【感想・ネタバレ】人口減少社会のデザインのレビュー

あらすじ

「都市集中型」か、「地方分散型」か。
東京一極集中・地方衰退→格差拡大→財政は改善?
地方への人口分散→格差縮小・幸福感増大→財政は悪化?
果たして、第3の道はあるのか。

2050年、日本は持続可能か?
「日立京大ラボ」のAIが導き出した未来シナリオと選択とは。

借金の先送り、格差拡大、社会的孤立の進行……
転換を図るための10の論点と提言。


「集団で一本の道を登る時代」―昭和
「失われた30年」―平成
そして、「人口減少社会」―令和が始まった
「拡大・成長」という「成功体験」幻想を追い続け、
「先送り」されてきた、「持続可能な社会」モデルを探る。


社会保障や環境、医療、都市・地域に関する政策研究から、時間、ケア、死生観等をめぐる哲学的考察まで
ジャンルを横断した研究や発言を続けてきた第一人者による10の論点と提言

①将来世代への借金のツケ回しを早急に解消
②「人生前半の社会保障」、若い世代への支援強化
③「多極集中」社会の実現と、「歩いて楽しめる」まちづくり
④「都市と農村の持続可能な相互依存」を実現する様々な再分配システムの導入
⑤企業行動ないし経営理念の軸足は「拡大・成長」から「持続可能性」へ
⑥「生命」を軸とした「ポスト情報化」分散型社会システムの構想
⑦21世紀「グローバル定常型社会」のフロントランナー日本としての発信
⑧環境・福祉・経済が調和した「持続可能な福祉社会」モデルの実現
⑨「福祉思想」の再構築、“鎮守の森”に近代的「個人」を融合した「倫理」の確立
⑩人類史「3度目の定常化」時代、新たな「地球倫理」の創発と深化

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Posted by ブクログ

本書は、今後確実に進んでいく人口減少の中で、どのような社会の形をとるべきかという議論である。
印象に残った点は、人口減少の原因が、未婚化・晩婚化にあり、結婚している世帯の出生率自体はそこまで落ちていない点。
そして、未婚化・晩婚化の原因として、若者の所得については、非正規雇用の増加等も原因となり、1980年代ごろから低下していると言う点である。それゆえ、広井氏は人生前半=若者への社会保障の拡充をまず訴える。
また、広井氏はコミュニティ論の大家として知られるが、冒頭の人口減少や格差の増大と並列して、「社会的孤立」の指標を取り上げていた点が印象深かった。日本は先進国の中で社会的孤立の指標が相対的に高いが、これは他者への無関心にもつながり、家族や血縁を超えた日本の中での相互扶助である社会保険料負担への忌避に繋がりやすいという点が述べられている。
私自身も感じることではあるが、都市におけるコミュニティというものが日本では極めて希薄であると述べられている。無論、農村コミュニティでは非常に密な繋がりがあるが、これが都市に出ると個人としての仕事や家族以外での繋がりが希薄である点は、社会的孤立にも繋がっていると考えらてる。さらに、都市のムラ社会であったカイシャと核家族のうち、前者は流動化し、後者も多様化の流れの中でいかにして、「集団を超えて個人と個人がつながるような仕組み」を構築するかは、まさに喫緊の課題である。

第4章の社会保障の章では、社会保障という本質的な富の分配に関する議論について、日本人が不得意としている点も述べられている。日本人は、議論の中で、その場の空気や流されやすい傾向にあるため、その場にいないメンバーに関する思慮が欠ける結果に落ち着きやすい。そうした中で、社会保障に関する富の分配の議論は、その場にいない将来世代に常に先送りされてきた背景がある。このような本質的ではない議論の形も、経済成長や拡大期にはそこまで問題にならなかったが、人口減少社会の中で、本格的に定常的なフェーズに入る中では、社会保障論の核となるような分配の公正、公平、平等とはなにかというようなプリンシプルに関する議論に正面から向き合わなければならない。それができない場合には、まさに破局に向かう。

まず、日本には理念の選択が求められる。資本主義の多様性と言う観点でも、アメリカモデルでは、強い拡大傾向と小さな政府、ヨーロッパモデルでは環境志向と相対的な大きな政府というプリンシプルや理念がある。前者は医療なども一定レベルで商品化されており、低負担低福祉モデル、後者は高負担高福祉モデルである。両者は価値観の問題であり、国民の合意形成がなされていれば、問題はない。しかしながら、日本の場合、当初はヨーロッパ型の高福祉モデルを参照してシステムを構築していたが、大きな保険料や税負担を国民に強いていない、低負担中福祉というアンヘルシーなモデルが運用されてきた。無論、低負担のツケは、GDP等の経済成長で賄われるという発想であったが、低成長となった今、限りない赤字国債の発行により賄われ、結果的に将来世代に先送りしている状況を脱することができていない。極めて無責任な状況と言える。
こうした中で、人生前半の社会保障や、予防的な施策の重要性を広井氏は訴える。
これまでの社会保障の歴史的変遷を読み解くと、事後から事前という流れがある。イギリスの救貧法は市場経済のひずみとして格差が広がったものに対して、事後的に修正を加えるものであった。その後、事前に保険料を集めて、いざ貧困に陥ったり、医療が必要となる人々のセーフティネットを事前に構築する社会保険制度がドイツで広がっていった。しかしながら、その後の世界恐慌等によって、雇用喪失が進む。社会保険制度は、一定の雇用を前提として労働者の給与から保険料が捻出されるモデルであるため、雇用の喪失はシステムの不具合に直結する。そうした中で、次はその根本である雇用政策というものが主題化され、ケインズ的な政策が実践されてきた。そして、その流れをくむのがベーシックインカムであり、BIが予防的施策の先端であると説く。
放っておけば格差が生まれてしまう領域に、予め給付を行うことでスタートラインの格差をできるだけなくすという点がBIの基本である。
なお、日本の年金施策についても別途コメントがなされており、昨今下流老人という本で有名になった高齢者の貧困問題についても触れられている。現在の日本年金制度は厚生年金等、若い世代の時に納入した保険料(そしてその基礎となる給与水準)によって、受給できる年金額が異なる仕組みになっている。しかし、公的制度である限り、多く保険料を払った人間が、多くの給付を受けるというモデルは必ずしも実践する必要がなく、より相互扶助的なシステムに変換すべきと述べている。
この意見には、私も賛成であるが、公的保障であるからには、所得の高い人ほど高い社会保険料を払うというロジックを理解するには、自分自身の所得の高さに対して、社会的サービスや運によるところが大きいという感覚がそもそも必要であろうと思う。私自身、中学受験をさせてもらい(親の教育投資に関する運)、大学も国立大学(社会的サービス)を卒業しているため、現在の所得に対して、自分自身の努力は一要因にすぎず、感覚的には半分程度は運や周囲の支援によるものであると感じている。そうした感覚を持っている場合、所得が多い人間が、多くの保険料を払うというロジックは理解できる。これは損得勘定の問題ではなく、ノブレスオブリージュのような倫理観、価値観を涵養する文化施策や教育施策の問題ではないかと感じる。
ここで、前段の社会的孤立に関する先進国における日本のランキングの低さがボディブローのように効いてくる。
高所得層におけるノブレスオブリージュの感覚の涵養という文化的、哲学的施策の、今後の主題足りうるのではないかと思う。

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2024年02月03日

Posted by ブクログ

タイトルだけで、淡白で薄っぺらい内容を想像したが全くそんな事はない示唆に富んだ本。データに基づき現象を正しく分析するだけではなく、守備範囲も広い。多々、学びがあった。

社交のための関係性を持たない「社会的孤立」の度合いが、日本は先進国の中では飛び抜けて高い。それ故に、出会いも少なく、未婚率も増え、出生率は低下。引退後の無気力を招き、孤独死、あるいは死ぬ時は病院で。

日本人はいつから、他人に対してこんなにも線を引くようになったのだろう。同じ車輌に押し込まれた悲しい勤め人なのに、目も合わせない。空間を共にしても、会話をする事は稀。コミニティー空間や居場所がない。昔は、教会や神社がコミニティーの役割を果たしていたのだという。確かに、何かしらの儀式が地域交流を齎し、集団信仰が結束を導いたのは想像し易い。お醤油を隣近所に借りたなんて話もサザエさんなどの漫画で見た。今はコンビニやネットもある中で、自分で何とかできてしまう社会。多様性、個の尊重が裏表で自己責任社会を招いた。

イギリスに東インド会社が設立された。1600年とほぼ同時期、1601年にエリザベス救貧法と呼ばれる現在の生活保護に相当するような制度が作られた。社会主義から資本主義に接近した社会主義市場経済と、資本主義から社会主義に接近した福祉国家は、既に連続的な関係にある。「人生前半の社会保障」、ストックに関する社会保障が重要だと著者はいう。

人生前半に手厚くするという思想は重要だ。生涯の医療費の約半分は、70歳以降にかかる。先進国における15歳から44歳までの病気の原因は、精神関係の病気、あるいは社会的な要因(道路交通事故)が上位を占めている。つまり、「人生前半の医療」は精神的ないし、社会的なものが中心である。貴重な労働力を躓かせない、いや、転んでも立ち直れる社会が重要。教育投資の価値が高いのも、人生前半だ。老人達よ、若い人から搾取するならせめて富裕層の資金を若者の投資へ。

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2024年01月27日

Posted by ブクログ

これからの日本社会はどうあるべきか、多くの視点から問題提起、議論されており、頭の整理が進む。将来世代への借金の押し付けは、若者世代が日本を見限る原因になり、国の崩壊に繋がっていくというのが、さして遠くない未来に起こり得るのを考えると、子供達に自衛のためにどうするか、どう伝えるのがよいか考えさせられる

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2023年11月18日

Posted by ブクログ

表題は「人口減少社会の」となっているが、扱っていることは、これからの世界、そして日本社会が考えなければならないこと、今すぐにでも取り組まなければならないことが、その時間軸を長く取って、人類史からとらえ直して提唱されている。多くの具体的な資料が提示されていて、たいへん説得力に富む。

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2022年04月15日

Posted by ブクログ

非常に面白い本でした。医療についても言及されています。複雑系としての病にたいしては、健康の社会決定要因に目を向けることが大切。
拡大、成長の限界 地域への着陸 都市政策と福祉政策の融合 歩いて楽しめる空間づくり 情報から生活へ 複雑系としての病 持続可能な福祉社会

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2022年02月24日

Posted by ブクログ

2度目に読んで、ようやく単なる人口減少とか社会保障の危機を訴えているだけのものではなかったのだなと理解。政策が成功した結果としての東京一極集中とか、参考になる視点が散りばめられていた。
でも、持続性のあるローカライゼーションのため何をしていけばよいのか。難しい課題である。

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2022年02月07日

Posted by ブクログ

サクッと読み。
グローバルな視点からローカルな視点まで落とし込んで書いてあって面白かった。
死生観のところとかは、ほんと?と思ったけど面白い見方で良かった。

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2022年01月20日

Posted by ブクログ

全体的にデータに基づいて説得力のある文章だと感じた。

人口減少は避けられないが、どこかで下げ止まった後、定常状態をいかに持続可能にするかが重要。そのためには、若者への人生前半の社会保障による少子化対策が有効。その財源として、税金や社会保障による国民の負担増を考える必要がある。高福祉高負担を選択したヨーロッパ、低福祉低負担を選択したアメリカに対して、日本は高福祉でありながら負担増の議論を先送りしてきた。負担増を考えるとき、家族以外への扶助の精神がないという現代日本人の孤立感が問題となる。そこで、コミュニティ感を高めるための都市デザインが重要となる。

今後の展望として、著者は多極集中が良いと考えている。極となる都市は多く存在し、それぞれの極は分散ではなく集約されて歩行者中心のコミュニティ空間になっているというものである。

ヨーロッパの都市は、都市の中心部から自動車交通を排除し、歩いて楽しめる空間、緩やかなコミュニティ的つながりを感じられる街が多い。一方、アメリカの街は自動車中心にできていて、人が歩いて楽しめる空間が少ない。例えば、郊外ショッピングモール型の都市像が指向された。アメリカをモデルにした日本も同様。

自分がアメリカよりイギリスやフランスの方を居心地がいいと感じた理由の一つはこれかもしれない。アメリカは街が悪い意味で大きく広いという感想を持ったのに対して、イギリスやフランスの方が歩き回っていて楽しめると感じた。

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2021年11月07日

Posted by ブクログ

どうしたら幸福な社会、人生を創れるか。
そのスタートにつくためには20世紀と21世紀の向かうべき社会、死生観、環境などの現状を理解する必要がある。

経済、環境、福祉、なぜこの3つがサステナビリティやCSRで論じられるか?

日本はいかに未来世代の選択肢を削って、犠牲にして先送りを続けているか

ンパクトシティと多機能自立分散のシナリオの選択と猶予期間。

ムラ社会とマチ社会の特性と今後向かうところは?

バーチャルとリアリティのグラデーション、生と死のグラデーション

これらのテーマを個別でなく統合的に解説してくれている。

対話や議論を行う前の共通認識を整えるに最適な一冊。

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2021年08月12日

Posted by ブクログ

人口減少社会で持続可能性を高めるためには価値観を抜本的に変える必要がある。特に死生観の更新が必要だろう。高福祉を前提として、福祉の対象と量を検討していくべきである。

正しい意味での個人主義→コミュニティ拡充による相互扶助→コミュニティ同士の連携→ボトムアップのグローバル化
という著者の主張。

日本の借金の返済
②若い世代への支援強化
③多極集中、コミュニティ空間(歩いて楽しいまちづくり)
④都市と農村間の再分配
⑤経営理念を持続可能性にシフト
⑥ポスト情報化(生命重視)
⑦グローバル定常型社会
⑧環境・福祉・経済のバランス
⑨福祉思想の再構築
⑩成長期→定常期の価値観の転換

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2025年11月08日

Posted by ブクログ

人口減少していく日本社会が、経済成長に頼らずに存続できる方法はあるのか、いわゆる「脱経済成長論」について、東京一極集中問題、街のあり方、医療サービスの問題点、税制の改善点など、さまざまな角度から論じている。
私自身、ここ30年の日本経済の停滞を受け、これから積極財政を行ったとしても、人口の減りゆく日本で、大きな経済成長を遂げることができるのか、懐疑的であったためこの本を読むに至った。

以下本書の内容を自分なりに要約した。

人口が減少していくことで直面する問題として、まずはじめに地方の過疎化が挙げられる。高度経済成長期より東京に人口が流入し始め、小さな町の中心部では、シャッター通りが散見されるようになった。しかし、これは人口減だけが理由なのではない。アメリカを模倣した自動車中心の町づくりが大きな要因の一つといえる。すなわち、町のどこをとっても自動車道が通り、ショッピングモールなど自動車が前提となった施設が多く、自動車を運転するしないによらず、老若男女が集える場所が用意されていないのである。一方で、例えば北ヨーロッパ、とりわけドイツの町は、10万人規模の小さな都市でも町の中心部は人の往来で活気に満ちている。これは、ドイツが自動車と歩行者の棲み分けがなされており、自動車は都市間の移動、街の中心部は歩いて移動する、そしてその中心部には、カフェや広場など人々のための開けた空間が用意されているからである。このように、街づくりを「歩行者」のために設計することができれば、小さな規模の町でも活気を保つことができる。

次の、人口減少にまつわる問題として、社会保障歳出の高騰、とりわけ高齢者の医療費をどうやって国が負担していくのかということが挙げられる。そもそも日本は北欧などの高福祉高負担でもなく、アメリカなどの低福祉低負担でもなく、言わば中福祉低負担という形態をとってきた。つまり、福祉を減らすか、税負担を増やすかの二択の決断を避け続け、将来の経済成長をあてに国債をバンバン発行してきた現状が、1000兆円を超える国債残高となっている。高齢者が増え、生産人口が減っていく将来、この次世代へのツケは更に増えていくだろう。著者は、この国債発行について反対の立場を取っており、税収のみで賄うこと、例えば消費税20%などの増税を提案している。

また、そもそもの人口減少、とりわけ出生率の低さにアプローチする方法として、若者世代への社会保障の充実をあげている。驚くべきことに、日本は先進諸国の中で、若年層に対する手当てが最低水準となってしまっている。これを充実させる財源として相続税の増税を提案している。これは財源の確保という面だけでなく、親から子へ富が積み重なることによる貧富の差の拡大を抑制し、上昇し続けているジニ係数に歯止めをかけるという役割も担っている。すなわち、若い世代のスタートラインを揃え、尚且つ社会保障を充実させてやることで、経済的理由による子を持つことへの躊躇を取り払うことが理想である。


以下私の感想。

まず、税負担と福祉のアンバランスについては、国債発行の是非が分からなければ議論ができないと思う。直近の参院選を見ても積極財政派が多く、国債はまだ発行できると考えるのが一般的なのかもしれない。ただ、借金をし続ければ、インフレが起こらない限り、利子や元本の配当で予算が圧迫されていくのは明白であり、いつか破綻に至るように感じる。自分の国債観をまず持つことが、社会保障のあり方を考える上で必要不可欠であると思う。


そして、経済成長宗教からの脱却については、日本が今後経済成長していくイメージは湧かないものの、完全に現状維持路線に舵を切ってしまうのも危険だと感じる。鎖国していた江戸時代のように、日本だけの話であればそれが理想なのかもしれないが、現代は良くも悪くも世界に開かれてしまっている。その中で停滞を続ければ、日本の国力は相対的に落ちていき、安さを目当てに治安の悪い移民や観光客が増え、東京は外国人に買い叩かれるという、心穏やかではない未来が待っていると思う。

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2025年08月04日

Posted by ブクログ

書店で偶然に本書を見つけ、「2050年、日本は持続可能か?」の帯に興味をそそられる形で、購入しました。

本書の内容は、人口減少を発端とした、現代日本社会の様々な社会的問題点を指摘したものとなっていますが、写真やグラフを随所で挿入し、また、論文等についても、注釈ではなく、文章中で引用していたので、非常に理解しやすかったですね。

著者の主張の中では、「人生前半の社会保障」をより重点的に厚くすべきという点と、「歩いて楽しめるまちづくり」については、非常に共感することができました。
特に、若い世代への社会保障の押し付けは止めるべきという主張は、明確な根拠も示された上で主張されていたので、納得感が高かったです。

ただ、本書の後半の「死生観」の部分では、文章中に明確な根拠等を示されておらず、幾分、著者独自のものと思われる哲学的な主張が展開されていたため、納得感はやや低かったですね。

ですが、本書は全体的に文章が読みやすく、今後の日本社会の方向性を自分なりに考える上で、非常に参考となりました。
特に、地方都市の在り方や、今後の社会保障政策の在り方に興味のある方には、一読をお薦めします。

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2025年05月26日

Posted by ブクログ

人口減少社会は、感覚的に、ぼんやりと認識しているが、日常生活では具体的には把握しづらい。その感覚差を埋めるため手に取る。
本書では、様々なデータや論文を引いて、社会や制度、死生観など幅広く、状況の説明と施策の提示が行われている。
人口はある程度、減少しても良い、など、お!と思わせる話もあり、硬い書ですが、一気に読める。良書。

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2023年08月27日

Posted by ブクログ

人口減少社会のデザイン
著:広井 良典

著者の研究グループでは、AIを活用した日本社会の未来シミュレーションを行い、①人口②財政・社会保障③都市・地域④環境・資源という4つの持続可能性に注目し、日本が2050年に向けてじぞく可能であるための条件やそのためにとれるべき政策を提言する内容の成果をまとめている。

日本社会の持続可能性を実現していく上で、「都市集中型」か「地方分散型」かという分岐がもっとも本質的な選択肢であり、また人口や地域の持続可能性、そして健康、格差、幸福等の観点からは「地方分散型」が望ましいという結果が示された。

構成は以下の7章から成る。
①人口減少社会の意味
②コミュニティとまちづくり・地域再生
③人類史の中の人口減少・ポスト成長社会
④社会保障と資本主義の進化
⑤医療への新たな視点
⑥死生観の再構築
⑦持続可能な福祉社会

シミュレーション能力の向上により、過去のデータから、困難とされる未来もぼんやりではあるものの見えてくる。明るい未来だけではなく、残酷な世界も見えてきてしまう。

「都市集中型」か「地方分散型」かその組み合わせか。それとも違った道があるのか。バラ色の未来が保証されているわけではない現状を受け止めながら、未来を思った現状の我慢と努力をどれだけの人が覚悟を持って出来るのか。

他人事ではなく、自分事として自身も捉え直して関わっていきたい。

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2022年11月27日

Posted by ブクログ

高齢化と人口減少。
社会保障と国家財政の破綻。
若者軽視の政策の是正。
成長至上の資本主義の見直しと地域社会。

こうした私個人としても、そして全社会的にも重大な関心事がひとつの円環の中で議論される。

一つ一つの議論が圧倒的に新しい、ということはないけれども、これら総体へのソリューションを「人口減少社会のデザイン」と名付けたことはまさに秀逸だと思う。

とくに、成長がすべてを解決できた時代の成功体験にしがみつき、本来今の世代の中で解決すべき社会保障問題を未来の子どもたちへの借金として押し付けていることに対して、ある意味完全自己責任で弱者のセイフティネットのない米国以上に無責任
、と断じていることには強い共感を覚える。

なお、成長一本槍を見直し、「今幸せか」を問うことは、ある意味死生観そのものを問うことでもある。人口成熟の現代は、思想のビックバンの可能性を秘めているとの第6章の議論はいささか試論的ではあるものの大変興味をそそられた。
私自身、例えば熊野古道や出羽三山など、これまでのいくつも聖地探訪登山をしてきた。
そしてその結果、明治維新に際して神仏習合を破壊したことは日本人の精神構造に大打撃を与えた、という仮説を抱いているのだが、本書の神仏儒を一体的に捉える感覚や、ある種アミニズム的に自然を精神世界の根底に位置づける著者の思考は、僭越ながらそれと何か一脈通じるようにも思えたのだ。

実務としての地域社会構築の取り組み含め、示唆に富む本。

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2022年07月24日

Posted by ブクログ

2021.10.27 とても刺激的で、自分も日本の未来のために何かやらなければと動機付けられる。素晴らしいと思う。難題が多いがなんとかしなければと思う。

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2021年10月27日

Posted by ブクログ

2019年から2年経ってもまだ方向性が決まらない。
豊富なデータ共に日本の過去〜現在〜未来における問題が解説されている。世界の中での日本の現状についても知らしめられる。
地方分散のまち、車社会から歩行で楽しめるまちのほうが効率的だ
はやく若者を救うべくベーシックインカムを導入してほしい

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2021年10月24日

Posted by ブクログ

明るい未来を上手く説明出来ないけど心穏やかに暮らしやすい社会であって欲しい。このままでは無理ですけど。印象に残ったのは、歩いて楽しめるまちづくりです。

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2021年09月16日

Posted by ブクログ

どういう未来になっていくがわかる本。
成長を夢見て将来に負担を後回しにすることをやめること。地方の繁華街を復活させていかなければいけない。親世代とは異なる価値観で生きていかないといけない。

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2021年08月31日

Posted by ブクログ

なんだかんだいって戦争によりもたらされた荒廃ががいまの日本で勃発している課題問題と地続きで繋がっているんだなぁと感じた。私は運転できないのでできればヨーロッパ型の都市で暮らしたい。単なる人口減少に伴う都市設計だけでなく、死生観などいろんなトピックが展開されていたので、もう一度読み込んでもいいかもしれない。ほんと現代を生きる自分としては、ライフワークとしてずっと考え方針を立てていかないとなテーマだわ。

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2021年08月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

人口減少社会という確実に見えている未来に向けたあり方を考えるためのヒントとして読書。
幅広いデータに基づいて論理展開されており、
納得感のある論であり、良著。これからを生きるヒントとなりそうな本。

メモ
・今後の持続可能性に関する重要論点
 財政、世代間継承性における持続可能性
 格差拡大と人口における持続可能性
 コミュニティないしつながりに関する持続可能性

・aiによる日本未来シナリオ、都市集中型か、地方分散型かが最大の分岐点

⭐︎経済成長あるいは一人当たり所得水準が一定レベルを超えると幸福度との相関が弱いものになっていく。幸福を左右する要因は
コミュニティのあり方、つながり
平等度ないきは格差
自然環境とのつながり
精神的、宗教的なよりどころなど。

・都市のありようを歩行者が歩いて楽しめる姿にしていくということ。それがコミュニティあるいは福祉的な意味、環境面での効果、経済の観点からもプラスの意味を持ってくる。

・工業化、情報化・金融化ときて次はローカル化に進むのではないか。AI分散型システムにより。グローバル化が落ち着き。持続可能性・幸福への関心が高まっていくのではないか。

・人類史において拡大と成長を大きく2回繰り返しており、定常期には心のビッグバンや精神革命のようなことが生じている。次なる定常化においては?

・これからの社会保障
 人生前半の社会保障の強化。最近スタートラインの格差が広がりつつある
 ストックに関する社会保障の強化。

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2021年08月15日

Posted by ブクログ

これからの少子高齢化社会をどのように準備して、生きていくかの“知恵”が書かれている良本です。政策だけでなく死生観、人類での文化的な変化、人としての大事のことなどを哲学的に教えてくれます。未来を想定して今の自分に何ができるか考えさせられます。

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2021年08月05日

Posted by ブクログ

哲学的な話にまで展開されるのは意外にも感じられたが、読みやすくて内容もたっぷりある良書だと感じた。

高福祉国家と低福祉国家の比較はよく聞くけど、
アメリカなどの低福祉国家はそのかわり受けられるサービスも少なく自己責任であるのに対し、
日本は負担は少なく得るものは多く、ひずみは将来への借金で押し付けている、理念なき政策になっているという主張(やや誇張してしまったかも)に
ほとほとこの国が嫌になった。

基礎年金が少なく、二階建ての部分が多いことで
所得再分配効果が薄れているというのもなるほどと思う。

かわってほしい、かえていきたい。

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2021年08月02日

Posted by ブクログ

これからの時代は、都市集中ではなく、地方分散の流れがますます進んでいくという著者の展望に、共感しました。
本書では、国内外の豊富な事例を交えながら、人口減少社会のあり方を幅広いテーマで考察されていて、とても示唆に富んでいます。
特におもしろかったのが地域再生のテーマ。「中心部からの自動車排除と歩いて楽しめる街」というヨーロッパの事例は日本でもぜひ広がっていってほしいです。
高齢者がゆっくり楽しめる市場や空間が広がっていけば、高齢者のお出かけは増えて健康になり、楽しみも増える。わざわざ都会に出かけなくても地域内で買い物ができたら、買い物難民だって解消するし、産業も発展し、地域も活性化する好循環に。
今こそ、クルマ依存型の社会構造から脱却した、持続可能なまちづくりを目指すべきだと思います。

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2021年07月24日

Posted by ブクログ

ネタバレ

人口減少時代に突入している日本で、
今後の社会のあり方の考え方を学ぶため、購読。
本書は、都市政策や地域活性化などにも言及しているが、
核となるのは、それらを受けた、
社会保障のあり方への提言だ、と思う。

○本書をまとめると、社会保障のあり方は、
・事後から事前へ―人生の前半への社会保障を厚く
フローからストックへ―住宅などへの保障を
・サービス・ケアの重視へ
・都市政策、まちづくり、環境政策と、社会保障の統合


以下、参考になった部分の要約。←は私のコメント
・現在の日本の地方都市の空洞化は、国の政策の失敗の帰結ではなく、むしろ政策の成功によって、実現した結果である。
←自動車のための道路で分断された都市計画
 住宅と土地を個人が所有し、スクラップ&ビルドする
 住宅政策。

・若い世代への支援が重要。人生前半の社会保障の充実を。

・日本では、人口減少はむしろよいのかもしれない。
 狭い可住地面積に密集しすぎている現状が、
 揺れ戻しで人口減少し、ある均衡点に落ち着く。
 問題は、際限のない人口減少である。
 そのためには、合計特殊出生率が2.0くらい必要。
←人口が増えすぎたのは、将来への期待感からかも。
 右肩上がりだから楽天的に産めよ増やせよとできる。
 逆に現在は、将来の見通しが暗い。
 この暗い見通しが、さらに出産をためらわせる。
 つまり、人口(ストック)と出生数(フロー)
 の間には、自己強化型のフィードバックループがある、ということだ。

・日本は、集団が内側に向かって閉じている。
 ―知っている者同士の間では極端なほどに気を遣い、
 仲間意識を持つ。
 逆に見知らぬ者、ソトの者に対しては関心を向けないか、
 潜在的な敵対関係を持つ。
←まさにその通り。ウチとソトで異様な仲間意識の差がある。気持ち悪い。

・社会資本整備はS字型で進む
←これはよくある普及のロジスティック曲線。
 y=1/(1+exp(-x))
・第4のSは情報化らしい。
←このあと、物質・エネルギー、情報、時間 など、
 かなり哲学的な内容になるので、読みとばしてよい。

・日本の福祉は、社会保障の給付に見合った負担を
 負わせることを回避し、
 将来世代にそのツケを回している。
 これは、困難な意思決定を先送りして、
 その場にいない将来世代に負担を強いるという点で、
 高福祉の欧州、低福祉のアメリカと比べて、最も無責任な対応だ。

・住宅などのストックに関する社会保障が、日本では現在足りていない。
 また、年金制度の在り方は、
 公的年金の必要性が相対的に薄い層(高所得層)に
 過剰ともいえる年金が支給されている。

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2021年03月08日

Posted by ブクログ

人口が減少していく未来の日本社会について、今の段階でなぜそのようになってしまっているのか、今後どのようにしていくべきなのかについて、さまざまな観点で学べる本。
著書に書かれていることに対して、データによる根拠もあるが、必ずしも全てそうではないということ、結果にはさまざまな要因が絡んでいるだろうこととして自分なりに解釈する。
外国と比較した日本の財政の状況や医療制度の問題、高度経済成長期の日本の背景から現在の状況を引き起こしていると言えるその理由などは勉強になった。
これからの時代に迫ってくることは、これまでの延長線で考えてきた施策では立ち行かないこと、これまでの日本の高度成長期によって現状のようになっているという文脈をしっかりと理解することが重要であり、学びとなった。

その他メモ
地方都市の空洞化や農村の過疎化などは、少子高齢化自体の問題ではなく、街づくりや社会システム作りの設計の問題と言える。
日本の高齢化率が高くなっているのは、長寿が要因ではなく、少子化が大きな要因である。先進諸国においても平均寿命の相違はさほど大きなものではなく、出生率の違いが大きい。
女性が社会進出するから、出生率が下がるということではなく、そうした変化に応じた政策や社会システムの対応を行っていくことが重要である。OECD諸国における女性の就業率と出生率の相関から、女性の就業率が高い国の方が出生率も高いと言うような傾向もある。

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2025年08月31日

Posted by ブクログ

唯一予測できる未来として、人口減少が気になっています。
さまざまな視点から人口減少を考察されていて、分かっているようで分かっていないことも多かった。


・ドイツも日本と同様に人口減少社会
・女性の就業率が高い国のほうが概して出生率も高い。社会システムの対応が重要
・これからの人口減少時代は地域で過ごす時間の多い層が増えていく。こどもと高齢者は地域との関わりが強いから
・地方の人口流出はいまではなく高度成長時代に多かった。今は地方の高齢者が亡くなって人口が減少している。
・年金マネーが首都圏に集中する
・今は高度成長時代に起こった大量の若年世代の首都圏流入が、数十年のタイムラグをへて別の形で顕在化している
・量的に拡大しないことは、変化がないことを意味するわけではない。量的拡大はモノ中心の経済にとらわれた旧来型の発想である
・超高齢社会では支出の最大の項目が社会保障となっており、税の累進性による再分配から社会保障給付による再分配へ構造変化が見られる
・寿命は食生活の影響が大きい
・長野県は高齢者の就業率が高く、野菜摂取量が多く、健康ボランティアが保健予防活動に取り組んでいる

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2025年02月01日

Posted by ブクログ

日本の高齢化率が特に高くなっていくのは、長寿が原因だと思いがちだ。しかし、そうではなくて、少子化が大きな原因であることをデータで証明。
また、女性の就業率が高い国の方が概して出生率も高いことも他国との比較で明確にしている。

少子化の避けられない日本にとって「若い世代の生活や雇用の不安定ないし困窮が、少子化の一つとなり、若い世代への支援こそが『人口減少社会のデザイン』にとって非常に重要」だと筆者は言う。

しかし、やみくもに少子化を否定するのではなく、これも他の先進国の国土面積と人口の比較から、日本はある程度人口は減っても良いとするなど、非常に現実路線。
これならやれる、というラインを見つけ出そうとしているところが広井さんの良いところだと思う。

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2023年08月08日

Posted by ブクログ

ネタバレ

定常社会論なんだけど、まとめとしての読みやすさがキモ。新しい話はあまり多くないし、突っ込みどころはさらっと流しているけど、ともかくひとまとまりになっているのはありがたい。

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2023年02月23日

Posted by ブクログ

人口減少社会を迎え、私たちはどう社会をデザインしていくか、AIを使ってシュミレーションするという一冊。

都市集中ではなく地方分散型にすることで、持続可能性は実現するというのがAIが出した結論。
昭和は、人口も経済も右肩上がりで個は排除され集団が優先された時代。
平成はバブル崩壊に伴う失われた20年により大きな方向転換を余儀なくされた時代。
そして、令和を迎えた今、集団よりも個、都市よりも地方が重要視されるべき。

地方都市の中心部がシャッター街になっている行政の失敗は、ある意味でアメリカの車中心社会を真似たから。
歩いて楽しむ街、コミュニティ作りに力を入れているヨーロッパの成功例は真似るべきと思う。

そして、この本で指摘するとおり、欧米というカテゴリーは間違えている。
欧と米は、システムも街並みも価値観も、驚くほど違う。
日本は、欧よりも米より。

今後の少子高齢化社会をどうデザインしていくか、政治家を一掃しないことには、無理だろうなあと思う。
今後も目先の利益ばかりを追いかけて、面倒なことと借金は、後世の世代に押し付けるのだろう。

日本は国際的に見ても、若者への支援、扶助が圧倒的に少ないということは知らなかった。努力が足りないという高齢者の指摘は腹が立つ。

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2022年06月23日

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