あらすじ
自らのルーツを問い直す渾身の一作
在日一世の父の遺品から出てきた一冊のノート。そこには家族も知らない半生が記されていた。そこから浮かび上がる父の真実の姿とは。
※この電子書籍は2018年3月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
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Posted by ブクログ
ストーリーがスリリングだが暖かく感動的。在日朝鮮人の苦悩がリアルに描かれている。国政選挙の場で日本人ファーストという言葉が安易に行き交う今、多くの人に読んで欲しい。
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ずしんと心が揺さぶられる物語だった。密航して日本にたどり着いた在日1世の物語。祖国の統一や民主化を願って運動に関わっていくが、家族にはなぜかコミュニュケーション障害のように、うまく気持ちや愛情、行動の意味を伝えることができず、つい怒鳴ってしまう。亡くなってから日記を読むことで息子や娘たちは初めて理解できる過程が悲しいけれど感動的だった。
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読書記録68.
#海を抱いて月に眠る
本好き友が紹介してくれた作品
海を越え日本に来た父と
日本で生まれた息子、娘
更にはその子らにも繋がる
家族の物語
父親の不器用な姿の奥にある真実が一つ一つ見えていく毎に涙が溢れた
彼らの背負ってきた時代の苦労を、何も知らないでいる自分が
恥ずかしい
知ろうとする事、伝え残す事の大切さ
友よ、ありがとう
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サンジュ、日本名「文山徳允」の壮絶な人生を描いた大河小説だ。
サンジュは自分の素直な気持ちを表せない不器用な男だ。家族に対する彼の本当の思いやりは、死後残されたノートによって明らかにされる。その思いが最愛の妻「容淑」に伝えられなかったのが残念だ。
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離婚して働きながら一人娘を育てる梨愛(りえ)。
横暴で厳格だった在日一世の父は、親戚にも家族にも疎まれながら死んでいった。
しかし、通夜では、人目もはばからず棺にすがりつく老人、目を泣きはらした美しい女性など、見知らぬ人たちが父の死を悼み、涙を流していた。
父はいったい何者だったのか。
父の遺品の中から出てきた古びたノーには、想像を絶する半生が記されていた。
新しい在日文学の傑作!
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父の文山徳允は表立っては在日という事実を隠し、日本名で人生を送っていた。
小さい頃から父は長男の鐘明には優しく、何故か娘の梨愛(りえ)には理不尽ともいえる厳しい躾を果たしてきた。
長女の梨愛は、そんな父親に反感を抱き、お互いに理解し合える親子関係ではなかったと考えている。
兄は、母国に対する愛国精神に長けた父親の頑固なまでの考え方とは相反し、結婚と同時に日本国籍を取得する。
そんな兄とも梨愛は距離を置いた関係が続いていた。
その在日韓国人一世だった父が亡くなった。
傲慢とも云えた父の葬儀に、老いた白髪の老人が人の目も憚らず、棺に縋り泣き悲しんでいる。
その傍に美人の若き婦人が涙を流し、父の死を悼み悲しんでいる。
身内の誰もがその二人が何者なのか、全く知らなかった。
後日、兄と二人で父の一人住まいであったマンションで遺品整理を行なう。
数少ない遺品の中に、数冊の古いノートが遺されていた。
日帝支配の戦前、戦中、そして戦後と、混乱の真っ只中で苦境を強いられた朝鮮半島の人たちの生き様の物語だ。
在日の人々の戦後の歴史が、李相周(文山徳允)が残したノートに、文山の人生が綴られていた。
慟哭ともいえるノートから聞こえる声を通して、梨愛と鐘明は父親の真の姿を知ることになる。
Posted by ブクログ
以前、姜尚中さんのオモニの一生を綴った”母”という作品を読んだ時、実に壮絶な人生だ。という感想を抱いたのだが、この作品のアボジも実に壮絶な人生だ。
時代と運命に翻弄され時にはあがらい、流され、それでも必死に生きたアボジ。仲間、家族、故郷。。。
奇しくもコロナで久しく韓国には行けていないが、それでも自由にどこでも行ける今の時代は、本当に恵まれている。
日本はよく単一民族と言われているが、よく考えてみてほしい。果たして、そう言い切れるだろうか。
Posted by ブクログ
不勉強なため、韓国の近現代史をほとんど知らずに読んだので前半は聞きなれない韓国名や言葉に悪戦苦闘したり、父の横暴な態度にイライラしながら読み進めていくがだんだん夢中になって読んでいた。自分の本当の名前も歳も偽り異国の地で家族を思い、国を思い生涯をおくった在日の人の気持ちなど今まで考えたこともなかった。
読書は娯楽と思っていて、歴史や政治ものはあまり読んでこなかったけれど時々はこういう本も読んでみるものだと感じた。
Posted by ブクログ
韓国の近代史を知らなかった。祖国を離れて、身を偽って暮らす葛藤も想像を超えていた。とはいえ梨愛の父が家族に向ける言動には共感も理解もできないなぁ。
Posted by ブクログ
朝鮮半島の近現代史や、「在日」への知識が無いと少し理解しづらいかも知れないが、歴史に翻弄された一世の壮絶な生涯を垣間見れる。
私も見たことがある、ふと遠くを見るような、一世の姿が思い浮かぶ。
しかし思うに、「翻弄された」で終わらせてはいけない。その中でも誰よりも力強く生き抜き、我々後代に大切な財産を遺してくれた一世の生き様を記憶したい。