佐田千織のレビュー一覧
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才能がある天文学者は、北極の天文台で人生最後の研究をしていた。人間嫌いで、戦争のために天文台から撤収する軍用機が来た時も、1人残る決意をする。その後、再び飛行機は来ず、すべての報道、テレビ、無線が途絶える。
ただし、撤収後に、天文台には1人の女の子がいた。ほとんど喋らず、野生動物のようなその子の世話をするうちに、彼は自身のうちにある愛情に気がつき、未来を切り開くために天文台を出て、少し南の無線基地に行く。
一方、木星探査から戻った宇宙飛行士たちが地球に帰還する。帰還中、地球から一切の連絡が途絶えるも、なんとかISSまで戻る。が、そこに残った地上帰還ソユーズには全員乗れないため、乗れない人間はISSに残ることになる。残っても生存の見込みはないし、地上で何が起きたのかわからないため、地上に行っても生存の見込みは薄い。着地点に迎えに来てくれる仲間もいない。
着地点も北極から遠いので、彼らは出会うことはない。
それでも、読んでいると、彼らに奇跡と幸福を願う気持ちがわく。生き延びてほしい、生き延びたと信じたい。そんな気持ちでいっぱいになる。 -
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SFってやっぱ面白い、と思わせてくれる16編と盛りだくさんの短編集。文庫も物価高騰のあおりを受けてこんなに高くなったか・・・と思いつつ買ったが、元は取れたと思う。
どの作品も味わい深いのだが、意識を持ったAIは物理的につながりさえできれば、ハード(シャーシ)を乗り換えていけるって設定が興味深い。人間が求めてやまない不死不老をAIなら実現できるという夢。
究極は「罪喰い」の世界で、人間はみな仮想空間(天国)に旅立ち、荒廃した地上にはロボットだけが残る。遺していく記憶を選べるってとこが業だ。
一方で、製品が成長したり、メンターがいたり、ロボット同士のいじめがあったりって世界の作品もあって、自意識を持つようになって社会のなかで生きていこうとすると、AIも人間も変わらないのはそうだよなと思う。
生存権をはじめAIの権利が認められる日が来るのだろうか? -
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反転した表紙・背表紙に一瞬、我が目を疑う。あれ……不良品??ワクワクして即座に読む決意をした竹書房の逸品。
裏表紙を読むとどうやらSFらしい。竹書房さんのSFか、どんなんだろう?手にとるとすぐに特殊な組み方をした小説だとわかる。インタビューや手記、会議録や機密記録など、何かの事件を扱ったノンフィクション風に構成されているのだ。
内容としては、ファーストコンタクト+パンデミック+オカルト(UFO&陰謀論)をミステリーを感じさせる構造でミックスした感じ、というところ。古くからあるSFや最近のテクノロジー・オカルト情報などから多様な要素を盛り込んでおり、驚天動地のようなパンチのある展開はないものの、エンタメとして非常に手が込んでいると感じた。やはり、あくまでも架空のノンフィクションとして書かれているのは面白い。時系列がバラバラだが、うまく構成されていて違和感がなかった。謝辞と参考文献のこだわり具合には思わずニヤリとしてしまった。 -
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これはもっと話題になっていいSF…!
背表紙まで鏡文字になっている凝った装丁や、本中本として展開される「ノンフィクション」の作り、各ページみっちみちの注釈…本の技巧的なところにワクワクして買ったのだけど、中身もとても面白かった!
深宇宙から届いた人工的な「パルス」、見えないはずのものが見える人々が同時多発した「上昇」とは何か?その目的は?というSFミステリはもとより、それを巡るアメリカ政府や組織の政治劇、宇宙の中でヒトはどう生きるのかというヒューマンドラマ。
インタビューと会議録の再編集によるドキュメンタリー手法が、事件をめぐるいろいろな面を無理なく展開して、テンポよくぐいぐい読ませる。
ふんわりとしかわからないところに賛否があるかもしれないけれど、他の面白さが圧倒的なので私はOK!
竹書房文庫SFは、装丁が独特で気になっていたのだけど、今回とても良かったのでこれから気にしていきたい。 -
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この手の本、大好き。少しずれるかもしれないが、テッド・チャンの『地獄とは神の不在なり』とか、今この現実に何か1つ価値観をぐるりと変えてしまう出来事があったとして、その様子をドキュメンタリーチックに伝えるSF、モキュメンタリーの類。
なんでしょうね。めちゃくちゃドラマチック、というわけでも実はないのだが、しかし世界に起こる災厄、災害の類いというのは基本的にどれもそうで。自分が生きてきた中でも、あるいはこの2021年現在においても、大規模な災厄というものを経験してきていて、それにより価値観が揺さぶられたりはしてきたわけだが、じゃあその中で誰がヒーローだったのか、誰が悪かったのかみたいなわかりやすいドラマだとか、人類は不可逆的に破滅へと向かい始めたのかというと、実はそんなことはないわけで。大局を見れば、それでも地球は回っているとしか言いようがない。それでも生き残ったものはただただ前へ進む、としか言いようがない。この本の中で起きた異変は当然ながら現実に起きてきた出来事とは較べようにならないほどの大災厄ではあるわけだが、じゃあそれで世界はどうなったんだ、っていうところが、この本のポイントかなぁ、と思う。そういう意味でのリアリティを感じたし、とても楽しめた。 -
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ネタバレモキュメンタリー文体で描かれたSF、第3部。
SNSの実況に通じると看破した解説に、さもありなんと頷く大作だった。文句なしの星5つ。
ただ、解説にて(意図的に書かなかったのか?)書かれなかったことだが、地球で起きた『収容所をめぐる一連の、非科学的極まりない差別』は『遺伝子』だけでなく『宗教、民族』もそこにふくんでいる。
主人公の一人に「わざと」自国の自主独立を主張させたり(少しぐらいそういう事を言わないと、という計略)。
サイコパスのようで実は切れ者の女性キャラに、ボスニア・ヘルツェゴビナの話をさせたり。
作者シルヴァン・ヌーヴェルは間違いなく、SFを語っている。
もちろん、オタク小説にありがちな、そして読者が期待する趣味に走った部分(エヴァの名前の由来とか!)も盛り込んでいる。
それと同時に、私たちを取り巻く世界にはびこる不平等、意図的に愚かであることを選択する愚行を描いている。
SFとしての芯の太さ、オタク向け小ネタ、そして現実の世界に対する作者なりの考察(を、決してお説教にならないように書く力量!)。
この3つが密接に絡みあい、本作は魅力を増している。
唯一お気を付けて頂きたい点:読みはじめると、読み止めるのが難しい。食事や水分補給を忘れずに読むことをオススメする! -
Posted by ブクログ
前作から9年後の世界。すっかり世間に馴染んだテーミス(異星人が過去に地球に残していった巨大ロボット)とそのパイロットたちの前に、テーミスと同じタイプのロボットが突如現れて……っていうお話。
基本的に登場人物の会話か独白でストーリーが進むからテンポが良くてサクッと読めちゃう。
余計な描写がないおかげて、シーンをいろいろ想像できて楽しい。
今作の目玉は何といっても世界各地にワラワラと現れる巨神たち。
無言のまま人類を虐殺しまくるという物凄い展開にビビった。
カーラ(テーミスのパイロットのひとり)をめぐるドロドロの人間関係も読みどころ。
それとアリッサ先生が遺伝学の講義をしてくれるんだけど、自分に素養がないため読んでて頭がグルグルしてしまった