書店員すず木のレビュー一覧
書店員すず木
年間読むマンガは2000冊以上!2005年より電子書籍サイトの仕事に携わる、この道10年以上のプロ書店員。
「面白いマンガを多くの人に読んで欲しい」をモットーに、オススメのマンガをご紹介します。
新作マンガを紹介する「月刊書店員すず木」特集を毎月更新中!
ブックライブ公式Xにマンガコンシェルジュとして降臨することも。
少女・女性マンガ のおすすめレビュー
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16歳の女子高校生・狭山うみ(さやま うみ)にとって、隣の家に住む8歳年上の広井翔也(ひろい しょうや)は、幼い頃から憧れていた「理想のお兄ちゃん」でした。
しかし、久々に再会した彼は、髪はボサボサ、無精髭を生やした「小汚い大人」に激変していて……。
再会から始まる、8歳差の不器用で、でも温かい「ささやかな」恋の物語。
『ホリミヤ』で作画を手がけた萩原ダイスケ先生の最新作ということで、まずは何と言っても画面の麗しさに圧倒されます!
主人公のうみは息を呑むほど美しく、お隣さんの翔也もまた、整った顔立ちが隠しきれていないイケメン。この二人が並ぶだけで、視覚的な幸福感がすごいです。
物語は、憧れのお兄ちゃんだった翔也との「残念な再会」から始まります。
昔の面影がないほど小汚くなってしまった彼にショックを受ける…という「あるある」な展開ですが、そこからの盛り上がりが最高なんです!
翔也が漫画家として活動していることが判明し、うみから尊敬の眼差しを受けた後にそれが「エロ漫画家」だったという展開には、萩原先生「わかってらっしゃる…!」と思ってしまいました。
しかし、外見や職業が変わっても、翔也の根っこにある「優しさ」は昔のまま。うみのことをさりげなく気遣い、守ってくれる彼の包容力には、一人の男性としての抗いがたい魅力を感じてしまいます。
うみが、そんな彼の「変わらない良さ」を少しずつ再認識していく過程は、読んでいて本当に気分が上がります。
また、本作は脇を固めるキャラクターたちも最高にいい奴らばかりなんです!
うみがあまりに美しすぎて、同級生たちは「触れてはいけない高嶺の花」として遠巻きに見ていたのですが、それをうみ自身が「嫌われている」と勘違いしている様子がなんとも可愛らしい。
翔也が作ってくれたきっかけで同級生たちと打ち解けていくシーンは、まさに尊さの極みです!!
「仲良くなっていいんだ!」と分かった瞬間の、同級生たちの猛烈な距離の詰め方には、思わず吹き出してしまいました。
うみと周りの人々との軽妙なやり取りも面白く、まっすぐで等身大のうみには、ヒロインとして絶大な好感が持てます。
今はまだ「ささやか」な距離感の二人ですが、これからどんどん仲良くなって、早く二人の「ラブぃシーン」が見たい……!と願わずにはいられません。
じれったくも愛おしい「恋の始まり」をぜひ見届けてください!2026年06月25日 -
学力は高いが外見に自信を持てない高校生・未来は、幼なじみで可愛く人気者のさえや、想いを寄せる同級生・アキヒコとの関係に悩んでいます。
そんなある日、さえが夢に向かって努力していることや、アキヒコがさえを想っている事実を知り、未来の心は大きく揺らぎます。
劣等感と嫉妬に傷ついた未来は思わず感情をぶつけてしまい――。
自分に足りないものを抱えながらもがく少女たちの痛みと成長を描く、人間関係のリアルに迫るヒューマンドラマ!
人と自分を比較しても、何の意味もない。そんなことは百も承知なのに、私たちはどうしても「隣の芝生」の青さに目を奪われ、自分の足りなさばかりをあげつらってしまいます。
自分は自分でしかないのに、他人の真似事をしては勝手に傷つく――。今作は、そんな誰もが一度は囚われる歪んだ感情を、痛いほど丁寧に、そして鮮烈に描き出しています。
主人公の未来は、自分自身で心をがんじがらめにしがちな女の子。
想い人であるアキヒコのちょっとした言葉に一喜一憂する姿は、思わず応援したくなるほど瑞々しい乙女心に溢れています。
そんな未来の前に立つのが、親友の「さえ」です。
さえは可愛さも、可愛くなるための技術も、アキヒコからの好意も、ありとあらゆるものを持っています。未来にとって彼女は「全てを持っている人」。
自分が唯一勝てるのは学力だけでした。
そんなさえの夢は、途方もなく大きな「宇宙に行くこと」。
無謀とも思える夢へ「やってみなくちゃわからない」と笑うさえに対し、未来は冷や水を浴びせるようにこう告げます。
「どんなに頑張っても、どんなに努力しても、その人には絶対無理って予め決まっていることがあるんだよ。さえちゃんには無理だよ」
ここでハッとさせられるのが本作のタイトルです。
タイトルは『未来ちゃんには無理だよ』。しかし作中でこのセリフは一度も出てきません。
そう、未来はさえに向けて言葉を放ちながら、同時に「自分自身」に呪いをかけていたのです。
男とか女とか、恋愛とか、そういう枠組みを「窮屈」だと笑い飛ばせるさえは、未来にとって眩しすぎるほど自由な存在でした。だからこそ憧れた。
けれど、いつだって大切な友情にヒビを入れるのは恋愛感情です。
物語の皮肉な転換点。未来の予言通り、さえは大学受験に失敗し、逆に未来は自分が本当に行きたかった学部に合格します。
狭い世界に閉じ込められ、息苦しさを感じるさえ。
しかし、さえの夢だったはずの道を代わりに歩むことになった未来もまた、別種の息苦しさに身を焦がすことになります。
結局、自分で望み、自分で選んだ道ではない「不本意な選択」は、どんな形であれ自分自身を苦しめるのでしょう。
しかし、物語は苦しいままでは終わりません。
「何者にもなれなかった」と絶望していたさえは、同級生たちから自分が高嶺の花であり、希望の星であったことを告げられます。
そこで初めて、彼女は自分がちゃんと「自分の道」を歩めていたことに気づくのです。
自分の居場所は、誰かに用意されるものではない。自分で探し、自分で作るものなのだと!!
一見、宇宙飛行士の夢を諦めたように見えたさえですが、彼女は決して折れていませんでした。世界を旅するバックパッカーとなり、SNSのインフルエンサーとして、彼女らしい方法で「宇宙(世界)」へと飛び出していく姿には胸が熱くなります。
一方、偶然再会した未来は、相変わらず不器用で恋愛感情に振り回されていました。でも、それが彼女の等身大なのです。
お互いに必死で努力して、何かを掴み取ろうとしてもがいて、それでもできなくて……。
実は、お互いがお互いを「羨ましい存在」として見上げていた二人。
誰の心にもあるドロドロとした感情をどこまでも分かりやすく、かつ丁寧に描いた本作は、私たちに「夢に向かって進むこと」、そして何より「自分自身を信じること」の尊さを教えてくれます。
今、自分の道に迷っているすべての人に届いてほしい、至高の一冊です。2026年06月25日 -
山と国道に挟まれた田舎町・つづみ町。
周囲にナメられないよう強がって生きるヤンキー女子高生・春野うらら。東京から田舎町へ引っ越してきた彼女は、母の職業や家庭環境を理由に偏見の目に晒され、孤独を深めていました。
そんなうららの前に現れたのが、町の駐在さん・立見宗介(たつみ そうすけ)。不器用ながらも自分を守ろうとしてくれる彼との出会いが、うららの頑なな心を少しずつ溶かしていきます。
本作は、一見シンプルな「ヤンキーJK×警察官」という関係性の物語でありながら、“人を頼ること”というテーマを非常に丁寧に描いた作品です。最大の魅力は、派手な事件や強烈な展開に頼らず、登場人物の内面の変化だけで読ませる高い構成力にあります。
主人公の春野うららは、過去のいじめから脱却するために「ナメられないこと」で自分を守ってきた、あえて強く見せることでしか生きられない不器用な女の子。東京から田舎に引っ越してきたものの、母親が水商売であることから周囲に色目で見られ、その母親も仕事で家を空けがちという複雑な環境に置かれています。そんな彼女が、傷つくことを恐れて周囲を拒絶し、強がるしかない状況には、読んでいて胸が締め付けられると同時に、どこか深く共感してしまいます。
そのため、誰にでも愛想よく接し、軽口を叩かれても怒らない駐在さんの姿は、うららにとって最初は理解できない存在として映ります。この二人の“価値観の衝突”こそが、物語の切ない出発点になっているのです。
そんな彼女の前に現れる駐在さんこと立見宗介は、普段はマスクをしていますが、そのマスクを外した素顔は驚くほどの激イケメン!!
真面目で誠実、町の住民からも深く愛されている彼ですが、時折見せるフッとした鋭い表情が印象的です。「過去に何かあったのでは……」と思わせる影があり、そのギャップが彼の男性としての魅力をさらに引き立てています。
うららにとって立見は、自分が一番危ないピンチの瞬間に助けに来てくれた、まさに「王子様」のような存在。しかし、これまでの過酷な経験から「そんな夢みたいな現実はあるわけない」と斜に構えてしまうからこそ、彼との距離感が掴めずに戸惑ううららの様子が、たまらなく健気で可愛らしいのです。
それでも、立見が差し伸べてくれる温かい手のおかげで、うららは少しずつ町の人たちとの繋がりを増やしていきます。立見というフィルターを通して、周囲の人々がうらら自身の本来の良さや真っ直ぐさに気づいていく展開には、じんわりとした感動が広がります。
傷つくことを恐れて人を頼れなかった少女と、過去に秘密を抱えながらも不器用に人を守ろうとする駐在さん。単なる恋愛漫画にとどまらない、二人の切実な心の交流が本作の一番の見どころです。
冷え切った心が人の温もりによって解きほぐされていく、その尊いプロセスをぜひ見守ってください。きっと読み終わる頃には、二人の幸せを願わずにはいられなくなります!2026年06月25日 -
とある連続ドラマでの共演を機に出会った、若き俳優たち。
美貌だけで注目される麻生涼平、実力でのし上がろうとする柘植一慧、美しすぎるがゆえに生きづらさを抱えるミコト、二世俳優として業界を冷徹に見つめる高屋敷華。
全くタイプが異なる4人は、芸能界という残酷で華やかな場所で、「才能」という正体不明の怪物に翻弄されながら、それぞれの人生を歩み始めます。
描くのは『大奥』『きのう何食べた?』など、数々の名作を世に送り出してきたよしながふみ先生。
今作も先生の真骨頂というべき、派手な成功譚に終始しない、人の内面に深く潜り込む濃密な群像劇として展開されます。
タイトルにある「Talent」は、才能や才能ある人を指す言葉ですが、本作が描くのはその輝きだけではありません。「才能」という呪縛が、人の生き方や関係性にどのような影を落とすのか。その残酷なまでの過程が、淡々と、しかし鋭く描き出されます。
舞台設定が2000年代初頭である点にも注目です。
SNSが普及しきる前、テレビや芸能事務所の影響力が絶対的だった時代の空気感が、物語のヒリついたリアリティを支えています。
登場人物たちは、善悪や成功・失敗といった単純な軸では描かれません。野心的で計算高い人物もいれば、無自覚な存在感によって周囲を揺さぶってしまう人物もいます。
誰かを断罪することなく、それぞれの「業(ごう)」を静かに見つめるよしなが先生の筆致は、あまりに冷静で、だからこそ圧倒的な読み応えがあります。
本作は「才能の有無」に答えを出す物語ではありません。その問いを抱えたまま、人はどう歳を重ね、生きていくのか。
次第に変化していく4人の関係性と、その果てに辿り着く景色……。
一筋縄ではいかない、螺旋階段のような人生の妙味を、ぜひじっくりとご堪能ください。2026年04月02日 -
高校生の真山と佐山は、幼いころから何をするにも一緒のニコイチ幼なじみ。
同じクラスで、同じ帰り道。当たり前のように隣にいる関係でしたが、最近なぜか佐山が周囲からモテ始めます。その小さな変化に対し、真山の胸には正体のわからない違和感が芽生え始めて…。
友情か、それとも。転がるように変わっていく二人の関係を、静かな日常の中で描いた等身大の青春ストーリー。
今作は幼なじみという近すぎる関係性が、少しずつ形を変えていく過程をとても丁寧に描いています。
劇的な事件が起きるわけではありません。
派手さはありませんが、だからこそ読者の心に、彼らの鼓動がダイレクトに伝わってきます。
とにかくふたりの距離感のリアルさにとにかく注目していただきたい!
長年一緒にいたからこそ生まれる安心感と、失ってしまうかもしれない不安が同時に描かれており、そのバランスが絶妙です。
しかし、ふとした視線の向き、会話の「間」、何気ない一言。その一つひとつに、言葉にできない感情が宿っています。
どちらかが一方的に情熱的になるのではなく、少しずつ気持ちが形を成す…その「途中」をしっかり見せてくれます。
さらに、関西弁を活かした会話のテンポの良さ!
軽快なやり取りに思わず口角が上がりますが、その明るさがあるからこそ、ふとした瞬間の沈黙や、熱を帯びた表情の変化が痛いほど鮮明に響くのです。
笑っていたはずなのに、気づけば胸がぎゅっとなる――その落差こそが本作の醍醐味です。
また、想いが通じ合ってハッピーエンド、で終わらせないのもポイント。
「恋人になったあと」に押し寄せる不安や戸惑いまでを、逃げずに描ききっています。関係が変わったからこそ生まれる新しい「揺れ」を共有する二人の姿には、愛おしさで胸がいっぱいになるはずです。
読後、二人の時間をもう少しだけ、いつまでも眺めていたくなる。
そんな幸福感をくれる作品です。2026年04月02日 -
戦国の世。
美貌と色香を武器に、数々の女を篭絡してきた「男くノ一」、篝火。
彼に課された新たな任務は、敵国の巫女・竜胆姫を一夜で落とすこと。
「恋を嘯き、愛を騙る」──それが篝火の流儀。
しかし、今回ばかりは勝手が違いました。
小さく可憐な竜胆姫に、逆に翻弄されてしまう篝火。
恋に落とすはずが、落とされたのは自分──!?
そんな“ホコタテ構造”から始まる、笑えて切なくて、そしてとびきり美しいラブストーリー!!
篝火は、天下一の美貌を持つ忍。
その顔立ちは、女だけでなく男も惚れるほど。
任務のためなら恋も嘘も使いこなし、冷徹にターゲットを落としてきたプロフェッショナルです。
そんな彼が、今回の任務で出会ったのが竜胆姫。
小柄で可憐、どこか儚げな雰囲気をまとった巫女。
「こんな子なら、すぐに落とせる」と思った篝火でしたが、彼女の天然さ、肝の据わった言動、そして時折見せる“イケメンすぎる”振る舞いに、逆にキュンとしてしまうのです。
その姿が、かわいすぎます!!
竜胆姫は、普段は冷めた表情で、すべてを諦めているような雰囲気を漂わせています。
しかし、篝火と話す時だけ、ふと見せる可愛らしさがたまらない!
そのギャップに、読者も篝火と同じように心を奪われてしまいます。
そして何より印象的なのが、龍神の力を使った時の竜胆姫。
その瞬間、彼女は可憐さを脱ぎ捨て、まるで武人のような男らしさを放ちます。
その姿は、まさに“かっこいい”の一言。
「ある意味魔性の女なのでは!?」と感じてしまうほどの魅力が、彼女にはあります。
恋を武器にする篝火(矛)と、天然で無防備な竜胆姫(盾)。
しかし、盾だと思っていた竜胆姫が、実は最強の矛だった──という逆転劇が、物語を面白くしています。
今作を描くのは『月読くんの禁断お夜食』や『青春しょんぼりクラブ』のアサダニッキ先生。
繊細な絵柄と些細な心情変化の描写が秀逸です!
コミカルさとシリアスとのバランスが絶妙で物語にメリハリがあるところも流石…!!
キャラクターの表情、間の取り方、セリフの余韻──すべてが丁寧に描かれていて、読者を物語の世界に引き込みます。
この作品の最大の魅力は、なんといってもギャップです。
色仕掛けのプロでありながら冷淡な篝火が竜胆姫に翻弄されて可愛くなる姿。
可憐で天然な竜胆姫が、男らしくかっこいい!
任務としての恋から、本物の恋へと変化してく様。
とにかくギャップが満載。
読者はそのギャップに何度も驚かされ、何度も笑い、何度もキュンとさせられます。
恋に落ちる瞬間の“春雷”を、ぜひその目で確かめてください。2025年10月30日 -
大学進学を機に上京した初帆(はつほ)。
新生活に胸を躍らせる彼女の隣人は──なんと中学時代に気まずい別れ方をした、人生唯一の「元彼」・頼(より)くんでした!
「――だから早まんなよ。勝手に他の奴と付き合うな」
再会早々、頼くんの猛アタックが炸裂!
ちょっと偉そうで、ちょっと強引。でも、かっこよくて、憎めない。
そんな“難あり(!?)元彼”との再会から始まる、じれったくて甘酸っぱいラブコメディ♪
この作品の最大の魅力は、なんといっても頼くんの“可愛さ”。
見た目はイケメン、頭も良くてハイスペック。だけど、初帆の前ではちょっと不器用で、完璧でいたいがゆえに空回りする姿が、もう…かわいすぎます!
・初帆の前ではかっこいい自分でいたいから、完璧に振る舞おうとする。
・でも、好きすぎて空回りしてしまう。
・初帆のことをずっと好きでいてくれている一途さ。
・時々見せる素直な表情や、照れた顔。
そんなギャップがたまらなく愛おしい。
「自分のことをずっと好きでいてくれる男子って、女の子の憧れだよね…」と、思わず口にしてしまう読者も多いはず。
初帆は、頼くんの猛アタックを回避しつつも/ブロックしながらも、過去の思い出や今の距離感に揺れ動きまくり。
「もう終わったはずの関係なのに、なんでこんなに気になるの?」
「好きだったけど、今はどうなんだろう…?」
そんな初帆の心の動きが丁寧に描かれていて、読者も一緒に悩み、ドキドキしながらページをめくることになります。
頼くんは、初帆とやり直すために必死です。
過去の失敗を悔いて、今度こそちゃんと向き合いたい。
その姿勢が、ただのラブコメでは終わらせない深みを作品に与えています。
「やり直す」って、簡単じゃない。
でも、好きだからこそ、もう一度向き合いたい。
そんな頼くんの真っ直ぐな気持ちが、読者の心にじんわりと染みていきます。
ぜひ、あなたも頼くんの猛アタックに落ちてみてください。2025年10月30日 -
あの時産んでいたら…。
産むという選択肢がない。
結婚と出産は当たり前?
離婚して3年の元夫と再会した弓井祐里(ゆみい ゆり)を中心に、子どもを持つ・持たない・持てないというテーマが交錯し、「母」であることと「私」であることの間で揺れる女性たちを描くオムニバス作品。
この物語は序盤から様々な気づきを与えてくれつつ、心にそっと寄り添ってくれます。
その中でも特に心に残ったセリフをご紹介します。
最初に心を掴まれたのは、取引先との挨拶で偶然再会した元夫・佐藤慶介に対して、弓井が放った一言。
「離婚した人に言う定番の挨拶ってないですよね」。
ハッとしました。
確かに「結婚」なら「おめでとう」と言えるけれど、「離婚」に対しては、何をどう言えばいいのか迷ってしまう。結局、「お疲れ様」か「そうなんだ」で流してしまうことが多いのではないでしょうか。
次に印象的だったのは、大学の研究生である祐里の妹・夏里が、友人たちと結婚や就職など将来について語り合う場面。
「子どもはいないけど主婦になるって“あり”なのか“なし”なのか?」という話に対して、友人のひとりが言った
「私たちは何に許されたいんだろうね」
という言葉が、胸に深く刺さりました。
子どもを持つこと、持たないこと。結婚すること、しないこと。
その選択は人それぞれで、どれも間違いではないはずなのに、自分の選んだ道に対して「これでよかったのか」と問い続けてしまう。そんな思いを抱えている人は、きっと少なくないでしょう。
祐里の物語だけでなく、作品にはさまざまな立場の人々が登場します。
・もっと仕事がしたいのに育児に追われ仕事がままならない女性
・子持ち社員の仕事を肩代わりすることが多い女性
・ゲイであるため「結婚」という制度に縁がない男性
・結婚も出産もまだ想像できない20代女性
・子どもができず離婚し、ひとりで生きることを選んだ高齢女性
それぞれが何を選び、何を諦め、何を抱えて生きているのか。
読者はきっと、どこかに「自分ごと」として感じられる瞬間を見つけられるはずです。
そしてこの作品の魅力は、感情を過剰に煽ることなく、静かに心に染み入るような“余白”があること。読んでいて、安心できるのです。
読後には、きっと「自分はこれでいいんだ」と思えるのでは。
タイトルの『元気でいてね』は、登場人物たちが誰かに向けてかける言葉であり、読み手にとっては誰かへの祈りであり、自分自身への優しい願いでもあるように感じます。
人生の選択に迷いながらも、自分らしく生きようとするすべての人に、そっと寄り添ってくれる作品です。2025年10月30日 -
高校1年生の久藤ゆゆは、入学早々、部活紹介で見た応援団のパフォーマンスに衝撃を受けます。
力強く、真っ直ぐで、何よりも“誰かのために声を出す”姿に心を打たれたゆゆは、即座に応援団への入部を決意。
仮入部の段階で一緒になったのは、同じクラスの狐塚(こづか)くん。
彼は、無愛想で口数も少なく、クラスでもちょっと浮いた存在。
「なんでこの人が応援団に?」と疑問を抱きつつも、ゆゆは彼とともに応援団の世界へ足を踏み入れていきます。
部活マンガといえば、運動部や文化部が定番ですが、『エールガール!』が描くのは“応援団”。
応援団といえば、学ラン姿で声を張り上げる男子のイメージが強いかもしれませんが、本作では女子高生がその世界に飛び込んでいく姿が斬新です。
最初はただ「かっこいい!」という憧れから始まったゆゆの応援団生活。
同級生の狐塚くんはそんな彼女のミーハーっぽさが鼻につくとぶつかってきます。
しかし本気で取り組むほど「応援」に魅了されるゆゆ。その熱意が彼に伝わり、関係が変化していくのです。
放課後ふたりが一緒に練習するシーンのエモいこと!!!
これぞ青春!!と言わざるをえません。
ゆゆが初めての大舞台である体育祭で本気のエールをするシーンは、彼女の覚悟と思いと努力がひしひしと伝わってきます。
ただの憧れから次第に自分自身の殻を破り、誰かのために立ち上がる力を手に入れてゆく姿に感動するのです。
ゆゆの成長は、まっすぐで、時に不器用で、とても誠実。
その姿に、読者はきっと「自分も誰かの背中を押したい」と思うはずです。
応援されるのも嬉しいけれど、応援することで、自分自身も強くなれる――。
そんな“熱”がまっすぐに伝わってきます。
青春の応援歌のような作品です。
2025年08月13日 -
花沢ののか、18歳。
田舎から上京してきたばかりの女子大生。夢見がちで、恋に“きゅん”を求める彼女が向かったのは、お笑い芸人として活躍する兄の家。そこで待っていたのは、兄の相方・渡良瀬純太(わたらせ じゅんた)。
なんと兄は元々相方とルームシェアをしており、ののかと3人で暮らすことに!!
しかも渡良瀬は、女の子大好き、距離感ゼロ、500人斬りの噂まである“とことんクズ”な男。
軽い言葉、甘い笑顔、そして絶妙なタイミングでのボディタッチ。ののかは警戒しながらも、渡良瀬の魅力に少しずつ心を奪われていきます…。
ガチ恋禁止のはずが、心はどんどん渡良瀬に惹かれて…。
恋してはいけない相手との、危険で甘い同居生活の始まり!!
少女マンガのヒーローには様々なタイプがいますし、芸能人とのLOVEを描いた作品にも名作が多数あります。人気俳優、イケメンアイドル、俺様バンドマン、キラキラインフルエンサー…。ですが今作はお笑い芸人!! しかも爆モテのチャライケメン!!
そんな芸人・渡良瀬のキャラがとにかく強烈です。
女好きでチャラいのに、どこか憎めない。ののかとの掛け合いは、笑えて、ドキドキして、時に切ない。読んでいて「こんな男、絶対ダメ!」と思いながらも、ののかと一緒に惹かれてしまう不思議な魅力があります。
時折見せる優しさや真剣な表情がズルい! 普段はおちゃらけているのに、突然真剣なまなざしになったり、無邪気に笑ったり、照れたり…。そのギャップにやられる読者多数ではないでしょうか。
彼の本音が少しずつ明かされる展開も見逃せません!!
兄からの紹介で撮影現場で働くことになったののか。渡良瀬の漫才師としての本気を目撃し、顏だけではない彼の姿に、これは沼るしかないよね…!!と納得の展開。
それでも必死に抗おうとするののかが可愛らしい。
好きになっちゃダメな人を、好きになってしまったときの、心のリアルに魅了されます。
渡良瀬の魅力に抗えないののか。
ののかの純粋さに揺れる渡良瀬。
2人の距離が縮まるたびに、読者の心も“きゅん”と震えること間違いなし!
ぜひ、あなたの推しに加えてほしい作品です。2025年06月30日 -
父を亡くした少女・瑞花(みずか)は親戚のもとへ引き取られることになり、竜人伝説が残る海辺の街・篭崎へとやってきます。新しい生活に不安を抱えながらも前向きに馴染もうとする瑞花ですが、彼女を待っていたのは、叔父の家に下宿している“竜人”の少年・天辰(てんしん)との同居生活でした。
無愛想で人付き合いが苦手な天辰と、明るくて人懐っこい瑞花。最初は反発し合う二人でしたが、日々の暮らしの中で少しずつ心の距離を縮めていきます。
一方で、島の学校では竜人と人間の間には微妙な壁があり、瑞花はその狭間で葛藤することに。
天辰の優しさや、竜人としての孤独と傷に触れるうちに、瑞花の中には彼への特別な感情が芽生え、さらに天辰にとっても瑞花が特別な存在になっていくのですが…。
竜人と人間の交流によって生まれるハートフルなファンタジーです!!
今作は、雑誌『LaLa』で連載中の縞あさと先生最新作。
思春期の少年・少女の成長に加え人間×亜人、更にはひとつ屋根の下同居モノ…。
ひと粒で3度美味しい…そんな作品です!
竜とおぼしき特徴や能力を備えた“竜人”という異種族が存在する世界。
そんな世界で竜人の少年と人間の少女との間に生まれる、繊細な感情のやりとりに注目していただきたい!!
天辰は竜人としての自分に引け目を感じており、人と距離を置いて生きてきました。一方の瑞花は、父を亡くしたばかりという辛い立場ながら彼にまっすぐ向き合おうとします。
竜人という存在をより知ろうとし、天辰の不器用ながらも優しい部分を見つけ受け入れる彼女に次第に心を開き始める天辰。
お互いにぶつかり合いながらも少しずつ歩み寄る姿は、読者の心をじんわりと温めてくれます。
更にキャラクターも魅力的。
主人公ふたり共、それぞれ重いものを背負っていてもどこかカラっとしており、常に前向きな姿に好感がもてます。
会話の端々に織り込まれるちょっとした笑いのツボも最高です。微笑ましすぎて二人の瞬間がずっと続いてほしい~なんて思いながら読み進めてしまいます。
竜人同士の対立や天辰の実家である神社の存在など、他の竜人たちと様子も描かれていくので、物語が進むにつれて瑞花と天辰の関係性はもちろん、周囲のキャラクターたちも変化していくところも見逃せません!!
ファンタジーと青春ラブストーリーが絶妙に融合した今作。異種族との共生というテーマを扱いながらも決して重くなりすぎず、むしろ優しさと温もりに満ちた物語として描かれています。
瑞花と天辰の関係がどう変化していくのか、そして竜人という存在がこの世界でどう受け入れられていくのか。今後の展開が非常に楽しみです!!2025年05月29日 -
堅実に生きてきた皆川星(みながわ せい)19歳。彼女はバイトを2つ掛け持ちして忙しい日々を送っていました。
そんなある日、母の突然の死により彼女の人生は一変します。
遺品整理をしている中で、星は15億円もの大金が入った預金通帳を発見したのです!
生前の母の言動から、振り込みをしていたのは一度も会ったことのない父である可能性が…。通帳に記載された「タカツカサ イチ」という名前、それはアジア有数の歓楽街「てんごく地区」に建つ巨大タワーのオーナーのものでした。
父に会うため、声をかけてきた怪しいスカウトマン・射馬(イバ)とともに夜の世界で生きる覚悟を決めた星。
父が経営するステラタワーが主催する「ノヴァクイーン」の座を目指します!
女王の座はてんごく地区で貢がれた額が一番多い娘に贈られ、その称号を手にすれば賞金と地位に加えオーナーの鷹司 一が何でもひとつお願いを聞いてくれるというのです。
星は夜の世界の頂点に立ち、父親に15億円を叩き返すことができるのか!?
ガールズ・サバイバル開幕です!!
描くのは『朝まで待てません!』『鉄壁ハニームーン』『セーラー服にお願い!』『キスよりも早く』の田中メカ先生。
主人公の星は『朝まで待てません!』の主人公 夕子を彷彿とさせる完全無欠のサイボーグ感がありつつも色気がすごい!!
彼女に対していやがらせをしてくる女たちも母直伝の「きれいな笑み」で打ち負かしてしまうのです。
歓楽街にあるショーパブのホールとして働き始めた彼女は様々な試練に直面しますが、持ち前の負けん気の強さと目を見張るほどの記憶力を駆使し乗り越えていきます。
敵意むき出しの先輩たちの嫌がらせにも真っ向から挑み、次第にその才能を開花させていく様は読んでいて爽快感があります。
女性がサクセスしていく物語はここしばらくのトレンドです。
驚異的な記憶力で周りに自分という存在を認めさせていく様は、ある種「令嬢系」で人気のストーリーと言えるかもしれません。
普段「異世界」や「令嬢」系作品を読んでいる方にも是非手に取っていただきたいです。
星に女王を目指させるイバの存在も気になるところ。彼の狙いは本当にお金なのでしょうか?!
1巻の段階ではラブ要素はまだありませんでしたが、今後ふたりの関係に変化があるのか注目です。
2025年04月24日 -
魔女のサダコは、人間社会から長い間離れて暮らしていました。しかし、ある日偶然手に入れたスマホを通じて、外の世界の輝かしさを知り、引きこもり生活に終止符を打つことを決意します。
なんとサダコは流行のファッションに身を包み、自撮りを投稿するインフルエンサーとしての活動を始めるのです。彼女の大胆な行動は、多くの人々の注目を集め、瞬く間にフォロワーを増やしていくのですか…!?
この物語、魔女サダコの活躍にも注目ですが人間の女性ハナも物語のキーパーソンと言えます。
ハナは子どもの頃から父親や周囲の人々に「魔女」と呼ばれ続け、その言葉に苦しんできました。そのためサダコが自身を「魔女」と宣言したことでハナの憧れは一転してアンチへと変わります。(好きが高じすぎて、ある瞬間からアンチになるってあるあるですよね…。)
しかしアンチとなってしまった彼女に対してのサダコの距離の詰め方は魔女ならでは!
魔女という存在を世間に明かしたサダコを良く思わない他の魔女も登場し、サダコの今後の活動はどうなってしまうのか気になります。
サダコがインフルエンサーとして成功する過程やハナとの対立など、現代の若者が直面する自己表現や承認欲求の問題をリアルに反映しています。
ですがそれだけだと社会派風刺マンガとなってしまうところを、魔女というファンタジー要素をプラスすることで、物語は途端に輝きだすのです。
サダコとハナの関係は単なる対立関係にとどまらず互いに影響を与え合いながら変化していく予感がしますし、ハナコの魔法が効かない体質も、生い立ちが魔女と深く関わっているからではないでしょうか!?
新たな魔女の物語、ご堪能ください。2025年03月21日 -
28歳の独身OL、高橋美瀬(たかはし みぜ)は、会社の先輩である桜井と付き合っているつもりでしたが、後輩の吉川あざみのSNSに桜井と親密そうな写真が投稿され、不安を抱くようになります。
そんな中、美瀬の父親が怪我をしたことをきっかけに、彼女は実家のレストランを手伝うことに。
そこで再会したのが、9歳年下の幼馴染、九条律(くじょう りつ)。
彼は美瀬に対してずっと好きだったと告白するのですが…!?
最初は年下男子との年の差LOVEまっしぐら…!かと思いきや…美瀬は、桜井への不安と律への新たな感情の間で揺れ動きます。
先輩社員の桜井は仕事ができる人気者ですが、はっきりとした言葉で美瀬に気持ちを伝えないため、そりゃぁ美瀬の心も不安定になるってもんです。
さらにそこに割って入ろうとする後輩女子・吉川あざみ。彼女のあざとさが不穏なフラグを立てまくり…!
一方、律は美瀬に対して真っ直ぐな想いを抱いており、その純粋さにきゅんが止まりません。
美瀬自身も明るく頑張り屋さんなので、思わず応援したくなる方も多いのでは!?
不穏感はあるものの、どちらの男子も格好良いので、「美瀬、どっちにいくの!?」とドキドキしっぱなしです!!
描くは『カモナ マイハウス!』や『隣のあたし』『青夏 Ao-Natsu』の南波あつこ先生。
これまでの作品ではティーンの恋を描くことが多かった南波先生ですが、今回は今までのキュン魂はそのままに大人の恋愛を描いています!!
美瀬と律、桜井、あざみの四角関係はどうなってしまうのか!?
次の展開が気になること間違いなしです!2025年02月20日 -
とある町に嫁入りをしてきた美貌の女・セルマ。
その美しさに周囲の誰もが魅了されてゆくが、彼女の夫は次々と亡くなってゆき…。
彼女との婚姻は仕組まれたものなのか…。
彼女の正体とは一体…!?
花嫁をめぐるミステリアス・ストーリー!!
1話目は、妻のことを支配しようとする夫と、そんな夫に耐えながら暮らす妻イーダを中心に描かれます。
義兄の元に嫁いできた美しい女性セルマが自分の夫と親密にしている姿を見てしまったイーダ。夫の不貞に怒るよりもセルマに嫉妬している自分に戸惑います。
そんなある日、セルマとの逢引の後、夫が突然死をしてしまいます。
イーダはセルマに顛末を聞こうとするも、彼女からは予想外の一言が…。
怪しげな美女が、周りに害を成す男性を滅ぼすといった世直し的な物語かと思いきや、貞淑な妻を演じていた女までも変えてしまうという…。
決してセルマが善性だけの存在ではないことを1話目から漂わせています。
前半はまるでグリム童話のような物語ですが、次第にその様相が変化していくのです。
後半はセルマ達が暮らす集落での生活が描かれます。
そこにはマザーという存在と、彼女たちの摩訶不思議な生態が描かれるのですが…。
セルマの素性が明かされるほど、ますます謎が深まるばかりです。
繊細なタッチで描かれるおとぎ話のような世界は、セルマ達の不思議な美しさをより一層引き立てています。
美しい彼女達には人間の道理とは異なるルールがあるようで、背筋がゾクリとする怖さがあります。
彼女たちは一体何なのか!?
セルマの息子はどう成長するのか…!?
先が気になる物語です。2025年02月04日 -
直属の上司であり同棲している彼氏・土屋からプロポーズをされた本郷 七海(ほんごう ななみ)27歳。
ふたりの関係に行き詰まりを感じていたため、どうしても頷くことができずに家から飛び出してしまいます。
行く当てがなく困っていたところ、偶然再開した幼なじみの中村 比呂(なかむら ひろ)から「今住んでいる一軒家の部屋が余っているからおいで」と誘われ、転がり込むことに…!!
傷ついた者同士がゆっくりと傷を癒しながら前へと進む同居物語!!
七海の彼氏である土屋を腹立たしく思わずにはいられません。
一井先生作品の中でこんなにイラっとしたキャラクターは過去イチかもしれません…。
土屋からのプロポーズの言葉が
「俺のほうが給料高いし 楽させてやるから俺のサポートと家事よろしく!!」
という…。
何様か!?と。その言葉で誰が結婚しようと思えるのか!?と。
こんなことを言われた日には、ちょっとそこに正座しなさいと1時間はお説教をした上でお別れですよね。
優しい七海はそんなことはせず、プロポーズが嬉しくなかったことをこんなになるまで気づけずごめんと謝るのです。
七海、いい子すぎる!!
プライベートでも彼女に頼りきり、仕事でもミスの多さが指摘されてしまい無責任な面がある土屋。
次第に評判を落としていく様に、思わずざまぁ!と思ってしまった方も多いのではないでしょうか。
しかし、そんなざまぁ展開を嬉々と描く一井先生ではありません。
七海は彼の転落に心を痛め、更に彼のミスの多さは自分への嫌がらせ!?と疑ってしまった自分を責めるのです。
どれだけいい子なの、七海…!!!
一方、幼なじみの比呂の優しいこと…!!
傷ついた七海の逃げる先となる彼は正に理想的な王子様ポジションのキャラクターです。
優しさを押し付けるのではなく、適度な距離感を持ちつつも七海の言葉に出せない思いを察知してくれるところが素晴らしいです。
ゆるふわで癒し系な彼ですが、その言葉は読む人の心をぐっと掴みます。
彼のセリフで
「辛さって どうしたって自分だけのものだと思う」
というものがあります。
「別れる」とはどういうことかを実感し、土屋の言葉に傷つき、何が辛いのかすらわからなくなり倒れてしまった七海に対して言ったセリフです。
このセリフに心を鷲づかみにされました。
「辛いよね、大丈夫だよ」と慰めるのは簡単ですがそうはせず、人はその辛さすら自分の糧にできる強さを持っている、と比呂は信じているのです。
このセリフを言えるまでにどれだけ傷ついてきたのか…!!
恐らく彼自身が今までたくさん辛い思いをしてきたからこそ、七海の辛さがわかるのでしょう。
今がとても辛いのなら一度そこから全力で逃げてみよう。
そして息継ぎをしてから、再び前に歩き出そう。
そう教えてくれる、頑張りすぎてバランスを崩した者たちが逃げ込んだモラトリアムの物語。
日常の中で起きる人との些細な摩擦に傷つきながらも前に進む物語は、一井先生の真骨頂。
七海と比呂が救われますように…。2025年02月04日 -
高校の卒業式の日、日下部誠(くさかべ まこと)は同級生の遠山聖(とおやま ひじり)に告白します。
憧れのひとに想いを伝えるだけで満足だったハズが、すんなりOKを貰いふたりは付き合うことに!!
同じ大学に通うふたりの日常は静かに流れていきますが、少しずつお互いを知りじわじわと距離が近づいていき…。
あたりまえの日常だからこそ大切にしたいものが詰まっています!!
とにかく登場人物全員がいい子!!
主人公の誠も聖も素直で優しい心の持ち主。
デートシーンで、デートプランを考えつつも聖の好きなものを共に楽しもうとする誠と、そのことに素直に感謝を伝える聖。お互いが相手のありのままを大切にしていることが分かり愛おしさを感じます。
体格的には聖の方が大きくBLでは攻めとなりがちですが、誠の咄嗟に出る彼氏らしさに心鷲づかみにされた方も多いのではないでしょうか。
そもそも誠と聖に、受け攻めといった概念は相応しくないかもしれません。
ふたりともそれぞれの要素を持ち合わせており、バランスがとても良いのです。
初々しいふたりの何気ない日々がゆっくりと流れる様子は心地よく、尊いが詰まっています。
タイトルの『165185』とは一体!?と思われた方もいるのではないでしょうか。
この数字、誠の身長165cmと聖の身長185cmを合わせたものとなっています。
「×」で繋げるのではなく連続で書くことで作品の本質を表しているのではないでしょうか…。
さらに注目していただきたいのは、マンガでありながらまるで映画を観ているかのようなカメラワーク。
誠と聖が歩いている姿を描くシーンでも、引きからのカメラがパーンして俯瞰の描写になり…と、流れるようなカメラワークでキャラクターの心情が伝わってくるのです。
描くのは、魂を削って漫画を描く姿が読み手の心を揺さぶる天才VS秀才の物語を描いた『漫身創痍』やSNS累計700,000PVの『病める時も、健やかなる時も、』の野良おばけ先生!!
今作はBLレーベルからの刊行作品ではないのですが、だからこその“味わいがある”ボーイズラブになっています。
是非ご堪能ください!!
2024年11月28日 -
舞台は大正~昭和初期の私娼街。
親に売られて娼婦となった女、親から逃れるために娼婦となった女、そこでしか生き方を知らない女…。
様々な境遇の女がそれぞれの事情を抱え生きていますが、そこに悲壮感はありません。
ワケはありつつも、ただ憐れまれるだけの存在ではないのです。
1話目に登場する檜乃葉も、家のために売られ娼婦となった女性。
しかも斡旋したのは好きだった男性 清太郎。
さらに清太郎は娼婦となった檜乃葉の客となります。
何故そんな関係になったかと言えば、家族のためお金のため…複雑な事情が絡まります。
それだけ聞くとあまりの不遇さに憐れに思われるかもしれません。
しかし檜乃葉はそんな状況でも悲恋に涙するような弱い人間ではありません。
己の手で幸せを掴みとるために行動できる強さを持っているのです。
ゲスになりきれない男と、力ずくで未来を切り開く女の行く末とは…。
他に登場するどの女性も艶やかさや翳りが印象的ではあります。
ですが、自身の足でしっかりと立ち、己の力で生きる様には力強さを感じます。
1巻には主に4人の娼婦が登場しますが、それぞれのエピソードを描きつつも次第に物語がひとつにまとまっていく展開に鳥肌が立ちました。
彼女たちの生き様をとくとご覧あれ!2024年11月28日 -
物語の舞台は、人間がたった10人しか残っておらず、絶滅危惧種(リストルージュ)としてキメラ族に守られている世界。
キメラ達はかつて捕食対象であった人間を保護し繁殖させていました。
人間の世話役となったキメラの少年ミラは、来る日のため人間の少女カレンの世話を任されます。
些細な傷ひとつですら付くことがないよう徹底管理。それはそれは大切にカレンを育てます。そんなある日、カレンに結婚の申し込みが。
人間同士で結婚・繁殖させ、一人でも人間を増やすことを目的としているキメラ達にとっては願ってもないことです。
本来めでたい事であるはずなのに、ミラの心には今までにない感情が芽生えます…。
そして結婚式当日、歴史に残る事件が…!!
そもそも人間が減少したのはキメラによって食べられてしまったから。
そんな捕食者であるキメラが人間の絶滅を阻止するために保護しているというディストピアな世界で、ぬぐい切れぬ違和感が最初から付きまといます。
降り続いた酸性雨によりドロドロに溶け複数がくっついて生まれたキメラ達は、その生まれ通り複数の動物の特徴が混ざったようなユニークな容姿。
人間の世話係をする少年も独特なデザインのキャラクターになっていますが、その姿は怖さよりも可愛らしさを感じます。
そして自分の状況を理解していないため無垢であどけない人間の少女。
文字通り蝶よ花よとお姫さまのように育てられていますが、何故自分がこうも大切に育てられているのか理解しないまま「おひろめ会」に臨んでいる姿には、哀れさを感じずにはいられません。
定期的に行われている「おひろめ会」。物語の中では貴重な人間を多くのキメラに見せることで身近に知ってもらうチャンスとして言われていますが、実際にはキメラの娯楽としての見世物でしかありません…。
さらに人間同士の結婚=繁殖。大勢のキメラの前で性行為をさせられるという状況。
とても残酷に感じますが、見方を変えると人間がペットや動物達にしている事とそう変わらないのでは…!?と考えさせられます。
少女と共に過ごすうちに変化する、世話係であるキメラの少年の心情がメインで描かれますが、次第に「人間の解放」という大きなテーマも関わってきます。
今後、キメラと人間の関係性はどうなるのか!?
人間は本当に絶滅しかけているのか!?
続きが気になります!!2024年10月15日 -
主人公の山鼠(やまね)みや子は、父親の死後、実家の銭湯「小梅湯」を引き継ぎます。しかし、父親が遺した1千万円の借金が発覚!
そんな中、ヤクザの蛇塚(へびづか)が現れ、借金の取り立てに来ますが、彼はなぜかみや子に優しく接し、共に借金を返済することを提案します。
彼の助けを借りながら、みや子は銭湯を再建し、借金を返済するために奮闘しますが、蛇塚はみや子に対してなにやら執着があるようで…!?
蛇塚の狙いは一体…。みや子と銭湯はどうなってしまうのか…!?
タイトルだけ見ると、もしかしてイケナイお店で働かされる物語!?と思いそうですがご安心ください。
銭湯を舞台にした、“最高”が詰まったラブコメ作品です!!
この作品にはとにかく“可愛い”が詰まっています。
主人公であるみや子の表情がコロコロと変化するところが可愛い!!
1千万円の借金を肩代わりという絶望的な状況にも関わらず、自分の大切なものは自分で守ろうとする頑張り屋さんなところも可愛い!!
そんなみや子への一途な思いが漏れ出てしまっている蛇塚が可愛い!!
みや子の他意なき一言に一喜一憂してしまう姿も可愛い!!
蛇塚のみや子への思いはかなり重めな気配がしますが、みや子がちょっぴり天然なせいでちょうど良いじれったさを演出しているところが良いのです。
溺愛過ぎてお腹いっぱいになるのではなく、適度な焦れキュンが詰まっているので、かゆい所に手が届くようなラブコメになっています!
会話のテンポも良く、ギャグとラブのバランスも絶妙で、ゆる~く楽しめる作品です。
ふたりの関係が今後どう進展していくのか楽しみです!2024年08月28日
