深沢潮のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
梨本宮方子(まさこ)は新聞に載った李王朝の世子である李垠(이은)との婚約の記事を見てその場に座り込んでしまった。何も知らせられずに報道で自分の婚約のことを知るとは。政府は日朝融和のために方子に白羽の矢を立てたのだった。周りから決められ、父母でさえもうそれを拒絶することもできないような立場に立たされてしまっていた。李朝の世子である李垠は十歳から日本に連れてこられ、学習院に入学し、その後陸軍幼年学校、士官学校と職業軍人の道を歩んだ。李垠の父の高宗が亡くなって、二人の結婚式は延期となった。朝鮮側は伝統の三年の喪を要求したが、政府は一年の喪しか認めなかった。そして李垠と結婚した方子は、名実ともに李朝王
-
Posted by ブクログ
梨本宮方子(なしのもとのみやまさこ)は後の昭和天皇のお妃候補と言われながら、朝鮮李王朝最後の後継者、李垠(イ・ウン)のもとに政略で嫁ぐことになった。
折しも時代は、戦前、戦中、戦後と大激動の中、日朝関係、皇室や朝鮮王朝の在り方の変化の中、自身も跡継ぎの男子を亡くしたり、時代が時代であり、日本と朝鮮と国籍の違いからくる微妙な関係の皇太子を側で支えるという苦悩の毎日である。
最後には、王位もはく奪され何もかも無くしても、力強く、逞しく生きていく。
この話どこかで読んだような・・・?
林真理子の「李王家の縁談」でした。
史実に基づいているので同じ話になるのですが、本編の方は「まさ」というもう一人の女 -
Posted by ブクログ
ネタバレ「乳房のくにで」が面白かったので、この著者の作品を調べて、本作は在日コリアンが題材になっているようだったので興味がわいて読みました。物語は父親不在で母子家庭で育った朋美の子供時代から、壮年に至るまでまでを描いている。素直になれない性格や、友達、いとことの関係、母との確執などは、父親のルーツがどこであっても関係なく、思春期の物語として読める。孤独で知的だが素直ではない朋美と、勉強はできないけど素直で明るい幸子との関係も読みごたえがあった。
屈折した子供時代を経て、それなりに魅力的な女性になったらしい朋美の姿を思い浮かべながら読むと楽しい。あくまで「それなり」で、劇的に美しくなった、とかじゃないと -
Posted by ブクログ
父の文山徳允は表立っては在日という事実を隠し、日本名で人生を送っていた。
小さい頃から父は長男の鐘明には優しく、何故か娘の梨愛(りえ)には理不尽ともいえる厳しい躾を果たしてきた。
長女の梨愛は、そんな父親に反感を抱き、お互いに理解し合える親子関係ではなかったと考えている。
兄は、母国に対する愛国精神に長けた父親の頑固なまでの考え方とは相反し、結婚と同時に日本国籍を取得する。
そんな兄とも梨愛は距離を置いた関係が続いていた。
その在日韓国人一世だった父が亡くなった。
傲慢とも云えた父の葬儀に、老いた白髪の老人が人の目も憚らず、棺に縋り泣き悲しんでいる。
その傍に美人の若き婦人が涙を流し、父の死を -
Posted by ブクログ
在日韓国人であることをKポップ大好きな親友に話すことが出来ずにいる知英、大好きなKポップアイドルグループのメンバーにそっくりな恋人を追いかけて韓国へ行ったら思いもかけない日本人差別にあった梓、新大久保で見かけた大規模な嫌韓デモをきっかけに差別と戦うことを誓う中年女の良美などを取り巻く今の日本人と韓国人、そして在日韓国人の関係性や苦悩を描いたお話。
先日読んだ「海を抱いて月に眠る」よりも心の動きが理解しやすいかな。日本人からも韓国人からも中途半端と疎まれるなんて、そこに悪意をぶつけられるなんて、いたたまれない気持ちになる。何故そこに悪意や嫌悪感が生まれるのか、国籍の少しの違いで人の優劣が決めら