フェルディナント・フォン・シーラッハのレビュー一覧
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ネタバレ大好きな本屋大賞、2012年の翻訳小説部門第1位作品、このミス第2位等々、多くの賞の受賞作ということで手にした一冊です。
著者の作品は初読みでしたが、著者がうまいのか、訳者がうまいのか、やはり両者がうまいんでしょう。
※翻訳がうまいと感じたのは「獣どもの街(ジェイムズ・エルロイ)」の田村義進さん以来です。
11の短編は全てが刑事事件の弁護人として罪と犯罪者に向き合います。
1話あたりざっくり20P程度なんですが、なにせ描写がうまい。
特に印象に残ったのは「棘」、精神が崩壊していく様、そしてそこから立ち直るラスト、なるほど。
これってあり得なくないよなぁ...って思いながら、この時の犯 -
Posted by ブクログ
ネタバレシーラッハの長編と短編を1冊ずつ読んで、今度は戯曲。
戯曲は好きだけど、会話劇だとさすがにあの独特な乾いた文体は味わえないのでそこは残念だった。
紹介文を読んだときは、この判断は本当に難しいな…と思ったが、途中でスタジアムの観衆を避難させる時間は十分あったとわかった時点で、一体何を裁く必要があるのか?と思ってしまった。
被告人のパイロットは確かに命令を無視して独断で行動したけれど、そもそもそんな決断をせざるをえない状況にしたのは誰なのか。
諸悪の根源テロリストは別として、次に責められるべきは避難という手段を取らなかった軍の対応ではないのか。
軍は命令が絶対、ということは、責任は当然トップにある -
Posted by ブクログ
主人公は文字の一つ一つにまで色を感じるという特殊な色彩感覚の持ち主、ゼバスティアン。
多感な時期に父親を自死という形で亡くし、乗馬以外に興味のない母親とうまく折り合いをつけられず、寄宿舎生活を終えると、写真家として歩み始めたる。
何だか歯車が合わないなりにも恋人もでき、順調な毎日を過ごしていたが、ある日突然、若い女性の殺人容疑で逮捕されてしまう。
捜査官に強要され罪を認めるも、敏腕弁護士ビーグラーによって、驚くべく事実が明らかにされる。
ハイテクを駆使した写真のなりようや、弁護士の刑事に対する禅問答もどきのやり取り、あとがきで”日本の読者のみなさんへ”と題して良寛の俳句を取り上げているあたりな -
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本屋大賞一位ということで、初めて読んだ。
面白かった。
刑事事件専門の弁護士の著者が語る「犯罪」。
罪は、ときに救いようがなく、とんでもなく不可解で、あるいは何がいけなかったのかと、どこで間違えてしまったのかと思うような危うさの上に、淡々と揺るがずにのっかっているというか…
大袈裟な表現もなく、ただ淡々と、嫌悪感も同情もすこし離れたところにおいたまま。
不思議な読後感だった。
味わったことのない、辛いとか甘いとかもはっきりしないような、うま味?のような満足。
「序」にある、著者のおじがいう「物事は込み入っていることが多い。罪もそういうもののひとつだ」という言葉がストンと落ちてくる。
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私達は生涯は、薄氷の上で踊っているのです。 宣誓はとうの昔に信頼されていなかったからだ 圧力容器が弾け飛んだ 罰則が私達を威嚇する ポコルは仲間がポルノ映画で彼女を便器代わりにするのを見てから ガロテで首をしめられ命を落とした 尻から折れた箒の柄が突き立っていた 俺はオリーヴの木どザジキが大嫌いなんだよ タツノオトシゴ海馬は馬と竜の合いの子で 記銘障害と想起障害を併発していることを本人に説明した ルミナール 華麗なるギャツビー 「さあ、櫂を漕いで流れに逆らおう。だけどそれでもじわじわ押し流される。過去の方へと」 だが盗んだ教科書で、解答不能と思える難問に出合うと、脳味噌がぶんぶん唸るのを感じた
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フェルディナント・フォン・シーラッハ『禁忌』創元推理文庫。
『コリーニ事件』に続く200ページ強の中編作品。『犯罪』『罪悪』のイメージが強いせいか『コリーニ事件』同様、読んでいて心に響くものが無く、無機的な単調さに物足りなさを感じた。もしかして、シーラッハの良さは短編にこそ生きるのではなかろうか。
主人公は文字に色を感じる共感覚を持つ写真家のゼバスティアンである。前半ではゼバスティアンの幼少期から写真家として成功を納めるまでが単調に描かれる。その後、ゼバスティアンが若い女性の誘拐と殺人の容疑で逮捕され、捜査官に強要され殺害を自供してしまう……そして、結末……