君塚直隆のレビュー一覧
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2007年の単行本を文庫化。19世紀のヴィクトリア女王からエリザベス女王までの君主に仕えた秘書官の話。文庫化にあたっては、現・チャールズ国王の戴冠式のTV解説を行った筆者だけに、あとがきにて「今」を追記。君主に対しては中正公平に意見を述べ、政府との仲介にもあたった秘書官の動きを通して、自然と近現代の英国政治史が学べるお得な本。文章も読みやすく、別の視点から見た歴史書としても秀逸。
初版当時、英国連邦(コモンウェルス)には、14か国に25億人もおり、世界人口の30%を占めていたとあり、英国の君主の大変さがよくわかる(エリザベス女王の日課も書かれているが、自分にはとても無理)。とは言いつつ、 -
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先日、96歳の生涯を閉じたエリザベス2世の評伝。本書を読むと25歳で王位を継いでから70年以上にわたって連合王国と英連邦王国の君主として君臨した彼女の生涯がお飾りとしてのそれではなく、まさに現実政治に大きく関係するまさに波瀾万丈のものであったことがよくわかる。
歴代の首相との関係、なかでも鉄の女サッチャーとの関係は興味深かったが、コモンウェルスとの関係は知らなかったことが多く、勉強になった。日本の皇室との関係も随所に触れられており、エリザベス女王から見た日本の皇室という視点は新鮮であった。
しかし、本当のところエリザベス女王が何を考えどう行動したのかを知るには、現在は非公開の資料に基づいて -
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著名人の多い英国史の中から七人の悪党を選んだオムニバスストーリー。
悪党とはワルではなく、出身階級に関わらず主流派ではなくアウトサイダーだった人達を指す。アウトサイダーだけに、毀誉褒貶が激しい人々で、ヘンリー八世、クロムウェル、ウィリアム3世、ジョージ3世、パーマストン、ロイド・ジョージ、チャーチルが本書の対象。
筆者は、それぞれの悪党についての毀誉褒貶を冒頭に掲げ、その人物の生い立ちや活躍を著述し、最後に些細な悪事はあっても大英帝国の歴史に大きく貢献した事績を簡潔にまとめて章を終える。ロイド・ジョージとチャーチルのように章と章の間の繋ぎもよく、オムニバスなるも完全独立ではなく連続性がある -
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大英帝国を築いてきた「七人の悪党」として取り上げられているのは、ヘンリ八世、クロムウェル、ウィリアム三世、ジョージ三世、パーマストン子爵、デイヴィッド・ロイド=ジョージ、ウィンストン・チャーチルの七人である。
本書の「はしがき」でも「おわりに」でも述べられているが、英国では評伝(伝記)が重んじられ、今でも街中の書店には必ず伝記コーナーに多くのスペースが割かれている(評者が在外研究で英国に滞在したのはもう17年も前の話だが、そのとき書店で一番印象的だったのもそのことであった)。それはマルクス主義史学やフランスの社会史、あるいは最近流行のグローバル・ヒストリーとも違う、「歴史を動かすのはあくまで -
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[バランス、バランス、バランス]多くの人を惹きつけるイギリスの歴史を、「王権と議会」という概念をキーワードに読み解いていく作品。なぜイギリスで議会制度が発展したのか、なぜイギリスは世界の海を統べる大国になったのかといった疑問に答えるための糧を与えてくれる一冊でもあります。著者は、オックスフォード大学にも留学され、イギリス政治外交史を専門とする君塚直隆。
ときに複雑に見えてしまうイギリスの歴史を、極めてわかりやすく俯瞰してくれているため、大まかな全体像を頭に入れたい人にとっては打ってつけの概説書です。参考文献や映画一覧も充実しているため、本著を頼りとしながらイギリスに関しての知識や見方を深め -
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ネタバレナポレオン戦争のときには、「戦争」はプロの軍人同士が遠い戦場で行うものと相場が決まっていた。しかし今や隣のおじさん、向こうのお兄さん、そして自らの父や夫や息子たちが、戦場で機関銃や毒ガスの餌食にされたていたのである。
著者は中野京子の『名画で読み解くハプスブルク家12の物語』に触発されて書いたとのことだが、こちらは歴史寄りの視点から書かれており、私にとっては『名画で~』よりも興味を持った。びっくりしたのは、今でも王室の方々の肖像画が描かれているということ。しかも、エリザベス2世とチャールズ皇太子がやや元気のない姿で描かれている肖像画まである(これはダイアナ妃が亡くなった直後だったから)。写真 -
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本書は「王権と議会」を中心に据えた通史であり、下巻では清教徒革命以後を扱う。社会経済文化といった点では「イギリス史10講」や「イギリス近現代史講義」といった新書の方が詳しく、面白い。そういう意味で物語系の著作の中では、教科書的とも言える。つまり読みやすい。
しかし、淡白ではない。「王権と議会」故に王族と政治家の個人的関係については詳細である。帝国の落日も面白い。また、各首相の思想の方向性やその当時の議会対立などが分かり易く議会政治の深化やあり方を考える上で示唆に富む一冊である。
首相官邸強化の道を辿る昨今、彼の国の歴史に学ぶことは多い。そして、文人チャーチルや読書家アトリーといった知識人宰相を -
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神奈川県立外語短期大学准教授(イギリス政治外交史)の君塚直隆によるヴィクトリア女王の評伝
【構成】
第Ⅰ章 「暗黒時代」の女王即位
第Ⅱ章 戦う女王への変貌
第Ⅲ章 アルバートの死と王室の危機
第Ⅳ章 女王から「女帝」へ
第Ⅴ章 二大政党の確執と女王の憂鬱
第Ⅵ章 大英帝国の女王として
連合王国が海洋支配の拠点を広げ、大英帝国へと成長する「パクス・ブリタニカ」の19世紀はまさにヴィクトリア女王(生没1819-1901、在位1837-1901)の時代であった。ジョージ3世の四男の娘という王位継承からは程遠かったはずの少女が、次第に継承順位を上げて18歳の若さで玉座に座ることにな