人口減少社会のデザイン

人口減少社会のデザイン

ビジネス・実用
1,980円 (税込)

9pt

「都市集中型」か、「地方分散型」か。
東京一極集中・地方衰退→格差拡大→財政は改善?
地方への人口分散→格差縮小・幸福感増大→財政は悪化?
果たして、第3の道はあるのか。

2050年、日本は持続可能か?
「日立京大ラボ」のAIが導き出した未来シナリオと選択とは。

借金の先送り、格差拡大、社会的孤立の進行……
転換を図るための10の論点と提言。


「集団で一本の道を登る時代」―昭和
「失われた30年」―平成
そして、「人口減少社会」―令和が始まった
「拡大・成長」という「成功体験」幻想を追い続け、
「先送り」されてきた、「持続可能な社会」モデルを探る。


社会保障や環境、医療、都市・地域に関する政策研究から、時間、ケア、死生観等をめぐる哲学的考察まで
ジャンルを横断した研究や発言を続けてきた第一人者による10の論点と提言

①将来世代への借金のツケ回しを早急に解消
②「人生前半の社会保障」、若い世代への支援強化
③「多極集中」社会の実現と、「歩いて楽しめる」まちづくり
④「都市と農村の持続可能な相互依存」を実現する様々な再分配システムの導入
⑤企業行動ないし経営理念の軸足は「拡大・成長」から「持続可能性」へ
⑥「生命」を軸とした「ポスト情報化」分散型社会システムの構想
⑦21世紀「グローバル定常型社会」のフロントランナー日本としての発信
⑧環境・福祉・経済が調和した「持続可能な福祉社会」モデルの実現
⑨「福祉思想」の再構築、“鎮守の森”に近代的「個人」を融合した「倫理」の確立
⑩人類史「3度目の定常化」時代、新たな「地球倫理」の創発と深化

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人口減少社会のデザイン のユーザーレビュー

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感情タグBEST3

    Posted by ブクログ

    本書は、今後確実に進んでいく人口減少の中で、どのような社会の形をとるべきかという議論である。
    印象に残った点は、人口減少の原因が、未婚化・晩婚化にあり、結婚している世帯の出生率自体はそこまで落ちていない点。
    そして、未婚化・晩婚化の原因として、若者の所得については、非正規雇用の増加等も原因となり、1980年代ごろから低下していると言う点である。それゆえ、広井氏は人生前半=若者への社会保障の拡充をまず訴える。
    また、広井氏はコミュニティ論の大家として知られるが、冒頭の人口減少や格差の増大と並列して、「社会的孤立」の指標を取り上げていた点が印象深かった。日本は先進国の中で社会的孤立の指標が相対的に高いが、これは他者への無関心にもつながり、家族や血縁を超えた日本の中での相互扶助である社会保険料負担への忌避に繋がりやすいという点が述べられている。
    私自身も感じることではあるが、都市におけるコミュニティというものが日本では極めて希薄であると述べられている。無論、農村コミュニティでは非常に密な繋がりがあるが、これが都市に出ると個人としての仕事や家族以外での繋がりが希薄である点は、社会的孤立にも繋がっていると考えらてる。さらに、都市のムラ社会であったカイシャと核家族のうち、前者は流動化し、後者も多様化の流れの中でいかにして、「集団を超えて個人と個人がつながるような仕組み」を構築するかは、まさに喫緊の課題である。

    第4章の社会保障の章では、社会保障という本質的な富の分配に関する議論について、日本人が不得意としている点も述べられている。日本人は、議論の中で、その場の空気や流されやすい傾向にあるため、その場にいないメンバーに関する思慮が欠ける結果に落ち着きやすい。そうした中で、社会保障に関する富の分配の議論は、その場にいない将来世代に常に先送りされてきた背景がある。このような本質的ではない議論の形も、経済成長や拡大期にはそこまで問題にならなかったが、人口減少社会の中で、本格的に定常的なフェーズに入る中では、社会保障論の核となるような分配の公正、公平、平等とはなにかというようなプリンシプルに関する議論に正面から向き合わなければならない。それができない場合には、まさに破局に向かう。

    まず、日本には理念の選択が求められる。資本主義の多様性と言う観点でも、アメリカモデルでは、強い拡大傾向と小さな政府、ヨーロッパモデルでは環境志向と相対的な大きな政府というプリンシプルや理念がある。前者は医療なども一定レベルで商品化されており、低負担低福祉モデル、後者は高負担高福祉モデルである。両者は価値観の問題であり、国民の合意形成がなされていれば、問題はない。しかしながら、日本の場合、当初はヨーロッパ型の高福祉モデルを参照してシステムを構築していたが、大きな保険料や税負担を国民に強いていない、低負担中福祉というアンヘルシーなモデルが運用されてきた。無論、低負担のツケは、GDP等の経済成長で賄われるという発想であったが、低成長となった今、限りない赤字国債の発行により賄われ、結果的に将来世代に先送りしている状況を脱することができていない。極めて無責任な状況と言える。
    こうした中で、人生前半の社会保障や、予防的な施策の重要性を広井氏は訴える。
    これまでの社会保障の歴史的変遷を読み解くと、事後から事前という流れがある。イギリスの救貧法は市場経済のひずみとして格差が広がったものに対して、事後的に修正を加えるものであった。その後、事前に保険料を集めて、いざ貧困に陥ったり、医療が必要となる人々のセーフティネットを事前に構築する社会保険制度がドイツで広がっていった。しかしながら、その後の世界恐慌等によって、雇用喪失が進む。社会保険制度は、一定の雇用を前提として労働者の給与から保険料が捻出されるモデルであるため、雇用の喪失はシステムの不具合に直結する。そうした中で、次はその根本である雇用政策というものが主題化され、ケインズ的な政策が実践されてきた。そして、その流れをくむのがベーシックインカムであり、BIが予防的施策の先端であると説く。
    放っておけば格差が生まれてしまう領域に、予め給付を行うことでスタートラインの格差をできるだけなくすという点がBIの基本である。
    なお、日本の年金施策についても別途コメントがなされており、昨今下流老人という本で有名になった高齢者の貧困問題についても触れられている。現在の日本年金制度は厚生年金等、若い世代の時に納入した保険料(そしてその基礎となる給与水準)によって、受給できる年金額が異なる仕組みになっている。しかし、公的制度である限り、多く保険料を払った人間が、多くの給付を受けるというモデルは必ずしも実践する必要がなく、より相互扶助的なシステムに変換すべきと述べている。
    この意見には、私も賛成であるが、公的保障であるからには、所得の高い人ほど高い社会保険料を払うというロジックを理解するには、自分自身の所得の高さに対して、社会的サービスや運によるところが大きいという感覚がそもそも必要であろうと思う。私自身、中学受験をさせてもらい(親の教育投資に関する運)、大学も国立大学(社会的サービス)を卒業しているため、現在の所得に対して、自分自身の努力は一要因にすぎず、感覚的には半分程度は運や周囲の支援によるものであると感じている。そうした感覚を持っている場合、所得が多い人間が、多くの保険料を払うというロジックは理解できる。これは損得勘定の問題ではなく、ノブレスオブリージュのような倫理観、価値観を涵養する文化施策や教育施策の問題ではないかと感じる。
    ここで、前段の社会的孤立に関する先進国における日本のランキングの低さがボディブローのように効いてくる。
    高所得層におけるノブレスオブリージュの感覚の涵養という文化的、哲学的施策の、今後の主題足りうるのではないかと思う。

    0
    2024年02月03日

    Posted by ブクログ

    これからの日本社会はどうあるべきか、多くの視点から問題提起、議論されており、頭の整理が進む。将来世代への借金の押し付けは、若者世代が日本を見限る原因になり、国の崩壊に繋がっていくというのが、さして遠くない未来に起こり得るのを考えると、子供達に自衛のためにどうするか、どう伝えるのがよいか考えさせられる。

    0
    2023年11月18日

    Posted by ブクログ

    表題は「人口減少社会の」となっているが、扱っていることは、これからの世界、そして日本社会が考えなければならないこと、今すぐにでも取り組まなければならないことが、その時間軸を長く取って、人類史からとらえ直して提唱されている。多くの具体的な資料が提示されていて、たいへん説得力に富む。

    0
    2022年04月15日

    Posted by ブクログ

    非常に面白い本でした。医療についても言及されています。複雑系としての病にたいしては、健康の社会決定要因に目を向けることが大切。
    拡大、成長の限界 地域への着陸 都市政策と福祉政策の融合 歩いて楽しめる空間づくり 情報から生活へ 複雑系としての病 持続可能な福祉社会

    0
    2022年02月24日

    Posted by ブクログ

    2度目に読んで、ようやく単なる人口減少とか社会保障の危機を訴えているだけのものではなかったのだなと理解。政策が成功した結果としての東京一極集中とか、参考になる視点が散りばめられていた。
    でも、持続性のあるローカライゼーションのため何をしていけばよいのか。難しい課題である。

    0
    2022年02月07日

    Posted by ブクログ

    サクッと読み。
    グローバルな視点からローカルな視点まで落とし込んで書いてあって面白かった。
    死生観のところとかは、ほんと?と思ったけど面白い見方で良かった。

    0
    2022年01月20日

    Posted by ブクログ

    全体的にデータに基づいて説得力のある文章だと感じた。

    人口減少は避けられないが、どこかで下げ止まった後、定常状態をいかに持続可能にするかが重要。そのためには、若者への人生前半の社会保障による少子化対策が有効。その財源として、税金や社会保障による国民の負担増を考える必要がある。高福祉高負担を選択したヨーロッパ、低福祉低負担を選択したアメリカに対して、日本は高福祉でありながら負担増の議論を先送りしてきた。負担増を考えるとき、家族以外への扶助の精神がないという現代日本人の孤立感が問題となる。そこで、コミュニティ感を高めるための都市デザインが重要となる。

    今後の展望として、著者は多極集中が良いと考えている。極となる都市は多く存在し、それぞれの極は分散ではなく集約されて歩行者中心のコミュニティ空間になっているというものである。

    ヨーロッパの都市は、都市の中心部から自動車交通を排除し、歩いて楽しめる空間、緩やかなコミュニティ的つながりを感じられる街が多い。一方、アメリカの街は自動車中心にできていて、人が歩いて楽しめる空間が少ない。例えば、郊外ショッピングモール型の都市像が指向された。アメリカをモデルにした日本も同様。

    自分がアメリカよりイギリスやフランスの方を居心地がいいと感じた理由の一つはこれかもしれない。アメリカは街が悪い意味で大きく広いという感想を持ったのに対して、イギリスやフランスの方が歩き回っていて楽しめると感じた。

    0
    2021年11月07日

    Posted by ブクログ

    どうしたら幸福な社会、人生を創れるか。
    そのスタートにつくためには20世紀と21世紀の向かうべき社会、死生観、環境などの現状を理解する必要がある。

    経済、環境、福祉、なぜこの3つがサステナビリティやCSRで論じられるか?

    日本はいかに未来世代の選択肢を削って、犠牲にして先送りを続けているか

    コンパクトシティと多機能自立分散のシナリオの選択と猶予期間。

    ムラ社会とマチ社会の特性と今後向かうところは?

    バーチャルとリアリティのグラデーション、生と死のグラデーション

    これらのテーマを個別でなく統合的に解説してくれている。

    対話や議論を行う前の共通認識を整えるに最適な一冊。

    0
    2021年08月12日

    Posted by ブクログ

    20260505017

    大前提として人口減少が避けられない時代。変えられるのは自分たちの意識、生き方、人との関わり方。

    0
    2026年05月05日

    Posted by ブクログ

    人口減少社会で持続可能性を高めるためには価値観を抜本的に変える必要がある。特に死生観の更新が必要だろう。高福祉を前提として、福祉の対象と量を検討していくべきである。

    正しい意味での個人主義→コミュニティ拡充による相互扶助→コミュニティ同士の連携→ボトムアップのグローバル化
    という著者の主張。

    ①日本の借金の返済
    ②若い世代への支援強化
    ③多極集中、コミュニティ空間(歩いて楽しいまちづくり)
    ④都市と農村間の再分配
    ⑤経営理念を持続可能性にシフト
    ⑥ポスト情報化(生命重視)
    ⑦グローバル定常型社会
    ⑧環境・福祉・経済のバランス
    ⑨福祉思想の再構築
    ⑩成長期→定常期の価値観の転換

    0
    2025年11月08日

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