広井良典のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
2009年大佛次郎論壇賞受賞作。
高度成長期、我が国は経済成長をいわば価値原理にしてそれに向かい邁進してきた。しかし現代において経済拡大は飽和状態に達し、次の価値を模索する時代に突入している。
同様に、コミュニティという人間の集まりにおいても新しい局面が訪れている。高度成長期には農村から都市への大移動がおこった。それまでコミュニティは主に「家庭」と「会社」という、閉鎖的性格を持つものが担っていた。しかし、高度成長が終わり新しい価値原理を模索しなければならない中で、ベクトルは新しいコミュニティ、つまり「農村型コミュニティ」から「都市型コミュニティ」へと向かっている(ここで「農村型コミュニティ」とは、「共同体的な一体意識」をもつ「情緒的(非言語的)」性格のもであるのに対し、「都市型コミュニティ」は「個人をベースとする公共意識」を持つ「規範的(言語的)」性格のものである)。
OECDによる2005年の報告書によれば、日本は先進国の中で最も社会的孤立度の高い―コミュニティの外との交流が少ない―国であったという。それは「農村型コミュニティ」の影響がいまだ根強く、「ウチ」と「ソト」との落差が大きい社会であるということを示している。広井氏は我が国の自殺率の高さを挙げた上で、このことが「生きづらさや閉鎖感の根本的な背景になっているのではないだろうか」と指摘している。
このような状況で、経済成長に代わる新しい価値原理は「有限性」と「多様性」を持つものになるべきではないかと広井氏は主張する。
ここで「有限性」というのは、有限な資源をどのように利用していくかという視点であり、「多様性」とは、お互いの違いを認識しそれを乗り越えていくための、ローカルからグローバルに発展する考え方である。
同時にコミュニティを巡る課題について、
1、量的拡大から質的深化(趣味や教養といった質的深化)
2、労働から非貨幣的価値感覚(社会保障やエコロジー)
3、日本社会における「独立した個人のつながり」の確立(都市型コミュニティの確立)
という三点を提示して締めくくっている。
これらの提案に対しては明るい印象を受けた。ただ難しいのは、「質的深化」「社会保障」といったものが資本主義ないし貨幣的価値観と相反する性格を持つ中で、それらをどのように「ポスト資本主義」として融和させるかということだろう。本書ではその可能性という所までは言及しない。
ここでは新しい価値原理と、それに即したコミュニティのあり方ということについてのみ記載したが、本書はその他に「都市・市民」「社会計画・福祉国家」「スットク・フロー」「現代の病・ケア」「独我論」など多様な内容が展開される。
社会やコミュニティについて一歩深く考えることができる良書。 -
Posted by ブクログ
「個人」が「共同体」から、次いで「自然」から離陸していく構図を社会保障(福祉)、環境の面から鮮やかに描き出したこの書の特徴は、当然並立するはずの経済/市場という概念(「私利の追求」等含む)を真っ向からとらえ、しっかりと組み込んだところにあるように思う(個人的に第4章冒頭の簡単な経済史概観は、経済関連を学びたい者としてとても嬉しかった)。
本書の構成の内、政策提言など現実的な打開策もその主要な柱となってはいるが、その根底にはこれからの社会が「どうあるべきか」というより「どうなっていくのか」という分析がある(その境界は非常に曖昧で、また連続的なものではあるが)。この分析が非常な説得力を持って、政策提言にかなりの威力を与えている(ex.「物質、エネルギー」→「情報」→「時間」)。
筆者は、氏が本書を通して一貫として主張してきた「定常型社会」のコンセプトを巧く描き出せたようである。「定常型社会」と聞くともしかしたら感じてしまうようなネガティヴなイメージは実際に本書を読んでいただければ払拭されるように思う。理想を求めつつも、しっかりと現実を見据えた本当の良書だ。
拙いレビューじゃとてもその良さが伝わらないと思うので、少しでも気になる人は実際に読んでみてください。
(2006年04月02日) -
Posted by ブクログ
人口減少社会で持続可能性を高めるためには価値観を抜本的に変える必要がある。特に死生観の更新が必要だろう。高福祉を前提として、福祉の対象と量を検討していくべきである。
正しい意味での個人主義→コミュニティ拡充による相互扶助→コミュニティ同士の連携→ボトムアップのグローバル化
という著者の主張。
①日本の借金の返済
②若い世代への支援強化
③多極集中、コミュニティ空間(歩いて楽しいまちづくり)
④都市と農村間の再分配
⑤経営理念を持続可能性にシフト
⑥ポスト情報化(生命重視)
⑦グローバル定常型社会
⑧環境・福祉・経済のバランス
⑨福祉思想の再構築
⑩成長期→定常期の価値観の転換 -
Posted by ブクログ
人口減少していく日本社会が、経済成長に頼らずに存続できる方法はあるのか、いわゆる「脱経済成長論」について、東京一極集中問題、街のあり方、医療サービスの問題点、税制の改善点など、さまざまな角度から論じている。
私自身、ここ30年の日本経済の停滞を受け、これから積極財政を行ったとしても、人口の減りゆく日本で、大きな経済成長を遂げることができるのか、懐疑的であったためこの本を読むに至った。
以下本書の内容を自分なりに要約した。
人口が減少していくことで直面する問題として、まずはじめに地方の過疎化が挙げられる。高度経済成長期より東京に人口が流入し始め、小さな町の中心部では、シャッター通りが散見されるようになった。しかし、これは人口減だけが理由なのではない。アメリカを模倣した自動車中心の町づくりが大きな要因の一つといえる。すなわち、町のどこをとっても自動車道が通り、ショッピングモールなど自動車が前提となった施設が多く、自動車を運転するしないによらず、老若男女が集える場所が用意されていないのである。一方で、例えば北ヨーロッパ、とりわけドイツの町は、10万人規模の小さな都市でも町の中心部は人の往来で活気に満ちている。これは、ドイツが自動車と歩行者の棲み分けがなされており、自動車は都市間の移動、街の中心部は歩いて移動する、そしてその中心部には、カフェや広場など人々のための開けた空間が用意されているからである。このように、街づくりを「歩行者」のために設計することができれば、小さな規模の町でも活気を保つことができる。
次の、人口減少にまつわる問題として、社会保障歳出の高騰、とりわけ高齢者の医療費をどうやって国が負担していくのかということが挙げられる。そもそも日本は北欧などの高福祉高負担でもなく、アメリカなどの低福祉低負担でもなく、言わば中福祉低負担という形態をとってきた。つまり、福祉を減らすか、税負担を増やすかの二択の決断を避け続け、将来の経済成長をあてに国債をバンバン発行してきた現状が、1000兆円を超える国債残高となっている。高齢者が増え、生産人口が減っていく将来、この次世代へのツケは更に増えていくだろう。著者は、この国債発行について反対の立場を取っており、税収のみで賄うこと、例えば消費税20%などの増税を提案している。
また、そもそもの人口減少、とりわけ出生率の低さにアプローチする方法として、若者世代への社会保障の充実をあげている。驚くべきことに、日本は先進諸国の中で、若年層に対する手当てが最低水準となってしまっている。これを充実させる財源として相続税の増税を提案している。これは財源の確保という面だけでなく、親から子へ富が積み重なることによる貧富の差の拡大を抑制し、上昇し続けているジニ係数に歯止めをかけるという役割も担っている。すなわち、若い世代のスタートラインを揃え、尚且つ社会保障を充実させてやることで、経済的理由による子を持つことへの躊躇を取り払うことが理想である。
以下私の感想。
まず、税負担と福祉のアンバランスについては、国債発行の是非が分からなければ議論ができないと思う。直近の参院選を見ても積極財政派が多く、国債はまだ発行できると考えるのが一般的なのかもしれない。ただ、借金をし続ければ、インフレが起こらない限り、利子や元本の配当で予算が圧迫されていくのは明白であり、いつか破綻に至るように感じる。自分の国債観をまず持つことが、社会保障のあり方を考える上で必要不可欠であると思う。
そして、経済成長宗教からの脱却については、日本が今後経済成長していくイメージは湧かないものの、完全に現状維持路線に舵を切ってしまうのも危険だと感じる。鎖国していた江戸時代のように、日本だけの話であればそれが理想なのかもしれないが、現代は良くも悪くも世界に開かれてしまっている。その中で停滞を続ければ、日本の国力は相対的に落ちていき、安さを目当てに治安の悪い移民や観光客が増え、東京は外国人に買い叩かれるという、心穏やかではない未来が待っていると思う。 -
Posted by ブクログ
商店街衰退は人口減少による必然的帰結ではなく、モータリゼーションを軸とした都市計画の当然の帰結であるという論と、商店街は住民の消費需要を支える機能だけでなく、コミュニケーションの場を提供するという機能によってショッピングモールやネットショップに対する優位性を持っているという論が軸で、強く共感した。
そのような商店街を活性化させるために最も大切なのは「人」で、震源店からはじまり、多くの人を巻き込む活動をターニングポイントとして活性化活動が推進されていくというステップ。
そして、行政も明確にウォーカブルシティを目指した政策を打ち出し、市街地中心部への車両乗入れを規制するなどで憩いの場となる空間を意図的に創出するべきである。
ヨーロッパでは人口10万人規模でも市街地が活性化されているのに対して、日本では30万人規模の都市でも中心部がシャッター通り化している現状を打破するには、政策と商店街の活動の両輪が回り、さらには所有権の強すぎる日本でも後継者問題を解決できるマッチング機能などを有効に機能させなければいけないということか。 -
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資本主義社会が行き詰まっていることは、徐々に、一般人の私たちにも広まりつつあるが、じゃあ、具体的にどんな社会が必要なのか、そのシミュレーションをしてくれるのが広井さんだと思う。
斎藤幸平がポスト資本主義の在り方をマルクスに求めたのに対し、広井さんは持続可能な福祉社会を提唱する。
生産性の考え方を、「労働生産性」から「環境生産性」に転換していき、資源消費や環境負荷をできるだけ抑え、むしろ人は積極的に使うという考え方だ。
持続可能性と地球環境を重視するという基本スタンスから、まずは「緑の成長」(資源消費や環境への負荷を最小限なものにしながら経済成長ないしGDPの増加を追求する)を過渡的な姿とし、その後「脱成長」していく。
斎藤幸平氏の考え方より、現実路線であり、EUのグリーンディール政策とよく似ている。(というか違いが私にはよくわからない…)
ポスト資本主義を考えねばならない時期にある現代で
有効で実効性のある政策なのかもしれない。
たくさん勉強しなくちゃなー。 -
Posted by ブクログ
著者の主張に全面的に同意。日本の政治家(とそれを選んでいる有権者=多数派の高齢者)は経済成長の幻想を抱き、借金や環境破壊等で将来世代にたくさんのツケをまわしている。本書だけでなく至る所で同様の主張や議論があるのに、オープンな場で政治家が議論しているのを寡聞にして知らない。本当に気が滅入る、、
資本主義は市場経済ということに加えて拡大成長を志向しているのが特色だというのが勉強になった。地球資源が有限である以上、この資本主義が変容を迫られているのは自明。だが持続可能な社会と資本主義は相容れないのでは?という疑問があったが、成長ではなく再分配を強く志向する欧州型の資本主義へまずは移行するのは確かに現実的かもと思った。
現状の課題を論うだけでなく、政策提言などもありとてもためになった一冊だった。 -
Posted by ブクログ
人口減少社会のデザイン
著:広井 良典
著者の研究グループでは、AIを活用した日本社会の未来シミュレーションを行い、①人口②財政・社会保障③都市・地域④環境・資源という4つの持続可能性に注目し、日本が2050年に向けてじぞく可能であるための条件やそのためにとれるべき政策を提言する内容の成果をまとめている。
日本社会の持続可能性を実現していく上で、「都市集中型」か「地方分散型」かという分岐がもっとも本質的な選択肢であり、また人口や地域の持続可能性、そして健康、格差、幸福等の観点からは「地方分散型」が望ましいという結果が示された。
構成は以下の7章から成る。
①人口減少社会の意味
②コミュニティとまちづくり・地域再生
③人類史の中の人口減少・ポスト成長社会
④社会保障と資本主義の進化
⑤医療への新たな視点
⑥死生観の再構築
⑦持続可能な福祉社会
シミュレーション能力の向上により、過去のデータから、困難とされる未来もぼんやりではあるものの見えてくる。明るい未来だけではなく、残酷な世界も見えてきてしまう。
「都市集中型」か「地方分散型」かその組み合わせか。それとも違った道があるのか。バラ色の未来が保証されているわけではない現状を受け止めながら、未来を思った現状の我慢と努力をどれだけの人が覚悟を持って出来るのか。
他人事ではなく、自分事として自身も捉え直して関わっていきたい。