あらすじ
女は、冬の峠を越えて嫁いできた。華やかな函館から、昆布漁を営む南茅部へ。白雪のような美しさゆえ、周囲から孤立して生きてきた、薫。夫の邦一に身も心も包まれ、彼女は漁村に馴染んでゆく。だが、移ろう時の中で、荒ぶる夫とは対照的な義弟広次の、まっすぐな気持に惹かれてゆくのだった――。風雪に逆らうかのように、人びとは恋の炎にその身を焦がす。島清恋愛文学賞受賞作。
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Posted by ブクログ
北海道ならではの文学があると思う。そしてそれは女性作家によって紡がれる系譜のような気がする。たとえば、三浦綾子、桜木紫乃といった作家たち。そして谷村志穂もその系譜に連なる人物ではないだろうか。北国を舞台にしたどこか現実と隔絶したように(関東生まれ関東育ちには)感じられる物語。上下巻からなる『海猫』もそうした魅力を十分に含んだ長編小説。
物語は漁師町に嫁入りする薫から始まる。ロシア人を父にもつ美貌の薫はそれを疎ましく思いながら生きてきた控えめな人。でも心の芯に熱いものをもっていて義弟と心から愛し合う仲になり、物語の中盤で二人は心中するかのように同時に命を投げる。後半は薫が残した二人の娘、美輝と美哉を中心に描かれる。
薫、美輝、美哉のいずれもが主人公といえるだろうか。三者三様の性格と生き方は主人公にふさわしい。一方で、その描かれ方にひかれたのは、薫の母・タミと薫の弟である孝志の妻・幸子、そして薫の夫だった邦一と後妻の啓子の4人。
タミは苦境に陥りそうでもくじけないそのバイタリティある生き方がすてき。幸子は自分の薄幸を承知しているかのようにしょうもない孝志に添い遂げ、終盤はそう悪くない生き方をつかんだところにひかれる。邦一はその不器用な生き方が、薫に対してはつらくあたることになったけど悪者には思えない。啓子は、疎まれ者になった邦一に寄り沿う損な人生を自ら選ぶところにひかれる。
多くの登場人物がいるけど、誰もが何かを抱えながら一生懸命ひたむきに生きている。悪い関係や素直になれなかったりもするけれどそういうふうにしか生きられない人間の姿が丁寧に綴られている。いろいろあっても、時がたつうち落ち着きどころが見つかるような。最後の命がつながれていくようなシーンも静かで熱く、心に響くいい終わり方だった。
Posted by ブクログ
何度読んでも、素晴らしい。
薫のような人生が理想。
反対にタミも、これまた素晴らしい人生。
長い小説だけど、読みごたえあって、壮大な風景が浮かぶ。おすすめです。
Posted by ブクログ
ロシア人とハーフの女性が南茅部の街に嫁いでという普通の滑り出しで始まった物語。函館の風景や昆布漁の描写で心和んでいたのも束の間、とんでもない展開が繰り広げられていく。
添い遂げることの難しさであったり、心模様に蓋をして生きていくことの辛さであったり、葛藤を抱えている人が多すぎ。複雑に絡み合った糸がどうなっていくのか
下巻を読むのが怖い気すらしてくる。
これこそ、怖いもの見たさなんだろうね。
Posted by ブクログ
ロシア人の間の子と母タミとの間に生まれた 海猫のような目を持つ
美しい女、薫が南茅部の漁師、邦一のもとへ嫁ぐところから物語は始まる。登場人物が何人も出てくるが、その一人ひとりが細かく、しっかりと描かれている。南茅部の寒い寒い漁村は行ったことのない私でも想像できるくらいの素晴らしい描写。
映画を先に観たので「不倫」とか「禁断の愛」とか、わりと俗な感じの小説だと思っていたら全然違っていて、初めての作家だったが、言葉の遣い方もすごく好きだった。
余談だが、邦一という男は、いかにも強引な感じがして、佐藤浩一というキャスティングはピッタリだと思った。
Posted by ブクログ
女は、冬の峠を越えて嫁いできた。華やかな函館から、昆布漁を営む南茅部へ。白雪のような美しさゆえ、周囲から孤立して生きてきた、薫。夫の邦一に身も心も包まれ、彼女は漁村に馴染んでゆく。だが、移ろう時の中で、荒ぶる夫とは対照的な義弟広次の、まっすぐな気持に惹かれてゆくのだった―。風雪に逆らうかのように、人びとは恋の炎にその身を焦がす。島清恋愛文学賞受賞作。
勝手な思い込みですが、北国!
漁師の生活・・・って感覚はすごく感じますね。
寒い、つめたい環境の中の人間の温かさ・・・そんなものも見えるような。。。
下巻に期待!!!
Posted by ブクログ
評価は4.
内容(BOOKデーターベース)
女は、冬の峠を越えて嫁いできた。華やかな函館から、昆布漁を営む南茅部へ。白雪のような美しさゆえ、周囲から孤立して生きてきた、薫。夫の邦一に身も心も包まれ、彼女は漁村に馴染んでゆく。だが、移ろう時の中で、荒ぶる夫とは対照的な義弟広次の、まっすぐな気持に惹かれてゆくのだった―。風雪に逆らうかのように、人びとは恋の炎にその身を焦がす。島清恋愛文学賞受賞作。
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【本の内容】
<上巻>
女は、冬の峠を越えて嫁いできた。
華やかな函館から、昆布漁を営む南茅部へ。
白雪のような美しさゆえ、周囲から孤立して生きてきた、薫。
夫の邦一に身も心も包まれ、彼女は漁村に馴染んでゆく。
だが、移ろう時の中で、荒ぶる夫とは対照的な義弟広次の、まっすぐな気持に惹かれてゆくのだった―。
風雪に逆らうかのように、人びとは恋の炎にその身を焦がす。
島清恋愛文学賞受賞作。
<下巻>
広次と薫の恋は、壮絶な結末を迎えた。
それから十八年後、薫の愛したふたりの娘は、美しい姉妹へと成長していた。
美輝は北海道大学に入学し、正義感の強い修介と出会う。
函館で祖母と暮す美哉は、愛してはいけない男への片想いに苦しむ。
母は許されぬ恋にすべてを懸けた。
翳を胸に宿して成長した娘たちもまた、運命の男を探し求めるのだった。
女三代の愛を描く大河小説、完結篇。
島清恋愛文学賞受賞作。
[ 目次 ]
<上巻>
<下巻>
[ POP ]
港町函館。親子三代の愛憎の物語。
いつまでも、高く響く海猫の鳴き声と青い目が忘れられない。
人を愛することはどういうことなのか。
夫婦の契りを交すこととは。
生命の誕生とは何を意味するのか。
多くを考えさせられた作品だった。
谷村志穂のこれぞ力仕事というか、背負い投げを喰らってズッシリと青い畳に投げつけられた、そんな作品だ。
運命の男女、薫と広次がふたり歩いていて、函館山の山肌から順に、夕陽が海へ向かって石畳の道を美しく照らしていく象徴的なシーンがある。
禁断の恋を貫いたふたり。
父親の違う姉妹。
すべてを見守る、おばあのタミ。
誰にも止められない時という齢。
北海道人の心意気とやさしさ、知恵、哀愁そして人生がランボーの詩のように函館の海に溶けていく。
どうにもならないのが人生の真実だが、わたしの魂は救済された気がした。
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
Posted by ブクログ
函館を舞台とした物語で、漁師に嫁いだ女性の半生を描いたのが上巻。美し過ぎる妻は本当に自分に相応しいのか、歪んだ愛が狂気へと変貌していく様がとても怖い。
Posted by ブクログ
今まで沢山恋愛小説を読んできましたがこんなに天才だと思った人は初めてです。上巻が意外なところまで話が進んだので下巻を読むのが楽しみ。
広次と薫が結ばれることを祈ります。
Posted by ブクログ
大好きな函館が舞台で、海とか教会や鐘を鳴らす描写を読むとすごく行きたくなった。
ただ話はかなりドロドロ・・・薫がメインの前半悲惨すぎる。。
後半の姉妹の話がいい。
ちなみに映画は微妙だった。
Posted by ブクログ
昆布猟師って設定がすき。かつ、昭和の時代背景描写がまたすばらしい。遠洋漁業について知りたいな~とも思った。
下より上がすき。現実味があるよね。
Posted by ブクログ
映画は見てないけど、原作は読みました。
恋に生きた娘、母として生きる母、恋や仕事など、それぞれの道へと進む孫たち。
三代に渡る生き様が描かれております。これまた昼ドラ系のかほりがしました。
ロシアの薔薇のジャムってのが気になります。
Posted by ブクログ
北海道の情景の壮大さと美しさが谷村作品は素晴らしいと思います。勿論、長い長い物語も読み応え十分でした。
流されながら人を愛する気持ちは止めることができない。
初読から約二年が過ぎて、そんな抗い難い感情を少しだけ理解できるようになったことに少し驚きました。
Posted by ブクログ
南茅部の漁村に嫁いだロシア人のハーフの娘は、海猫みたいな目をしていた。不器用で体をぶつけることでしか愛情表現できない兄(夫)と、対照的に繊細な弟。兄との結婚が女性に目覚めるきかっけのようだが、それは皮肉にも義弟との恋愛を貫こうとする姿勢に傾いてしまう。悲恋というには悲しい二人の結末と、そのつけのような娘2人の人生。
Posted by ブクログ
女は、冬の峠を越えて嫁いできた。華やかな函館から、昆布漁を営む南茅部へ。白雪のような美しさゆえ、周囲から孤立して生きてきた、薫。夫の邦一に身も心も包まれ、彼女は漁村に馴染んでゆく。だが、移ろう時の中で、荒ぶる夫とは対照的な義弟広次の、まっすぐな気持に惹かれてゆくのだった―。風雪に逆らうかのように、人びとは恋の炎にその身を焦がす。島清恋愛文学賞受賞作。
Posted by ブクログ
美人というだけで、こんなにも多くの人の心を動かす。
美人って、得もするけど、時に悲くて、孤独なのかな。
母と娘達、2世代にわたっての物語展開が新鮮。
Posted by ブクログ
時代が昭和30年代前半、さらに古い因習が残る地方の物語ということを考慮しても、
誰もが忍耐を強いられ、諦めきってしまう生活を送らなければいけない人物だらけの
この作品、申し訳ないが好きにはなれない。激しい性描写も痛々しいばかりで
健全なエロスとは程遠い。こういう文学も有りだが個人的にはとてもつらい。
それでも下巻は読む予定。読書の途中下車が嫌いなこともあるが、雪国特有の気候、天候の描写が同じ雪国出身である自分に非常にリアリティを感じ共感が持てるから。故郷を感じさせる懐かしさがそこかしこに宿っているからさらに読んでみようと思わせてくれるのかもしれない。
Posted by ブクログ
随分と長い間積読してしまった…思っていた内容と少し違っていて叙情的な箇所はなかなか読みすすむのが遅くなってしまったけれど後半はスピードアップして読めた。下巻は早く読めそうだ。
Posted by ブクログ
日本人の母とロシア人ハーフの父を持つ薫の嫁入りからはじまる。昭和の高度急成長という時代と、函館はあの当時、漁業の町として勢いがあったのだろう。そして嫁入り先の南茅部・漁師町でほぼ親戚関係があるような狭い町。必死に婚家になじもうとする薫とそれを受け入れようとする家族。穏やかな新婚夫婦の物語と読み進めていくうちに歯車が狂いはじめてきて、きな臭さすら感じてくる。なんというか焦ったいようなしょうもないような。でも、目が離せない感じがある。
Posted by ブクログ
伊東美咲で話題になった映画の原作小説。
映画は見ていないうえにまだ上巻しか読んでない。
個人的にこういう内容の小説を読むのは珍しいが、
結構面白い。飽きは来ない。
上巻で振られた数々のネタ(旦那の弟との不倫。弟夫婦の顛末)
がどうやって収められるのか、期待。
Posted by ブクログ
序盤の漁村の人々の純朴な温かさに好感を持ちましたが、妻が夫に怒鳴られるのも殴られるのも当然として受け入れている姿に時代を感じました。
自分はよその女性と関係を持っておきながら、妻・薫が弟と交わった事に激怒する邦一の身勝手さが鼻につきました。
それも薫の人を撥ねつけるような真っ白い美しさに狂わされたというのか……。
Posted by ブクログ
美人は得なのか、そうじゃないのか?
人間綺麗事だけでは生きてはいけない。
いくら好きになってもどうにもならない恋もある。流されているようで母親ゆずりの芯の強さを持っている薫。この先どうなっていくのかを見守りたいと思う。
しかし、一見しっかりしているようで情けない男どもはどうにかならないもんですかね(^=^;
Posted by ブクログ
読んでるときは一気に読めて,面白いと思っていたはずなんだけど,
しばらく経ってからの感想。
薫の部分は後半悲惨すぎ・・・でも面白かった。
姉妹の話になってからが,いまいち。
とくに妹,どんな意味が?
おばあちゃんはよく頑張ったなぁ。
Posted by ブクログ
美女姉妹をめぐる愛の世界in北海道。
薫が人を寄せ付けない美しさがあることはわかったが、結局のところ何が言いたいのかがよくわからなかった。
個人的には広次に頑張ってほしかった。
しかし、この薫役を伊東美咲がやるのは厳しいだろう・・・。
Posted by ブクログ
<内容>
女は、冬の峠を越えて嫁いできた。華やかな函館から、昆布漁を営む南茅部へ。白雪のような美しさゆえ、周囲から孤立して生きてきた、薫。夫の邦一に身も心も包まれ、彼女は漁村に馴染んでゆく。だが、移ろう時の中で、荒ぶる夫とは対照的な義弟広次の、まっすぐな気持に惹かれてゆくのだった―。風雪に逆らうかのように、人びとは恋の炎にその身を焦がす。島清恋愛文学賞受賞作。