広井良典のレビュー一覧
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人間の長年にわたる営みを資本主義、科学、宗教、などなど、色んな角度で分析しながら、人間社会が目指す望ましい姿を提案している。
序章 人類史における拡大・成長と定常化
—ポスト資本主義をめぐる座標軸
第1部 資本主義の進化
第1章 資本主義の意味
第2章 科学と資本主義
第3章 電脳資本主義と超(スーパー)資本主義
vsポスト資本主義
第Ⅱ部 科学・情報・生命
第4章 社会的関係性
第5章 自然の内発性
第Ⅲ部 緑の福祉国家/持続可能な福祉社会
第6章 資本主義の現在
第7章 資本主義の社会化またはソーシャルな
資本主義
第8章 コミュニティ経済
終章 -
購入済み
読むべき本
ポスト資本主義、あるいは未来学の中で文明論、人類学、経済学といった幅広い知見を横断的且つ構造構成論として、実に分かりやすく分析されている。本テーマに関心があるならば読んで損はない。
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コミュニティの機能が失われた現代社会で、コミュニティの再生のために、コミュニティを問いなおす。しかし、それは、従来のコミュニティの再構築ではなく、新たな関係性、価値観にもとづいた、新たな機能を持ったものになるだろう。
本書の中で、著者はコミュニティの定義について、「人間が、それに対して何らかの帰属意識を持ち、かつその構成メンバーの間に一定の連帯ないし相互扶助(支え合い)の意識が働いているような集団」としている。その、「人間が」尊厳を取り戻し、社会が再び機能する場所として、「公」(政府)でもなく、「私」(市場)でもなく、「共」の場である「コミュニティ」に焦点を当てている。
著者が言うように、現代 -
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今年、パラダイムの転換を予感させる、「ポスト資本主義」という本を出した著者の、2001年の著作。同じ岩波新書から出ている。
十数年前の本作でも、成長一辺倒で突き進んできた「資本主義」が、人口動態からの需要の限界や、地球環境の限界から、成長が頭打ちしており、今後「定常化」せざるを得ないという主張がなされ、最近作と同じものであった。以前より、分かる人には分かっているものであり、現実や社会の大勢の感覚が、ようやく追い付いてきたのだと思う。
最近作では、拡大・成長と、成熟・定常を繰り返す歴史のサイクルを受けて、この次にくるのが、定常ではなく、技術的特異点(シンギュラリティ)が来るといった議論も紹介して -
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昨年は、水野和夫の「資本主義の終焉と歴史の危機」や、ハーマン・デイリーの「定常経済は可能だ!」などで、機能不全に陥った資本主義の現在を学んだが、今回読んだ、「ポスト資本主義社会」は、これらの現実を踏まえつつ、資本主義を支えてきた思想の意味の分析と、それらの反省に立って、次なる社会の在り方を、既にヨーロッパで実現している事例も紹介しつつ、具体的なイメージを喚起させるといった意味で、非常にスリリングで、ユニークな1冊であった。
歴史的に見て、自然という資源を利用・搾取する、技術革命的なブレーク・スルーと、その方法での限界を迎えての「定常状態」は交互に発生しており、現在もそうした飽和、成熟、定常状態 -
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ネタバレ資本主義の限界と今後への提案が書かれた本。
非常にわかりやすく鋭い指摘が多く、話題のピケティ氏の議論にも通じるところがあると思います。
資本主義とはそもそも何なのか、ということの解説がとても面白かったです。そのうえで、市場主義と資本主義とは最終的には矛盾するという解説がとても新鮮でした。
今後を考えるうえで、人間が生きている地球や環境という生に基礎を置いて経済をとらえ、国家やコミュニティや国際経済を論じています。
最終的には、経済を地域に着地させ、定常型社会つまり持続可能な社会を実現させるべきという意見になっています。
このまま資本主義を突き詰めると21世紀はどうなっていくのか不安が募り -
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問題意識を持つ大切さを思い出させてくれた書。
このまま「成長」信仰でいいのか?より根源的な豊かさがあるのではないか?理想論でなく、時代の趨勢として、そのような問いに答えていく針路が見えた。
・介護に加えて、相続の社会化。
・障害者福祉も、事後的な保障ではなく、機会の平等のための支援策と考える。
・人件費を高くし、エネルギー費用を低く抑えるため、自然資源を使いすぎ、人間の労働力を十分使わないのが、現在の税制や社会保険料。
・地域が再び前面に出ている。1.高齢化=生産人口の減少:高齢者と子どもは土着性が高い。2.雇用の流動化と形態の変化。3.情報化
・エコマネー=地域通貨。交換・決済機能は持つ -
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これは新書のレベルじゃない。
人生を懸けないと作れない大著だ。
参考文献100冊。
学問分野は経済学、社会学、心理学、人類学、宗教学、歴史学、哲学、倫理学をはじめ、科学論、独我論、医学、生物学、疫学、生気論、社会システム論、都市論、公共論、思想論、政策論、国家論、格差論、環境論、文化論、社会保障論、税制論、情報論、その他どこに分類して良いか分からない数々の体系から引用された知など、多岐に渡るというか、もはや学問分野の分類などという概念がアホらしくなるほどの広い視野を全て「コミュニティ」という一点を語るために集約して活用し尽くすという、恐ろしい本である。
そして、至る所に散見される「」や() -
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最初、資本主義社会が限界を迎えた先の社会の在り方について主に論じた本かと思ったら、実はそれは広井先生も明確な結論を持っているわけではなく、むしろ大部分は資本主義社会以前の過去の定常型社会について論じられていた。
資本主義を相対的に捉えようとするだけでなく、「人類」が類人猿から分岐した時からの「社会」の在り方について、かつてない広さの視野をもって論じている。
途中、生物人類学や心理学の知見を取り入れた部分もあり、広井先生の知識の広さを感じさせる。
一章は資本主義の歴史、二章は街づくり論などについて勉強になった。
そして第三章が、視野が広い上にかつて聞いたことのない規模の話だったため、非常に興 -
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内容の鮮度が高く、密度が濃くて、読後は新書にもかかわらず、「お腹いっぱい」の感がある。それぐらい、本書を「コミュニティ論」の入り口として、また新しい研究への出口として、活用できる良書である。
人は一人では生きられない。コミュニティには功罪があるが、しかし、そこを無視しては、何事も解決の糸口はつかめない。
・日本は先進諸国の中で、社会的な孤立度が一番高い国。
・「市民」citizenshipはある種の資格。
・コミュニティづくりに於ける都市部と小規模町村では課題が違う。→福祉地理学の必要性。
・コミュニティは共同体であると同時に、外部に開かれた窓の側面もある。
・公-共-私のバラ -
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2009年大佛次郎論壇賞受賞作。
高度成長期、我が国は経済成長をいわば価値原理にしてそれに向かい邁進してきた。しかし現代において経済拡大は飽和状態に達し、次の価値を模索する時代に突入している。
同様に、コミュニティという人間の集まりにおいても新しい局面が訪れている。高度成長期には農村から都市への大移動がおこった。それまでコミュニティは主に「家庭」と「会社」という、閉鎖的性格を持つものが担っていた。しかし、高度成長が終わり新しい価値原理を模索しなければならない中で、ベクトルは新しいコミュニティ、つまり「農村型コミュニティ」から「都市型コミュニティ」へと向かっている(ここで「農村型コミュニティ -
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日本におけるコミュニティのあり方、というのは2010年現在、ある意味でとてもホットな話題である。
ちょっと厚めの新書一冊によくこれだけ色々なものを詰め込んだと思える浩瀚な論であり、参考になる視点が様々にあった。
特に、筆者の言う『福祉地理学』は今後重要さを増す思考法であろう。どのような地域においても一律・普遍的な福祉を考えるのではなく、地域の実態に合わせた施策を。
その実現のために官・民のみならず「公共」の役割を拡大すること。(日本社会においては「公」の位置づけが曖昧であるとは、他の分野、他の論者も多く指摘するところではある)
また、街づくりにおいてアメリカをモデルとしたために、自動車中 -
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「個人」が「共同体」から、次いで「自然」から離陸していく構図を社会保障(福祉)、環境の面から鮮やかに描き出したこの書の特徴は、当然並立するはずの経済/市場という概念(「私利の追求」等含む)を真っ向からとらえ、しっかりと組み込んだところにあるように思う(個人的に第4章冒頭の簡単な経済史概観は、経済関連を学びたい者としてとても嬉しかった)。
本書の構成の内、政策提言など現実的な打開策もその主要な柱となってはいるが、その根底にはこれからの社会が「どうあるべきか」というより「どうなっていくのか」という分析がある(その境界は非常に曖昧で、また連続的なものではあるが)。この分析が非常な説得力を持って、政 -
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人口減少社会で持続可能性を高めるためには価値観を抜本的に変える必要がある。特に死生観の更新が必要だろう。高福祉を前提として、福祉の対象と量を検討していくべきである。
正しい意味での個人主義→コミュニティ拡充による相互扶助→コミュニティ同士の連携→ボトムアップのグローバル化
という著者の主張。
①日本の借金の返済
②若い世代への支援強化
③多極集中、コミュニティ空間(歩いて楽しいまちづくり)
④都市と農村間の再分配
⑤経営理念を持続可能性にシフト
⑥ポスト情報化(生命重視)
⑦グローバル定常型社会
⑧環境・福祉・経済のバランス
⑨福祉思想の再構築
⑩成長期→定常期の価値観の転換