君塚直隆のレビュー一覧
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幾多の植民地を擁し、”太陽のの沈まない帝国”と呼ばれた大英帝国。
その時代を経験した人は、様々な問題を抱えながらも、未来を信じる事が出来た良い時代であったと回想する事が多い。
その繁栄の絶頂にあったイギリスの統治者であったのが、ヴィクトリア女王である。
ヴィクトリア女王は、その生涯にわたって日記をつけていたそうだが、本書では、その日記からの抜粋が効果的に挿入され、その時々の女王の生の気持ちが知る事が出来て興味深かった。
18歳で即位してから国内、海外との難しい局面に立ち向かい次第に強く成長していく女王の姿が、当時の様々な情勢を分かりやすく説明しつつ描写されており、非常に良くできた好感が持て -
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君臨すれども統治せず。存在を許されたからか、まだ必要だと請われたからか。絶対の遥高みから引きずり下ろされた君主の役割とは何だったのか。ヴィクトリア女王の生涯を軸に、渦中のヨーロッパ情勢を概観する。
女王が即位した1837年から1901年のイギリスは、立憲君主制に始まり産業革命、自由民主主義、アイルランド飢饉、英領インド帝国の成立、アヘン戦争、義和団事件と国内外を問わない動乱の中にあったが、この大英帝国の拡張期にあって、女王は全く普通の人間だった。
右派と左派の政権の狭間で首相の任命に頭を悩まし、婿入り旦那に先立たれた悲しみから公務を長く放棄し、うだつの上がらない息子の扱いに困り公務から遠 -
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17世紀の清教徒革命から、2つの世界大戦を通じて、現代までのイギリスの歴史が語られています。物語として書かれていますので、イギリスに視点が固定されており、全世界の歴史と並行しての見方はできませんが、イギリスという国がどのようにして出来上がったのかを知ることができます。イギリスには、各時代に主人公がいるのですが、それが代々の国王だというところ。国王と議会が協力しあって政治が動かされているということがよくわかりました。ヨーロッパの中でも、そういう意味で特殊さがあり、それに誇りも持った国民性が伺えまして、この国にとても興味を持つことができました。
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イギリスの歴史について、古代からテューダー朝のエリザベス1世に至るまで、物語として時系列に把握できるように書かれています。イギリスに元々いた民族と移住してきたアングロサクソン、グレートブリテンという一つの島ではなく、フランスの北部やアイルランド、スコットランドとの、領土の争いや駆け引きがあり、それにどのように対応して今のイギリスが出来上がってきたのか、とても面白く理解することができました。イギリス議会がどのように出来上がってきたのかについても丁寧に理解することができました。
無能な王や、問題のある王、その危機がうまいこと有能な王によって乗り越えられる。国内は内乱や簒奪があり平穏ではないのですが -
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大英帝国の黄金時代を象徴する女帝であるヴィクトリア。彼女は、18歳で女王に即位し、81歳で没するまで、実に63年にわたって、イギリスの君主に君臨し、のみならず実質的な統治者であり続けた。女王が特に辣腕をふるったのは、外交である。
戴冠当時のヨーロッパ世界は、ドイツ連邦内でオーストリアの地位が低下し、ウイーン体制そのものが危機に瀕していた。フランス、ロシアは、自国の領土拡大を虎視眈々と狙い、プロイセンは大国へ脱皮する機会を伺っていた。外交交渉は、常に自国の領土拡大を掛けた綱引きの場であった。
そんな中に18歳で放り込まれた女王は、はじめ政府の外交強硬策を批判する立場を取っていたが、いつしか植民地 -
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以前から興味を持っていた人物。
大英帝国の栄光の時代に君主であった女性。
単なる象徴的存在だったのかと思ったらトンでもない、まさしく政治に大きく関与し、舵取りをした女性だと知った。
1901年の20世紀の幕開けの年に81歳で亡くなるまで、64年もの間英国女王であり続け、いまだにこの記録は破られていない。
世界が王政から共和制に変わる過渡期の時代に、古いと片付けるのは簡単だが、王政の良さは確実に存在し、それを見直すのは意味のあることだと思う。
彼女の場合、多くの子供や親戚がヨーロッパ各地に広がっており、「血縁を外交に使う」という手が使えたのが最大のメリット。
現代は政府の外務省が一手に -
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19世紀イギリスの繁栄期に64年近くも女王の座にあったヴィクトリア。
「君臨すれども統治せず」という言葉もあったため、政治にはあまり口を出さなかったような印象があるが、実際はそうでもなく、かなり熱心だったという実像を紹介。
女性であり、若くして即位、9人の子だくさんで家庭的なイメージといったあたりから、実際よりも政治的でないと思われている。
王家の跡継ぎがいなくなりそうだった時期の問題から始まり、結婚出産ラッシュ。
しかし早世した子もあって、四男の娘ヴィクトリアしか跡継ぎはいない事態に。
ヴィクトリア自身は伯父にあたる王に気に入られていたが、母親ケント公妃がドイツ人だったために王に信頼されて -
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最盛期の大英帝国に君臨した女王の評伝。在位は63年を超え,昭和天皇よりちょっと長い。最近読んだ清盛本よりずっと面白かったのは,著者の筆力が大。あと,時代が近代だからかな。近代好きなので。
ほぼ時系列に沿って,女王中心の描写が続くのだが,結構な分量があって,「長い18世紀」がウィーン会議で終わった後,19世紀末までのヨーロッパの歴史も概観できる。序盤と終盤,若き女王と老成した女王のあたりがとても読ませる内容だった。中盤は議会政治との確執が描かれ少しとっつきにくい。
イギリス王室の王位継承は,男子優先の長子相続制が基本。王子がいない場合,王女が年齢順で王位を継承する。子がいなければ傍系へ。こ -
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ネタバレ[ 内容 ]
植民地を世界各地に築き、「太陽の沈まない帝国」と呼ばれた19世紀イギリス。
18歳で即位し、この繁栄期に64年間王位にあったのがヴィクトリアである。
後に「君臨すれども統治せず」の確立期と言われ、女王の役割は小さいとされたが、実態は違う。
自らの四男五女で欧州各王室と血縁を深めた女王は、独自外交を繰り広げ、しばしば時の政権と対立した。
本書は、全盛期の大英帝国で、意思を持って戦い続けた女王の実像を描く。
[ 目次 ]
第1章 「暗黒の時代」の女王即位
第2章 戦う女王への変貌
第3章 アルバートの死と王室の危機
第4章 女王から「女帝」へ
第5章 二大政党の確執と女王の憂鬱
第 -
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19世紀後半のイギリス史は保守党と自由党の政権争い、アイルランド問題に選挙法改正、帝国主義と覇権主義とが複雑に絡み合い非常にわかりづらい時代でもあります。それを理解しやすくするためには一本の基軸を用意するのが重要なのですが、その軸となりうるのが同時代を統治し続けたヴィクトリア女王であることは間違いないでしょう。また、彼女を基軸とすることによってそれまで教科書で語られてきたようなイギリス史に別の視点からアプローチされることとなり、新たな一面を見せてくれます。例えば教科書では帝国主義的な保守党のディズレーリ内閣と自由主義的な自由党のグラッドストン内閣という構図が、ヨーロッパの勢力均衡を図り安定と平
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大学の講義を2年分くらい受けたような情報量。
内容が濃く、リラックスして読み進めるよりは、真剣に歴史を教えていただいた様な印象。
大人の自分でも結構時間がかかったので、お若すぎる方には少々難しいかも。
エリザベス女王が、ただのお飾りではなく、公文書全てに目を通し理解されているくらい聡明な事、若くして女王の座につかれたが、ご自分の立場を良く理解し、国益とのバランスを取りながら、時代の変化にも対応していった事など、国民の事を考えてカラースーツを着て手を振られたり、パディントンの映画に出演されたりなどお茶目で優しい印象があったので、エリザベス女王の事が、ますます好印象を持ちました。
故ダイアナ妃につ -
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ネタバレ名誉革命とかクロムウェルとか、オレンジ公ウィリアムとか中学生の世界史で出てきたなあなんて懐かしく読んでいました。
メインテーマは、なぜイングランドは「絶対君主制」にならず「立憲君主制」にはならなかったのか?それは、王様たちが議会と相談して政治を進めていたから。そのままだね。
天皇陛下とイギリス国王の比較が興味深かったです。イギリス国王は、国軍の最高司令官であり、イングランド国教会の最高首長を兼ねている。 イギリスの君主は現実政治に関わる権限があり、首相と定期的な会見が開催されているとのこと。それは、サッチャー元首相によると、エリザベス女王とはかなり政治深い政治的議論であったと述べている。