君塚直隆のレビュー一覧
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9月に逝去した史上最長の英国の君主、エリザベス女王についてほとんど知らないことに気づいたので本書を読んだ。
ドラマを見ているように読み進んだ。エドワード8世の「王冠を賭けた恋」によりリリベット(エリザベス女王の子供の頃の愛称)は大英帝国の王位継承第一順位になってしまう。そのリリベットはクリントン元米国大統領がその回顧録で「女王に生まれていなかったら、きっと優れた政治家か外交官になられていたことだろう」と記す人物となる。エリザベス女王が外交で果たした役割の大きさに驚かされた。
そのエリザベス女王及び王室はダイアナ妃事件で窮地に陥る。しかし、エリザベス女王は失敗から学ぶことのできる君主で王室改 -
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今年で在位70年を迎える英国エリザベス女王。周囲は記念祭を表す単語"Jubilee"で盛り上がっている。
本書はその当事者を書いた伝記。ビジネス書でらない伝記は故人を対象にしたものが多いなか、存命中の女王を対象とする。
読み進めるとなぜこんなにも長い間在位しているのか頷ける。チャーチルやサッチャーなど、かの歴代の首相を前に対等に渡りあってきたのは、英才教育の賜物ではなく生まれ持った天賦の才のように見える。
天賦の才(センス)だけでなく、物事を理解しようと資料を漁る努力家。加えて冗談を交えたパーソナルタッチで相手の懐に入る。
なるほど、これは絶大な信頼を国民から得ているわけだ -
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大英帝国を率いたリーダーシップの物語
歴史は人間によって創られる
1940年英国首相に選ばれるのがチャーチルではなく、ハリファクス外相であったら、英国は早々にヒトラーと講和し、ナチスドイツの世界覇権は実現していただろう。(282)
その英国も第二次大戦の勝利と引き換えに、世界の盟主の座を、アメリカとソ連に譲ることになる。
歴史は禍福の如し。
結局、技術・経済・社会システム・軍事により世界の覇権を手中にしても永遠には続かない。
心地よい勝利者の地位は、慢心と怠惰を生み、民衆はパンとサーカスをリーダーに求め、政治はポピュリズムに陥る。
その時に積み上がるのは、軍事費とエンタメ経費を賄うための「公的 -
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ユーラシア大陸東西のそれぞれの端にある日本と英国。16世紀までの歴史の中で大陸からの様々な流入があった後者は国際色に富み、日本と異なるのは当然かなと思った。
聖職者イコール宗教(キリスト業務)のみという印象があったけど、かの昔は唯一ラテン語を使えた存在で政治の中心的役割であったと知ると、欧州諸国における宗教のプレゼンスの大きさを納得できた。さらには英国では庶民の勢力が増し、議会政治が進んでいった。
世界史で離婚ばかりしていた英国王がいたなぁーというのも思い出し懐かしい気持ちになったけど、それもテューダー朝の安泰のためとなると少し見方が変わった(それでもひどいけど) -
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イギリスの現役君主エリザベス2世の本格評伝。
女王の波乱に満ちた生涯を振り返りつつ、イギリス現代史や英国王室の在り方についての理解も深まった。また、コモンウェルスという存在の重要性も認識した。
伝記として信頼に足る筆致の中にも、著者のエリザベス女王に対する愛が感じられた。
現代において君主制を維持しようとすれば、国民からの支持が不可欠であり、「時代に即した改革を進める現実主義と柔軟性」を備えることが必要だということを理解した。また、王室(皇室)としての広報戦略も重要であると感じた。
エリザベス女王が立憲君主として類まれなる能力を発揮しており、また、その治世の中で幾多の苦難を乗り越え、老練さを増 -
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ネタバレ【236冊目】「王座と王笏などという古代からの飾り物なんかやめにして、共和制にすべきである」という、有名な小説家H.G.ウェルズの引用から始まる本書。英国を中心に、現代でも存続している立憲君主制の国々を概観し、なぜ現代でも立憲君主制が生き残っているのかを筆者なりに解釈する。この年のサントリー学芸賞受賞作品。
筆者は英国(王室)史の研究者であることから、英国での君主制の成立・変遷の解説に本書の大半が割かれている。その際に重要な視座が「英国の歴史において、『王権』と『議会』、そして19世紀に登場する『国民』との間で、統治をめぐる権力と、その正統性の根拠となる源泉が、どのように移行していくかに注 -
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本書は、21世紀の今日ではもはや「時代遅れ」と見なされることも多い、国王や女王が君臨する君主制という制度を、いまだに続けている国々の歴史と現状を検討して、「立憲君主制」が民主主義の欠点を補完するメカニズムを解き明かし、現代の日本の天皇制への示唆について考察している。特に、著者の専門とも関わって、イギリスの立憲君主制の形成過程及びその意義について丁寧に繙かれている。
本書は、我が国の象徴天皇制の行方をはじめ、現代の(立憲)君主制について考える上で必読といえる良書であると感じた。特に、共和制にはない立憲君主制の良さとして、連続性及び継続性があるということを再認識した。