて皿が割れそうな勢いです。
小児科医として見る現場のリアルさを追求しつつも、目を背けたくなるようなリアルさではなく希望を感じられる物語、是非ご堪能ください。2024年11月11日 -
母を亡くしたばかりの高校生・源間 菊光(げんま きくみつ)、彼女は親戚の家に居候していますが、彼女の父親が「悪魔」であるため親戚から煙たがられています。
悪魔の強大な力と人間の優しき心を併せ持つ二世である彼女は、人間の世界でどう成長していくのか…!?
作品全体に漂う独特の空気感と違和感に引き込まれました。
その雰囲気を作り出しているのは、ユニークなキャラクターたちです。
まずは主人公の悪魔二世である源間さんをご紹介します。
彼女は普段、普通の高校生として過ごしていますが、その行動はどこか俯瞰的です。
一見馴染んでいるように見えますが、人間を観察し、学び、演じているかのようなところがあります。そのため、他の登場人物との会話にもどこか違和感が漂います。
そんな彼女ですが、人間を守るために悪魔と対話し、時には悪魔を退治します。
彼女は悪魔二世であるためか、基本的なスタンスは人間寄りですが、最終的には独自の正義感で行動しており、その判断は非常に現代的な印象を受けます。
次に、源間さんの同級生である河城くんをご紹介します。
彼は人間でありながらも、悪魔に侵された人や状況を目の前にしても冷静さを保つ逸材です。
源間さんの異常さを目撃してもそのまま受け入れる彼の姿勢は、器が大きいと取るべきか変わり者と取るべきか、悩むところ…。
それでいて、バイト先の店長を心配して怪しげなセミナーに付き合ってあげたり、人の弱さを利用する存在に対して真剣に怒ったりと感情に揺れ幅があり、源間さんと対照的な描かれ方をしています。
ホラーとユーモアの絶妙なバランスもこの物語の魅力です。
悪魔によって引き起こされる事件はホラー的な要素を含みつつも、人間の心の弱さや身近に潜む恐怖などを描いています。
そんな怖さがありながらも、軽やかなテンポと前述したようなユニークなキャラクター達によって読み口がライトになっており、ジワジワと読者の心に沁みこんできます。
読めば読むほど味わい深くハマっていく作品です。
今回がデビュー作とは思えないほどの期待の新作です。
今のうちから是非チェックしてください!!
2024年08月28日
