フェルディナント・フォン・シーラッハのレビュー一覧
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犯罪、罪悪のような、淡々としてそれでいて怪しさをはらむ数式のような短編集。正直、シーラッハはすごく好きなんだけど前作「禁忌」が個人的にイマイチだったので不安だったが、これはヒット。
これぞシーラッハ節、というような芸術や文化たる整然さと人の業たるカオスさが混ざり合ってなんとも言えず不気味な雰囲気が全編にあふれていた。まさにブラッククリスマス。満足満足。…だけど、やっぱり最初に読んだ「エチオピアの男」を越える傑作短編は、まだない。
あれを越える話をこれからも求め続けるのは、シーラッハにハマった読者の業だろうか。来年再来年と、引き続きそれを期待しながら、また訳者の素晴らしくカオスを落とし込ん -
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弁護士である『私』が出会った11の異様な『犯罪』を通して描かれるのは一見その辺にいるような『普通の人々』がふとしたことをきっかけとしてあっという間に『一線を越えてしまう』姿でありました。重いです。
表紙のおどろおどろしさに惹かれてつい入手して読んでおりました。筆者は現役の弁護士にして祖父はナチ党の幹部で全国青少年最高指導者という肩書きを持ったバルトゥール・フォン・シーラッハという方なのだそうです。
ここに収録されているのは全編が短篇小説で、その調書のような独特の乾いた文体で、『一戦を踏み越えてしまった人々』犯罪者達のありようやその人生を描いていきます。全編を貫くのはある種の『不条理さ -
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★3の上
シーラッハ先生の4冊目。
ドイツの作家さん。
やたら名前が長いので(フェルディナント・フォン・シーラッハ)シーラッハ先生呼びで今後もいこう。
「犯罪」
「罪悪」
「刑罰」
という短編集3部作のうちの1冊。
まちがって最後の「刑罰」から読み始めて「犯罪」「罪悪」と来たけど何も問題なし。連作でもないからね。
犯罪系短編集のノンフィクション風味。15の短編。一番短いのは3ページ。一番長いので33ページ。
凄いな〜。
唯一無二じゃないだろうかこの人。
短い話なんだけど重くて。
読んでる時間よりも読み終わってから目を閉じて考えてこんでしまう時間のほうが長い。
ズシンと来る。
正でも -
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2010年クライスト賞(ドイツ)
2012年本屋大賞〈翻訳小説部門〉
『このミステリーがすごい!2012年版』海外編第2位
週刊文春2011ミステリーベスト10 海外部門第2位
『ミステリが読みたい!2012年版』海外篇第2位
いわゆるミステリー小説ではなく、様々な「犯罪」の話を刑事事件専門の弁護士である著者が語る11編からなる短編集。
伏線やどんでん返しのようなドキドキする展開はなく、被告人が罪を犯すに至った過程を読み、客観的に罪について考えさせられる。
被告人は善人だったり、精神を病んでいることが多く、ただ犯罪者とくくれない複雑さがある。
やるせない気持ちでちょっと重たい気持ちになった。 -
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刑事事件弁護士として活躍する著者が、罪と罰の在り方を問う12編。
デビュー作『犯罪』、第二短編集『罪悪』に続く短編集3作目。翻訳者さんによるあとがきによると、作者さんは当初から三部作を構想していたそうです。
作中でどんな犯罪を描こうとも、書き方は常に淡々としていて心情描写も薄い。それなのに、何故か心がざらつく読後感。
犯罪と、罪と向かい合う仕事についている筆者さんにしか書けないものがある気がします。
解説でも似たようなことが書かれていますが、釣り合わない罪と罰、理想をもってなったはずの弁護士という仕事の理想と現実、現実のような虚構と虚構のような現実。そんなすべてをひっくるめた現実のやる -
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今年の11月は濃厚過ぎたw
ってな事でフェルディナント・フォン・シーラッハの『テロ』
ドイツ上空で164人を乗せた旅客機がハイジャックされた。その旅客機は7万人の観客が居るサッカースタジアムへ向けて突っ込もうとしている。
緊急出動したラース・コッホ少佐は極限の状況で164人を乗せた旅客機か7万人居るサッカースタジアムをどちらかを犠牲にしないといけない状況下の中で旅客機を撃墜し164人を殺害し7万人を救った事になるが……。
その事に付いての裁判審議小説。
考えさせられる内容。究極の選択。どちらが正しいとは言えないもどかしさが有るけど、あなたなら有罪、無罪どちらを選択する?
どちらも -
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タイトルに惹かれて読んでみた。
近年目にした映画(『犯罪』『コリーニ事件』)の原作者なのね。ご職業は弁護士だとか。
エッセイともルポとも短編とも見分けのつきにくい話が、長短さまざま48篇収められている。ブツブツと寸断されるので、なかなか読みすすむ勢いがつかず時間がかかった。
とはいえ、そんなにサクサクと読む類の文章でもない。
機知に富み、情報量も多い話が、職業柄か、理路整然とドライな筆致で綴られる。
48篇それぞれの長さも(短いものは1ページにも満たない)、著者の独特のリズムなのだろうなと思う。
「物書きであれば、創作した人間と言葉を交わし、その人たちと人生を共にできる。書く合 -
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やや星新一のようなブラックな読後感の短編集です。
こちらはSFではなく、ミステリですが。
人を殺した、という「罪」を抱く人々が裁判を通して「罰」を受けるというのが法治国家の当たり前の姿ですが、証拠として揃ったものから論理的に判断しているようにみえても、巧妙に真相が隠されていたり、罪を被った人が実は騙されていたりと、複雑な人間模様が濃縮された作品集です。
荒唐無稽な設定はなく、淡々と描かれる登場人物の描写にはリアリティがある一方で、やや「盛り上がり」に賭ける部分があるかもしれません。
イメージでいうと、どの作品も「どんよりした雲り空」のような雰囲気で、不快ではないし雨が降ったようなしんみりと -
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ドイツの作家「フェルディナント・フォン・シーラッハ」の短篇集『罪悪(原題:Schuld)』を読みました。
「ハラルト・ギルバース」、「アンドレアス・フェーア」に続き、ドイツ作家の作品です… 「フェルディナント・フォン・シーラッハ」作品は、約2年前に読んだ『犯罪』以来ですね。
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罪人になるのは簡単なのに、世界は何も変わらない。
──ふるさと祭りの最中に突発する、ブラスバンドの男たちによる集団暴行事件。
秘密結社イルミナティにかぶれる男子寄宿学校生らの、“生け贄”の生徒へのいじめが引き起こす悲劇。
何不自由ない暮らしを送る主婦が続ける窃盗事件。
弁 -
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ネタバレ――
少し趣を変えて、フェルナンド・フォン・シーラッハによる戯曲。
よく見たら本屋大賞翻訳部門獲ってたから趣変わってないかも。
2013年、ドイツ。テロリストによってハイジャックされた旅客機が、7万人の観客が集うサッカースタジアムに墜落させられようとしている。緊急発進した空軍少佐は独断でこれを撃墜、乗客164人を殺して7万人を救い、地上に戻ると即刻逮捕される。
舞台はその彼の裁判。参審員制が取られているドイツの法廷を舞台に、被告人、弁護人、検察官、裁判長の4人をメインキャストとし、証人 (弁護人側と検察側とのふたり、かと思ったのだけど実際は両方検察側みたいになっている)が時折そこに