あらすじ
海峡を挟み、国家と戦争に引き裂かれながらも戦前・戦中・戦後を生きた二人の女性。政略結婚により皇室から朝鮮王室へと嫁いだ李方子、半島の革命家に寄り添った女性・マサ。それぞれの激動の生涯と時代を描いた、著者渾身の大河小説。
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Posted by ブクログ
面白かったー!朝鮮王家に嫁いだ皇族の方子、朝鮮人の夫についていって韓国で暮らしたマサの人生が描かれている。
こんな人がいたなんて知らなかった。国や戦争に翻弄されて散々な目に遭って気の毒だった。今の日本は個人が自分の選んだ相手と結婚できるし兵隊に取られることもない、平和な世の中になった。
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"自分で道を選べない"の重さが桁違いだった方々…
皇族という、国を背負う一員だったはずが、数々の戦争によってかわってしまう。
ただ最後は自分の道をしっかりと掴まれた。
史実が元のお話故に、救いがない箇所も多いが、だからこそ没入して読んでしまった。
フィクション部分も上手く絡んで、よりいろんな立場の人から見たその時代を感じられた。
この間パレスチナ問題について学んだばかりで、韓国との関係は余計に考えてしまった。
島根県出身の自分としては竹島問題が気になるところではあるが、過去に韓国にした仕打ちはなかなか…
正直日本を嫌う人の事も否定できないなと思ってしまう。
戦争で得たものは脆いし、今まで大事にしていたものを急に奪うなど、人々の気持ちに寄り添わないなんて、それはうまくいかないだろうなとも思ってしまう。
戦後皇族ではなくなった方について思いを馳せたことはなかったが、考えるきっかけになった。
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本作品は、時代背景として元号では大正時代、西暦では1910年に朝鮮併合を行ったあとの日本と朝鮮の歴史について世界史を俯瞰しつつ2人の女性の生涯を丁寧に描く。一人の女性は、朝鮮王朝に嫁いだ日本の皇族の方子。日朝融和の象徴としての政略結婚に五里霧中する気持ちの揺れ、何とか夫である李垠を支え、子孫繁栄と家族の安寧を願う生活を丁寧に描写する。一方、もう一人に生活困窮した日本人の少女マサは、基督教信者で朝鮮独立運動を続け、厳しい拷問にも耐えながらも祖国の独立運動に身を投じる男性に恋心を寄せ、夫婦になる。世情や日常生活を丁寧に描きつつ、忍び寄る軍靴、そして帝国日本の敗戦による占領政策により、日本国内で没落していく垠と方子は一子の成長に一縷の望みを託し、生きがいを見いだそうとする。一方のマサは、日本人であることをひた隠しにしながら朝鮮で生き続ける決意を固め、帰らぬ夫を待ち続ける。2人の女性の全く異なる境遇が、最後に一つの線、そして縁としてつながる様は、さすがに著者の真骨頂と言えるだろう。
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戦前・戦中・戦後の日本と朝鮮半島を舞台に、皇族から李王家に政略で嫁いだ「王朝最後の皇太子妃」李方子と朝鮮半島から来た独立運動家と恋に落ちた「根なし草」の女・マサの2人の女性の生涯を描く長編小説。
まさに大河小説という感じで、主人公2人の愛を貫いた壮絶な人生に思いをいたし、読み終えた後の余韻がすごかった。
これはあくまで小説であり、史実そのものではないが、戦前・戦中・戦後の日本と朝鮮半島を巡る歴史のリアルをかなり忠実に映し出しているように感じた。
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二人の人物を描いたことで、面白みが増した。庶民の暮らし、辛い…
最後、韓国で夫婦二人で幸せになってたかと思ってたけど、ほぼ意識のないまま帰国したんだね。方子さまは、自分で幸せの道をひらいた人なんだ。
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韓国併合の証として李王朝の后となった日本人女性、方子。日本では「朝鮮人に嫁ぐなんて」と陰口を言われ、朝鮮では息子を殺されてしまう。戦争が終わっても祖国に帰ることを許されない夫を常に支え続けた実在の人物の物語。市井の女性「マサ」との代わる代わるの章によって、当時の生活が生き生きと描かれる。
関東大震災の混乱に乗じて朝鮮人殺しが横行していた事実を未だに「嘘だ」と言っている人たちに読んでもらいたいよ。
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梨本宮方子(まさこ)は新聞に載った李王朝の世子である李垠(이은)との婚約の記事を見てその場に座り込んでしまった。何も知らせられずに報道で自分の婚約のことを知るとは。政府は日朝融和のために方子に白羽の矢を立てたのだった。周りから決められ、父母でさえもうそれを拒絶することもできないような立場に立たされてしまっていた。李朝の世子である李垠は十歳から日本に連れてこられ、学習院に入学し、その後陸軍幼年学校、士官学校と職業軍人の道を歩んだ。李垠の父の高宗が亡くなって、二人の結婚式は延期となった。朝鮮側は伝統の三年の喪を要求したが、政府は一年の喪しか認めなかった。そして李垠と結婚した方子は、名実ともに李朝王妃としての立場になった。日本と朝鮮・韓国の間で苦しいこともたくさんあっただろうし…。戦争が終わってからは、日本政府からは掌を返したように支援がなくなり、土地や宝石を売って生活費に充てたという。韓国は当時は李承晩の時代で、李朝の元王を韓国に帰国させることは許されなかった。二つの国の間でどちらにも帰属できない立場に追いやられ、韓国からようやく帰国が認められ、元李王として金銭的支援もされたのは朴正熙の時であったという。そして方子は李垠が亡くなっても日本に帰らず、韓国で孤児や障碍者のための施設を営む事業に邁進したという。この本では、方子の話とは別にマサという名前の日本人の女性が出てくる。マサは方子と同世代で、朝鮮解放運動に従事していた男性を好きになり、朝鮮に渡って苦労をした。方子とマサの二人の女性で当時の日本と朝鮮での出来事を描くことでお話が重層的になった。
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梨本宮方子(なしのもとのみやまさこ)は後の昭和天皇のお妃候補と言われながら、朝鮮李王朝最後の後継者、李垠(イ・ウン)のもとに政略で嫁ぐことになった。
折しも時代は、戦前、戦中、戦後と大激動の中、日朝関係、皇室や朝鮮王朝の在り方の変化の中、自身も跡継ぎの男子を亡くしたり、時代が時代であり、日本と朝鮮と国籍の違いからくる微妙な関係の皇太子を側で支えるという苦悩の毎日である。
最後には、王位もはく奪され何もかも無くしても、力強く、逞しく生きていく。
この話どこかで読んだような・・・?
林真理子の「李王家の縁談」でした。
史実に基づいているので同じ話になるのですが、本編の方は「まさ」というもう一人の女性が出てきて、そちらからも語られるのですが、このまさは、皇太子妃の腹違いの姉妹という設定です。このあたりの事実はわかりませんが、もうひとつ別の展開が繰り広げられます。
Posted by ブクログ
戦前に李王朝の皇太子•李垠(り ぎん)に嫁いだ梨本宮方子(まさこ)様。
日本統治下の朝鮮で日鮮融合の象徴としての政略結婚で
方子様の婚前の不安や覚悟などが丁寧に描かれる。
級友と比べて予想もしなかった李家との縁組も
最愛の息子の不審死も
何も声を上げることもできず
運命を受け入れるしかない。
個よりも公を重んじるお立場で
複雑な想いや苦しみを決して口に出したり態度に出したりしない。
庶民には到底わからない苦悩があった。
前半に比べて後半があまりにも駆け足で
あっという間に数年経っていたり
出来事を追うだけになってしまい
少し残念。
もう一つのマサという貧しい生い立ちの女性の物語が合間に挟まれる。
方子様の物語だけでは決して知り得ない、庶民の目線での戦前戦後の日本と朝鮮の状況がわかる。
関東大震災下での朝鮮人狩りや
日本統治下での朝鮮人の扱いは
本当に恐ろしく、ひどいもので
韓国、北朝鮮の方の日本人への憎悪がいまだになくならないのも致し方ないと思ってしまった。
戦後皇族の特権がなくなり、没落していく中で
方子様は必死に金策をし、夫を支えた。
最後はようやく韓国に渡ることができ、障害者支援の学校などを作って社会貢献をしていたよう。
女性は強いっ!
そしてマサと方子様の縁がつながる。
そこはフィクションだと思うが心温まるものがあった。
Posted by ブクログ
戦前、大正の時代のこと、皇族である梨本宮家に生まれた方子が、朝鮮王家の李王家の妃として政略結婚され、その一生をまっとうする物語。そして、同時に、朝鮮半島から来た革命家の男とともに韓国に渡り朝鮮人として生き抜くマサ、二人の物語が交互に語られ、最後にはともに生きることになる。方子は史実をもとにした展開で、マサの方はフィクションか?
どちらも、今の時代には考えられない壮絶な体験。ただ、どんな苦労があっても、信念を持って生きれば、悔いはない。朝鮮併合のための政略結婚として何人かの皇族が政略結婚させられ、戦後に離婚となった例もあるという。夫婦関係も心がけ次第、気の持ち方次第。自分の人生をどう生きるか、に尽きる。
林真理子さんの「李王家の縁談」は、方子の母、伊津子の視点で描かれたもの。伊津子さんの描かれ方は異なる。本書はマサが描かれたことで重層的ではあるけれど、李王家の縁談の方が圧倒的におもしろい。
Posted by ブクログ
「時代が」とは言え、それでは済まされない事実がある。
「そう言う時代だった」かも知れないが、「日本だけじゃあ無い」かも知れないが、それでも赦せない事実が、許してはいけない事実がある。そして、忘れてはいけない事実でもある。
隣国の朝鮮人に、中国人に、他のアジア人に行った「差別、迫害、暴行、惨殺」。
それだけでなく、同じ日本人に対しても「社会主義者」や「共産主義者」そして「自由主義者」にさえも「アカ」と言うレッテルを張って行った「拷問」とそれに伴う「殺害」。
第2次世界大戦が終結して、もうすぐ80年となり、日本ではこれ等の事実が歴史の一部として近代史、現代史の中に埋もれている。
しかし、今でも世界には先進国でさえ「人種差別」があり、紛争地域では「民族差別、迫害、暴行、そして惨殺」が日常的に行われている。
この小説のように戦前、戦中の歴史が書かれている本を読む時、改めてそう言う事実があったことを思い返してみようと思う。今、多くの日本人の生まれる前の出来事とは言え、僅か120~130年くらい前から第2次世界大戦終戦までの、長い人間の歴史から見れば、比較的新しく短い間の出来事なのだから。