あらすじ
ふたつの国の狭間で揺れる、迷う、恋をする。
二〇一三年の夏、在日韓国人の大学生・知英はパスポートを取得した。表紙の色を見て、改めて自分の国籍を意識する。町ではヘイトスピーチのデモに遭遇し、戸惑う。「なにじん」なのか、居場所はどこにあるのか、友人と分かり合えないのはなぜか。自分に問い続ける知英は少しずつバランスを失っていく。K‐POPファンの梓、新大久保のカフェで働く韓国人留学生のジュンミン、ヘイトスピーチへの抗議活動に目覚める良美、日本に帰化したのち韓国で学ぶことを選んだ龍平、そして知英。ふたつの国で揺れる五人の男女の葛藤と再生を描く。
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Posted by ブクログ
本作は、YA向けのような読みやすさと、中身の深さを兼ね備えた良作でした。若い方を中心にどなたにもおすすめしたい一冊です。
深沢潮さんまだ2冊目ですが、日韓関係や在日コリアンなどの重いテーマを、とても丁寧に取り上げて作品に落とし込んでいる印象です。
タイトルの「緑と赤」は、ズバリそれぞれ大韓民国と日本のパスポートの色を示しています。
大学生の知英は、自分が在日韓国人だと親から聞かされていたものの、あまり深く考えずに過ごしてきました。パスポート取得を機に、2つの国を巡る状況やそこに渦巻く憎悪感情を知り、それらに向き合わざるをえない状況になっていきます。
6章構成で、知英をはじめ、韓流スターが好きな日本人の友人やおばさん、韓国人留学生などへ視点人物が変わっていきます。
日本と韓国、2つの民族とその狭間で暮らす人の気持ちを、深沢さんは巧みに書き分けています。とりわけ、狭間である「在日」である人の苦悩が実にリアルに描かれています。
「自分は何者か」などと考えず、外国もほとんど訪れたこともない私には、国や民族の帰属意識やアイデンティティの自認がありません。しかしながら、本作発刊が10年前で、現在、ヘイトスピーチやレイシズムは改善されているのかを考えると、決して他人事では済ませられない気がします。
軽くテンポよく読み始め、次第に身の回りの偏見、すれ違いなどに傷つき、心を病んでいくような展開にいたたまれなくなりましたが、優しさと希望をもたせてくれる終末に救われました。
様々な立場の人の想い、差別や人権について知るための、十分過ぎるきっかけになる格好の物語と感じました。
Posted by ブクログ
最後涙が止まらなくなった。
韓国と日本の溝は想像より遥かに根深いものだというのことを知った。
また、自分は差別する側ではないと思っていたが、本当か?韓国人と日本人というだけでなく、日本人でないことや日本人であっても属性、出自の差という違いで無意識に差別するような思いや言動をしていなかったか?自信がない。
良美のようにヘイトスピーチを反対するような運動に直接関わることができなくても、自分の周りで起きていることや人たちに思いを寄せていくことが、せめての第一歩なのではないかと思った。
Posted by ブクログ
オムニバスで展開しつつ、それぞれの人物がつながり合っている、という構成。緑と赤はパスポートの表紙の色(大韓民国/日本)の違い。その違いが分かつもの、埋め切れない溝、壊せない壁・・・切ない小説です
Posted by ブクログ
ありのままの自分を認めてほしい。理解してほしい。けれども中途半端な理解や同情はしてほしくない。それくらいならば、何もないふりをして暮らしていく方がマシだ。と主人公たちの気持ちは揺れ動きます。
私には、一見するだけではわかりにくい障害がありますが、重なる部分があるのではないかと思いました。
重く根の深いテーマですが、文体はソフトでわかりやすく、抵抗なく読み進めることができました。
Posted by ブクログ
赤と緑。
タイトルとあらすじを見て、それがパスポートの色だとすぐに分かった。
出自とアイデンティティ。
実に複雑で難しいテーマだけど深沢さんの文章はそれらを分かりやすく噛み砕いて盛り込み、何人かの登場人物の視点から語られるそれは、一方的な見方をするのではなくもっと多角度から見ることの大事さ。を伝えているようにも感じられた。
Posted by ブクログ
「『嫌い』に巻き込まないで」ってその通り。
在日の友だちはいないけど韓国人の友だちはいい子だし、韓国料理好き。
でもいまの韓国の慰安婦訴にはうーんって思っちゃう。
国同士の付き合いなんてそんなもんか。