谷村志穂のレビュー一覧
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函館から漁師町の南茅部に二十歳で嫁いだ薫を中心とした、女三代の大河小説的物語。
ロシアの血を引き、美しすぎるゆえ孤立してきた薫。邦一という漁師の男と出逢い結婚して子どもももうけるが、数年後、薫の運命の歯車が狂い出す。
上巻は薫、下巻は薫の二人の娘が中心となった小説。
解説で小池真理子さんが「色香に満ちた作品である」「ここまで色っぽい小説にはめったにお目にかかれない」と書いているのだけど、その意見にまず頷いた。
性的なシーンもけっこう多めの小説ではあると思うけれど、色香が立ち上ってくるように感じるのはむしろ、薫や二人の娘の清廉さが描かれているシーンだったりする。
無機的なまでに美しい女性の描写 -
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物語の舞台になっている函館の街に行ってみたくなった。
函館山や市電、消え去ろうとしている洋館などは勿論なのだが、佐藤泰志の作品とも共通するどこか他の都市とは違う時間の流れ方、田舎の長閑さとも微妙に異なる日本の近現代の歴史と連なりながらもゆっくりと時を咀嚼して噛みしめてきたような雰囲気がある。半世紀前の母親の過去と娘の現在が交錯して織りなす物語の舞台として函館の街はとても似合っている気がする。
書店でこの文庫本を見かけたとき、正直いって手に取るのを少し躊躇った。今までこの書き手の作品は2冊読んでいて、最初に読んだ『黒髪』が「渾身の」といってよい大作だったのに、扇情的なといったら -
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谷村志穂さんの本自体初めて読みましたが、主人公の女の子達が何となく、山田詠美さんや、よしもとばななさんの書く女の子に似ている感じがしました(主人公の雰囲気や心理描写です。内容や、言葉の使い方、文学的要素は似てないと思います)。
あまりにも短い短編なので、文学的な思考をめぐらせて読むような本ではないです。気楽に短時間で一編読むことができます。高校生の心情や出来事をとらえた、甘く切ない本です。恋愛系の話が多いです。私も高校生ですが、こういう恋愛してみたいと思い、キュンとしたり切なくなってしまったり一喜一憂してしまいました。今が高校生だからこそ、共感できる部分も多いな、と思います。
案外こういう -
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最初は映画化されることを知っても、あまり興味がなかったのです。で
も、今ごろ、この本を読んだ人のレビューを見て、読みたくなりました。
外で読むものではありません。
何度も涙がこみあげてきて、その都度、そっと息をついて気持ちを落ち着かせながら読みました。フィクションなのに、途中から何度もノンフィクションなのではという錯覚に陥ったのでした。
夫にも友人にも誰にも言わないという選択をした滴。
不安も絶望も自分の中に秘めて、誰にも何も話せない。
いつの間にか主語が滴じゃなくなっていることもしばしば。
いつかは誰もが迎えるものだけれど、日常でそれを意識し続けている人はきっと少ない。
そんな中で、自分 -
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ロシア人の間の子と母タミとの間に生まれた 海猫のような目を持つ
美しい女、薫が南茅部の漁師、邦一のもとへ嫁ぐところから物語は始まる。登場人物が何人も出てくるが、その一人ひとりが細かく、しっかりと描かれている。南茅部の寒い寒い漁村は行ったことのない私でも想像できるくらいの素晴らしい描写。
映画を先に観たので「不倫」とか「禁断の愛」とか、わりと俗な感じの小説だと思っていたら全然違っていて、初めての作家だったが、言葉の遣い方もすごく好きだった。
余談だが、邦一という男は、いかにも強引な感じがして、佐藤浩一というキャスティングはピッタリだと思った。 -
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下巻は薫が二人目の子(邦一の子供として生んだが、実は広次の子)を出産し、美哉となずけたところから始まった。
出産後、夫婦の仲はますますぎくしゃくし、薫は邦一の愛を恐れるようになり、離婚も考える。だが邦一の執着は益々ひどくなり、ついには柱にロープでしばられ監禁されるしまつ。
それをしった広次は薫と二人の子(美輝と美哉)を連れて逃げようとするが、邦一につかまり結果、命を落としてしまう。
後半は美輝と美哉の人生に焦点があたる。
彼女らも母親に負けず劣らずの波乱万丈な人生を歩く。
最後はタミを中心にした家族の絆。
親子3代(暁生を入れたら4代)の壮絶な生き様と函館の海と教会など自然描写がまるで、映像 -
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広次と薫の恋は、壮絶な結末を迎えた。それから十八年後、薫の愛したふたりの娘は、美しい姉妹へと成長していた。美輝は北海道大学に入学し、正義感の強い修介と出会う。函館で祖母と暮す美哉は、愛してはいけない男への片想いに苦しむ。母は許されぬ恋にすべてを懸けた。翳を胸に宿して成長した娘たちもまた、運命の男を探し求めるのだった。女三代の愛を描く大河小説、完結篇。島清恋愛文学賞受賞作。
なんでしょうね。
科学的にはそのことは証明できない・・・ってことになるのかもしれないところがあるような気がします。
ただ、証明できないからいいんじゃない??
それが人間らしいし。みたいにも思い、科学ってすごい!と考え