佐々木閑のレビュー一覧
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パラダイムシフトを繰り返し進んで行く科学の思考法・世界観の方向性とブッダの創始した仏教の思考法・世界観とが相似形であるということを論じた一書。ブッダの本だというのに、全302頁中、ブッダが本格的に登場するのが233頁。だからつまらないかというと、そんなことはなく、筆者の博覧強記ぶり、さまざまな学問分野の歴史のエッセンスをぎゅっとつかみ、分かりやすく読者に提示する手つきが素晴らしい。こういう類いの本(特に歴史書など)は学問的にちゃんとしようとするあまり、学問的には正確な記述なんだろうけど、「結局何がどうなの?」となることが多いが、実に本質を分かりやすく伝えてくれる。そして、上座部仏教の方がブッダ
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科学と仏教という、一見したところどうにも関連づけようのないふたつの分野の隠れた関係性を明確化するというのが本書の目的なのだ
Location: 182
その際、デカルトは、探求のための言語として数学を用いることの有用性に気づいた。感覚的経験よりも数学的確実性を重視し、数学を用いれば物質世界の法則を一般化して語ることができるということを指摘したので
Location: 245
科学が人間化していくという現象を示すために、典型的な事例を選んで考察していこうと思っている。最初に物理学を考えた。次に生物学、特に進化学について見ていくことにする。ここにも、科学の人間化を示す事例が数多く見出さ
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ネタバレ第一講:「釈迦の仏教」から大乗仏教へ
・日本に入ってきたのは大乗仏教
・もともとの釈迦の教えは時代を経て分派し、若干の解釈の違いを認め合う「部派仏教」へそれぞれ分派していった
・部派仏教の中で同時多発的に「大乗仏教」の考えが生まれはじめた
・「釈迦の仏教」では修行を積み阿羅漢(ブッダの下位存在)を目指すというゴールに対し、大乗仏教では「ブッダ」になることをゴールとし、輪廻転生を通して善行を積むことがブッダになるための近道と考えた。
釈迦の仏教では、自身の修行を見せることで、他者にこういう救いの道があるのかと「気づき」を与える考え方の一方、大乗仏教では、自分を犠牲に他者を救うという考えの違いと -
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多層で複雑怪奇な仏教について、ほんの少し知ることができた。というか仏教は多層で複雑怪奇なものであると知ることができた。
また「なぜ原始的な仏教と日本の仏教は全然違うのか」という謎も少し知ることができた。
大乗仏教と原始の仏教は随分と異なるものであると、具体性を持って学ぶことができた。それでも、日本の仏教は日本の風土風俗に合った進化を遂げたものだと思うので、それはそれで良いのだと思う(祖先の墓が寺にあることは事実なのだし)。
それでも現代日本人に「貴方達が拝んでいる仏教と本来の仏教は全然違うものですよ」と言ったら大体反感食らうだろうな。
パラダイムシフト…流行りのビジネス用語で言えばゲームチェ -
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ネタバレもともとは朝日新聞に連載されていたコラムを下敷きに加筆修正されたものらしい。これまで読んだ本は、お釈迦様の仏教や法句教、涅槃経、法華経などお経をベースとした教え、それぞれの違いの紹介だったりしたので、佐々木先生本人が実際にどう思い、どう感じているかは推測の域を出ていなかったのですが、今回は科学者目線も持っている佐々木先生の目線での考えが随所に盛り込まれて、より頭の整理ができるような本でした。
特に、「私は釈迦の信者だが、輪廻の実在性は信じない」というのは、現代人としてのスタンスが明確で、ではお釈迦様の仏教に何を求めているのか、何をゴールとしているのかが垣間見れるような気がしました。先生の言葉に -
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めちゃくちゃおもしろかった。
私は、釈迦の仏教(「私」という虚構を実在と感じてしまうことがあらゆる苦しみの原因であり、それを取り除くことで輪廻から離脱して至高の安楽に至ることができる)のうち輪廻や業を除く部分に強く同意しつつ、精神をそこまで高めたいと願いながら世俗にまみれて暮らす自称修行者に過ぎないが、大乗仏教と釈迦の教えの関係がいまいちわかっていなかったため、本書が大変参考になったし、何より、仏教が発展しつつ変化していく様が生き生きと描かれていて楽しかった。
釈迦の仏教「『私』は虚構。肉体や感覚という実在の集合体に勝手に意味とまとまりを見出だしているに過ぎない。無我に至れば苦しみは消える。 -
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対談本なので話が飛んでごちゃごちゃするかと思いきや、ものすごく構成が明確で、あまり仏教学に縁のなかった身でも良い感じで理解することができた。
特に「法」に関するテーマの対話が圧巻。
仏教が、「私」は仮の存在に過ぎないのにそれを実体を伴う本来的に不変で安定したものである錯覚してしまうことからあらゆる苦が生じることを理解し、全てが流転していく世界の縁起をただしく見ることで苦を回避するための教えであることが良くわかったし、長年の疑問であった、それなのになぜ輪廻や霊魂や他力本願が同じ仏教から出てくるのかという問いに対して、大乗仏教がブッダの説いた初期仏教を反転させてむしろキリスト教に近いほどの超越者で -
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恥ずかしながら、宗教とは非現実的な事柄に大勢ですがることによって現実逃避するものという認識でしかなかった。
しかし、この本を読み、仏教(中でも仏教原理主義といわれる仏陀が説いた仏教)は、非現実的な神や死後の世界や輪廻を否定し、現実を生きるという苦行をいかに和らげるかということを主題とした、心のコントロールを目的とした超現実的な宗教ないしは思考であることを知った。
私たちが歴史の授業で学んだ南無阿弥陀仏を唱えれば極楽浄土に行けるといった浄土宗のような仏教は、既に日本に伝わるまでの間、そして伝わった時の日本の状況によって大きく歪められた結果の産物であるが、それすらも仏教の大元の考えに寛容な姿勢 -
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自然の法則を研究し、宇宙の真理から粒子までの成り立ちを追究する近代科学。
人間の真理を追究し、涅槃に入る道を説いた釈迦の仏教。
この二つは一見全く違うもののように思えますが、世の中の真理を求めて両者が到達したのは、「人生の目的はあらかじめ与えられているものではなく、そもそも生きることに意味はない」という結論でした。
ではこのような世界で、どのように生きるのか、なぜ物事を正しく見ることが必要なのかを、一流の仏教学者と物理学者が語り尽くします。
最新の物理学は私の頭ではあまり深くは理解できませんでしたが、両者の共通点には驚かされるものがあります。
とにかく素晴らしい本です。 -
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釈迦の仏教の本質は、信仰ではなく、自己鍛錬にあります。
生きることの苦悩と向き合い、自己の改良を説くのがブッダ本来の教えです。
この釈迦の仏教を、ブッダ誕生以前のインド社会の構造、ブッダの生涯、弟子との逸話、サンガの生活規則など6つのテーマから解説します。
著者は原始仏教の世界的権威佐々木閑先生。
とても分かりやすく、しかも深いところまで解説されています。
仏教を知るための入門書に最適です。
「頭髪が白くなることで長老になるのではない。ただ年をとっただけの人は「むなしい老人といわれる」(ダンマパダ260)
手厳しい言葉です。しかし本当のことです。年寄りだからまわりが大事に扱ってくれる、年寄り -
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碩学佐々木閑と宮崎哲弥両氏の対談本です。
仏教学者の佐々木氏はもちろんですが、宮崎氏の知見も、ものすごいです。
あらゆる文献を縦横無尽に引用しながら、仏教の真実に迫ります。
どのお経が「正典」なのか、「梵天勧請」はなぜ決定的瞬間なのか、釈迦が悟ったのは本当に「十二支縁起」なのか、日本仏教にはなぜ「サンガ」がないのか、などなど。
「最強の仏教入門」とありますが、これは入門書以上のものです。
よりいっそう仏教への理解が深まりました。
これは仏教に限った話ではありませんが、組織はその維持や発展が自己目的と化したとき、思想を変質させ、人を堕落させます。内部に官僚制度ができあがってしまう。カトリックや