河野万里子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ中1の読書感想文で読んだ本。当時は、この本の持つ力が分からなかったが、コロナ禍で再び手にしてみた。すると、このカモメとネコという異なる生き物の組み合わせが感動や学びをもたらすのに最適であるということが分かった。人間がもたらす環境破壊、異なる他者との出会い、そして愛するということ…
石油まみれという人間の活動によって母親を知れなかったカモメ。海の街で人間と生活をするネコ。本の中でも書いてあるように、相手と話してみなければどんな人かは分からない。もし、母カモメが生き延びたとしたら、母カモメも子カモメも人間を憎むしかなかっただろう。人間に命を救われたという過去を持つ猫から、人間がしたように愛情を注がれたからこそ、カモメは、この大変な、しかし美しくもある新しい世界へと飛んでいくことができたのだと思う。
自分の身の回りでも、また他国でも、どこでも争いは絶えない。簡単に良くなると信じられる世界に、残念ながら生まれてこなかった。それはネコもカモメも同じ。自分の価値や可能性を信じることができなければ、他者に手伝ってもらえばいい。というか、実際、愛されなければ、愛することの意味や素晴らしさは分からない。まずは目の前にいる愛犬に、たくさん愛したい。 -
Posted by ブクログ
じわじわと言葉がしみこんでくる、いい物語だった。猫が飛べないカモメに語る言葉がいい。
全力で信じたものだけが飛べる。ちょうどそれを伝える物語を探していた。言いたかったことを言ってくれて、じわじわとしびれた。
海外ものだからか、どこかユーモラス。あとは人間をこきおろす。あとは、みんながどこか夢見がちなところがいい。猫の奮闘する物語は、イッパイアッテナで大好きだったので、それもあって懐かしかった。
本が読めてしゃべれる猫というのがいい、実際そうなんじゃないかと思わせる猫の何かがある。
カモメの女の子が可愛い。
詩人もいい、雨を感じたいということ、空に飛び出したときの気持ちよさは、きっとカモメが知っているもの。だから飛び出せた。飛びたかった。
気持ちのよい物語でした。 -
Posted by ブクログ
光文社古典新訳文庫シリーズの特徴は、奔放な翻訳と優れた解説、この二点だと個人的に思っている。
その意味で、コレットの『青い麦』を河野訳で読むことの面白さは、彼女の明快な解説と共に評価するのがよいと思う。彼女の解説は、若い男女の恋愛を描いた『青い麦』のテーマは、いかにもありふれて見えるのに、なぜ仏文史上「新しい」ものだったかを、コレットの伝記的事実も交えながら、分かりやすく、興味深く説明している。
本作を読んでまず目にとまるのが、夏の海辺の家を背景にした爽やさな情景。そして、十代の男女恋愛がもつ苦々しさを繊細に描いた巧みな心理描写である。謎の三十女が登場する展開は、フランス文学のおなじみのものだが、二人の主人公の関係が変化するための契機として効果的に使われている。直接的な性描写を排しているのは、何も彼女が性的なことがらに嫌悪感をもっていたからではなく(そうでなければストリップ同然のパントマイムを仕事になどできないはずだ)、十代の男女のぎこちなさを表現するのに適当だったからであるようにも思う。 -
Posted by ブクログ
私には主人公や父親の心情を完全に理解することはできなかった。ただ、二人の姿を見ていると情熱的な愛とは、最初は激しく燃え上がるのにいつか静かにその熱を失っていくものなのかもしれないと感じた。
例えるならば、夜空に咲いては消えていく線香花火に少し似ているんだと思う。燃えているあいだは鮮やかで目を離せないほど美しいのに、その輝きは永遠には続かない。最後に小さな火花を散らしながら、何事もなかったように暗闇へ溶けていく。
愛も同じように、燃え尽きたあとに残るのは、幸福だけではないのかもしれない。むしろ、かつて確かにそこにあった熱を知っているからこそ、その後に訪れる静けさが、より深い悲しみとして残るのだと思った。
『悲しみよこんにちは』という題名も、そんな「愛の終わりに残された感情」を、拒むのではなく、そっと迎え入れる言葉なのかもしれない。