広井良典のレビュー一覧

  • 人口減少社会のデザイン

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    全体的にデータに基づいて説得力のある文章だと感じた。

    人口減少は避けられないが、どこかで下げ止まった後、定常状態をいかに持続可能にするかが重要。そのためには、若者への人生前半の社会保障による少子化対策が有効。その財源として、税金や社会保障による国民の負担増を考える必要がある。高福祉高負担を選択したヨーロッパ、低福祉低負担を選択したアメリカに対して、日本は高福祉でありながら負担増の議論を先送りしてきた。負担増を考えるとき、家族以外への扶助の精神がないという現代日本人の孤立感が問題となる。そこで、コミュニティ感を高めるための都市デザインが重要となる。

    今後の展望として、著者は多極集中が良いと考えている。極となる都市は多く存在し、それぞれの極は分散ではなく集約されて歩行者中心のコミュニティ空間になっているというものである。

    ヨーロッパの都市は、都市の中心部から自動車交通を排除し、歩いて楽しめる空間、緩やかなコミュニティ的つながりを感じられる街が多い。一方、アメリカの街は自動車中心にできていて、人が歩いて楽しめる空間が少ない。例えば、郊外ショッピングモール型の都市像が指向された。アメリカをモデルにした日本も同様。

    自分がアメリカよりイギリスやフランスの方を居心地がいいと感じた理由の一つはこれかもしれない。アメリカは街が悪い意味で大きく広いという感想を持ったのに対して、イギリスやフランスの方が歩き回っていて楽しめると感じた。

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    2021年11月07日
  • 人口減少社会のデザイン

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    どうしたら幸福な社会、人生を創れるか。
    そのスタートにつくためには20世紀と21世紀の向かうべき社会、死生観、環境などの現状を理解する必要がある。

    経済、環境、福祉、なぜこの3つがサステナビリティやCSRで論じられるか?

    日本はいかに未来世代の選択肢を削って、犠牲にして先送りを続けているか

    コンパクトシティと多機能自立分散のシナリオの選択と猶予期間。

    ムラ社会とマチ社会の特性と今後向かうところは?

    バーチャルとリアリティのグラデーション、生と死のグラデーション

    これらのテーマを個別でなく統合的に解説してくれている。

    対話や議論を行う前の共通認識を整えるに最適な一冊。

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    2021年08月12日
  • コミュニティを問いなおす ――つながり・都市・日本社会の未来

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    コミュニティを問いなおす

    非常に面白い本であった。改めて広井先生の社会福祉論の面白さに触れた。前半は増田四郎などに触れ、中世ヨーロッパの知見を援用し、社会学的な考察を行ったのち、広井先生の持論であるストックの再配分などに触れ、最後に多様な人々を結びつける共通基盤としての思想、哲学に議論が及んでいく。1冊の本の中で3冊分の知見を得たような気もする。

    前半の日本社会論は非常に明快であり、個人的にも納得した。社会には都市型と農村型、テンニースの言うゲゼルシャフトとゲマインシャフト的な二分法がある。都市型は異なる人々が、規範をもとに個人をベースにした公共性の高いコミュニティを形成する。一方、農村型は情緒的なつながりであり、ある意味で自他の隔たりが緩い共同性の高いコミュニティである。日本はどうかと言えば、戦後の日本では急速に都市化が進んだものの、実は都市化されたのは外観だけで、中の人々はカイシャという農村型コミュニティで温存されてきた。そういった意味で、日本には都市型コミュニティは未だにない。家庭と終身雇用の会社を行き来し、情緒的なつながりを基調に生きる一方で、一歩その外にでると、他人とは全く話すことはない。コンビニで店員と談笑しているような人はあまり街では見かけないのである。そう言った意味で、日本社会が閉鎖的と言われるゆえんは未だに確立した個人と個人の公共的な触れ合いというものがほとんどないからである。街中で人々が道徳的にふるまうのは、近所の誰かが見ている可能性があるという意識であり、決して公共性や規範によるものではない。これまでの日本は拡張され、引き伸ばされたウチがあり、結局のところ相手の個性を認めたうえで対等にコミュニケーションするというソトのコミュニティはないのである。ここが前半の面白い部分であった。さらに、少し話はずれるが高齢者と子供は土着性が強いゆえに、これからの社会は高齢者比率が高くなるにつれてより地域性が重要になるという考察も頷けた。

    また、2章ではコミュニティの意味や目的について話が上がるが、「コミュニティは外部と接するためにある」というキーワードが興味深かった。古来よりコミュニティが存在する場所は、寺院・神社、学校、商店街、公園、介護・医療関連施設であるが、寺院・神社は死者(彼岸)の世界という外部を持ち、学校は新しい知識と言う外部を持つ、商店街は商行為を媒介とした他のコミュニティとの接点であり、公園は自然と言う外部がある、最後に介護・医療関連施設は老い・病という外部をもつ。今あるコミュニティには外部が存在するという知見はこれからコミュニティを形成する上で、何を外部とするかという形で落とし込みができるのではないかと考えた。企業も、何を外部(社会課題・ペイン)とするかを設定し、それを解決することを企業理念とするという形で考えればコミュニティという意味では分かりやすい。

    中盤では、フローの社会保障からストックの社会保障というテーゼが打ち出されている。これまで私が触れてきた社会保障論では税や社会保険を財源に、困窮者に手当や保険金を支払うというフローでの思考が非常に多かった。一方で、住環境であったり、初期の教育環境というストックにより注目することで、都市計画などの別の形での社会保障論が垣間見える点は非常に面白かった。
    日本はヨーロッパなどに比べて圧倒的に公営住宅というものが少ない。実際に家計をやりくりしてみてわかることであるが、福利厚生で考えてみてもいくら住宅手当と言うフローの保障があったとしても、社宅のようなストックでの供給の方がありがたい。今では社宅など死後に近いが、困窮している層に対して、住環境のストックでの保障というものは、今後高齢化が進む中でどうしてもフローの社会保障論では限界がくる中で、有益な視点であると感じた。再分配という文脈でもストックへの注目はしかるべきであろう。これまでの修正資本主義の考え方では、最初は自由経済でどんどん進めて、ひずみが出れば解決するというものであった。しかしながら、昨今では教育環境やそもそも家を持っているか否かなど、機会の不平等が進んでいる。そう考えた場合、フローへの課税だけでなくストックへの課税をもとにしたストックでの再分配は今後のトレンドとならざるを得ないと考える。
    また、人生前半の社会保障という考え方もストックへの社会保障という考え方の一つの面白い視点である。これまで、人生におけるリスクは退職後という人生後半に集積していた。それは、終身雇用と核家族という強固なセイフティネットにより、見えない社会保障が機能していたからである。しかしながら、終身雇用も現在では崩れ始め、さらに人々はどんどん孤独化していっている。もとい、失われた30年とは、終身雇用は限界を迎えているのにもかかわらず、非正規雇用という外部を生み出すことでギリギリ終身雇用を維持してきた期間であった。その間に、非正規雇用は終身雇用のような見えない社会保障から外れ、非正規雇用は消費することもなく、さらには金銭的な理由から結婚もできずに孤独化していくという道筋をたどってきた。非正規雇用という外部と、正規雇用の流動性の低さという日本労働社会の潮流は、2021年の今まさに変化を迎えようとしている。同一労働・同一賃金や厚生年金への一部の非正規雇用者の適用など、一度セイフティネットから外れた人々を、なんとかより戻そうという流れがきている。それは、一方で正規雇用の流動性の向上により、むしろ労働市場はストック的な思考からフロー的な思考へ変化して言っている。その意味で、この本が書かれた2009年からさらに日本は沈み、過渡的な状況にあるともいえる。

    また、最近、脱・成長という言葉も流行っているように思えるが、広井先生はかなり昔から定常経済の概念を提唱していたと記憶している。今後、経済成長が止まっていく中で、成熟した社会を構想する上では、空間への志向が考えられる。なぜなら、これまでの経済成長は時間への志向であったからであろう。今日よりも明日の方が経済が成長するという基盤のもと、現在価値や将来価値という言葉は金融論の初歩的な言葉としてカウントされてきた。今の1万円は1年後の1万円よりも価値が高いのである。しかしながら、定常社会では今の1万円も1年後の1万円も価値は同じなのである。ここに、時間が価値を生むという根本的な原理が通用しなくなり、人々は時間への興味を失っていくと考えられる。そうした場合、時間の対概念である空間の比重がこれまで以上に重要視されるのではないかということが広井先生の提言である。

    終盤ではかなり歴史的・哲学的な話に広がっていく。これまでに歴史を概観するに、定常化と成長のサイクルを広井先生は見出している。そして、キリスト教や仏教、ユダヤ教などの世界宗教の多くは定常化した状態で勃興する。そこには、物質的な拡大から内面への深化、際限なき欲望の抑制という宗教的・哲学的な思考が深まるのは、拡大や際限なき欲望がかれ果てた定常化した社会なのである。今後、定常化した社会の中で、自省的で内面的な思考がトレンドとなるということは文化的な側面でも考えられるであろう。一方、もう一つの見方とすれば、空間的な拡大の果てに多様な人々をむずびつける共通基盤が必要となり、そこには長い時間軸を持った宗教的・普遍的な思考が不可欠であったという見方もある。いずれにしても、今後の文化は普遍性の高い概念への深化のフェーズを迎えているのであろう。

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    2021年08月04日
  • 無と意識の人類史―私たちはどこへ向かうのか

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    広井良典(1961年~)氏は、東大教養学部卒、東大大学院総合文化研究科修士課程修了、厚生省勤務、米MIT客員研究員、東大先端科学技術研究センター客員教授、千葉大学法経学部教授などを経て、京都大学こころの未来研究センター教授。専攻は公共政策、科学哲学。社会保障、医療、環境、都市・地域等に関する政策研究から、ケア、死生観、時間、コミュニティ等についての哲学的考察まで、幅広い活動を行っている。
    私はこれまでに著者の『死生観を問いなおす』(2001年)、『ポスト資本主義~科学・人間・社会の未来』(2015年)等を読んできたが、前者で書かれている「輪をなす時間/重層的時間モデル」(生は生で完結。“現在が永遠”)という死生観、後者における、資本主義が行き詰った今、我々が目指すべきは、過剰の抑制、再配分の強化・再編、及びコミュニティ経済の展開に基づく「定常型社会/持続可能な福祉社会」であるという主張、いずれにも強く共感したことから、著者がそれら一連の著作の到達点と位置付ける本書も手に取った。
    本書では、まず、今日において、“現代版「不老不死」の夢”の議論が活発になっていること(脳の情報すべてを機械ないしインターネット上にアップロードして永遠の意識を実現するという「意識の永続化」と、老化を止めるという「身体の永続化」)、及び、新型コロナ・パンデミックや極端な気候変動のような、人間の行う経済活動の規模が自然環境や地球の許容度超えたために生じたと考えられる現象が増えていることを挙げ、前者は「生(個人の人生)の有限性」、後者は「地球環境や生態系の有限性」、即ち、いずれも「有限性」というテーマが、我々人類に突き付けられているのだという。

    著者の考え方のフレームワーク・概要は以下である。
    ◆人類は誕生以来、狩猟採集社会前期までの拡大・成長の後、約5万年前に成熟・定常化(定常化①)へ移行するが、その時に「心のビッグバン」(自然新興)が起こった。また、農耕社会への移行に伴い再び拡大・成長するが、BC5世紀頃に成熟・定常化(定常化➁)へ移行し、その時に「枢軸時代/精神革命」(仏教、キリスト教などの普遍思想・宗教の誕生/)が起こった。「心のビッグバン」と「枢軸時代/精神革命」は、「物質的生産の量的拡大から精神的・文化的発展へ」という内容において共通していた。そして、約300~400年前に産業化(工業化)社会に移行したことに伴い、再度拡大・成長してきたが、その限界に達した現在、我々は第3の定常化(定常化③)の入り口にいるのではないか。そして、そこで生成される新しい思想・価値原理とは「地球倫理」と呼べるような世界観ではないか。
    ◆「無の人類史」という観点から見ると、人類誕生以降「有と無の未分化」が続いた後、定常化①に「無の自立」、その後の拡大期に「無の「異世界」化」、定常化②に「無の概念化・抽象化」、そして直近までの産業化(工業化)による拡大期に「無の排除」が起こった。そして、定常化③においては「有と無の再融合」が行われる(べきな)のではないか。
    ◆そして、上記の1点目が「地球環境や生態系の有限性」を、2点目が「生(個人の人生)の有限性」を、それぞれ、ポジティブな形で乗り越えていくための考え方である。

    読み終えてみると、死生観をめぐる哲学的・理念的な議論と、地球環境の有限性、定常型社会、人類史といった社会的な次元の議論とが混じり合った幅広い内容となっているが、著者の他の著作同様、ロジカルかつ丁寧な論理展開により、わかりやすく、かつ納得性の高いものとなっている。
    著者の「我々(個人および社会)はどこから来て、どこへ向かうのか」についての思索の到達点を示す力作といえると思う。
    (2021年6月了)

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    2021年06月09日
  • ポスト資本主義 科学・人間・社会の未来

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    →Xマインド:環境倫理、21レッスンズ
    →keynote

    ◯過剰による貧困(楽園のパラドックス):生産性上昇による失業ー増
    ◯時間再配分
    ◯時間政策inJapan:祝日増加←日本の空気
    ◯市場経済と「時間」
    ◯長期視座=民俗学×近代科学
    ◯消費〈物質→エネルギー→情報→時間〉
    ◯未来の収奪・過去の収奪

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    2020年08月13日
  • 創造的福祉社会 ――「成長」後の社会構想と人間・地域・価値

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    変化は時間軸から、空間軸へ。
    第三の定常化で、環境効率の時代へ。
    人間の本質としてのケアコミュニティへ。

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    2020年04月03日
  • ポスト資本主義 科学・人間・社会の未来

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    人間の長年にわたる営みを資本主義、科学、宗教、などなど、色んな角度で分析しながら、人間社会が目指す望ましい姿を提案している。
    序章 人類史における拡大・成長と定常化
       —ポスト資本主義をめぐる座標軸
    第1部 資本主義の進化
     第1章 資本主義の意味
     第2章 科学と資本主義
     第3章 電脳資本主義と超(スーパー)資本主義
         vsポスト資本主義

    第Ⅱ部 科学・情報・生命
     第4章 社会的関係性
     第5章 自然の内発性
    第Ⅲ部 緑の福祉国家/持続可能な福祉社会
     第6章 資本主義の現在
     第7章 資本主義の社会化またはソーシャルな
         資本主義
     第8章 コミュニティ経済
    終章 地球倫理の可能性
       —ポスト資本主義における科学と価値
    人類の歴史、採集狩猟社会から農耕社会、そして産業革命以来の高度情報化、人工頭脳・・・
    瞬時に情報が地球を駆け巡る時代だからこそ、人間本来の顔と顔の見えるコミュニティの原点に回帰する。
    そこから、ガラガラポンでどういう価値観・思想を打ち立てれるのか、今後の人類に課せられたすごい課題です。

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    2017年01月03日
  • コミュニティを問いなおす ――つながり・都市・日本社会の未来

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    経済の成熟化により、富の源泉がフローからストックにシフトしている。ストックからの分配を行うこと。
    人生前半の社会保障を行うことの2点が今後の社会保障のポイントである。
    といった箇所が最も共感できた。
    もう一度読み直したい。

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    2017年01月03日
  • ポスト資本主義 科学・人間・社会の未来

    購入済み

    読むべき本

    ポスト資本主義、あるいは未来学の中で文明論、人類学、経済学といった幅広い知見を横断的且つ構造構成論として、実に分かりやすく分析されている。本テーマに関心があるならば読んで損はない。

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    2016年01月28日
  • コミュニティを問いなおす ――つながり・都市・日本社会の未来

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    コミュニティの機能が失われた現代社会で、コミュニティの再生のために、コミュニティを問いなおす。しかし、それは、従来のコミュニティの再構築ではなく、新たな関係性、価値観にもとづいた、新たな機能を持ったものになるだろう。
    本書の中で、著者はコミュニティの定義について、「人間が、それに対して何らかの帰属意識を持ち、かつその構成メンバーの間に一定の連帯ないし相互扶助(支え合い)の意識が働いているような集団」としている。その、「人間が」尊厳を取り戻し、社会が再び機能する場所として、「公」(政府)でもなく、「私」(市場)でもなく、「共」の場である「コミュニティ」に焦点を当てている。
    著者が言うように、現代は、人々の価値観を含めて社会システムが大きく転換しないといけない時期に来ていると思う。そして、「共」の場で変化のリーダーシップをとっていける存在としては、事業体をもつ協同組合であったり、実績を積んだNPOなどであり、そのはたさなければならない責任は大きいと感じた。

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    2015年10月12日
  • 定常型社会 新しい「豊かさ」の構想

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    今年、パラダイムの転換を予感させる、「ポスト資本主義」という本を出した著者の、2001年の著作。同じ岩波新書から出ている。
    十数年前の本作でも、成長一辺倒で突き進んできた「資本主義」が、人口動態からの需要の限界や、地球環境の限界から、成長が頭打ちしており、今後「定常化」せざるを得ないという主張がなされ、最近作と同じものであった。以前より、分かる人には分かっているものであり、現実や社会の大勢の感覚が、ようやく追い付いてきたのだと思う。
    最近作では、拡大・成長と、成熟・定常を繰り返す歴史のサイクルを受けて、この次にくるのが、定常ではなく、技術的特異点(シンギュラリティ)が来るといった議論も紹介している。いわゆる、ポスト・ヒューマン的な断絶が来る想定で、著者は否定しているのだが、さすがにこちらにはまだその手の議論はなかった。
    最近作になかった点で、参考になった点としては、「機会の平等と潜在的自由」の議論があった。
    公平にするということは、一方で自由の侵害であるとし、公平や平等と自由を対立するものとする考えがある。しかし、機会の平等が保証されていなければ、それは個人の(潜在的な)自由の浸食を意味し、実は、自由と平等は重なり合う概念であると指摘している。こうした認識に基づいて、社会保障制度の見直しなどが必要であると指摘していた。
    今後も、もちろん科学・技術的な発展もあるだろうし、当然、そうしたものから得られる豊かさも期待できる。しかし、現代が向き合っているのは、成長か定常かといったレベルを超えて、社会制度を成り立たせるわたしたちの価値観や認識の変革であると感じた。

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    2015年10月01日
  • ポスト資本主義 科学・人間・社会の未来

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    昨年は、水野和夫の「資本主義の終焉と歴史の危機」や、ハーマン・デイリーの「定常経済は可能だ!」などで、機能不全に陥った資本主義の現在を学んだが、今回読んだ、「ポスト資本主義社会」は、これらの現実を踏まえつつ、資本主義を支えてきた思想の意味の分析と、それらの反省に立って、次なる社会の在り方を、既にヨーロッパで実現している事例も紹介しつつ、具体的なイメージを喚起させるといった意味で、非常にスリリングで、ユニークな1冊であった。
    歴史的に見て、自然という資源を利用・搾取する、技術革命的なブレーク・スルーと、その方法での限界を迎えての「定常状態」は交互に発生しており、現在もそうした飽和、成熟、定常状態に入ってきているのだという。
    これを克服するのは、さらなる「成長戦略」なのかといえば、利用・搾取する資源の状況を考えると、必ずしもそうではなく、やはりいかに「持続可能」な社会やそれを支えるシステムを構築するかが重要である。成長神話は、資本主義の呪縛であり、著者はブローデルを引用し、資本主義と市場経済を区別しつつ、資本主義の本質として、「拡大・成長」を志向するシステムであり、資本としての貨幣の流通が自己目的的で、グローバル経済が地球を埋め尽くした現在、利用・搾取するパイの総体自体が頭打ちした中で、社会の総体が豊かになるような、明るい未来がないことを示唆している。
    ポスト資本主義社会を乗り越えるにあたって、成長がない定常化した経済・社会=フローが少なく、蓄積したストックがものをいう社会で、いかに富の分配を行い、スタート時点での平等を確保するかということと、持続可能性のために、いかにエコで、自然共生的な社会・経済システムを確立するか、といったことが課題とされる。
    日本は、アメリカと並んで、経済成長信仰の著しい国であるが、ヨーロッパでは、環境や福祉をベースにした、ローカル経済を確立しつつあるとのこと。これには、それこそブータンではないが、なにを「豊かさ」を図る指標にするか、といった意識改革も必要となってくるので、一朝一夕にはいかないが、真剣な検討が必要なところであろうと思われる。
    最終章は、「地球倫理の可能性」について触れられているが、いわゆる過去の定常状態を受けて生まれたとされる「普遍宗教」に対して、それらが「普遍」を標榜するがゆえに対立することを受けて、それらを超える思想や価値観の形成を提起している。昨今の、とりわけ日本人には理解しがたい、宗教に端を発する争いが絶えないことも踏まえて、社会の在り方とともに、あらたな世界観や価値の確立が必要な時代に差し掛かっていると感じた。

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    2015年09月24日
  • ポスト資本主義 科学・人間・社会の未来

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    驚いた。
    広範な思考。これまで見聞き、学んだことがつながった気がする。
    「なつかしい未来」としてのポスト資本主義。

    要再読。

    ・定常期をむしろ文化的創造期としてとらえる

    ・無限に拡大・成長する資本主義
    ≠市場経済(開かれた交換)

    ・人間と自然、生命と非生命の理解の深化

    ・ストック経済の比重の拡大

    ・「時間環境政策」という概念
    ・労働生産性から資源生産性
    ・コミュニティー経済と福祉
    ・鎮守の杜、学校、集える場所と自然エネルギー
    ・歩ける中心市街地

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    2015年08月23日
  • ポスト資本主義 科学・人間・社会の未来

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    ネタバレ

    資本主義の限界と今後への提案が書かれた本。
    非常にわかりやすく鋭い指摘が多く、話題のピケティ氏の議論にも通じるところがあると思います。

    資本主義とはそもそも何なのか、ということの解説がとても面白かったです。そのうえで、市場主義と資本主義とは最終的には矛盾するという解説がとても新鮮でした。

    今後を考えるうえで、人間が生きている地球や環境という生に基礎を置いて経済をとらえ、国家やコミュニティや国際経済を論じています。
    最終的には、経済を地域に着地させ、定常型社会つまり持続可能な社会を実現させるべきという意見になっています。

    このまま資本主義を突き詰めると21世紀はどうなっていくのか不安が募ります。そんな中で、明るい未来のための選択肢として、定常型社会というのは最も優れた姿だと思います。資本主義って人間の欲望がどんどん加速させていくものなので、実際にそれを実現させることは、非常に困難であると思いますが・・・

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    2015年07月18日
  • 定常型社会 新しい「豊かさ」の構想

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    問題意識を持つ大切さを思い出させてくれた書。

    このまま「成長」信仰でいいのか?より根源的な豊かさがあるのではないか?理想論でなく、時代の趨勢として、そのような問いに答えていく針路が見えた。

    ・介護に加えて、相続の社会化。
    ・障害者福祉も、事後的な保障ではなく、機会の平等のための支援策と考える。
    ・人件費を高くし、エネルギー費用を低く抑えるため、自然資源を使いすぎ、人間の労働力を十分使わないのが、現在の税制や社会保険料。
    ・地域が再び前面に出ている。1.高齢化=生産人口の減少:高齢者と子どもは土着性が高い。2.雇用の流動化と形態の変化。3.情報化
    ・エコマネー=地域通貨。交換・決済機能は持つが金融=信用創造機能は持たない。
    ・21世紀後半に向けて、世界は高齢化が高度に進み、人口や資源消費も均衡化するような、ある定常点に向かいつつあるし、そうでなければ持続可能ではない。
    ・経済成長はナショナリズムと関連。
    ・1.共同体からの離陸。2.土地などの自然的制約からの離陸。3.物質からの離陸=情報消費 =>拡大・成長の歴史(200~300年)
    ・生物として生きていくのに必要な量の40倍ものエネルギーを人間は消費。かつてより40倍も時間が早い。
    ・ケアという営みにおいて本質的な意味を持つものは「時間」という要素。遊び、自己実現も。
    ・成長が目標であり限り、都市に求心力が働き、地方分権は進まない。

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    2015年01月15日
  • 定常型社会 新しい「豊かさ」の構想

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    世の中のベクトルが大きく変わる、そんな節目にあることを確信させてくれた本です。私の「豊かさ」の感性の原点がここにあります。

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    2013年09月28日
  • コミュニティを問いなおす ――つながり・都市・日本社会の未来

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    これは新書のレベルじゃない。
    人生を懸けないと作れない大著だ。

    参考文献100冊。
    学問分野は経済学、社会学、心理学、人類学、宗教学、歴史学、哲学、倫理学をはじめ、科学論、独我論、医学、生物学、疫学、生気論、社会システム論、都市論、公共論、思想論、政策論、国家論、格差論、環境論、文化論、社会保障論、税制論、情報論、その他どこに分類して良いか分からない数々の体系から引用された知など、多岐に渡るというか、もはや学問分野の分類などという概念がアホらしくなるほどの広い視野を全て「コミュニティ」という一点を語るために集約して活用し尽くすという、恐ろしい本である。

    そして、至る所に散見される「」や()や「或いは」「と呼ばれる」のような断定を留保し思考を促す表現に、読者に対する真摯さを感じる。
    世の中にこのような智者が存在するという衝撃を覚悟できる者だけが、この本を手に取るべきだと思う。

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    2012年10月14日
  • 創造的福祉社会 ――「成長」後の社会構想と人間・地域・価値

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    最初、資本主義社会が限界を迎えた先の社会の在り方について主に論じた本かと思ったら、実はそれは広井先生も明確な結論を持っているわけではなく、むしろ大部分は資本主義社会以前の過去の定常型社会について論じられていた。

    資本主義を相対的に捉えようとするだけでなく、「人類」が類人猿から分岐した時からの「社会」の在り方について、かつてない広さの視野をもって論じている。
    途中、生物人類学や心理学の知見を取り入れた部分もあり、広井先生の知識の広さを感じさせる。

    一章は資本主義の歴史、二章は街づくり論などについて勉強になった。
    そして第三章が、視野が広い上にかつて聞いたことのない規模の話だったため、非常に興味深かった。

    内容はちょっと難しいけど、語り口は非常に分かりやすいのでおすすめ。

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    2011年11月16日
  • 創造的福祉社会 ――「成長」後の社会構想と人間・地域・価値

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    これからの時代を生き抜いていく上で、このタイミングで本書に出会えたことは大きい。現在の置かれている状況、これからの社会のあり方について、筆者の世界がわかりやすく述べられている。それに納得して共感できる。我々は大変な時代を生きているのだ。次の時代の始まりに必読の一冊。

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    2011年08月16日
  • コミュニティを問いなおす ――つながり・都市・日本社会の未来

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    内容の鮮度が高く、密度が濃くて、読後は新書にもかかわらず、「お腹いっぱい」の感がある。それぐらい、本書を「コミュニティ論」の入り口として、また新しい研究への出口として、活用できる良書である。

    人は一人では生きられない。コミュニティには功罪があるが、しかし、そこを無視しては、何事も解決の糸口はつかめない。

    ・日本は先進諸国の中で、社会的な孤立度が一番高い国。
    ・「市民」citizenshipはある種の資格。
    ・コミュニティづくりに於ける都市部と小規模町村では課題が違う。→福祉地理学の必要性。
    ・コミュニティは共同体であると同時に、外部に開かれた窓の側面もある。
    ・公-共-私のバランスの中で、共の部分が肝になってくる。
    ・経済成長による解決では立ちゆかない問題が増えており、一方、空間的な解決が求められる。
    ・社会住宅の割合は日本は最低レベル。6.7%。
    ・フローの格差(ジニ係数0.308)より、ストックの格差(貯蓄0.556,住宅0.573)の問題が深刻化している。→人生前半の社会保障の重要性(特に教育)
    ・人間の消費は、物質→エネルギー→情報→時間(スピリチュアリティを含む)と推移している。
    ・15~44歳は精神疾患、アルコール依存、交通事故など、精神的・社会的な病気負担の割合が高い。→人生前半の医療の視点。
    ・脳科学の分野でも、社会行動、コミュニケーションなど個体を超えたレベルでの研究は端緒についたばかり。
    ・ソーシャルキャピタルと健康・医療の関わりには大きな相関がある。
    ・社会的なつながりが人間にとって重要という当たり前のことが、科学で論証されている。

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    2011年05月12日