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経済不況に加え、将来不安から閉塞感をぬぐえない日本社会。理念と政策全般にわたる全体的構想の手掛かりは何か。進行する少子高齢化のなかで、社会保障改革はどうあるべきか。資源・環境制約を見据えて、持続可能な福祉社会のあり方を論じながら、「成長」にかわる価値の追求から展望される可能性を提示する、問題提起の書。
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Posted by ブクログ
今年、パラダイムの転換を予感させる、「ポスト資本主義」という本を出した著者の、2001年の著作。同じ岩波新書から出ている。 十数年前の本作でも、成長一辺倒で突き進んできた「資本主義」が、人口動態からの需要の限界や、地球環境の限界から、成長が頭打ちしており、今後「定常化」せざるを得ないという主張がなさ...続きを読むれ、最近作と同じものであった。以前より、分かる人には分かっているものであり、現実や社会の大勢の感覚が、ようやく追い付いてきたのだと思う。 最近作では、拡大・成長と、成熟・定常を繰り返す歴史のサイクルを受けて、この次にくるのが、定常ではなく、技術的特異点(シンギュラリティ)が来るといった議論も紹介している。いわゆる、ポスト・ヒューマン的な断絶が来る想定で、著者は否定しているのだが、さすがにこちらにはまだその手の議論はなかった。 最近作になかった点で、参考になった点としては、「機会の平等と潜在的自由」の議論があった。 公平にするということは、一方で自由の侵害であるとし、公平や平等と自由を対立するものとする考えがある。しかし、機会の平等が保証されていなければ、それは個人の(潜在的な)自由の浸食を意味し、実は、自由と平等は重なり合う概念であると指摘している。こうした認識に基づいて、社会保障制度の見直しなどが必要であると指摘していた。 今後も、もちろん科学・技術的な発展もあるだろうし、当然、そうしたものから得られる豊かさも期待できる。しかし、現代が向き合っているのは、成長か定常かといったレベルを超えて、社会制度を成り立たせるわたしたちの価値観や認識の変革であると感じた。
問題意識を持つ大切さを思い出させてくれた書。 このまま「成長」信仰でいいのか?より根源的な豊かさがあるのではないか?理想論でなく、時代の趨勢として、そのような問いに答えていく針路が見えた。 ・介護に加えて、相続の社会化。 ・障害者福祉も、事後的な保障ではなく、機会の平等のための支援策と考える。 ...続きを読む・人件費を高くし、エネルギー費用を低く抑えるため、自然資源を使いすぎ、人間の労働力を十分使わないのが、現在の税制や社会保険料。 ・地域が再び前面に出ている。1.高齢化=生産人口の減少:高齢者と子どもは土着性が高い。2.雇用の流動化と形態の変化。3.情報化 ・エコマネー=地域通貨。交換・決済機能は持つが金融=信用創造機能は持たない。 ・21世紀後半に向けて、世界は高齢化が高度に進み、人口や資源消費も均衡化するような、ある定常点に向かいつつあるし、そうでなければ持続可能ではない。 ・経済成長はナショナリズムと関連。 ・1.共同体からの離陸。2.土地などの自然的制約からの離陸。3.物質からの離陸=情報消費 =>拡大・成長の歴史(200~300年) ・生物として生きていくのに必要な量の40倍ものエネルギーを人間は消費。かつてより40倍も時間が早い。 ・ケアという営みにおいて本質的な意味を持つものは「時間」という要素。遊び、自己実現も。 ・成長が目標であり限り、都市に求心力が働き、地方分権は進まない。
世の中のベクトルが大きく変わる、そんな節目にあることを確信させてくれた本です。私の「豊かさ」の感性の原点がここにあります。
「個人」が「共同体」から、次いで「自然」から離陸していく構図を社会保障(福祉)、環境の面から鮮やかに描き出したこの書の特徴は、当然並立するはずの経済/市場という概念(「私利の追求」等含む)を真っ向からとらえ、しっかりと組み込んだところにあるように思う(個人的に第4章冒頭の簡単な経済史概観は、経済関連...続きを読むを学びたい者としてとても嬉しかった)。 本書の構成の内、政策提言など現実的な打開策もその主要な柱となってはいるが、その根底にはこれからの社会が「どうあるべきか」というより「どうなっていくのか」という分析がある(その境界は非常に曖昧で、また連続的なものではあるが)。この分析が非常な説得力を持って、政策提言にかなりの威力を与えている(ex.「物質、エネルギー」→「情報」→「時間」)。 筆者は、氏が本書を通して一貫として主張してきた「定常型社会」のコンセプトを巧く描き出せたようである。「定常型社会」と聞くともしかしたら感じてしまうようなネガティヴなイメージは実際に本書を読んでいただければ払拭されるように思う。理想を求めつつも、しっかりと現実を見据えた本当の良書だ。 拙いレビューじゃとてもその良さが伝わらないと思うので、少しでも気になる人は実際に読んでみてください。 (2006年04月02日)
「ゼロ成長」やら「環境制約」など、一見するとネガティブな印象を受けてしまいそうな言葉にポジティブな意味を持たせてくれる本。難しそうなタイトルの割には、非常に分かりやすい(一部、非常に分かりにくい部分もあるけれど)。様々な概念の対比や、類似点などを挙げたりして、社会保障から環境問題から、「トータルな社...続きを読む会論」が展開されてます。広井先生の十八番の思想が充分に出ているのではないかと思います。広井先生、すごすぎます。
2021.72 ・ゼロ成長社会。 ・人と環境、人と人の問題に収束する。 ・自然とつながることで長い時間軸を取り戻す。
『コミュニティを問い直す』で著者に興味を持ってこれも読もうと思い立った。 環境負荷を考えると、マテリアルな消費が持続可能な範囲で行われる必要があり、人口に着目すると、人口が一定になる必要がある。これはどちらも『定常化社会』というコンセプトに結びつく。 というのが本書のメインテーマ。『持続可能な未...続きを読む来へ』が工業化社会をバブルと言っていたけど、人口爆発も間違いなくバブルで、永遠につづくのは不可能だから、たしかにこのコンセプトは大事になってくると思う。 いくつか本書の中で出てきて印象に残ったのをメモ書き程度に↓ 「ケインズ政策」 日本では公共工事のイメージが強いが、ヨーロッパに於いては福祉国家と強く結びついていた。そして両方共成長に価値を見出していた。日本ではパイを増やすということにのみ力点を置いていたのに対し、ある程度成長してしまっていたヨーロッパでは、再配分を行うことにより、低収入層に収入を分配し、そのことを通じて全体の消費を活性化することで成長を目指した。 『定常型社会』の定義 1.物質・エネルギーの消費が再生可能な範囲内 2.量的拡大を基本的価値としない 3.変化しないものにも価値をおく バブル型社会から定常型社会へ移行する必要性 1.環境・資源による制約 2.基本的需要の有限性
成長社会から脱皮して、定常型社会への変革を説いた本。 現状の日本はほぼ成長率がほぼゼロで、定常社会になっているので、本書のような内容が実現すれば、多くの問題が解決する。 しかし、現状の利権構造を考えれば無理だろう。
大学院の課題に取り組むために読みました。 発行されてから随分と年月が経っている本ですが、現在のSDGsの考え方と結びつけて考察することができる書籍と思います。
★本書のメッセージ 「成長」に代わり「定常」であることを新しい豊かさとよう ★読んだきっかけ 戸田氏の『働く理由』に引用されていたため。今後の社会において、どういった働き方をしたいのか考えたく、読んでみた。2001年に書かれた内容であるが、現在にも十分通ずる内容。そう思うと、今の政府の在り方・価値...続きを読む観は全く転換するに至ってないのだと分かる ★本の概要・感想 人口が減少し、GDPも伸びていかない社会で、どのような国・政策の在り方がよいかを考える。社会保障や政策の知識が無いとスムーズに理解するのは難しい。 ムリに成長を志しても苦しいだけだろうなぁ。 ★本の面白かった点、学びになった点 *「成長」という概念の位置づけ自体が、実は経済学の理論パラダイムの中では必ずしも重要視されていなかった、ということ ・経済成長に価値があるとされたのは、失業問題との関連である ・実物経済で需給が均衡しても労働市場が均衡するとは限らず、そのため政府が追加投資を行って実物経済を高い水準に引き上げる必要があった →労働市場が改善されていないのであれば、経済成長には本来の意義はかなり弱まる *定常型社会とは変化のない、退屈な社会ということではない ・量的な変化は志向しないが、質の変化は継続しておこるものとなっている *もともとヨーロッパにおいては、大きな政府を志向する社民系も、小さな政府を志向する保守系も「経済成長を志向する」という観点では共通に意識していたこと ・経済成長をより効率的に達成する手段として、自由放任なのか、ケインズ的積極的財政政策を取るのか、といった違いなのである *不断の経済成長は「人間の需要は制限なく拡大する」ことを前提に考えられていたため、現在はその仮定にムリが出てきている *本質的な現代の先進国の課題3つ ・外的な課題ー資源が有限であること ・内的な課題ー人間の欲望、消費需要が無限に拡大しないこと ・分配の課題ー富の総量を増やしても、きちんと、貧富の差が埋まるようには分配されないこと *定常型社会の3つの意味とその条件/根拠 ・第一の意味「マテリアルな消費が一定となる社会」 →脱物質化← 情報化や「環境効率性」の追及を通じて ・第二の意味「経済の量的拡大を基本的な価値ないし目標としない社会」 (=脱量的拡大)←「時間の消費」を通じて ・第三の意味「<変化しないもの>にも価値を置くことができる社会」 ←「根源的な時間の発見」を通じて、行われるものとなっている ●本のイマイチな点、気になった点 ・そんなに簡単な本ではない。社会保証やサステナビリティ、マクロ経済学の知見がベースに無いと理解できない →勉強し直して、また今度よもう ●学んだことをどうアクションに生かすか ・社会保障の政策についてもう一度考えたいと思った際、もう一回読みたい ・やっぱり、いまだに物質的な成長、量的成長だけをひたすらに志向するのはナンセンスっすよね
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広井良典
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