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科学と仏教、このまったく無関係に見える二つの人間活動には驚くべき共通性があった。徹底した論理で両者の知られざる関係性を明らかにし、さらに向かう未来をも見とおす。驚きと発見に満ちた知的冒険の書。
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Posted by ブクログ
とりあえず、本書の目次を書き出してみる。 第一章 物理学 第二章 進化論 第三章 数学 第四章 釈尊、仏教 第五章 そして大乗 目次だけだと、何の本だかさっぱり分からない。1章から3章までは、科学と数学の歴史を紐解きつつ、著者独自の史観を提示している。具体的には、科学や数学の発展の歴史は、...続きを読む「神の視点を護持する勢力」と「神の視点からの脱却を目指す勢力」との闘争の歴史でもあり、「神の視点からの脱却」が1つ成功するたびに、「人類は発展した」とみなされてきた、と述べている。(ここでの「神の視点」とは、「人間の認知的直感」と置き換えて差し支えない) 4章では、仏教が興った歴史的・文化的・地政学的な背景を解説し、原始仏教とは本質的に「神の視点からの脱却」を目指した思想であったことを指摘している。ここで、科学・数学と仏教の親和性として話がつながり、さらに将来、脳科学が発展すれば、仏教を科学的・数学的に説明できるようになるハズ、という壮大な仮説で締めくくっている。5章はおまけ程度の内容。 …この説明だとトンデモ本のように思われてしまうかもしれないけれど(これは私の説明力の問題)、内容はしっかりしており、説得性も高い。著者は仏教学者でありながら、科学史や数学史に対する造詣も深く、その部分を読むだけでもいろいろ勉強になる本。
読み終えると、タイトルのとおり「なるほど、科学と仏教は共通点があるんだな」と膝を叩くこと請け合いです。 内容の大半は科学の説明に割かれていますが、面白いのは仏教の説明に入ってから。 ブッダは、悟りを啓いたけどあくまで普通の人だという説明は、フラットに宗教と向き合う距離感を保ってくれるし、仏教は、何...続きを読む故こんなに多種多様な宗派に枝分かれしているのか? という発端の考えも、とても合理的で親近感が持てます。 褐色の恋人で有名なスジャータさんが、実は、ブッダの命の恩人だったり、大乗仏教の経典はブッダの言葉ではないと結論が出ていたり、トーマス・ヤングは言語学にも顔を突っ込んでいたり、面白いエピソードも満載。 唯一残念なことといえば、神仏習合の話も織り交ぜたら、日本人の国民性という面も見えてきそうなのに、そこに言及がないことかな。
きっかけ 久々に仏教の本が読みたい中で、仏教×科学のドンピシャのツボをついていたので読んだ本 内容 科学の歴史6割仏教のさわり4割の本 感想 元々の題材がツボだったけど、想定通りドンピシャすぎてめちゃくちゃ楽しめた。重めの本だけど苦労なく次々!!と貪欲に読み進められて今年のベスト3に入るかもしれない...続きを読む。 前半は科学の歴史、物理学生物学数学の歴史の話で、キーワードとなるパラダイムシフト(人間化)の説明とこれが起こった時の世間の移ろいが掻い摘んではあるだろうけど丁寧に書かれていて、仏教の本だと忘れてしまうほどであった。 仏教の方はブッダの歴史と大乗、小乗仏教の歴史と違いの説明がメインだった。大乗仏教の成り立ちと他の本読んでいた中で感じていた小乗仏教の過小評価の偏見が見直せた。 なんとなく感じていた宗教離れの理由が論理的に理解できたし、最近の量子力学と仏教の繋がりの理由も理解できたし、仏教は哲学に近く他の宗教とは異なっているという理由も理解できて学びの多い一冊であった。
パラダイムシフトを繰り返し進んで行く科学の思考法・世界観の方向性とブッダの創始した仏教の思考法・世界観とが相似形であるということを論じた一書。ブッダの本だというのに、全302頁中、ブッダが本格的に登場するのが233頁。だからつまらないかというと、そんなことはなく、筆者の博覧強記ぶり、さまざまな学問分...続きを読む野の歴史のエッセンスをぎゅっとつかみ、分かりやすく読者に提示する手つきが素晴らしい。こういう類いの本(特に歴史書など)は学問的にちゃんとしようとするあまり、学問的には正確な記述なんだろうけど、「結局何がどうなの?」となることが多いが、実に本質を分かりやすく伝えてくれる。そして、上座部仏教の方がブッダの創始した本来的な仏教に近いものであり、僕らに馴染みのある大乗仏教は後にブッダの教えから離れ多様化した仏教のあり方だということがとても良く理解出来た。しかし、といって、上座部仏教こそが真の仏教であり、大乗はダメというのではなく、大乗仏教の価値を認めているところに、筆者の知性を感じる、読んでよかった!
身の回りに起きている自然現象、当たり前に受け入れているそれぞれの、改めてみるとなんと不思議なことか。 初期の哲学者が科学者たり得たこと。 神が創った世界を解明するための科学から、 神ではなく人間が知覚する世界を記述しようという態度への変化。 ヴィパッサナーは本来的な仏教の教えに限りなく近かった ...続きを読む 人間を通して物理的世界を究明する科学、 人間を通して精神的に世界を追究する仏教(本来の)
科学と仏教という、一見したところどうにも関連づけようのないふたつの分野の隠れた関係性を明確化するというのが本書の目的なのだ Location: 182 その際、デカルトは、探求のための言語として数学を用いることの有用性に気づいた。感覚的経験よりも数学的確実性を重視し、数学を用いれば物質世界の法則...続きを読むを一般化して語ることができるということを指摘したので Location: 245 科学が人間化していくという現象を示すために、典型的な事例を選んで考察していこうと思っている。最初に物理学を考えた。次に生物学、特に進化学について見ていくことにする。ここにも、科学の人間化を示す事例が数多く見出さ Location: 1032 華々しい五年間の冒険旅行と、その後の静謐な四十五年間。この奇妙な人生の流れの中で、彼の進化論はじっくりと醸され、成熟していった。それは一瞬でひらめく類の瞬間的な発見ではない。着実な自然観察によって集められた膨大な情報、科学以外の幅広い分野からもたらされる思考方法、キリスト教が押しつけてくる神の視点を跳ね返そうとする強靭な抵抗力、これらが何年も何十年も継続蓄積された結実点として、彼の進化論は花開いたので Location: 1175 いま言ったような数学的根拠があるとはいえ、私はやはりその根底に、自然淘汰を神に見立てて、その被造物である人間を最上級生物として扱いたいという学者たちの思惑を Location: 1485 しかし数学の歴史を見ていくと、そこには単に学説の進歩、定理の発見といったレベルとは別の、概念そのものの変更が至る所で起こっている。そこに数学の人間化という問題があるのではないかと思うのだが、簡単に結論を出すこともできない。そこで、第一章で語った「下降感覚の原理」というものを手がかりにしてみようと Location: 1600 こういった大変革が起こった時、誰がどういった反応を示したか、それが知りたい。もしそこで数学者の誰かが、その変革に対して「そんな汚らわしい説が受け入れられるか!」と言って厳しく批判しているなら、その変革が新たな人間化を示している可能性が高いのである。ざっと見まわした時、目につく事例がふたつある。ひとつは無理数が発見された時。もうひとつは実無限が登場した時で Location: 1622 自然数でなく、分数でもなく、どうやっても美しく表すことのできない数がこの世にある」と言ってしまったのである。そこでどうしたかというと、ピタゴラス学派のメンバーが集まり、彼を水に沈めて溺死させてしまったと Location: 1672 無理数の登場が当時の数学にきわめて大きな打撃を与えたことを、この逸話ははっきり示している。無理数の出現によって、神聖なる数学が汚されたので Location: 1677 有理数だけでできていた数学世界に無理数が入り込んでくるという現象は科学の人間化であったと想定することが Location: 1680 ではもうひとつの事例、実無限の発見について見ていこう。実無限とは、無限の要素から成るひとつの数学的集合体を、実在の数のように扱う、きわめて斬新な概念である。無理数の発見が紀元前の話であったのに対して、こちらはおよそ百年前のことであるから多くの情報が残っており、登場人物も Location: 1723 いかなる現実世界にも、ほんとうの正義の味方とほんとうの悪役などという区分はない。たしかに狂った殺人鬼のようなおぞましい悪人もいるが、それは例外的ケースとして、たいていの人間は本質的に悪人というわけではない。人それぞれ、自分の道を考え、自分で選択し、自分で行動を Location: 1726 この虚数。最初のうちはまともな数として扱われなかった。それはそうだろう。二乗してマイナスになるというのは演算上の矛盾である。そんなものが数学的実在としてあり得るはずがない。そんなものが出てきたらなにかの間違いである。しかしそうなると、三次方程式が解け Location: 1813 どうしても虚数の存在を認めざるを得ない。しかしそんなものは認めたくない。ギリシャで無理数が登場した時と同じ状況になっ Location: 1821 無理数の導入が数学の人間化なら、虚数を承認したことも当然、人間化の一環に違いない。三次方程式を解くという論理的手続きの中で鬼っ子として生まれ、三百年かかって認知された。それほどに虚数は不可思議で、納得し難い概念だったということだろ Location: 1831 もうここまでくれば、数学の人間化の様相は明らかである。数学も物理学とさほど違うわけではない。人間存在に起因する不可知性が次第に現れてきている。カントールの集合論の導入こそは、数学を決定的に人間化したということが Location: 2067 科学の中にある人間化という現象について見てきた。この本では物理学・生物学・数学の三分野しか取り上げなかったが、科学がおおよそこの三分野を基盤として成り立っていることを考えるなら、科学全般が人間化していることは間違い Location: 2397 仏教と科学の違いは、仏教とキリスト教の違いよりも小さい。科学の人間化を一本のベクトルとした場合、出発点にはキリスト教をはじめとした一神教世界があり、反対側の到着点に仏教がある。もちろん科学が最終的に仏教になるなどと言うのではない。両者はそもそも求める目的が違う。しかし、その目的を求めて我々が活動する、その活動の場が、仏教と科学では同次元なので Location: 2495 私は科学と仏教がどちらも好きで好きでたまらないので、多少は無理をして両者を結びつけたところがあるかもしれない。それでも、両者の根本的世界観が同じ次元にあるという点には確信が Location: 3639 仏教学という学問は、学問としての品格がとても高い。その研究領域は、時間では二千五百年間、空間でみるとユーラシア大陸の東半分である。その広大な領域で、膨大な数の仏教徒たちが生み出してきた思想・文化・芸術・歴史、そのすべてを Location: 3664 仏教が、他の宗教にはない図抜けた合理性の上に成り立っているということは、本書でたびたび指摘してきたとおりである。この仏教の特質が見えてくるにしたがって、若い頃に親しんだ科学の世界がよみがえってき Location: 3670 仏教研究の中に、科学のデジャヴュを見ると言ったら分かってもらえるだろう
多層で複雑怪奇な仏教について、ほんの少し知ることができた。というか仏教は多層で複雑怪奇なものであると知ることができた。 また「なぜ原始的な仏教と日本の仏教は全然違うのか」という謎も少し知ることができた。 大乗仏教と原始の仏教は随分と異なるものであると、具体性を持って学ぶことができた。それでも、日本の...続きを読む仏教は日本の風土風俗に合った進化を遂げたものだと思うので、それはそれで良いのだと思う(祖先の墓が寺にあることは事実なのだし)。 それでも現代日本人に「貴方達が拝んでいる仏教と本来の仏教は全然違うものですよ」と言ったら大体反感食らうだろうな。 パラダイムシフト…流行りのビジネス用語で言えばゲームチェンジが近いだろうか。科学や宗教世界でなくても、今までの常識でありえないことを標榜する人を多数派が「感情的に」攻撃する様は今なおSNSでもよく見かける。 「科学的にありえない・証明できない」「義務教育内容と付合しない」という考えは正に神の視点ではないか? トンデモな意見を全て受け入れようとは決して思えないが、陰◯論・反ワ◯チンというような流行語で、一風変わった意見を一括りにして考えなしに総否定することだけは避けたい。理解できなくとも一度立ち止まって考える訓練だけは積んでおきたい。 仏陀や著名な科学者が歩んだ軌跡を、一歩だけでも踏み込むことは無駄ではないだろう。
佐々木閑氏は100分で名著で知った。当時メンタルがしんどかったので、見終わった救われた気持ちになった。仏教に出会えて良かったと思う。
科学と仏教。一見すると関係のなさそうなこの2つの間には、世界観を確立する方向性において重要な類似点がある、という。科学は神の視点を廃し、人間の視点によって納得できる物理的世界観を構築する方向に発展してきた(例:相対性理論、量子論、自然淘汰説、実無限など)。一方(釈迦)仏教は、神という超越的な存在をは...続きを読むじめから考慮せず、人間の視点だけで精神的世界観を構築する。神ではなく人間の視点で世界観を構築するという点が両者の類似点である、という考察は非常に面白い。科学は実験というコントロールできるミクロの現実を使って世界を捉えようとし、仏教は禅定によって世界全体を捉えようとする。この方法の相違も、先の類似点を考えると示唆深い。
科学と仏教という全く無関係に見える二つの活動には、驚くべき共通性があるといいます。 科学は神が創りたもうた世界の解明を目指していましたが、科学の進歩は逆に、神なる視点との決別の歴史でした。 一方、仏教は神秘的な絶対者の存在を否定し、人間の存在だけを拠り所に世界観を組み上げてきた宗教です。 仏教と科学...続きを読むの、知られざる関係性を明らかにしていきます。 とにかく面白く、知的好奇心が刺激されます。 そういうわけで、私は脳科学がいつか仏教を、その体系の中に組み込んでくれるよう願っている。私自身の希望的観測で幾分大風呂敷を広げたが、敬愛するブッダ釈尊が、あこがれの科学者たちと並び称される日、「ブッダ釈尊は史上最も合理的な宗教家であり、そして最も慈愛に満ちた科学者であった」と称えられる日がくることを夢見ている。 ー 263ページ
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