深沢潮のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
本作は、YA向けのような読みやすさと、中身の深さを兼ね備えた良作でした。若い方を中心にどなたにもおすすめしたい一冊です。
深沢潮さんまだ2冊目ですが、日韓関係や在日コリアンなどの重いテーマを、とても丁寧に取り上げて作品に落とし込んでいる印象です。
タイトルの「緑と赤」は、ズバリそれぞれ大韓民国と日本のパスポートの色を示しています。
大学生の知英は、自分が在日韓国人だと親から聞かされていたものの、あまり深く考えずに過ごしてきました。パスポート取得を機に、2つの国を巡る状況やそこに渦巻く憎悪感情を知り、それらに向き合わざるをえない状況になっていきます。
6章構成で、知英をはじめ、韓流 -
Posted by ブクログ
読み進めるのにとてつもない痛みを伴う作品でした。繊細で重い「慰安婦」と「沖縄」をテーマとし、過酷で悲惨な内容は衝撃的ですが、目を背けずに読み切る覚悟も必要と思いました。それでも、久々に強く心揺さぶられる一冊との出会いでした。
物語は、現在パートで作家を目指してもがく契約社員の「私」と、戦時中パートで朝鮮半島から連れて来られ、沖縄本島や離島で"慰安婦"として軍に搾取された「わたし」の2人が語り手です。交互に視点が変わり、時代を越えて交差します。
深沢さんの、2人の女性に込めた想いがひしひしと伝わります。とりわけ、慰安婦について表面的にしか理解していなかった作家志望の -
Posted by ブクログ
著者である深沢潮さんとの出会いは、アジア・太平洋戦争中の沖縄戦と慰安婦問題を巡って2人の女性を綴った「翡翠色の海へうたう」であり、とても感銘を受けた。著者からのお薦めも頂き、複数の書籍を読ませて頂いた。今回は、著者のエッセーであり、在日コリアンとして、また両親の民族意識や家父長制による価値観の押しつけ体験と葛藤を「食」を通じて振り返ります。恋愛観などの葛藤と人としての成長、人生観の変化などを韓日の「食」文化を手がかりに、韓日のかかわりを紐解き、想像を巡らせます。また、韓国への来訪を中心に、アメリカへの留学体験や様々な国々への訪問・旅行を通じて諸外国の方々との人間関係や交流など、世界の食文化と韓
-
Posted by ブクログ
ネットで連載されていたタイトルが「李東愛(イドンエ)が食べるとき」なのだが、その冒頭で、自分を偽らないで書きたいと書かれていた。李東愛とは、深澤潮さんが日本国籍を取る前の本名。そもそも、日本国籍を取ったのも、就職や結婚などで、大変な苦労をしたからだそうだ。
本書は、食を軸にして、自分の越し方を書いているが、現在ではともかく、在日であるというだけで、相当な差別があったということだ。
たぶん、朝鮮半島が日本の植民地であったことで、日本人が朝鮮人を見下していたことに加え、日本とは違う風習や文化に眉をひそめる日本人が多かったからではないだろうか。
韓国人であることがばれないように、ビクビクしながら -
Posted by ブクログ
"自分で道を選べない"の重さが桁違いだった方々…
皇族という、国を背負う一員だったはずが、数々の戦争によってかわってしまう。
ただ最後は自分の道をしっかりと掴まれた。
史実が元のお話故に、救いがない箇所も多いが、だからこそ没入して読んでしまった。
フィクション部分も上手く絡んで、よりいろんな立場の人から見たその時代を感じられた。
この間パレスチナ問題について学んだばかりで、韓国との関係は余計に考えてしまった。
島根県出身の自分としては竹島問題が気になるところではあるが、過去に韓国にした仕打ちはなかなか…
正直日本を嫌う人の事も否定できないなと思ってしまう。
戦争で得たもの -
Posted by ブクログ
本作品は、時代背景として元号では大正時代、西暦では1910年に朝鮮併合を行ったあとの日本と朝鮮の歴史について世界史を俯瞰しつつ2人の女性の生涯を丁寧に描く。一人の女性は、朝鮮王朝に嫁いだ日本の皇族の方子。日朝融和の象徴としての政略結婚に五里霧中する気持ちの揺れ、何とか夫である李垠を支え、子孫繁栄と家族の安寧を願う生活を丁寧に描写する。一方、もう一人に生活困窮した日本人の少女マサは、基督教信者で朝鮮独立運動を続け、厳しい拷問にも耐えながらも祖国の独立運動に身を投じる男性に恋心を寄せ、夫婦になる。世情や日常生活を丁寧に描きつつ、忍び寄る軍靴、そして帝国日本の敗戦による占領政策により、日本国内で没
-
Posted by ブクログ
ネタバレ最悪な結婚について書かれた短編が4つと、最高な結婚について書かれた短編3つ。
黒い結婚の方は、「かっぱーん」と「愛の結晶」はイマイチ。あとは黒も白もとても良かった。黒い結婚の「水際の金魚」と「家猫」は、わかりやすく結婚に向かない人を描いている。自分が一番可愛い、みたいな。
白い結婚の方は、「シュークリーム」は婚約者の彼に不信感を抱き始めるけど、大どんでん返しで安心する素敵な話。こういう人いるよね、と思った。周りからは「要領のいい奴」とちょと誤解されるんだけど、実は見えないところでけっこう努力している。けな気というか。「あいつは要領がいい、ずるい」などと妬む人は、そういうことに想像が及ばず、自分